ポケットモンスター ~少年が進む道はキズナによって切り開かれる~   作:Kod

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今回は少し展開早めです

結構話を飛ばしているので、読みにくければ申し訳ありません



リコとロイのジム特訓、そしてキョダイマックスバトル

 

ガラル地方

 

エンジンシティ

 

 

リコの祖母、ダイアナがいるガラル地方にやって来たライジングボルテッカーズはエンジンシティ周辺に到着した

 

ダイアナがいると思われるナックルシティの古城にブレイブアサギ号で向かうのはエクスプローラーズに見つかってしまう可能性がある。フリードの提案でここから先は電車に乗って行くこととなったのだが

 

「車両整備で運休している………」

 

またしても予想外の事態により、ソウハ達は足止めを喰らってしまった

 

「(まさかこれも奴らの仕業じゃないよな……)」

 

テンブが思わず呟く。パルデア地方のこともあるため用心深くなってしまったが、ブレイブアサギ号は前もって念入りに調査し、発信機などがないことは確認済みである。流石に今回はただのハプニングで間違いないだろう

 

こうして、運休が終わるまでは自由に過ごすこととなった

 

ソウハ、リコ、ロイ、マードックの4人は買い出しに行くこととなった。ソウハは一度エンジンシティに来たことがあるため他の3人に道案内しながら買い出しを行った。その際に、ドットから『バトルカフェ』というカフェで売っている綿飴を買ってきて欲しいということだった

 

そのためバトルカフェにやって来たところ、ミッチェルというパティシエの男性がいた

 

何とそのミッチェルは、マードックとかつて同じスイーツ店で働くパティシエ仲間だったという。マードックに気付いたミッチェルは自分から声を掛けるも、どこか刺々しい態度を取り、ドットから頼まれていた綿飴もやらないと言い放つ

 

ソウハ達はマードックに話を聞くと、どうやら昔はこんな関係ではなく、互いに腕を競い合う良きライバル関係だったらしい。だが、その関係が拗れた原因はマードックといつも一緒にいるマホイップにあるということだった

 

今はマホイップであるが、進化前のマホミルは当時2人が働いていたスイーツ店の看板ポケモンであり、マホミルの生クリームを使ってケーキを作っていた。その時までは2人の仲は良かったのだが………ある日、マホミルはマホイップに進化した

 

マホミルはイーブイやウーラオスのように進化先が2つ以上あるポケモンであり、今回はルビーミックスへのマホイップへと進化したのだ。ルビーミックスのマホイップが出すクリームはマードックのルビーケーキと相性が良かったらしくどんどん売れた。しかし、ミッチェルのケーキは売れ残るようになってしまっていた。だが、ミッチェルはそんなことは気にせず、益々スイーツ作りに励んだ

 

そんなある夜のこと、いつものように仕事が終わり2人はお菓子を食べていた時にマホイップがそのお菓子に生クリームを乗せ、ミッチェルに渡そうとした………だが、ミッチェルはそれを断り食べようとはしなかった。それでもマホイップは渡そうとしたのだが、いらないと手を出しそのお菓子を地面に落としてしまった

 

ミッチェルにとってはわざとではなかったのだろう。だが、マードックはわざとじゃなかったとしてもスイーツを粗末にしたミッチェルにパティシエの資格は無いと激怒………マホイップを連れて店を出たという

 

話を聞いた後、ミッチェルがこちらの様子を見ていたことに気付いたリコは、マードックを誘いダブルバトルを申し込んだ。ミッチェルは受け入れ、手加減なしの本気のバトルを行うことになった

 

 

リコはニャオハ、マードックはマホイップを……それに対してミッチェルはペロリームとタルップルを繰り出した

 

最初は普通のポケモンバトルだったが、途中からマードックとミッチェルが互いにボールと泡立て器を取り出した。マードックはマホイップに生クリームを、ミッチェルはペロリームに『わたほうし』、タルップルに『りんごさん』をボールに注いで貰い、それを泡立ててケーキ作りを始めてしまった

 

 

ポケモンバトルが何故かスイーツバトルになっていたのだ

 

ロイとホゲータ、リコとニャオハは何でこうなったんだという表情を浮かべたが、ソウハはマードック達がどこか楽しそうな表情を浮かべていることに気付く。その様子は、先程まで険悪な雰囲気を出していた2人とは思えないぐらい楽しげなものだった

 

お互いにケーキ作りを楽しみ、マードック達だけでなくマホイップやペロリームにタルップルもケーキ作りを楽しんでいた。そしてマードックはリコに頼み、ニャオハに『このは』を指示した。その『このは』はマードックが作っていたケーキを包み込み、『このは』がデコレーションされ、ニャオハの甘い香り付きのケーキが完成した

 

お互いのケーキ作りを終えたマードックとミッチェルは、体力が無くなってしまったのかその場に座り込んでしまった。2人が作ったケーキはバトルを観戦していた観客達に配られ、口にした全員が美味しいと絶賛してくれた

 

そんな中マードックはミッチェルに向き合い、過去のことを謝った。するとミッチェルは急に立ち上がって、厨房へと向かって行く。しばらくすると、ミッチェルはケーキの乗った皿を持ってきてマードックの前にやって来た

 

それはこのカフェの裏メニューの抹茶ケーキ………だがまだ未完成の物だと言う。ミッチェルはこのケーキにマホイップのクリームを乗せてくれと、マホイップに頼み込んだ。マホイッフは笑顔で了承し、生クリームを乗せ、ケーキが完成した

 

ミッチェルはあの時のことを語り出した。マホイップのクリームがケーキに合わなかったのは、自分の技術が未熟だったから……それなのに勝手に拗ねて、妬んでしまい、傷つけてしまったことを謝った。そして、仲直りして欲しいと頼み込んだ

 

マードックは勿論受け入れ、ミッチェルの持ってきたケーキを手に取ると、それを半分にしてマホイップと食べた。「スイーツを愛している者が作るもの物の味だ」と感想を言うと、2人は号泣し互いに抱き締め合った。その光景に、リコ、ロイ、ソウハの3人も自然と笑顔になった

 

一件落着したと思った時、「素晴らしいバトルを見せてくれてありがとう」と声をかける男性がいた。ソウハ達は声が聞こえた方に振り向くと、そこにはカフェテラスのテーブルに座り、コーヒーを飲んでいる1人の男性がいた

 

「あっ、カブさん!!」

 

「いらしてたんですか、カブさん」

 

 

「えっ?」

 

「もしかして、エンジンスタジアムのジムリーダー、カブさんですか?」

 

「いかにも」

 

そこにいたのは、エンジンスタジアムのジムリーダーであるカブであった

 

「お久しぶりです、カブさん」

 

