未来のお兄さんが来てから3年、俺たちはそれぞれ未来を掴み取るため3年間みっちり修行をしこの日を迎える。
「いよいよか……」
運命の5月12日を迎え、俺は道着に袖を通し緊張感を募らせながら気合いを入れる。あの時から背も伸び、服も新調し、俺が着ているのはもちろん父さんと同じ山吹色の道着だ。ただ違いがあるとするなら袖が肘元まであり文字もなく、リストバンドはピッコロさんが身につけているのと同じ赤で、帯は結ぶタイプのものだ。
「(アイはなんとか納得はしてくれたけど…)」
彼女と関わって約2年…俺はアイにはまだ自身の事は話さずこの日を迎える。
『アイ、俺…明日からしばらくここには来れない』
『え…どうして?』
『その、家の用事…だからいつ頃ここに来れるかわからないんだ』
俺は家の用事と言うことにしアイには嘘をつく…人造人間の事やら未来の事なんて話したところで信用はしてくれない。普通の人ならホラ吹きとして笑われるだろう。
なんとかこれで納得してくれればいいが…
『なんで?今までそんな事なかったじゃん?』
『ごめん、その用事が終わったらちゃんとここに来るから……だから』
俺はアイに謝る。彼女はとても寂しそうな顔をしていた。
『……わかった。その用事が終わった後はちゃんと会いにきてね?』
アイは笑顔でそう言ってくれた。俺はその笑顔に罪悪感を覚えながらも頷き、彼女と約束をする。
『ああ、約束する』
『うん、約束だよ(どうして、そんな辛そうな顔をするの?私には言えないことなの?)』
ただこの時自身の嘘がアイには見破られているのに気づく事はなかった。
「(アイには悪い事したけど、こればかりは仕方ないよな)」
俺は今も心の中で彼女に謝りつつ道着を着終えると玄関に向かう。するとそこには既に準備を済ませた父さんと悟飯、ピッコロさんが待っており母さんが見送りの為外に出ていた。
この戦いで…俺達の未来が決まる。
「悟飯ちゃん、悟聖ちゃん。悟空さとピッコロさも気を付けるだぞ……本当に弁当持ってかねえだか?」
この3年で変化もあった。父さんは農業で働きながら修行をし収入も得られるようになったり、母さんはピッコロさんの事を【ピッコロさ】と呼ぶようになった。昔は呼び捨てだったのだが過ごしていくうちに今のピッコロさんに対する評価が変わったのだろう。
「あ……い、いいよお母さん」
「わざわざ準備してくれてありがとう母さん、それは帰ってきた時にゆっくり食べるよ」
「すまねえチチ。そんじゃ行ってくる!(…ん⁉︎)」
俺と悟飯、ピッコロさんは同時に飛ぶが、なぜか父さんはその場に留まったままだ。
「父さん、どうしたの?」
「あ、いや…なんでもねえ!(……気のせいか?)」
父さんもその場から飛びたつ。なんだろ…なんか違和感があるな。
「気をつけるだぞ!危ねぇと思ったら直ぐに逃げるんだぞ!」
俺と悟飯は母さんに手を振りながら飛び、俺たちの姿が見えなくなるまで見送ってくれた。
「おい悟飯!そんなに飛ばすな。体力を無駄に消耗するだけだぞ」
「あ!ごめん」
俺の注意に悟飯はスピードを落とした。やはり悟飯も緊張しているのだろう。無意識のうちに力を込めてしまったようだ。
「孫悟空、どうだ…正直言って今度の敵、勝てると思うか…」
ピッコロさんが父さんに尋ねる。確かに今回の相手は未来で悟飯とお兄さんをのぞいて人造人間に殺されている。ピッコロさんでもやはり今回ばかりは結果はわからないのだろう。
「見てもいねえのにわかりっこねえさ。やってみてから答える」
