復活したと思ったら捕まって振り回されてるんだけど!?   作:雪山崇一

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第四節 ゲーセンにて絆を知り、死地(しち)にて妹を得る

「ぎゃああああ!? 虫ぃぃぃぃ!!」

 

 それが筐体(ここ)に入ってから約五分。玲奈が心の底から叫んだ悲鳴だった。

 

「ほらほら、どんどん来てるよ玲奈ちゃん!」

 

 そんな人の気も知らず、ルイナは銃器を模した装置を操り画面に銃弾を浴びせている。

 今は学校が終わり放課後。

 

 ――親睦(しんぼく)を深めるためにも一緒に遊びにいこうよ……!

 

 そう言われ着替えて集合したかと思えばあれよあれよという間にゲームセンターに連れ込まれ、遊び始めて三台目のゲーム機がコレだった。

 

 内容としては、突然変異により誕生した寄生虫に寄生され怪物と化した元人間や動物を撃っていく、というゲームだが、玲奈はことあるごとに目を伏せてしまっていた。

 

 ……何故なら、生き物が寄生虫に寄生されるシーンが生々し過ぎるのだ。

 

 ――生後三日の赤ちゃん中学生の玲奈ちゃん……なんとこのゲームを通じて生まれて始めて自分が“虫嫌い”ということが判明した……ッ!

 

 だがそれが判明したとしてもゲームと隣に座ってる奴が容赦するわけなく、もはや呪いのようにこのゲーム筐体(きょうたい)に縛られていた。

 

「……は! や、やられた――よしっ(小声)」

 

 敵の攻撃を喰らいライフがゼロになったところでルイナに見えないように小さくガッツポーズをする。

 これでようやくこの地獄から解放される……! と、リトライカウントが表示される画面を見ながら、玲奈は泣きそうになるのを我慢しながら大きく息を吐き――

 

 ――チャリン(・・・・)

 

「……ん?」

 

 そんな音が聞こえたかと思うとリトライカウントが消え去り、ライフが三つまで回復する。

 

「玲奈ちゃん大丈夫!?」

 

「うおおおおおおおおおッ!?」

 

 ルイナが筐体に貨幣(かへい)を入れると、即座に玲奈の画面が復活した。

 画面は復活。玲奈は絶望。

 玲奈は血の涙を流しながらヤケクソ気味に銃器を模した装置を握る。

 

「――な、なにしてんだゴラァッ!!」

 

「だーいじょーぶ! これはわたしの奢りだから」

 

「そういう意味じゃねええええーッ!!」

 

 筐体を貫く絶叫と共に装置が振り回される。

 画面中に蔓延(はびこ)っていた敵という敵が瞬く間に殲滅(せんめつ)されていった――。

 

          ◆

 

「――はぁ……、はぁ……」

 

 それから一五分後。

 ルイナと共にそのゲームをクリアした玲奈はゲームセンター(そと)のベンチにどっさりと腰かけていた。

 

「すごいよ玲奈ちゃん! あれからノーコンテニューで全クリまでいくなんて……!」

 

「…………もうヤダ。帰りたい。帰ってお母さんに抱きつきたい」

 

 今でも鮮明に寄生虫の姿が目に浮かんでくる。

 何処を見ているかわっかんねぇまま、ただ一点を見つめながらボソリと呟く。

 

 ……虫を見たくないという理由で無双モードに入りゲームをクリアしたため、何をどうやって倒したか、倒した時の爽快感など一切覚えていない。

 ……爽快感など知らん、あの時はただただゲームを終わらせたかった。

 

「二度とやらないからな、あのゲーム……」

 

「まぁまぁ、これでも食べて元気だして」

 

 言ってルイナが差し出してきたのはソフトクリーム。

 見れば少し先に、可愛らしい色のキッチンカーがソフトクリームを売っていた。

 

「い、いつの間に……」

 

 買ってきた、と言いそうになったがすぐに『ハッ』とし、

 

「お、お金――」

 

「いいっていいって。これは今日一緒に遊んでくれたお礼。遠慮せずに受け取ってよ」

 

「……でも、」

 

「ほら、溶けちゃうよ?」

 