「あぁ、久しぶりだねソウハ君。ところで、なんでサングラスなんてかけてるんだい?」

 

「……ハハハ、やっぱこれだけじゃバレバレですか」

 

ソウハは只でさえ『未来のチャンピオン』と呼ばれ、この前のドンナモンジャTVの配信で更に顔が知れたため、バレないようにサングラスをして変装をしていた。だが、カブにはバレてしまいサングラスを取ると周囲にいた客達が騒ぎ始めてしまった

 

「ソウハだ!!本物だ!」

 

「あの、ファンなんです!握手してください!!」

 

「えぇ、勿論」

 

「すみません、一緒に写真撮っても良いですか?」

 

「良いですよ」

 

 

「カブさん、休憩中ですか?」

 

「ランニングの途中なんだけど、ここのスイーツは素通り出来なくてね」

 

「今度、うちの店にも来てください!」

 

「ありがとう」

 

「後でスタジアムに行っても良いですか?」

 

「勿論だよ」

 

 

「ソウハとカブさん、凄い人気だね」

 

「ホンゲェ~」

 

「……………」

 

「リコ?どうしたの?」

 

「……何でもない」

 

「ニャオハ……」

 

ソウハがサングラスを外すと、バトルカフェのテラスに座っていた女性達は立ち上がり、ソウハの周りを囲んでいた。すると女性達はソウハに話しかけたり、サインをしてもらったり、一緒に写真を撮ってもらったりしていた。ソウハの周りに女の人ばかりが集まっているのを見ると、それをジト目で見ていた。自分の彼氏が他の女性と距離が近いのが嫌なのだろう

 

「そこの君」

 

「えっ?私ですか?」

 

「あぁ、さっきのバトル見せてもらったよ。中々良い『このは』だったね。それに、ニャオハ君とのキズナが伝わってきたよ」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「ロイ、黒いレックウザのことは聞かなくて良いのか?」

 

「あっ!そうだった、あの!」

 

 

「じゃあ、僕はランニングに戻るよ。それでは!」

 

「あぁちょっと!待って!」

 

「あっ、私も行く!」

 

「俺も行く、それじゃあ俺はこれで。皆さんまた……」

 

「ありがとうございました!」

 

「これからも頑張ってください!」

 

「じゃあマードック、俺達行ってくるよ!」

 

「おう、リコとロイをよろしくな」

 

ソウハは握手と撮影を終えると、マードックにそう言ってリコとロイとカブを追いかけて行った

 

 

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エンジンスタジアム

 

入り口前

 

 

「ハァハァ」

 

「ホ、ホンゲ……」

 

「ハァハァ……つ、疲れた……」

 

「ニャ、ニャ~……」

 

「久しぶりに来たな、エンジンスタジアム」

 

「ミージュミージュ(あぁそうだな)」

 

エンジンスタジアムの入り口前に到着したリコ、ロイは呼吸を整えていた。ソウハとテンブは、ガラル地方を旅していた頃のことを思い出しながら、エンジンスタジアムを見上げている

 

「カブさんは何処に行ったんだ?」

 

「ミジュ?」

 

 

「カブさんなら中にいるっす!」

 

「「「ん?」」」

 

エンジンスタジアムの中から、1人の女の子が歩いて近付いて来た

 

「ども、自分はジムトレーナー見習いの『ワカバ』って言います。カブさんに用っすかって………あぁ!!」

 

ワカバはソウハのことを見て驚いた

 

「貴方はまさか!!『未来のチャンピオン』と呼ばれているトレーナー!ソウハさんじゃないっすか!!?」

 

ソウハに走って近付き、ワカバは興奮しながら詰め寄った

 

「え、えぇ……一応俺はソウハですけど、そういう2つ名はちょっと恥ずかしいので名前で呼んで頂ければと思います」

 

「ミジュ!」

 

「あっ!そうすか、分かりました!!………それで、何かこちらに用っすか?」

 

「あっ、はい!」

 

「僕達、カブさんに聞きたいことがあるんです!」

 

「聞きたいこと?……分かりました!中を案内するっす!」

 

 

ワカバに案内され、3人はエンジンスタジアムの中に入って行く

 

「ねぇ、カブさんってどんな人?」

 

「カブさんは一言で言うと……熱くて強くて優しくて、頼れるジムリーダー!どんな時でも自分を高め続ける孤高のトレーナーっす!」

 

「「((一言で言えてない……))」」

 

「へぇ~!かっこいいなぁ!!」

 

「ホンゲ!」

 

「そうなんすよ!自分もそんなカブさんみたいになりたくて、ジムリーダーを目指してるっす!」

 

「うんうん!」

 

「けど、試験のバトルではまだ1度も合格出来てないっす……でも!何度でも挑戦するっす!人生死ぬまで修行っすから!」

 

「うんうん!頑張って!」

 

「あざっす!」

 

「ロイとワカバさんって、なんか似てるね」

 

「だな……(ほのおタイプみたいに熱いところが……)」

 

前方を歩いているロイとワカバの会話を聞き、リコとソウハはそう呟いてた。少し歩いて行くと、バトルフィールドに到着。フィールド中心には柔軟体操をやっているカブがいた

 

「カブさん、お客さんっす!」

 

「ん?やぁ、ソウハ君。それに君達も」

 

 

「ロイです!こっちはホゲータ!」

 

「ホゲッ!」

 

「リコです。こっちはニャオハ」

 

「ニャオハ!」

 

リコとロイは各々自己紹介を済ませた

 

「カブさん……俺達、カブさんに聞きたいことがあって来たんです」

 

「聞きたいこと?何かな?」

 

「ほら、ロイ」

 

「うん……僕達、黒いレックウザを探しているんです!」

 

「ッ!?」

 

「レ、レックウザ!?伝説の!?」

 

「はい、カブさんなら何か知っているんじゃないかと思い、聞きに来ました」

 

「……黒いレックウザ……たしかに、心当たりはあるが、なぜ?」

 

「これを見てください」

 

ロイはカブにレックウザが入っていた古のモンスターボールを見せる

 

「それは……モンスターボールかい?初めて見るな」

 

「黒いレックウザはこのボールに入ってたんです。でも、飛び出してどこかへ行っちゃって……だから今度あったら、レックウザをゲットしたいんです!」

 

「黒いレックウザは、俺達が旅をする目的の1つでもあるんです」

 

ロイとソウハはカブの質問にそう答える。するとカブは、リコに視線を向けた

 

「君も、同じかい?」

 

「わ、私は、その……レックウザが特別で、仲間と出会ったこととか、私がここにいることとか、全部繋がっている気がしてて……だから知りたいんです!」

 

「ニャ~ン!」

 

 

