復讐機と呼ばれた化物   作:ばリオンズ

7 / 8
でっどえんどぱれぇど

村人たちが見守る中、数分が経過した。

トゲや鎧が溶け落ち、顔だけビルドの状態で、ボロボロの床からゆっくり起き上がる。ずろっ、と音がして仮面すらも剥がれ落ちる。皮膚が所々残った筋肉むき出しの顔が、じっと正面を見つめる。

 

目線の先には、最後の一人。

タコ。

はっちゃんと名乗るそれは、全速力で海へと走ってゆく。

勝てる理由がないことを、目の当たりにしてしまった。あだ討ちのために叫んで強くなれるのはおとぎ話だけだ。

 

だから、逃げた。

友も兄貴分も殺されて、情けない面晒して走って逃げる。

死にたくなかったから、ただ逃げた。

 

はっちゃんの脳に、一生消えない地獄が焼印のごとく押し当てられた。激痛に苛まれるように頭を押さえ、口から漏れ出す叫び声。

視線が背を貫き、転び、もがき、海へ飛び込む。

 

兄貴分を、同胞を、部下を。

表情なく、感情なく殺し続けた殺戮兵器が追いかけてくる。被害妄想にすぎないが、本人の中では真実だ。

 

ざくざくと、ざぶざぶと、

自分を追い詰める破滅の足音が追いかける。

 

泳げるはずの魚人が、パニックのあまり溺れ、沈んでゆく。恐怖と狂気でエラは正常に機能せず、もがき、暴れ、そうして、しばらくたったあと水面にぷかり。

 

こうして、アーロン海賊団は、最後の一人もいなくなった。

 

 

一方の機械の悪魔。

逃げるタコに目をやっているように見えて、ただ、空を見ていた。

エネルギーの出入りが激しい体は自分の現在の状況をまともに判断できる状態ではない。

脳はエネルギーが枯渇し、体はところどころボロボロ。

だから、何かを考える余裕などない。

何もできずに空を見上げているだけだ。

 

 

こつん。

石が頭にぶつかった。

 

小さなオレンジの髪の子が、投げてきた。

何人かの村人が止めようとするが、

他の村人も石を投げ始めた。

雨霰と降る石で傷つくことは無いが、だいぶ癇に障る。

 

何かを言っているようだが聞き取れない。

顔さえめちゃくちゃな体では正常な判断に苦しむ。

聞こえる音すらひどくノイズが走って、頭か割れそうだ。

 

割れ…割れ…われ…、…???

 

ぼっかーん!!!

 

コミカルな爆発音とともに頭部が真っ二つに裂け、吹き飛ぶ。

唐突なとんでもない現象に子供を守るために覆いかぶさる村人。

 

転がった2つに割れた頭。

断面からのぞく、肉と機械。

滴るオイルと血。

降り注ぐ血の雨。

 

爆発の衝撃で吹っ飛んでいた首から下が、手探りで頭を探す。両方を見つけ、断面で合わせる。

そのまま首に乗せれば目と口が開く。

 

だいぶ思考回路がスッキリした。

世界線混ぜ始めるとバグるからなぁ。

なんてぼやきながら返り血まみれのボロボロの服を脱ぐ。

 

あらわになった皮のない筋肉と、配管と、金属。焦げた人肉とオイルの混ざった匂いが一層ひどくなる。

石を投げる手を止め、そこかしこで吐き戻す音が聞こえる。

その服を丁寧に畳んで、村の方へと歩いていく。

村人たちが悲鳴をあげたり騒いだりとうるさい中、駐在所にズカズカと踏み入る悪魔。

 

「やることはやってきた」

「自分の村も自分で守れなかった俺たちにも非があるとは思うが、いささか過激が過ぎないか?」

 

鞄を漁りながら、適当に返す。

「子供に見せれるレベルじゃないのは承知してるんだけど、過激にしないと次が来るからなぁ。」

「次だと…また海賊か?」

「うんにゃ、汚職海軍。見たらわかる悪人ヅラ。小悪党だけどろくなことしねぇんだもん。」

 

「私の縄張りってわけじゃないが、億超えの怪物がさまよう海域で不正をしに来る度胸は多分ない。最弱の海だからって好きにやりたい放題するってのもどうかと思うんだがね。」

 

カバンから出したアンプルを折り取り、中身を傷口に注射していく。

傷口はまず初めに基盤が覆い尽くした。その上からケーブル、銅管、歯車などがびっしりと浮き上がった。数分も経てば人工の皮膚が表面を隠し、傍目からは人そのもの。

 

「おい、触ろうとするなよ。」

後ろから来た誰かに、首をぐるりと180°回して話しかける。

ナミとノジコである。

申し訳無さそうな、怯えたような顔で服の裾を掴もうとしていたのだろう。

 

「これは薬じゃなくてウイルスだからな。能力の都合上薬の代わりにしてるだけで、お前たちが触ったら昼には機械人形が2つ転がることになるぞ。」

 

慄いて触れようとしていた手を遠ざけてブンブンと振り回す。まるでそうしたらばっちいのがなくなるみたいに。

 

「謝罪もなにもいらない。」

「忘れてしまっていい。」

「怪物が弱い怪物を殺しただけだ。そういうことにして、私を忘れていきなさい。」

 

椅子に座って薬を打ちつつ、首だけ後ろを向いて喋る姿はシンプルに気色悪い。

 

「殺戮と暴力で解決できてしまったことなんて、死ぬほどくだらないんだから。」

「非暴力非服従なんてことまでは言わないけど、殺し尽くすほど大変なこともないからね。」

 

傷一つない人工の肌が全身を覆い、機械仕掛けの瞳が2人を見据える。

首の向きを整え、椅子から立ち上がる。

 

誰の止める声も聞かずに、悪魔は島から飛び立った。

自分の地獄はまだ終わらない。まだ止まらない。さぁ進もう、進もう、進んで進んで進み続けろ。

 

墓に添えられたネリネの花がそよぎ、血まみれのライオンは風にまかれて遥か高い空でほろりと涙を流しました。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。