復活したと思ったら捕まって振り回されてるんだけど!? 作:雪山崇一
三人の
「本当なんだろうな!?
「間違いありませんっ、地下の部屋より魔力反応がありましたから!」
最年長の魔術師ライロードの問いに、青年の魔術師レックが過呼吸気味にそう返す。
全員が額に玉のような汗を浮かべながら息を切らしながらの全力疾走。
「どうしますか!? 本当に
――魔神。
五〇〇年前に突如として地上に現れ、当時存在した魔術師を
そして――
「知るかッ! 復活してから考えろ!」
若い女の魔術師、ハイリィの言葉にキレ気味に返しながら、魔術師たちは地下の廊下を駆け抜け、その一番奥、魔神の封印された
厳重に封じられている筈の扉が開いており……中には既に先客がいた。
「
飛び込んできたライロードの叫びに、長い金髪を揺らしながら、七美は「やっと来た……」と言いたげに頭を掻きながら、
「下がってた方がいいよ。……
そう口にする七美の視線の先には、魔神を中に封じ込めている結晶が宙に浮遊し、その内側から溢れんばかりの魔力を放っていた。
……何代もかけて重ねてきた封印の術式が消えている。
「な、何をボケッとしている! そこまでわかっているのならすぐに魔術をかけ――」
「何かしたいんだけど――もう手遅れなんだなー、これが……」
――瞬間、地下室に光が満ちた。
封印が解かれるのは防ぎようがない、解かれた後で対処するしかもう方法がなかった。
後ろに立つ魔術師が息を飲むのがわかった。
対して七美は迫り来る光に向かって片手を向ける。……七美の前方に濃密な魔力の壁が出現し、光の衝撃波を防ぐ。
(ん?)
眉を潜める。
魔神は五〇〇年も前の存在だ。もちろん七美は会った事はない……ない、のだが……、
(なんか……思ったより、弱い。いや――弱すぎる?)
魔力の壁を通じて七美に伝わってくる光の衝撃波の威力が、とても皆から恐れられるほどのものではなかったのだ……魔力の波こそは放てても、その威力は
「お、おい……あれ」
光が収まったかと思うと、七美に護られた魔術師の一人が光の発生源を指差す。
そこに立っていたのは――――
◆
人格構成、成功。
現代知識の付与、成功。
――――封印、解除を確認。
◆
足の裏からひんやりとした感触が伝わってくる。
暗い空間。さっ――と広げる両腕は肌寒い。
……いや、寒いのは両腕だけではない……全身が寒い。
(……ここは、何処だ?)
視界には魔術師が数人。中でも抜きん出た魔力の持ち主が前に出ている金髪の女。
……あの
(――さて、
ピシリッ、と頭痛が奔る。
突然の痛みに頭を抑え、
「………………、へ?」
間の抜けた
声が出たのは頭を抑える自分の手を見たからだ。
「な、なにこれ!?」
思えば随分と
「は……っ、くしゅん!」
体を見下ろす。
何も着ていない裸体の
それではくしゃみをするのも当然だ……不味い、寒すぎる、風邪引きそう。
だが体調の心配をするよりも前に、最後の確認をしなければならない。
「……お、おい、お前ら」
目の前で起きた現象が信じられないのか、
目をごしごしとする者、ほっぺをつねり夢かどうかの確認をする者、目を見開き裸体を凝視する者、頬を赤くしながら目を反らそうと努力する者と、様々な魔術師がそこにいる。
「……だ、誰か、鏡を持ってないか?」
「っ! ……え、えーと、鏡? これなら持ってるけど」
頬を赤くし、目を反らす努力をしていた金髪の女魔術師が、ポケットからコンパクトミラーを取り出し投げてくる。
「あ、ありがとう……」
お礼を言いながら、受け取ったコンパクトミラーで恐る恐る自分の顔を見てみる。
そこに写っていたのは――
「……な、なん」
肩口を
「――なんじゃこりゃああああー!?」
◆
その後……、
魔神の結晶から生まれたとしか思えない存在を放っておくわけにもいかず、とりあえず捕まえて、とりあえず地下牢にぶちこんだ
……ちなみに彼女はめちゃくちゃ弱かった。
簡単な魔術行使もできないほどに。
「どうします? あの
「どうすると言われてもな……トップは何と言っている?」
レックの問いにライロードはため息混じりにそう返す。
「それが、何故か先ほどから連絡がつかなくて」
「まさか……
何度私の胃を破壊すれば気が済むんだッ!
ははは……、とレックがそれに苦笑いを返すと、
「――落ち着けお爺ちゃん! この七美ちゃんに考えあーりっ!!」
「どっから入ってきた貴様! 貴様はハイリィと共に尋問室にいる筈だろ!!」
「――あっ、いた!」
腕を振り払うと同時に部屋のドアが開き、ハイリィが息を切らしながら入ってくる。
「七美さん、まだ話は終わってませんよ!」
「えー、さっきも言ったじゃん。
私は忍び込んだだけで封印の部屋の事には関与していないって。
……
「それがあり得ないんですよ!
この魔術塔は、魔術世界の『
故に警備は厳重であり、魔神の結晶に関しては何代もかけて封印の術式を重ねてきたもの……。
……何人たりとも、扉を開けることなどできず、ましてや封印を解くことなどできるはずもない……その筈、だったのに――。
「まぁまぁ、その事に関しては私の方でも調べておくし、何かわかったら連絡するから少しは肩の力を抜きなよ……それよりも、今は復活した魔神についての話をしようよ」
「……そういえば貴様、何か考えがあると言っていたな?」
ライロードが腕を組みながら問うと、七美は『ふっふっふー』と胸を張りながら――
「突然だけどあの魔神ちゃん。今日からウチで暮らす事になったから!」
『…………………………は?』
三人の魔術師があんぐりと口を開ける。
「いやー、実は一目惚れしちゃってね。ハイリィとの尋問中に君たちのトップと
「………………、は!」
呆然としていたライロードがハッと肩を揺らす。
「先ほどからトップと連絡が取れないのは貴様の仕業かァァァ!!」
「どーどー! どーどーどー!!」
馬を宥めるようにレックが今にも飛び掛かりそうなライロードを羽交い締めにしながら声をあげる。
「そ、それで月河さん、トップは何と?」
「君たちのトップはこう言っておりました――」
◆
『面白そうだから良いよー!
だけど何かあった時の責任は全部ナナちゃんにいくからそこんとこよろしくねー♪
――あとお爺ちゃんにわたしはスパ・リゾートを満喫してから帰るから、そっちに戻るのは明日になるって伝えといてー』
◆
「――って言ってたよ」
「あァんのロリトップがァァァァァッッッ!!」
誰が見たいかおじいの覚醒。
怒りのあまり吹き荒れる魔力と共に、真っ赤な怪光線がおじいの眼光より放たれている幻覚(だと思いたい)をこの場にいる誰もが目撃した。
次回は地下牢にいる『元』魔神の視点から。