「成る程。君達の熱い想い、たしかに伝わったよ……ただ、ゲットするとなると……バトルは避けては通れない。ソウハ君は問題ないと思うが、君達2人は勝てる自信があるのかい?」

 

「絶対ゲットします!勝てるまで何度も挑戦して!なっ、ホゲータ!」

 

「ホーンゲ!」

 

ロイとホゲータは元気よくそう答え、ホゲータは気合いの現れなのか『ひのこ』を放出した

 

「良い答え、良い『ひのこ』だ。若いトレーナーの背中を押すのもジムリーダーの勤め、君達のバトルの力が向上するように協力しよう!」

 

「それってカブさんが……」

 

「バトルの相手をしてくれるってことですか?」

 

「フフッ……まぁ、着いて来なさい」

 

カブはそう言うと、スタジアムの更に奥へとソウハ達を連れて行った

 

 

カブが案内した場所は草原のようなトレーニングルームであった。そこでリコとロイは自身のパートナーポケモンであるニャオハとホゲータの特訓を行う

 

草むらからはろうそくポケモンであるヒトモシが10体出てきた。そのヒトモシ達は火の付いているヒトモシと付いていないヒトモシが10体ずつ、計20体出てきた

 

特訓内容としては、草むらに隠れ逃げるヒトモシの火をニャオハは『このは』で消し、ホゲータは『ひのこ』でそのヒトモシの火を付ける

 

全てのヒトモシに火を付けることが出来ればロイとホゲータの勝利、逆に全ての火を消すことが出来ればリコとニャオハの勝利ということだった

 

ソウハはカブやワカバと共に外で2人の特訓の様子を見ていた

 

「ニャオハ『このは』!!」

 

「ホゲータ『ひのこ』!!」

 

 

「………」

 

「ミ~ジュ……」

 

ソウハとテンブは、2人が工夫しながら『このは』や『ひのこ』を指示し、ヒトモシ達を狙っているところを見て、ちゃんとトレーナーとして成長しているなぁと感じた

 

 

それからしばらく経ち、最初はトレーナー歴の長いリコとニャオハがリードしていたが、ロイとホゲータがいつものお気に入りの歌を歌いながら『ひのこ』を発射してきた

 

その『ひのこ』はリズムに乗った影響もあり素早くそれでいて鋭く、ヒトモシ達に次々と炎を灯していく

 

遂にはリコとニャオハが消したヒトモシの炎を灯す程の勢いであった

 

ロイとホゲータは盛り返し始め、リコとニャオハのスコアを逆転。だが、リコはフィールドを見渡して炎がついたヒトモシが大量に固まっている場所を見つけ出した。そこに大量の『このは』を放てば一気に追い付ける………しかし……

 

 

「頑張れ!ホゲータ!ホッホッホホゲ~♪」

 

「ッ………」

 

 

「…………」

 

勝負に勝とうと一生懸命に奮闘するロイとホゲータの姿が目に入ってしまった。その姿を見たリコは、ニャオハへの指示を止めてしまった

 

「「…………」」

 

それを見たソウハとテンブ、そしてカブは険しい表情を浮かべる

 

結果として全てのヒトモシに炎が灯り、ロイとホゲータが勝利した

 

「やったぁーー!!ホゲータ、僕達生き残ったよ!!」

 

「ホンゲェ!!」

 

 

「負けちゃったか……ごめんね、ニャオハ」

 

「……ニャン」

 

「惜しかったすね!リコさん……でも凄かったす!」

 

「ワカバさん……ありがとう!応援してくれて元気でたよ」

 

ロイとホゲータは互いに抱き締め合い喜んでいる

 

一方で負けたリコはニャオハに謝罪し、近付いて来たワカバと楽し気に話を始めた。その姿からあまり負けたことに対しては悔しさを感じていない様子だった

 

「………ちょっと良くないですね」

 

「そうだね……」

 

「……ミージュ」

 

ソウハとテンブ、カブは今の勝負、リコには躊躇いが感じられた。慣れ親しんだロイが相手だからそうなってしまったのかは不明だが勝負事において、これは致命的な弱点になりえる

 

「ソウハ君、もう少しだけ様子を見ていてくれないか?」

 

この事を伝えるべきかどうか悩んでいるソウハにカブはそう語りかける

 

「まだ決まった訳じゃないしね。次のトレーニングでそれを確認してみよう」

 

「……分かりました」

 

そう話し合うと、ワカバに続きフィールドに入り中央にいる2人に近付いて行く

 

「リコ……惜しかったな」

 

「うん、ごめんね。負けちゃった……」

 

「……まぁ、気にするな。またその内、模擬戦をやるからそこで勝てばいいさ」

 

「………ミ~ジュ(………リコにその気があればだけどな)」

 

 

「さて、2人ともいいトレーニングになったようだね。じゃあ次は、その成果を僕とのバトルで試してみよう」

 

「「えっ?」」

 

「それじゃあワカバ君、タッグを組んでくれるかい?」

 

「えっ!?自分がカブさんと!?は、はい!喜んで!」

 

カブの提案により、リコとロイ、カブとワカバによるタッグバトルを行うことが決定される。ロイにとっては2回目、そしてリコにとっては初めてのジムリーダーとのバトルが始まろうとしていた

 

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バトルフィールド

 

 

「それでは、ソウハ君。審判を頼むよ」

 

「はい、分かりました」

 

バトルフィールドに移動したソウハ達、トレーナーゾーンにはリコとロイ、そして反対側にはカブとワカバがスタンバイしている

 

ソウハはカブに頼まれ、審判としてここに立っている。つまり、今までのようにリコやロイにアドバイスする事も出来ない立場である

 

カブは、リコとロイがソウハ抜きでどこまでやれるのかを試す気の様だ

 

「では、両者ポケモンをフィールドに」

 

「お願いニャオハ!」

 

「いくぞ、ホゲータ!」

 

 

「ニャオ!!」

 

「ホンゲ!!」

 

リコとロイはニャオハとホゲータをフィールドに出す。カブとワカバは自分のモンスターボールをフィールドに向かって投げる

 

「タンドン、頑張っす!」

 

「燃え盛れ、マルヤクデ!」

 

PON!

 

PON!