 最初は遠慮がちにルイナとソフトクリームを交互に見ていた玲奈だったが、ルイナの『ふふっ』という満面の笑みに押され……『ありがとう』と言ってそれを受け取った。

 

「ん~~~! やっぱり一仕事した後のアイスは格別だなー!」

 

 見てるこっちまで幸せになりそうなくらいの表情で、ルイナは美味しそうにアイスを食べる。

 対して玲奈は、生まれて初めてのアイスをパクンと食べ、

 

「ふぁあ~~~! な~にこれめーちゃくちゃうめぇ~!」

 

 おんなじ顔になっていた。

 いや、正確にはルイナ以上のとろけた顔になっていた。

 危うく大好きな食べ物第一位が更新しかけていることにも気づかず(ちなみに一位は目玉焼きの乗ったトースト)、玲奈は幸せそうにソフトクリームを食べていく。

 

「――――」

 

 その中で、ふと思った。

 

(こいつ……なんでこんなに私に優しくしてくれるんだ?)

 

 昨日出会ったばかり。確かに他の者と比べれば七美(おや)の次に仲の良い者ではあるが……それはそれとして、やはりここまでしてくれる理由は気になる。

 

「なあ」

 

「ん?」

 

「お前は……どうして私に、ここまで良くしてくれるんだ?」

 

 ソフトクリームを舐めている仕草が止まった。

 微かに雰囲気が変わったのがわかる……しかし、それは決して不快からなるソレではなく……、

 

「あー……えーと……」

 

 答えを考えていなかった質問をされたことからきた、困ったような雰囲気だった。

 

「ご、ごめんね。自分でもよく考えてなかった質問だから、答えに困っちゃって」

 

「――え? あ、いや、こっちこそ急にこんな事聞いてごめん……その、なんていうか、気になっちゃってな」

 

 質問の仕方を間違えたかと思いあたふたする玲奈。

 ルイナは質問の答えを出すように数瞬(すうしゅん)(あいだ)沈黙して……、

 

()いて言うなら、玲奈ちゃんと友達になりたいからかな」

 

「私と?」

 

「うん」

 

 力強く首肯して、続けてくる。

 

「話を聞いた時からさ、友達になりたいなって思ってたんだ。

 そして学校で初めて玲奈ちゃんを見た時、すっごい緊張してて、誰とも触れ合わずにいこう感マシマシだったから――友達ができると毎日が楽しいよ、ってコトを教えたいって思ったんだ」

 

「――――」

 

 ルイナの長くも短くまとめられた理由を静かに聞いていた。

 

「理由としてはこんな感じかな……どうかな?」

 

 顔を覗き込むように聞いてくる。

 対して玲奈はルイナの言葉を頭の中で巡らせていた。

 

(……誰とも触れ合わずにいこう感マシマシ、か)

 

 実際そうだった。

 学校は嫌々行かされて、そんな調子だから親しい人なんて作ろうとも思ってなくて、簡単な挨拶や返事は交わしても全体的に距離をとって生活しようとしていた。

 

 でもルイナが一気に距離を詰めてきて、手を繋いで、一緒に歩いて……ほんの少しではあるけれど、学校に行く時には嫌々を考えずに、ルイナ(こいつ)の事を考えるようになった。

 

 不思議と気は疲れない……いや今日も昨日も別の意味で疲れてるけど、少なくとも不快な気持ちで疲れ(・・・・・・・・・)てはいない。

 ……思えば不快な気持ちで疲れていたのは、ルイナと知り合うよりも前……初めて学校に向かっていた時だけで――。

 

「玲奈ちゃん?」

 

「っ、……ん」

 

 名前を呼ばれ、顔を上げる。

 心をほぐしてくれる彼女の顔を見ながら、

 

「……ルイナ」

 

「なに?」

 

 ふと、言葉を向けた。

 

「私たちってさ、友達、なのか……?」

 

 昨日の、お風呂での七美との会話を思い出しながらそう問いかける。

 突然の問いに、ルイナは一瞬キョトンとしていたが、すぐに、よく似合う笑顔を浮かばせ、

 

「もっちろん! 友達だよ!」

 