「呑気で良いな貴様は…オレだって自信がないわけじゃない…だが、どうも嫌な予感が頭から離れん…」
「ピッコロ、頼むからおめえはやばくなっても無理すんなよ。おめえが死んだらドラゴンボールもなくなっちまうんだから」
そう、ピッコロさんが死んでしまったらドラゴンボールも消えてしまう。現状ナメック星人達の居場所がわからない為いざと言う時はピッコロさんを逃さなくてはならない。
「父さん、そう言えば体は大丈夫なの?確か未来から来たお兄さんから本来父さんは心臓病で死んでるって言われてたんでしょ?この3年でその症状が出てる様子はなかったけど…」
「そう言えやそうだな…まぁ、病気にならなかったらならなかったでそれでいいさ!」
「呑気だね…なにかおかしいと思ったら直ぐに言ってよ(……もしかして、あの未来のお兄さんが来た事で発症の時期がズレてるのか?或いは心臓病自体ならなかった?未来人が過去を改変した事でタイムパラドクス的な何かが起きているのか?)」
父さんはこの3年の間、心臓病を発症する事が全くなかった。未来のお兄さんから言われた話では、父さんはもうこの世にはいない筈らしい。やはりこの時点で何かが変わり始めているのだろう。油断しないように行こう。
「お父さん、悟聖!あれ、クリリンさんだよ!おーい!クリリンさーん!」
「ホントだ。クリリンさんだ!オーイ!」
少し前を飛んでいたクリリンさんに声をかけると声に気付き振り返った。
「ようクリリン!」
「お久しぶりですクリリンさん!」
「お…おうお前ら、久しぶりだな。それに大きくなったな2人共…」
「何だよクリリン、久しぶりだってのに随分元気ねえじゃねえか」
「これから化け物と一戦やらかそうって時に浮かれてられっかよ…お…オレはスーパーサイヤ人じゃないんだぜ…」
「…あ、みんな、あの島じゃないですか?」
「南の都の南西9㎞地点…あれだ!あの島だ!」
南の都、南西9㎞地点。俺達の運命が決まる場所。その場所に到着してみれば結構大きな島で、大きな町まであり住民も多く住んでいる。
「結構でけえ島だな」
「ああ、まずいぞ…わりと大きな町まであるじゃないか…」
「人造人間を他の場所に誘い出さないと島の人達が闘いの犠牲になってしまうかもしれませんよ…」
「そうだな…」
「流石に一般人がいる中で暴れられたらひとたまりも無い。最悪の場合、覚悟はしないと。他のみんなは…」
俺は周囲を見渡す。すると少し離れた場所に数人の大きな気を感じ取れた。
「あの山の辺りに大きな気を2つ感じる。この気はヤムチャさんと天津飯さんに…この小さな気は…ブルマさんか?」
俺達は仲間と合流するために大きな気のある場所へと移動する。
「おーう!」
ヤムチャさんが手を広げて呼び、そこには天津飯さんとブルマさんの姿もあった。
「ブ、ブルマ…!?」
「久しぶりだなお前たち!待ってたぞ!ちょっと遅刻だ」
「やっほー!あらー大きくなったわね2人とも…ピッコロと似た服を着てるのが悟飯君で、孫くんと同じ色の服を着てるのが悟聖君よね?」
「はい!お久しぶりですブルマさん!」
ブルマさんは俺たち双子を間違えずに呼ぶ、まあ着てる服と髪型、性格も違うから直ぐにわかるだろう。そして俺はブルマさんが抱えている赤ん坊に目がいく…もしかしてもなくブルマさんの子だよな?気も似てるし、それになんだろう…まだ小さいけど何処か感じた事のある気だ…
「バッカだなー!おめえまで何だってここに来んだよ?」
「見学に決まってんじゃない!大丈夫よ、人造人間を一目見たら帰るから」