 

「タァン!」

 

「ヤクデェ!」

 

カブは相棒でありエースのマルヤクデ、ワカバは赤く光る目と石炭の様な体をしているせきたんポケモンのタンドンを出してきた

 

「出た!ほのお・むしタイプ、はつねつポケモンのマルヤクデ!性格は超攻撃的!体温800度の体をしならせて襲い掛かる、カブさん最強のポケモンっす!」

 

ワカバのポケモン図鑑の様な説明を聞きながらリコとロイはマルヤクデの観察を行い始める

 

「強そう……」

 

「(マルヤクデか……)」

 

ソウハはいきなりエースポケモンであるマルヤクデを出してきたことに驚く。実際に戦ったこともあるソウハは、マルヤクデの手強さを知っているためニャオハとホゲータに勝てるかどうか………不安を感じていた

 

「ミージュミージュ(特に同じほのおタイプのホゲータにとっちゃあ厄介だな……)」

 

「(……頑張れよ、2人とも)……それでは、バトル開始!!」

 

「よ~しホゲータ!マルヤクデに『ひのこ』!」

 

「ホ~ゲェ~!!」

 

ソウハの合図とともに、先手必勝とばかりにホゲータはマルヤクデに『ひのこ』を放つがマルヤクデはその場から動かず、正面から『ひのこ』を受け止める。しかし、マルヤクデには全くダメージが入っていなかった

 

「あれ?」

 

「ホンゲ?」

 

 

「マルヤクデの特性は『もらいび』、ほのお技は効かないよ」

 

「えぇ!?折角特訓したのに!!」

 

「『もらいび』……キャップやソウハのピカチュウの『ひらいしん』みたいな特性ってこと?」

 

「(そうだ……『もらいび』はほのお技を受けても効果がない上に、その後の自分のほのお技の威力が上昇してしまう)」

 

ロイは自分達の得意技が効かないことを知り、ショックを受ける。相性が悪いどころではない

 

「(やっぱロイの弱点は、ポケモンにおける知識の無さか)」

 

「ミジュマ(だな、勉強不足ってことだ)」

 

 

「だったら、ニャオハ『このは』鋭く!狙い撃って!」

 

ホゲータのほのお技が効かないと分かると今度はニャオハが鋭くした『このは』をマルヤクデに向かい発射する

 

だが、相性の悪いマルヤクデには大したダメージにはならなかった

 

「効いてない!?」

 

「ニャッ!?」

 

 

「マルヤクデ『かえんぐるま』」

 

「マァァ!」

 

マルヤクデは体を丸め、炎を身に纏いながら回転し始めるとホゲータ、ニャオハに向かって動き出した

 

ホゲータとニャオハは『かえんぐるま』を正面から喰らってしまい、体勢を崩してしまう

 

「ニャッ!?」

 

「ホゲ!?」

 

 

「『むしくい』」

 

「マーヤァ!!」

 

マルヤクデは丸めた身体を元に戻し、2体に向かって飛びつき『むしくい』を発動させた

 

「「危ない!!」」

 

「ニャ!」

 

「ホゲ!」

 

ニャオハとホゲータは間一髪のところで回避したが、状況は依然としてリコとロイに不利である

 

「す、凄すぎて入っていけないっす……」

 

タッグバトルでありながら、ワカバとタンドンは未だに何もしていない。というよりも出来ない様だ

 

今不用意に参戦しても足を引っ張る事が嫌でも理解できてしまったらしい

 

「どうした?僕のマルヤクデに勝てないようでは、レックウザのゲットなど、とても無理だよ」

 

カブの言葉を受け、ロイの視線が先程よりも鋭くなる。カブの言うことは正しい、この程度で倒されてはレックウザには届かない。それが理解できるからこそ悔しさも強く感じているようだ

 

「リコ!連携プレーで行こう!」

 

「うん!ニャオハ『このは』いっぱい、目隠し!」

 

「ニャーーハァーー!!」

 

ニャオハは大量の『このは』を発生させ、マルヤクデの上半身を包み込んだ

 

「今だ『たいあたり』!」

 

「『でんこうせっか』!」

 

マルヤクデの視界を塞いでいる間に、ニャオハは『でんこうせっか』、ホゲータは『たいあたり』を仕掛ける

 

「真っ直ぐ『かえんほうしゃ』!」

 

「ヤァーー!!」

 

視界が『このは』によって塞がれているマルヤクデは、カブの指示を受けて『かえんほうしゃ』を発射したことで『このは』を掻き消し、迫ってきた2体にも命中させた

 

「ニャッ!?」

 

「ゲッ!?」

 

「ッ!!ニャオハ!!(どうしよ、どうしよ……!!)」

 

リコは効果抜群の『かえんほうしゃ』を受け、苦しそうに地面に倒れたニャオハの顔を見て、上手く考えが纏まらずにいた。そんな時

 

「ホッホッホホゲ♪ホッホッホホゲ♪立ち上がれ~♪負けるなホゲータ頑張れ~♪思い出せ~♪負けるなホゲータ頑張れ~♪思い出せ~♪」

 

「ホ……ホンゲェェェェ!!」

 

ロイの歌を聞くと、先程まで倒れていたホゲータは再び目に炎を宿し、立ち上がった

 

「ふっ……マルヤクデ『かえんほうしゃ』!」

 

ロイとホゲータの熱い闘志を見たカブは一瞬だけ笑顔を見せる。しかし、マルヤクデにまた『かえんほうしゃ』を出した

 

「思い出せ~♪ホゲータ『ひのこ』だぁ!!」

 

「ホッホッホッホッゲェ~!!」

 

ゴォォォォォォォ

 

マルヤクデの『かえんほうしゃ』が迫る中、ホゲータはロイの歌に合わせて『ひのこ』を放つ……だがそれは『ひのこ』と呼ぶには威力が高い炎であった

 

「これって!!」

 

「『かえんほうしゃ』!!?」

 

「(おぉ、『じだんだ』に続いてまた土壇場で新しい技を覚えたか)」

 

ホゲータが放ったのは『ひのこ』よりも断然威力の高い『かえんほうしゃ』だった。コルサの時のバトルに続いて、ホゲータは新しい技を覚えたのだ

 

「ゲェェェーー!!」

 

「ヤァァァーー!!」

 

『かえんほうしゃ』同士がフィールドの中央で激しくぶつかり合う………が、覚えたての技であったためかホゲータの『かえんほうしゃ』の威力は低く、徐々にマルヤクデの『かえんほうしゃ』がホゲータに迫り、押し勝ってしまった

 

「ホゲェ!!?ゲェ、ゲェ、ゲェ…………!」

 

「ホゲータ!」

 

「ホッ~…………」

 

ホゲータは目を回してフィールド上に倒れた

 

「ホゲータ、戦闘不能!」

 

ソウハのコールと共にロイはホゲータの元に走り出した。

ダメージもあり怪我も少し負っている様だが、適切な治療をすれば問題ない事を確認するとホゲータを抱き締める

 

「凄いよホゲータ!『かえんほうしゃ』を覚えるなんて!」

 

「ゲェ~……」

 

 

「ホゲータ君は戦闘不能か……ではワカバ君、リコ君とのバトルは任せるよ」

 

「えっ?」

 

「…………」

 

