復讐機と呼ばれた化物   作:ばリオンズ

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雷音、轟音、三寒四温

ソウジには、たった一つ強さにおける持論がある。

 

強さとは、否定である。

他人を叩き潰し、踏みにじり、屍の山に君臨する。

意見を叩き潰し、払い除け、我を通す。

それすなわち、否定である。

 

相手の強さを認めず、自身の強さが上である。

その確固たる否定の意志こそが強さである。

 

海で泳げない、力を出せない。

悪魔の基本ルールすら否定してみせた怪物は、誰に否定されるのだろうか。

 

真夜中。

バイクのライトに照らされて、両雄は相対する。

 

「普段なら聞きゃしねぇが…、特別に聞いてやろう。人間、いくらで俺に雇われる?」

 

『お前が殺した女を蘇らせる技術を得るために必要な金額分だな。』

 

「断るってことだな?」

 

『聞くだけ無駄なこと聞いて何したいんだ、お前。あとおまけに言っといてやる。万物の霊長名乗るなら空も飛べ。陸海空制覇してない程度のただ力が強いだけで、なーにが万物だ。』

 

言おうとしたことを読み取られ、それを全否定された。

アーロンはこの光景に見覚えがある。

 

タイのアニキや、ジンベエ、新世界の強豪。

そして忌々しい黄猿。

戦いの際には、先読みしたかと思うレベルで自分の一挙手一投足全て理解されてしまう。目をつぶってでも周りが見えているかのように躱したり、ほぼ未来予知レベルのことをしてのける。

見聞色の覇気をこの化物は使っているに違いない。

 

「なんで前半の海に覇気使いがいやがる…!」

『覇気ではあるけれど、ある意味これは覇気じゃない。』

 

ビルドと呼ばれた装甲の一部が剥がれ落ち、生身の両手がむき出しになる。剥がれた装甲は地面に落ちて、ドロリと溶けた。

 

『覇気とは現象だ。意志の力であれ何であれ、特定のコマンド入力で出力をされる類のものは、分析さえできればただの現象として再現できる。』

 

 

『引き金を引けば銃弾が飛ぶように。

意志を込めれば、覇気が出る。私は覇気を、そういうものだとして認識した。』

肩からガトリングのような機構が飛び出す。

 

高度な先読みは、機械で既に可能になった。

将棋、囲碁、チェス。

娯楽の分野で可能になったそれを、戦争に持ち込むこと。

何ら難しいことではない。

 

『だから、そうなるように体を作り替えた。』

指先の皮膚が剥がれ落ち、機械で構築された手が姿を表す。

強く握りしめられたその拳は一瞬の赤熱後、真っ黒に変色する。

原理さえ理解すれば、体を硬化させることもいともたやすく行われる。

 

『この世で最も強いものは、フィジカルでも、覇気でも、ましてや悪魔の実でもない。』

全身からパイプが生えて、あちらこちらに接続される。

 

『最新鋭のテクノロジーこそが、この世のすべてを支配する。テクノロジーの前に、人も、魚人も天竜人すら関係はない。生物のより良き明日のための進歩こそが、テクノロジーなのだから。』

 

無数のバイクのライトに照らされたクレーターだらけの床が、彼らのリングである。

 

ぞろぞろと、何人もの足跡が聞こえる。

大人も子供も、全員引き連れてココヤシ村のみんながやってきた。先程から暴れまくったことによる破壊音と、チュウを焼き払ったレーザーの光。強制的に起こされた中で、砂煙を上げ続けるパークを目にした村人たち。

 

家族を殺されたものもいる。だから、あいつ等が誰かに襲われているのなら、ひと目見て笑ってやりたいと思ったものが発端となって村人全員が集まってしまった。

そこには、ナミとノジコとゲンゾウもいた。

とっさに振り向くソウジ。

 

「大層な口上結構なこった。ぞろぞろ雑魚ども引き連れていい気分になってるようだが、先にそっちから殺してやる。」

 

このアーロンは、まだ腑抜けきる前のアーロン。

新世界を旅した頃のアーロンだ。

当然生半可な実力ではない。

プールに片手を浸し、水の塊を持ち上げる。

 

「矢武鮫!!!」

 

振るわれた手から砕け散った水の一滴一滴が、ショットガン並みの威力を持って村人を襲う。当たれば即死は免れない。

しかし、突如森から現れた緑色の列車が水をすべて受けきり、消え去る。

 

『油断もすきもありゃしないな、お前。』

「お互い様だろうよ。いったいどんなトリック使いやがった?」

 

『冥土の土産に覚えていけよ。地獄で見せたら大ウケ間違いなしってところだな。』

 

海賊!列車!

 

ベストマーッチ!

 

定刻の反逆者

海賊!レッシャー!!

 

 HAZARD ON!

