「ねぇ母さん」
「なんだ悟聖?」
俺は今、皿洗いを手伝いながら母さんと話している。こういうできる手伝いもしないと母さんが精神的に辛いからな。
「母さんはさ、父さんに働いて欲しいの?」
「あったりめぇだ!今はおっ父の財産があって何とかなっちゃいるが…それもいつまで持つかわかんねぇだよ」
「確かに、その中で一番やばいのは食費だもんね。サイヤ人は大喰らいの種族みたいだし、俺も悟飯もその辺は遺伝してるからね」
そう、孫家で一番消費しているのは食費だ。この家はカプセルコーポレーション製のもので電気や水に関しては全く問題ない。引っ越す時もこの家をカプセル状態にすればいつでも引っ越すことが出来る。ほんとこの世界は便利な物が多い。
「父さんはブルマさんに出会うまで女性も知らないマジの野生児だったみたいだし、あまり社会に適性もなさそうだし…。修行しながら仕事をする方法…なんかないかな…」
「ウーン、難しいところだな…」
俺と母さんは頭を傾けながら悩む。すると俺の視界にある物が目に入る。
「野菜の捨てた部分…」
包丁で切った必要のない野菜の部分が目に入る。数秒くらい見つめると俺の中にある電球がピカッと光る!
「これだー!!」
「うわっ!ど、どうしただそんな大声出して…」
「これだよ母さん!これなら父さんも修行出来て働く事もできるかもしれない!」
「え、ええ?」
母さんはわけがわからないと言わんばかりに「?」マークを浮かべる。俺はすぐに父さん達を召集し、ある場所に向かう。
俺達孫家とピッコロさんを含めてパオズ山にある広い更地に向かう。
「うん。ここが一番広いし、問題はなさそうだね」
「悟聖、みんなをここに連れてきて何するの?」
「そうか、悟飯は知らなかったんだっけ?父さんと一緒に修行してた時に聞いた話なんだけど、昔父さんが武天老師様に修行をつけてもらってた時に素手で畑を耕して修行してたらしいんだ」
「あー、その話は悟聖にはしてたなぁ。じっちゃんの修行かー。懐かしいなー」
「これなら父さんも働けて収入も得られるだろうし、ピッコロさんに服を重くしてもらって負担を増やせばいい修行にもなるんじゃないかと思って。いわゆる農業って仕事だよ。作物がうまく育ったらツテを使って野菜を売ってもらう、ブルマさん辺りに相談したらいいところを紹介してくれそうだし」
「なるほど!確かにそれなら悟空さも働いて修行も出来る!うまくいけば稼ぐこともできるだよ!」
母さんは大喜びし俺に抱きついてくる。ただ、やる事は山積みなので、まずは土を作物を育てる状態に耕さなければならない
「確かにそれならオラも修行しながらやれそうだ!ピッコロ、早速頼んでもいいか?」
「何故オレがこんな事の為に…」
「ピッコロさん、お願いします!これも修行の為なんです」
「……わかった」
ピッコロさんは父さんに手を翳すと父さんの服は重くなり負担がかかる。
「よーし!早速はじめっか!悟飯!おめえも一緒にやるんだ!」
「は、はい!」
父さんは物凄い勢いで素手で土を耕し始め、悟飯も父さんと真似するように素手で耕す。
「さて、俺も…」
「あっ…悟聖ちゃんは待つだよ」
俺も一緒に土を耕そうとすると突然母さんに呼び止められる。
「なに母さん?」
「おめえにはお使いを頼みたいだよ。作物を育てようにも種がなきゃなにも育てられねぇだ」
「あっ…確かに」
種の事をすっかり忘れていた。確かに種がなきゃ作物が育つもクソもない。
「このメモに書いてる物を買ってきて欲しいだ。頼めるか?」
「うん…大丈夫だよ!なら早速行ってくるよ!父さーん!」
「なんだ悟聖?」
「筋斗雲借りてもいいかな?母さんに頼まれて買い出しに行くことになったから!」
「ああ!構わねぇよ!」
「ありがとう父さん!じゃあ早速、筋斗雲よーい!!」
俺は筋斗雲を呼ぶと、意思を持つ雲がこちらに来て勢いのまま乗りパオズ山の空を駆ける。
「悟聖ちゃーん!飛行機には気をつけるだぞー!!」
母さんの声が聞こえてたが、俺は言葉を返すことなく筋斗雲は高速飛行で駆け抜ける。
筋斗雲の飛行速度はそこらの飛行機を軽く凌駕しており、舞空術で飛ぶ俺達にとってはある意味本当の乗り物だろう。
「さて…母さんに頼まれた物は」
俺はまず一度家に帰り私服に着替えたあと、母さんから渡されたメモを確認する。野菜の種はもちろん、他にも食材の買い出しも含まれていた。
「うん…これなら直ぐに終わりそうだな…」
けど普通に買い物をしても面白くないしな……久しぶりの1人だし、そうだ!