ここまで完全に2対1のバトルが続き、蚊帳の外であったワカバはカブの突然の申し出に反応が遅れてしまう

 

「ジムトレーナー試験だと思って頑張って欲しい」

 

「………はいっ!承知したっす!!」

 

「ワ、ワカバさんと………」

 

ワカバは気合いを入れ直し、リコとの勝負に臨む

 

「リコさん!勝負っすよ!」

 

「う、うん………」

 

「(これで確認できる)」

 

ニャオハは確かにダメージを負っているが、それでもレベル差も大きく普通にバトルすればリコとニャオハが勝つというのがソウハの見立てである

 

勿論、ワカバが予想以上の力を発揮して勝利するという可能性も捨てきれないがその可能性はかなり低い

 

「(もし、この状況でリコが負けるんだとしたら……)」

 

「リコ、頑張れ~!」

 

「ホンゲェ!」

 

 

「いくっす!タンドン『うちおとす』!」

 

「ダァン!」

 

「『うちおとす』を撃ち落とす!『このは』!」

 

「ニャッーーハァ!!」

 

タンドンは空中に自身と同じ程の大きさの岩を発生させ攻撃しようとするがニャオハの『このは』により岩は破壊され、そのままタンドンを包み込んでいく

 

「っ!?なら、『こうそくスピン』!」

 

タンドンは『こうそくスピン』で身体を回転させると『このは』を掻き消すことに成功する

 

そのままタンドンは回転しながら、ニャオハへと突撃してきた

 

「躱して!『このは』鋭く!」 

 

「ニャァーー!」

 

タンドンの『こうそくスピン』を全て回避したニャオハは『このは』を鋭く尖らせて反撃に移った。放たれた『このは』は『こうそくスピン』で回転するタンドンに命中し、弾き飛ばした

 

「タンドン!!」

 

「よし!!」

 

 

「(実力はやっぱりリコやニャオハの方が上か……)」

 

 

「ニャオハ、もう一度!!」

 

「……負けられないっす!必ず勝って!ジムトレーナーになるっす!」

 

「(ワカバさん………)」

 

リコは再度、攻撃を仕掛けるように指示を出そうとしたが………ワカバの決意の籠った叫びを聞き、指示が止まってしまう

 

「(……リコ)」

 

「ミジュ……」

 

 

「ニャオハーッ!!ニャーッ!」

 

「……あっ」

 

ニャオハの声を聞き思考を取り戻したリコだが、タンドンは既に体勢を立て直し追撃のチャンスはなくなってしまった

 

「タンドン『こうそくスピン』!」

 

「タァーー!!」

 

「ニャッハ!!」

 

タンドンは再び『こうそくスピン』で迫るがニャオハは跳び跳ねて回避する。このまま勝負はまだ続くと思われたが……

 

 

「待って!!」

 

「えっ?」

 

 

「ッ………」

 

「ミジュ………」

 

 

「私の負けです」

 

「「えっ?」」

 

「ニャ!?」

 

リコの突然の降伏宣言を聞き、ソウハとカブは厳しい視線をリコに向けるがワカバとロイは戸惑いと疑問の声をあげる

 

「あの………どういう事っすか?」

 

ワカバも負ける気はさらさらなく、勝つと意気込んではいたが、それでも自分が不利であるということは理解していた。だからこそ、なぜこのタイミングでリコが自ら敗北を宣言したのか理解出来なかった

 

それはニャオハも一緒で、自身のパートナーであるリコに向かって、怒っているようだった

 

「えっと……さっきのトレーニングでニャオハも疲れてるだろうし、このままバトルを続けても……」

 

「わざと負けるって事っすか……最後までバトルせず、負けてやるって事っすか?」

 

リコの言い分はワカバを納得させるものではなかった。ニャオハは確かにトレーニングで疲れているかもしれないが、しっかりと立ち相手を見ている……まだ充分バトル出来るぐらいの元気は残っていることは誰が見ても明らかなことだった

 

「そんなつもりじゃ………」

 

「それでジムトレーナーになれたって……そんなの嬉しくないっす!夢は自分の力で叶えなきゃ意味ないっす!!」

 

ワカバは勝利を譲られた悔しさから拳を強く握りしめ肩を震わせると、タンドンをフィールドに残したまま、走り去ってしまった

 

リコとそして置き去りにされたタンドンは咄嗟の事にどう言えば、どんな対応をすればいいのか分からず戸惑っていた

 

「(……こうなっちまったか)………バトル終了」

 

どちらにしろ、この状態ではもうバトルの継続は出来ない。カブはフィールドに残されていたワカバのタンドンを持ち上げ、リコの傍へと近付いて行く。ソウハとテンブもリコの方へと向かった

 

「リコ君……ロイ君とのトレーニングの時も躊躇いがあったね」

 

「えっ、そうだったの?」

 

「………私が?」

 

リコの脳内に先程までのトレーニングルームでの出来事が思い出される。指摘を受け、冷静に振り返ってみればトレーニング中でも今のバトルでも躊躇い、チャンスをみすみす逃していた場面が何度か見られたからだ

 

「やっぱり、無意識だったんだな……」

 

「えっ!?……ソウハも気付いてたの?」

 

「あぁ……リコお前は自分が勝つことよりも、ロイやワカバの気持ちを大切にしたくなったって所だろうな」

 

「……………」

 

ソウハに自分の内情を自分以上に理解されている。普段ならば嬉しく感じるかもしれないが、今はそんな気になれなかった

 

「リコ……お前はワカバさんのためを想ってやったと思うが……それは却って頑張っていたワカバさんに対する侮辱行為だ」

 

「ッ!?」

 

「ポケモンバトルは勝負の世界だ。対戦相手だって勝つために頑張って来たんだぞ?それをわざと手加減されて勝利を譲られたら、喜ぶと思うか?」

 

先程のワカバの姿を思い浮かべれば、答えるまでもない。リコのした行いは善意に溢れたものであったが結果的に彼女の事を傷つけるだけに終わってしまった

 

「それにワカバさんだけじゃない。お前と一緒に傷だらけになっても立ち上がり、バトルを続けようとした相棒(・・)の気持ちを………考えなかったのか?」

 

「あっ……」

 

「お前が降参したってことは、ニャオハの今までの頑張りを全部、無駄にしたってことなんだぞ……」

 

「ッ!!」

 

 

「………ニャ~」

 

身体中に傷を作りながらも立ち上がったニャオハ……ソウハの話を聞き、ハッとした表情でニャオハの方を見る

 

「ニャオハ!ごめん………ごめんね」

 

ソウハとカブの指摘を受け、自分の行動の結果が皆を傷つけてしまったことに本当の意味で理解する

 

「ソウハ……わたし………」

 

「………ワカバさんはまだ近くにいるぞ」

 

「えっ……」

 

