復讐機と呼ばれた化物   作:ばリオンズ

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復讐機、水没。

 

「千枚瓦正拳!!!」

 

ソウジの腹部を背後から穿ったのは、じっと息を潜め、仲間の凄惨な死に震える拳を握りしめていたクロオビである。

 

チュウの死に様を遠くから見ていた彼は、自身でなければ奴にまともな傷を負わせることはできないと悟っていた。アーロンさんやジンベエ、タイのお頭と一緒に海を渡っていたときの、あの頃の実力の俺とアーロンさんでも厳しいだろう。

 

だからこそ、不意打ちで仕留めきらなくてはいけない。

自分にできる最大出力、それだけでも足りないだろう。

だが幸いにして、やつには大きな弱点がある。

 

よろつく奴に正拳で追撃を打ち込み、プールに突き落とす。

能力者は海に嫌われている以上、まともに泳げず、力も出ない。

あのわけのワカラン機械も水に落ちればショートするだろう。

 

だが、念には念をだ。

プールに飛び込む。もがき苦しむ姿を見て安堵するが、確実に仕留める必要がある。

 

「圧迫死直下航路!」

 

海に沈みかけていたのを捕まえ、超高速でプールの底まで加速し、そのまま叩きつける。ソウジの肉体は抗うこともできずに白目をむき、口からは血の混じった泡を吐き出した。水圧の急激な変化についていけず、体内はぼろぼろになった可能性が極めて高い。

念入りに肩をつかんで海水プールの底に叩きつけ、千枚瓦正拳でしっかり埋め込む。

 

念入りにとどめも刺した。

チュウと部下の敵をこれで取れた、と心で噛みしめる一方で拭いきれない底知れない不安。

切り札のはずのモームすら頭部を蹴り砕かれて瞬殺されたのだ。

あの化物は自分が数度殴っただけでそう簡単に死ぬのか?しかし能力者は海に嫌われている以上脱出は不可能なはずだ。

 

やはりもう一度確認せねば。

と、プールに飛び込み、死体であろうそれを眺める。

ピクリとも動かない。

 

死体がカッ、と目を見開いた。

 

目があった。

黒目が戻り、正気の戻った瞳が、クロオビを見据える。

片手がドライバーにゆるゆると向かう。

 

正拳だけで満足すべきではなかった。

こんなことなら魚人空手も40段で満足すべきじゃなかった。

海中なら高速で泳げるはずの魚人。

なのに、あまりにも遅く感じる。

次の一撃で今度こそ仕留めきらなくては、自分たちに明日はない。

 

サメ!バイク!

 

ベストマッチ!

 

 

手がハンドルを掴み、くるりくるりと回し出す。

透明な型に赤と青のエネルギーが注ぎ込まれる。

プレスされ、軽い衝撃波とともにそれは笑う。

 

独走ハンター サメバイク!

 

一番最初の仮面の異形に近い。

青と赤の2色。と黒。

しかし赤側に明らかに分かる異常。

肩に車輪。拳にハンドル。

逆側にはサメのヒレのようなものが腕についた。

目に該当する部分はサメと…、クロオビは見たことのない何かだ。

 

ムクリと起き上がると肩の車輪がギュルギュルと回転を始め、無数のバイクが姿を現す。

水底を200km/hの高速で輪を描いて走り始めた。

余波で大渦が巻き起こる。数の暴力だ。

未知の光景に気を取られ、水流に飲まれて姿勢を崩すクロオビ。さらに車輪から光波を乱れ撃つ。

水中ということもあり、光波はある程度進んで霧散する。全く当たらない。

それが余計にクロオビを慌てさせた。

 

毒を撃ってきたのではないか?

あのよくわからないものの群れを呼び出してくるのだ、毒の1つや2つ放ってきてもおかしくない。

それも、直撃しなくても水に溶かせば効くタイプの毒を。

海軍大将黄猿のレーザーとは全く様式の異なる光の攻撃が、彼をひどく恐怖に至らしめた。

光の能力者の恐ろしさを知っているがゆえの誤解だが、無機質な瞳はそんな事知ったことか、と中央に立ってじっとこちらを見つめてくる。

盲滅法乱れ打ち。

当たらないからこそ、だんだんと息苦しくなる。

実際はただの気のせいだと言うのに。

 

もう限界だ。

無理矢理にでも大渦から抜け出し、プールの外に出なければ。

その一心で全力で泳ぎだす。

 

渦の中心を垂直に駆け上り、陸地に逃げ帰る。

魚人としてあるまじき失態である。

下等な人間に、海中というホームグラウンドから追い出されたのだから。

それでも、未知への恐怖から逃げ切れたことに安堵しかけた。

 

ざばり。

ざばざば。

 

無数の水音が背後から響き渡る。

見たくない。

見てしまえば自分は壊れてしまう。

あれは、能力者なんて生易しいものじゃない。

人ですらない。

あれは、かろうじて人の形をしているだけの暴力だ。

 

化物が、自分の胸ぐらをつかみ上げた。

円を描いて走るバイクの群れに投げつけられ、跳ね飛ばされて地面に転がる。

 

ドライバーのハンドルに手をかけた。

ぐるり、ぐるり。

一つ回すごとに脳裏に浮かぶ、処刑台の階段。

13度回して壇上へ。

首に縄が巻きつけられる幻覚に悲鳴を上げ、我武者羅に拳を振り回す。

エイなのに、タコ殴り。

 

しかし微動だにしない。

千枚瓦正拳ですら衝撃が通らない。

硬すぎるのではない。密度が高い上で、水分量が異様に少ないのだ。

 

動き回る金属の塊を殴ったような感触に手首を痛め、よろける。

一方のソウジはクロオビを軽く蹴りのけて、そのまま走り出し、バイクの群れへと突き当たる。

 

VOLTEXFINISH!!!

 

 

跳ね飛ばされた反動を元に蹴りを食らわせ、豪速で回り続けるバイクの側面を蹴り飛ばしてもう一度。

突き抜けたまま、またバイクの側面を蹴り飛ばしてもう一度。

それが数十度繰り返されたあと、無数に増えたサメのエネルギーが最期の蹴りとともにクロオビだったものをかじり、噛み砕き、そして爆発した。

 

ボトルを切り替える。

後残ったのはタコとノコギリザメ。

 

そのうちタコは何もしなくとも勝てる余裕がある。

なら、気をつけるのはノコギリザメだけだ。

 

死屍累々の肉塊だらけの道を踏んで歩く。

建物の扉を引きちぎり、振り抜かれたジグザグの刃を掴んで止める。

 

「ずいぶんな挨拶だな、魚類。」

「深夜に強盗しに来た分際でよく言う、人間。」

 

 

 

怒りと怒りがぶつかり合う。

正義と悪はこの時点において、なんの価値もない。

勝つことだけが、答えである。

 

 

 

 

 

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