UNCONTROLL SWITCH

BLACK HAZARD

 

青と緑の怪人が姿を現したかと思えば、プレス機にさらに潰されて漆黒に染まった悪意が蠢き始める。黒にのまれた左手が指を鳴らし、電子音声を響かせる。

 

機構変動:海列車駅(ギミックチェンジ・マリンステーション)

 

地面一体がタイルとレールで覆われ、ところどころに分電盤や露出したケーブルが覗く。レールの部分の地面はくぼんでおり、並々と海水が溜まっている。

 

「ずいぶんと変わったことしやがる。こっちにとっちゃ弾が手に入れやすくて好都合だがな!」

シャハハと笑うが、すぐに笑いが止む。

矢武鮫を放つ際にキリバチを落としたのだが、先程の地形変化に紛れて行方が分からなくなっていた。ちょうど今、目の前の相手が持って振り回していた。

 

『これ使いにくいから返してやる』

「ふざけたマネしかできねぇのか、お前はよぉ…。」

豪速で投げ渡されたキリバチを手に取り、苛立ち紛れに振り回す。辺りの柱を切り飛ばし、ビルドの装甲を何度も何度も斬り刻む。とはいえ表面をなでているだけの傷すらつかない有り様だが、辺り一帯を切り刻むことにより生じた摩擦が、だんだんとキリバチを赤熱化し始める。

 

鮫熱(シャーク熱)!!!」

 

赤熱化した渾身の一撃を、機械仕掛けの大剣がはばむ。

【アーイスマッチでーす!】

 

シリンダーに差し込んだフルボトルは、ノースブリザード。

海すら凍りつかせる絶氷のフルボトルの力は凄まじく、赤熱状態から急激に冷やされたキリバチは無惨にも粉々に破裂した。ついでにフルボトルバスターも凍りついて砕けた。

 

 

『ふざけてはないぞ、どうせ壊すから返してやっただけだ。』

一方、背中から伸びた無数のケーブルやパイプが、配電盤やむき出しの基盤を貫き、高電圧大電流をビルドに直接流し込む。

雷にも匹敵するその出力を受け、全身が沸騰するほどのエネルギーの暴走が、ハザードフォームによって未知の領域まで倍増される。人の肉が焼き焦げる匂いが辺りに漂い、吐き気を催す村人がチラホラと見つかることだろう。

 

あまりに過剰な電気エネルギーはビルドから溢れ、海水へと流れ込む。踏み入れば即座に感電しかねないフィールドを作り出し、相手の遠距離攻撃を封じる。

 

海水を弾丸にする必要がある以上、海水に触れられなければ弾の作りようがない。

腑ぬけたアーロンならそう思っていただろう。

キリバチすら壊れ、徒手空拳しかできない状況。

 

鮫楠花(シャークナゲ)乱れ咲き!!!」

 

何度でも生え変わる鮫の牙。

ノコギリザメの魚人ともあればまるっと歯をそのまま取り出せる。

自らの一部であった歯を砕き、武装色の覇気を込め投げつける。

一つ、また一つ。自分の類まれなる能力を最大限活かしたその戦い方はこのときに限っては最適であった。

弾丸は無数に調達でき、一つ一つが生半可な刃物を凌駕する鋭さ。これほど便利な弾丸もそうない。

 

ケーブルで自らの動きを阻害してしまっているビルドは避けようにも体が動かない。堅牢な装甲も覇気を纏った歯が貫き体のアチラコチラに突き立った。痛覚遮断された体にはさほど意味がないようにも思える。

 

しかしながら、ところどころショートし、溜め込んだエネルギーすら傷口から溢れ出る。無駄になったエネルギーは海水に散らばり続ける。

けれども、ケーブルは切られていない。

つまりまだ、大電流はビルドの全身を駆け巡り続けている。

 

全身の傷口が蠢き、胸部の中央に移動する。

大きな穴がポッカリと浮かび、そこに先ほど凍りついて砕けたフルボトルバスターを押し込む。

傷口の縁は整えられ、縁から飛び出たカメラのシャッターのようなものが傷口を覆い隠す。

再びシャッターが開いたそこから伸びて現れたのは、カメラのレンズではない。

 

機構変形・箱中戦機(システムチェンジ・ダンボール戦機)

 

砲だ。

それ程長い砲ではない。

肩からは鋭利に鋭く尖った青白い電撃を放つ棘も生えた。

 

 

『独りよがりで遊ぶなら、一人でやってろ。いい加減こっちに手番を回せ。』

 

『必殺ファンクション!』

【アタックファンクション!】

 

【我王砲】【GODネメシス】

 

記憶の中から、思い出の中から、おもちゃ箱をひっくり返して。

 

くぐもった電子音声が、破滅を打ち鳴らす技の名を告げる。

 

無作為に漏れ出していた電気エネルギーは指向性を経て、雷雲となり空へと昇る。渦を巻き、徐々に圧縮されていく雷雲の中心から現れた紫電を内包する球体が、アーロンの真上から落ちる。

 

着弾を確認する暇はない。

胸部から突き出した砲の内部に大気が、エネルギーが吸い込まれてゆく。

地面にしっかりと足を据え、背面のケーブルをより強固に固定する。

 

目標と思しき影をロックオンし、解き放つ。

自身の身体を支えるのでやっとの状況の中、体の向きを一切逸らさず、標的の消滅を見届ける。

最後のエネルギーの一雫すら解き放ちきった体は、砲の反動でゆっくりと後ろに倒れ込んだ。

 

 

朝焼けとともに、アーロンパークだったものは、忽然と消え失せた。

主とともに、永遠に。

 

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