「早めに謝っておかなきゃ、その内後悔することになる。だから行ってきな」

 

「………うん。行ってくるね」

 

 

それからリコはスタジアムの通路にいたワカバを見つけ、謝ろうと駆け寄った

 

「ワカバさん!!あの」 

 

「すみませんでした!!」

 

「……えっ?」

 

謝ろうとしたら、ワカバが謝ってきたのだ

 

「自分が未熟なのに、リコさんにあたってしまって……」

 

「ううん!私の方こそワカバさんの気持ちを考えられなくて……ごめんなさい!!」

 

「「あっ………ふふっ!」」

 

リコもワカバもお互いが頭を下げた。頭を上げて目が合うと、2人はクスッと笑い合った

 

「自分、もう一回修行し直して出直しっす!リコさんも頑張って下さい!」

 

「ありがとう!ワカバさんも頑張ってください!」

 

「ありがとうっす!」

 

こうして、リコはワカバに謝ることができ、無事に仲直りすることが出来たようだ

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

バトルフィールド

 

 

リコとワカバは2人一緒にソウハ達のいるフィールドに戻ってきて、無事に仲直り出来たことを話した

 

「そうか、良かったな2人とも」

 

「ミジュ!」

 

「ありがとう、ソウハ」

 

それからカブは、リコとロイ達のことを評価し始めた

 

 

「みんな、思った以上の成果をあげられて良かった。リコ君もロイ君も、きっといいトレーナーになるよ」

 

「「ありがとうございます!」」

 

 

「それで、黒いレックウザについてだったね?」

 

「はい!カブさんが言ってた心当たりっていうのは?」

 

「………見たのさ、数日前に」

 

「「えっ!」」

 

「………」

 

「早朝ランニングをしていてね、誰もいない街の上空に突然現れたんだ」

 

「突然ですか?」

 

「あぁ、夢でも見たのかと思ったよ。だから君達から黒いレックウザのことを聞かれた時、あれは現実だったのかってね」

 

「それでレックウザは、何処に行ったか分かりますか?」

 

「………ここから西の空に飛んで行ったよ」

 

「ここから西っていうと………ガラル鉱山あたりか」

 

「ガラル鉱山………」

 

「そこにレックウザは向かったんだ!」

 

「みたいだな……取り敢えず、皆のとこに戻ってこの事を話さないとな」

 

「うん!」

 

カブから黒いレックウザの情報を聞き出したソウハ達。リコとロイの特訓もやり終え、そろそろブレイブアサギ号に帰ろうとしたとき、カブから待ったの声がかかった

 

「カブさん?」

 

「どうしたんですか?」

 

「ソウハ君、君にポケモンバトルを申し込みたい」

 

「「「………えっ!?」」」

 

リコとロイ、ワカバはカブのいきなりの発言に驚く

 

「ネットに上がっていた君とナンジャモとのバトルを見たよ。そして確信した、明らかに僕と戦った時より更に腕を上げている……とね」

 

「…………」

 

「ソウハ君、そんな君とジムリーダーとしてでなく、1人のポケモントレーナーとして挑みたい」

 

「カブさん……」

 

カブはモンスターボールを持ち、真っ直ぐな目でソウハのことを見る。ワカバは普段、自分を鍛えてくれているカブがここまで必死にバトルを頼んでいることに驚きを隠せないでいた

 

「………分かりました。でも1つ条件があります」

 

「何かね?」

 

「バトルするポケモンは1体だけにしてください。もうちょっとで日が暮れてしまうので……」

 

「分かった」

 

ソウハとカブはそれぞれ、バトルフィールドのトレーナーゾーンに移動した。リコとロイ、ワカバはフィールドの外で2人の試合を観戦する

 

「まさかカブさんとソウハさんのバトルを生で観れるなんて………自分感激っす!!」

 

ワカバは自分よりも圧倒的に強い相手の試合を観ることが出来ることに喜びを隠せない。リコとロイはそれぞれ相棒ポケモンを抱き抱えながら静かに、ソウハとカブを観ていた

 

2人は今までのバトル特訓で自分の欠点を自覚した。そのため、ジムリーダーであるカブとチャンピオンにも勝利したトレーナーであるソウハとのバトルは絶対に勉強になる。だから少しも見逃さないように真剣な目つきでいた

 

「マルヤクデ、頼むよ!」

 

PON!

 

「マルヤァ!」

 

カブはリコとロイとのバトルで対戦していたマルヤクデを再び出した

 

「そのマルヤクデ、あまり疲れてないとはいえ出しても大丈夫なんですか?」

 

「心配には及ばないよ。リコ君とワカバ君がバトルしてる時にオボンの実を食べさせたからね」

 

「マルゥヤァー!!」

 

マルヤクデは自身の気合いを表すかのように額の触覚の炎を燃え上がらせた

 

「分かりました。じゃあこっちも、いくぞウーラオス!!」

 

PON!

 

「ラァオス!!」

 

ソウハが出したポケモンはウーラオス(いちげきのかた)であった

 

「先行は譲りますよ、カブさん」

 

「そうかい?それじゃあこちらからいくよ」

 

先行をカブに譲り、バトルが始まった

 

「マルヤクデ『かえんぐるま』!」

 

「ウーラオス跳び上がって躱せ!空中で『はどうだん』!」

 

『かえんぐるま』で突っ込んで来たマルヤクデをウーラオスは跳び上がって躱し、そこから両手を合わせ『はどうだん』を放った

 

必中の『はどうだん』はマルヤクデに当たりダメージを与える

 

「マルゥ……」

 

「やはり強いな、ソウハ君のポケモンは……それでこそ倒しがいがある!『かえんほうしゃ』!」

 

「マーーヤァ!!」

 

「躱せ!」

 

「ウラァ!!」

 

「ウーラオス『あんこくきょうだ』!」

 

「ラーーオス!!」

 

「腕に絡むようにして『むしくい』!」

 

「クデェ!!」

 

ウーラオスが『あんこくきょうだ』を決めようと接近したとき、マルヤクデは『むしくい』で迎え撃とうとする

 

だがその『むしくい』はリコとロイの時のような真っ直ぐくるものではなく、曲線を描くようにしてウーラオスの拳を躱して攻撃を当てた 

 

「ラァ!?」

 

「そのまま絡みつけ!その状態で『かえんぐるま』!」

 

「マヤーァ!!」

 

「ウッラァ!!」

 

「ウーラオス!!」

 

カブはマルヤクデの身体を利用し、ウーラオスの身体を縄で縛りつけるようにした状態で『かえんぐるま』を発動

 

ウーラオスの身体は『かえんぐるま』の炎によって包み込まれた

 

「あぁ、ウーラオスが!!」

 

「ホンゲェ!」

 