「あそこに行ってみるか…位置は…」
俺は携帯で位置情報を確認する。携帯に関しては悟飯が動画を見ながら勉強をやったり俺も調べ物をする為に去年牛魔王の爺ちゃんが買ってくれたものだ。
「よし!早速行くか!いけ筋斗雲!」
俺は筋斗雲に指示すると俺が望む方向に向かって飛んでいく。1時間もかからずして目的地につく。
「ありがとう筋斗雲!帰りも頼むよ!」
俺は筋斗雲から飛び降り人気のない山の近くで浮かぶ。
「………久しぶりだな、ここも」
そう、俺がいる場所は前世の故郷である日本だ。ただ違うのはこの世界は日本としての国はなく場所の名前として記されていた。
「懐かしいな…この感じも」
辺りに並び立つ住宅街、俺の住んでいる場所はド田舎だが、西の都とかも見るとかなり技術の発展しているように見える。
「さて……懐かしいと言っても取り敢えずは母さんから頼まれた買い物だな」
俺は近くのスーパーに行き必要な食材をカゴに入れていく。1人なので量が量のため店員に怪しまれながらも買ったものをレジ袋に詰めていく。ただ驚いたのがここでもゼニーを使えたことだ。この場所の紙幣も前世の日本と同じだが、どうやら物価も一緒のため円とゼニー両方使えるようだ。ほんと変わった世界だよ。
ただ、あまりの量を子どもが持っている為か、平気な顔をして持ち歩いている俺に視線がこちらに集中しており目立ってしかたなかった。
「こんな事もあろうかと収納用カプセルをもらってよかった」
俺はカプセルのスイッチを起動し収納するカゴが表れる。前にブリーフ博士に頼んでもらった収納用カプセルで多くの買い物をした時には便利なものだ。買ったものをカゴに入れてカプセル状態に戻す。これのおかげで手ぶらでいる事が出来る。
「さて、後は家に帰るだけだが……」
せっかくだしこの世界の日本も見てみたい。時間もあるし母さんにも怒られるかもしれないがたまにはいいだろう。
「よし!なら東京に行ってみるか!」
俺は舞空術を使いすぐに東京に向かう。そんなに時間もかからずあっという間に東京に着いた。
「おお…ここも前世まんまだな」
俺は人気のない場所に降り現在池袋にいる。
「よし、なら早速観光して「ひったくりよ!!誰か捕まえて!!」っ!」
声がする方に振り向くとそこには1人顔を隠した男が人混みを強引にかき分けながら向かってくる。おそらくひったくり犯だろう。
「退け!どかないとぶっ殺すぞ!!」
男の手は刃物と鞄を抱えており、カバンはおそらくひったくりにあった女性の物だろう。周りの人はみんなそのひったくり犯に驚いており、止めようとする者は誰もいなかった。
「はぁ…まさかこの場所でこんな現場に遭遇するとはな…」
俺はため息を吐きながら男に近づく。男は刃物を持ってこちらに近づいてくる為、周りは逃げるように促したり、悲鳴をあげる者、みんなひったくり犯から離れていく。
「はぁ!」
「うごっ!!」
俺は男が近づいてきた瞬間に腹部に拳を叩き込み男は吹っ飛ぶ、勿論死なないよう加減はしている。ただ周りは何が起きたのかわからず俺をじっと見ているけど…そんなに驚くことかな?
「全く…そんな事してる暇があるなら働いたらどうだ?」
俺は気絶したひったくり犯から盗られた物であるバッグを取り返す。
「これが盗られたものだな。持ち主に返さな「君!」…はい?」
振り向くと息を荒げているお姉さんがいた。おそらくこのバッグの持ち主だろう。
「はあ…はあ…もしかして、君がこのひったくり犯を?」
「まぁ…そうなりますね。あっ、これ…どうぞ」
俺は盗られたバックを目の前のお姉さんに渡す。
「あ、ありがとう」
「いえ、無事に取り返せてよかったです。後の事は申し訳ないですけどお任せします。それじゃあ…」
俺はその場から去ろうとすると何故か俺の手を強く握ってくる。
「……えっと?」
「……君!うちの事務所に来ない!?」
「はい?」
いやなんで?と言うか事務所?