「ブルマさん…なんかナメック星以降かなり度胸が強くなりましたね。お願いですから危ない事はしないでくださいよ?」
「お…オレはそんなことよりブ…ブルマさんの抱えてる物体の方が驚いたけど…」
「結婚したんですね!ヤムチャさんと」
「残念だが、その赤ん坊はオレの子じゃねえ…とっくに別れたんだオレ達は…誰の子か聞いたら驚くぞおめえら」
「おめえの父ちゃんはベジータなんだよなトランクス〜」
「な、何でそんなこと知ってんのよー!あたし驚かそうと思って誰にも連絡してないのに…しかも名前までズバリ当ててるし!」
「あ…あはは!な、なんとなくそんな気がしたんだ!べ、ベジータにちょっと似てるだろ⁉︎顔とか、目つきとかさ!」
「嘘お⁉︎」
「げえ⁉︎べ、ベジータの子ぉ⁉︎」
「ベジータさんの…あれ?」
父さんは何か誤魔化すように笑う。そしてトランクスと呼ばれた赤ん坊の父親がベジータさんとわかり、ある事を思い出す。あのお兄さんは未来から来た…そしてスーパーサイヤ人にも変身出来る。未来で戦えるのは悟飯とあのお兄さんだけ…
「(っ!!そうか、そう言う事だったのか!!だからあのお兄さんもスーパーサイヤ人に変身できる上、俺の事も知っていたのか!)」
俺は確信をもった。ブルマさんが抱えている赤ん坊…トランクスは…
「そんなくだらん話をしている時だと思うか?……で、ベジータはどうしたんだ。姿が見えんが…」
「あたし知らないわよ、今一緒に住んでるわけじゃないしさ。でもそのうち来ると思うわよ、この日に備えて凄い訓練やってたみたいだし…」
「来るさ…絶対あいつは来る…」
「うん。そう言えば天津飯さん、餃子さんは?姿が見当たらないですけど…」
ベジータさんはプライドの高い人だ。未来の出来事を聞いてこの戦いに参加しないわけがない。そして天津飯さんと一緒にいるはずの餃子さんの姿がなく俺は天津飯さんに聞く。
「餃子はオレが置いてきた。修行はしたがハッキリ言ってこの闘いにはついていけない…」
「そうですか…」
「ああ、その方がいい」
餃子さんの実力はどの程度かは俺もはっきりとわからないが天津飯さんが判断した事だから仕方がないのだろう。正直挨拶くらいはしたかったかな。
「あの…今、何時ですか?」
「え…と…9時半…後30分で現れるはずよ」
悟飯が時間を尋ねると人造人間との闘いまで残り30分。今の所大きな気や邪悪な気を感じる事はない。
「今のうちだ、帰った方がいい。赤ん坊まで連れて来たんじゃ特にだ!」
「だから人造人間てのを一目見たら帰るって!」
「(これは聞く耳を持たなそうだな…あのお兄さんもよくあんな真面目な性格に育ったな…)」
不思議とブルマさんなら危ない状況でも生き残れそうな気がする…ピッコロさんと天津飯さんを除きトランクスと戯れることにした。
「しかし、よく見るとホント目つきはベジータさんにそっくりだな〜、きっと将来はお母さんに似てかっこいい男になるんだろうな…」
「あら、悟聖君いい事言うじゃない!」
「将来はヤムチャさんみたいな男になるんじゃないぞ〜」
「ぐっ…刺さる事言うなよ悟聖。ショックだな~俺…」
戯れてる際ブルマさんとヤムチャさんが別れた経緯を聞き、どうやらヤムチャさんは浮気性だったらしくブルマさんが頭にきて別れたらしい。
「何者かがこっちに来る。邪悪な者ではない…」
「ホントだ…」
「え?ベジータさんかな…」
「あいつは邪悪だろ…」
小型の飛行機がこちらに一機近づいてきて、その中にいる人物を見て父さんが笑む。
「あ!!ヤジロベー!」
「間に合って良かった」
どうやら来たのはヤジロベーさんのようだ。会うのはサイヤ人が襲来した時以来だな。