「『かえんぐるま』をあんな風にして発動させるなんて」

 

「ソウハ………」

 

「ニャァ……」

 

リコは今までの旅でソウハのポケモンがマトモにダメージを受けて苦い顔をしている所を初めて見たため、ソウハとウーラオスのことを心配していた

 

「振りほどけ、至近距離で『かみなりパンチ』!」

 

「ウーーラァ!!」

 

「マァァ!?」

 

「今だ、跳び上がって脱出!」

 

身体に巻き付いたマルヤクデに至近距離で『かみなりパンチ』を当てたことで一瞬締め付ける力が弱まり、上に脱出することが出来た

 

「(カブさんがここまでマルヤクデを鍛えていたとは、ちょっと甘く見てた)」

 

ソウハもカブとマルヤクデがこんな戦法を取るとは思わず、少し驚いていた

 

「『はどうだん』!」

 

「『かえんほうしゃ』!」

 

2つの技はぶつかり合い、両方とも掻き消される

 

「『インファイト』!」

 

「『かえんぐるま』!」

 

「ウラァオス!!」

 

「ヤァーー!!」

 

マルヤクデは身体を丸め『かえんぐるま』を、ウーラオスは『インファイト』を発動させた

 

それはフィールド中央でぶつかり合い、炎と拳の連打によって周囲に凄まじい音と衝撃波が響き渡った

 

「す、凄いっす!」

 

「ソウハも凄いけど、カブさんも凄い!」

 

「ホゲェーー!!」

 

フィールド外にいるリコ達は腕を目の前にやって衝撃や砂埃から目を守る

 

ウーラオスとマルヤクデの技がぶつかり合っていると、変化が起こり始めた

 

「ウーラオス!!集中!!」

 

「ッ………ラァァァァ」

 

「(なに?)」

 

『インファイト』で拳をマルヤクデに叩き込んでいる中、ウーラオスは突如、両目を閉じた。だが『インファイト』は発動したまま……カブはその行動を少し不審がる

 

「…………今だ!!『すいりゅうれんだ』!!」

 

「ウーーラァラァラァラァ!!」

 

「マルヤァ!!?」

 

「なに!?」

 

突然、『インファイト』に青いエネルギーが加わり、その途端マルヤクデが苦し始めた

 

マルヤクデは『かえんぐるま』を止め、その攻撃によって吹き飛ばされる

 

「ラァーオス………」

 

 

「(な、なんだ?最初に出てきた時と……どこか違う……)」

 

「あ、あれ?ウーラオスってあんな感じだったっけ?」

 

「ニャオハ?」

 

「何か……雰囲気が変わったような?」

 

「ホゲェ~?」

 

「あのマルヤクデの『かえんぐるま』を……真正面から迎え撃つなんて……」

 

攻撃を止めたウーラオス、だが何処か雰囲気が違うことにカブやリコ達は気付く

 

今までのウーラオスは両足を地面に力強く踏み、両手を握り締めたドシッとした八極拳のような構えをしていた。だが今は片足を少し上げ両手を少し開き蟷螂拳を思わせる構えを取っていた

 

「ソウハ君、もしかしてそのポケモンはフォルムチェンジを行ったのかい?」

 

「………いいえ、少し違います。ウーラオスには2つの型、進化先があるんですよ」

 

「型?」

 

 

「それってたしか……」

 

「リコ、知ってるの?」

 

「ええと、たしか前にソウハのポケモンを紹介してくれた時に………」

 

 

「俺のウーラオスは少し特別なんです。ウーラオスはダクマと呼ばれるポケモンが進化した姿なんです。でも、進化先は1つじゃなく2つあるんです」

 

「まさかそれが、このウーラオスと最初に見たウーラオスかい?」

 

「えぇ、最初のウーラオスが『いちげきのかた』と呼ばれ、このウーラオスは『れんげきのかた』と呼ばれています。タイプも戦い方も違うんです」

 

「だが、進化したのならばもう別の進化先には行かない筈」

 

「普通はそうですが、俺のウーラオスは違います。こいつは意識を集中させ、戦っていくことで型をフォルムチェンジのように変えることが出来るんです」

 

「ラーーオス……」

 

ソウハの発言に、リコ達は驚く。まさかそんなことまで出来るなんてと思ってしまっていた

 

だがカブは、驚きよりもバトルしてみたいという気持ちの方が高く、興奮した笑みを隠しきれていない

 

「ハハッ!君はやっぱりどこまでも僕を驚かせてくれるね、ソウハ君」

 

そう言うとカブはポケットからあるものを取り出した

 

 

「あれは!!カブさん、いよいよやるんすね!!」

 

ワカバは興奮したように立ち上がる

 

「ワカバさん、あれって?」

 

「『ダイマックスバンド』っすよ!!ポケモンを《ダイマックス》させるための道具っす!!」

 

「ダイマックス?」 

 

「僕動画でみたことある!ポケモンがすっごくでっかくなっちゃうんだよね!!」

 

「そうっす!!でもでかくなるだけじゃないっす!使う技やポケモンによっては見た目も大きく変化して、より迫力のあるバトルへと変わるのがダイマックスっす!」

 

「そうなんだ、知らなかった………」

 

リコがロイとワカバにダイマックスのことを教えて貰っている中、カブは『ダイマックスバンド』を手に取り付ける

 

「マルヤクデ!燃え盛れ!《キョダイマックス》で姿も変えろ!!」

 

カブは一度マルヤクデをモンスターボールに戻した。ダイマックスバンドからボールにエネルギーが送られ、ビリリダマサイズのデータグリッド状な『ダイマックスボール』へと変化する

 

そして、後ろに向かって勢いよくボールを放った

 

PON!

 

ムクッ

 

ムクッ

 

ムクッ

 

 

「マヤァーーーー!!!」

 

そこから出てきたのはマルヤクデ《キョダイマックスのすがた》であった

 

「あれが、マルヤクデ!?」

 

「ニャ~………」

 

「でっかいし、カッコいい!!」

 

「ホゲッホゲッ!!」

 

「カブさんのマルヤクデは《キョダイマックス》といって、ダイマックスすると姿が変わるポケモンの内の1体なんす!」

 

「そうなんだ………(ソウハ、大丈夫かな?)」

 

「ニャ?」

 

キョダイマックスにより強くなったマルヤクデ……その姿はまるでレックウザに似ており、凄まじい迫力が溢れ出ている。リコはソウハのウーラオスが勝てるのか、少し不安に思う

 

ソウハは、キョダイマックスしたマルヤクデを見上げ、笑みを浮かべた。それはウーラオスも同じだった

 

「ウーラオス、俺達もやるぞ」

 

「ラオス、ウーラウーラ!(っしゃあ、やってやるか!)」

 

ソウハがバックから取り出したのは、カブと同じダイマックスバンドだった

 

「ダイマックスバンド!!」

 

「ソウハも、持ってたんだ!?」

 

「じゃあ……もしかして!!」

 

 

「そうこなくてはな、ソウハ君」

 

 

「お前のでっかい拳、見せつけてやれ!!」

 

ダイマックスバンドを手に付け、ウーラオスをモンスターボールに戻す。ダイマックスバンドからボールにエネルギーが送られ、ダイマックスボールが形成された

 

「ウーラオス、キョダイマッークス!!」

 

ソウハは両手でダイマックスボールを持ち、大きく後ろへと投げた

 

PON!