「まさか、こんな小さな男の子がひったくり犯を捕まえてくれるなんて思わなかったもの!しかも1人で!“壱護”に話したらきっとあなたに興味を持つわ!」
「は、はあ…」
この感じ…どっかの芸能事務所の関係者か?
「それより君!名前は!?」
「えっと、孫悟聖です」
「そう!悟聖君ね!私はこう言う者よ」
「ご、ご丁寧にどうも」
名刺をもらうのは前世含めても初めてだ。俺は名刺に書かれた文を読む。
「(芸能事務所・苺プロダクションの“斉藤ミヤコ”さん)」
「それで、どうかしら悟聖君!うちの事務所に来てみない!?」
「え?」
俺が驚いていると周りがざわつき始める。よく見ると集まった野次馬が取り囲んでいた。まずいな……。このままだと目立つ事になってしまう……。ここは……。
「す、すみません!用事があるのでこれで!」
俺はその場から逃げるように去る!流石に今目立つのは御免被る!
「あっ、待ちなさ……え、き、消えた?」
正直目立つが今回だけは仕方ない!俺はその場から消えるように飛び上がり、人がいない空いてる場所に移動し、猛ダッシュで離れる。一般人から見たら俺が突然消えたように見えるだろう。
「あ、あの子…一体何者なの?」
斉藤ミヤコは突然の現象に頭がついていけず、ただ悟聖がいた場所を見つめるのだった。
「ふぅ、ここまで来れば大丈夫だ……まさか、芸能関係者にスカウトされるとはな…。人造人間の事がなかったら考えてたかもな…」
俺は東京から離れ、人気のない場所にいる。流石に今はもうあの場には行けないだろう。
「まぁ、その事は今はいいとして……って」
すると頬に水滴がつき、空を見ると雨が降り始めていた。
「やばい雨だ…近くのコンビニで傘を買わないと」
俺はすぐ近くにあるコンビニに入りビニール傘を買い傘をさす。
「……さて、帰るか」
俺は最初に来た場所に歩いて向かう。せっかくの故郷だからしっかり見てから帰りたいしな。それと傘は雲の上まで飛べば必要なくなるし、いるのは今だけだ。
「ん…?」
「…………」
帰路に着こうとした時、足がふと止まる。
すぐそこにある公園。その視界にブランコとそこに座る今の俺と同い年くらいの1人の少女の姿が映る。
「(傘をささずに1人で…あのままじゃ…)」
俺は心配になり少女の元に駆け寄る。
「君、大丈夫?そのままだと風邪引くよ」
そう言って雨に打たれる女の子に声をかけ、傘に入れる。すると伏せていた顔がこちらを向く。
「(星を宿した…瞳)」
両目には星がそこにはあった。けど、なんとなくだが、星のように輝いているのに、どこか翳りのある瞳であるのと同時に、何かを欲しており、恐れているようにも見えた。
「大丈夫……何でもないよ」
目の前の女の子はそう笑顔で答えた。だが、状況を考えれば何でもなくはないことが誰でもわかる。
しかし不思議と目の前の女の子には、思わずその言葉を真実と思わせてしまう何かがあった。
「……」
俺はその答えに思わず黙ってしまう。そんな俺に女の子は笑顔で語りかける。
「君、優しいね……見ず知らずの私なんかに声をかけてくれて」
「いや、普通じゃないかな?困っていたら助け合うものだろう?」
「……そうだね」
すると雨脚が強くなる。これ以上は流石にまずいか……なら。
「家まで送ろうか?」
「え?」
俺は傘を持つ手を前に出すが女の子は首を横に振る。
「いいよ……そこまでしてもらわなくても……私の家、施設だから」
「そっか……」
施設……それならこの子には家庭内で事情があり今は施設の預かりになっているのだろう。
「けど、それでも送るよ」
俺はもう一度女の子に傘に入れるよう声をかける。こんな所で放って行くわけにもいかい。
「……ありがとう。でもいいの?見ず知らずの私なんかの為に」
「いいさ、困っているなら助け合うものだろう?」
「………」
そして女の子は無言で立ち上がり、俺の傘に入り俺達は歩き出す。もちろん会話はなく、ただ傘に雨音がぶつかる音が響いていた。
「………君、名前はなんて言うの?」
突然隣の女の子は話しかけて来て俺の名前を聞く。
「俺?俺は孫悟聖。君は?」
「私はアイ、“星野アイ”だよ」