「よう、ヤジロベー!おめえも戦いに!?」
「ん、これ、カリン様から仙豆だ」
「おっ!助かりー!さっすがカリン様だな!」
ヤジロベーさんは仙豆の入った袋を父さんに渡すと、すぐさま飛行機に乗る。
「じゃあな、頑張れよ」
「え!?おい、ヤジロベーも闘うんだろ!?」
「オレはおめえ達のような馬鹿と違って死にたくねえんだよ。いちいち付き合ってられっか」
「あ…ヤジロベーさん。仙豆ありがとうございます!帰りは気をつけて」
「ふん。まっ…応援くらいはしてやんよ。じゃあな」
そのまま去っていくヤジロベーさん。まぁ…仕方ないだろう。あくまでこの戦いは自信のある者だけが来る場所でヤジロベーさんはわざわざ仙豆を届けに来てくれたんだ。すごい助かるしありがたい事だ。けど、ヤジロベーさんの言ってる事は普通だし、俺たちがイカれているのだろう。
「妙だと思わんか…10時はとっくに過ぎているのに。敵の気配が全く感じられん…」
「え?」
「そ…そう言えば…」
「ええ、気もそうですけど…邪悪な気配も全く感じない。確かに妙ですよ」
確かに時間の10時ごろになっても気すらも感じないのは不気味で仕方がない。未来の悟飯とあのお兄さんが勝つ事が出来ないくらいの相手だ。それほど強大な相手の筈なのに気すら感じないのはおかしい…
「やっぱりあいつの出鱈目じゃなかったのか?人造人間なんて…」
「…でも10時頃って言ったのよ。今、10時17分だから分かんないわよ」
「だが、さっき天津飯と悟聖が言ったように強い気などまるで感じられないんだ。そんなに凄え奴らならこの地球のどこにいたって分かるさ」
ドゥウンッ!!
その直後…爆発音が響き、空を見上げるとヤジロベーさんの乗っていた飛行機が爆発した。
「なっ⁉︎」
「なっ、なんだっ⁉︎」
「あ!!!や、ヤジロベーが…!!」
「見ろ!何かいるぞ!あれが攻撃したんだ!」
「…!あれか!!」
ピッコロさんの見ている視線の場所を見ると少し上空に2人の人物が見える。煙が邪魔をしていたため姿がハッキリ見えず、2人はそのまま下の町に降りた。
「見えたか!?」
「い、いや、どんな奴か分からなかった……!ど…どういう事だ……。ま…まるで気を感じなかったぞ…」
「うん、たぶん2人いたと思うけど…2人とも気を全く感じなかった。浮いていたのを見ると舞空術の類を使っていたのは確かなはず…」
すぐに見失ってしまい2人からは気を感じ取れなかった。ヤジロベーさんの飛行機が爆発する前に気を捉えられ対処はできたはずだ。
「じ、人造人間だからだ……き…気なんてないんだ…」
「な…何だと…!」
「そ、そうか!人造人間だから造られた存在…無から造り出された存在だとするなら…気を持っていないのも納得だ!」
「チィ!気を感じないのであれば直接目で探すしかあるまい…!」
「そうなりますよね…気がない相手がこれほど厄介な事になるなんて」
正直今回の相手には瞬間移動の戦法はほぼ使えないだろう。気が全くない相手には瞬間移動の使用はほぼ不可能だ。ピッコロさんの言う通り直接肉眼で確認するしかない。
「よし。みんな散って探そう!ただし深追いはするな。発見したらすぐみんなに知らせるんだ!悟飯はヤジロベーを見てやってくれ。まだ生きてるはずだ!」
「はいっ!」
「行くぞ!」
ピッコロさんの言葉を合図にそれぞれが散る。俺も町中に入り人造人間を探す。
「(いよいよ始まるのか、絶対に…未来を変えてみせる!!)」
今この時を持って、未来をかけた人造人間との闘いが幕を開けた。