 

ムクッ

 

ムクッ

 

ムクッ

 

 

「ラァァーーーーーー!!!」

 

ボールの中からウーラオス(れんげきのかた)《キョダイマックスのすがた》が出てきた

 

「ほう……このポケモンもキョダイマックスを……」

 

 

「ウーラオスもでっかく、かっこよくなったーー!!」

 

「ホンゲェーー!」

 

「あれはキョダイマックスっす!まさかウーラオスもキョダイマックス出来るなんて、今日は驚かされてばかりっす!!」

 

「凄い………(ウーラオスにあんな力があったなんて)」  

 

「ニャオハ~……」

 

キョダイマックスしたウーラオス(れんげきのかた)は全身が白と青の体毛に変化し、頭のハチマキのような毛は伸びた事で天衣の様に身体にたなびいてた

 

片足立ちの構えは変わらず、両目が白くなり睨み付けられたら命を奪られてしまいそうな迫力を持っていた

 

「これで決める!ウーラオス『キョダイレンゲキ』!!」

 

「受けて立つ!マルヤクデ『キョダイヒャッカ』!!」

 

 

「ウーーラオスーー!!」

 

「ヤクーデーー!!」

 

 

水を纏った巨大な拳の連打と巨大な炎の弾がぶつかり合う

 

 

ドーーーーーーン!!!

 

 

「うわぁ~!!」 

 

「こ、これは~!!」

 

「凄い衝撃っす~!!」

 

キョダイマックスしたポケモン同士の技がぶつかり、凄まじい衝撃波が発生した。リコ達は吹き飛ばされそうになる

 

煙が晴れると、そこにはキョダイマックスが解除されて元の姿に戻ったマルヤクデが目を回して倒れていた

 

「マ………マルヤ……」

 

「マルヤクデは、戦闘不能ですね?」

 

「そうだね。マルヤクデ、ありがとう」

 

カブはマルヤクデを労いながらモンスターボールへと戻した。ウーラオスもキョダイマックスが解かれ、通常の姿に戻る

 

「ソウハ君、とても燃えるバトルをありがとう」

 

「こちらこそ、ありがとうございました」

 

2人は力強く握手を交わし合う。そこへバトルを観ていたリコ達も入って来た

 

「ソウハ、バトル凄かったよ!!ウーラオスもマルヤクデも、言葉に表せないぐらい本当に凄かった!!」

 

「ニャオハッ!!」

 

「ねぇねぇソウハ!!戻ったら僕達に特訓つけさせてよ!!ソウハとカブさんのバトル観て、僕ももっと強くなりたいんだ、ホゲータ達と一緒に!!」

 

「ホンゲホンゲッ!!」

 

「2人のバトル!!まじで凄かったっす!!カブさんソウハさん、自分も2人のようなバトルが出来るように精一杯修行するっす!」

 

「ハハッ、ありがとう。ワカバさんも頑張って下さい。それじゃあ俺達はそろそろ帰りますね」

 

「あぁそうだ、最後に1つだけ………リコ君」

 

「はい?」

 

「バトルに勝つだけがトレーナーの道じゃない。トレーナーの数だけ道はあるんだ。君が信じる、君だけの道を見つけて進んで行くんだ」

 

「カブさん………(自分だけの道……)」

 

こうしてソウハ達はエンジンスタジアムを後にし、ブレイブアサギ号へと戻っていった

 

 

ブレイブアサギ号

 

 

その後、ブレイブアサギ号に戻ったソウハ達はフリード達にガラル鉱山の方向へ黒いレックウザが飛んでいったことを話した

 

「ガラル鉱山か……」

 

「レックウザがガラル鉱山に何の用なの?」

 

「それは行ってみないと分からんだろ」

 

「まだレックウザがそこにいるっていう保証はないでしょ」

 

「だったら、すぐに行きたい!」

 

ロイはモリーの発言を聞き、ガラル鉱山にすぐに行きたいと言う。ドットの情報によれば、明日の朝一番に電車が動くという

 

「どうする?」

 

「……よし、ナックルシティの前にガラル鉱山を調べておくか。リコ、それで良いか?」

 

「えっ?………う、うん、私はそれでも良いよ」

 

「やったーー!!」

 

こうして、リコの祖母ダイアナがいる古城の前に、ガラル鉱山へ行くことが決まった

 

━━━━━━━━━━━━━━━━

 

深夜

 

 

ブレイブアサギ号

 

ブリッジ

 

そこではリコが星空を眺めていた。傍らには眠っているニャオハもいる

 

「(私だけの道……)」

 

リコはカブに言われたことについて考えていた。そんな時、後ろにある展望室のドアが開き、ソウハが出てきた

 

「あっ、ソウハ」

 

「よっ、寝れないのか?」

 

「うん……今日カブさんに言われたことで悩んでて……」

 

「自分だけの道って話か?」

 

「うん……バトルに勝つだけが道じゃないとしたら、私の進む道は何なんだろうって思って………」

 

「そんなに難しく考える必要はないと思うぞ」

 

「えっ?」

 

「リコはまだ、ポケモントレーナーになって少ししか経ってないんだ。まだ会ったこともないポケモンだって沢山いる。これから見ていく色んな人やポケモンと出会っていけば、自然と自分の歩きたい道が見つかると俺は思う」

 

「ソウハ………」

 

「だから焦らなくて良い。時間はまだたっぷりある………それにリコは1人じゃない、ニャオハや俺、ライジングボルテッカーズの皆がいるんだ。だからゆっくり見つければ良いよ、自分だけの道を………」

 

「………ありがとう、ソウハ」

 

その後、リコは隣に座っているソウハの肩に頭を乗せ、2人は星空を見上げた。部屋に帰る際にはキスを交わし、明日に備えてベッドで寝た

 





ソウハの部屋


「……………」

リコとソウハがブリッジで星空を眺めていた時、テンブは寝ていたベッドから突然起き上がり、部屋の窓からガラル鉱山の方角をじっと見ていた



「……(普通じゃない、デッカイ気配がする………………


















それも複数)」
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