 嬉しそうにしながら、玲奈の手をがしっと握ってくる。

 

「玲奈ちゃんはわたしのコト、どう思ってるの?」

 

「ど、どうって……」

 

『友達』という単語が玲奈から出てきたことが相当に嬉しかったのか、今のような遠回りではなく、直球の言葉を求めてくるルイナ。

 玲奈はそんなルイナに頬を赤くしながら、ぷいっ、と顔を逸らしながら、

 

「ま、まあ、一緒にいても悪い気はしない、かな」

 

 つい照れて、そんな感じでしか言えなかった。

 そんな玲奈を見て、にひひ~と少年のような笑みを浮かべ、

 

「友達って言ってよ~」

 

 ルイナは玲奈の顔を撫でながらぷにぷにと頬をつついてくる。

 

「お、おい……やめろ、ルイナ――」

 

 くすぐったそうに/どこか嬉しそうにしながら、玲奈はルイナの手をそっと払った。

 

          ◆

 

「……なるほどね」

 

 魔術塔最奥の封印の部屋にて、七美は確信を得たように呟いた。

 

「どうした、何かわかったのか?」

 

 そんな七美に振り向きながら、ライロードは問いかける。

 今、魔神を封印していたこの部屋には四人の魔術師の姿があった。

 月河七美。ライロード。レック。ハイリィ。

 そのいずれもが、魔神の封印が解かれた原因を探る者たちである。

 

「封印を解いたのが“誰か”までかはわからないけど……“何者”なのかはわかったよ」

 

 意味ありげな遠回しの言い方をした後に、解かれた封印の残滓を感じながら玲奈は続けた。

 

私や君たちのトップと同じ(・・・・・・・・・・・・)――“魔帝(エンペラー)”だよ」

 

 調査を続けていた魔術師たちが目を見開く。

 

 ――魔帝(エンペラー)

 それは数多に存在する魔術師の中でも、最高位の魔術師に与えられる称号(しょうごう)

 言うなれば、現存する魔術師たちの中でもまごうことなき“最強の魔術師”の肩書きである。

 

 その内の一人である魔帝(エンペラー)、月河七美は言った。

 ……魔術塔に忍び込み、魔神の封印を解いたのは、自分やトップと同じ魔帝(エンペラー)であると。

 

「最初っから封印解除(こういうこと)ができるのは魔帝(エンペラー)あたりじゃないかなって思ってたけど……この街の魔帝(エンペラー)は私とトップだけだと思ってたから、確信を得るのに時間かかっちゃった」

 

「……魔帝(エンペラー)となると、より一層の警戒をしなくてはいけませんね」

 

「ライロードさん、トップに連絡は?」

 

「今しがた行った。

 ――『すぐに向かう』とのことだ」

 

「流石に自由奔放といえど、こういう時にはちゃんと動くね。お爺ちゃんもこれには大喜びなんじゃない?」

 

「この行動力が常時続けば良いのだがな……はぁー、全くあの方は……」

 

 まるで制御の効かない孫を持ったような気分のライロードは腕を組みながら嘆息(たんそく)を漏らす。

 

「何はともあれトップが戻ってからはあの方の指示に従う。それまでは各々調査を続行。魔神を解き放った者の手がかりを掴め!」

 

 レックとハイリィが返事を返し、調査を続行する。

 対して七美は部屋の入口の方へと歩きだし、

 

「悪いけどお爺ちゃん、ここは任せた」

 

「どこへ行く気だ?」

 

「調査。……君たちは『中』。私は『外』を調べる。

 まだ封印解除が起きてから二日だ。魔帝(エンペラー)クラスの魔力なら、まだ通った跡に残滓が残っているかもしれない。

 ……ま、調べるのに骨は折れるだろうけど」

 

 部屋の入口をくぐっていく……その中で、

 

封印解除するだけなら(・・・・・・・・・・)まだいいけど……魔神/玲奈(あの娘)に用があったんだとしたら話は別。

 ――あの娘に危害が加わる前に、居場所を突き止めて、潰してやる」

 

 子を守る母親としての言葉を吐露(とろ)していた。

 

          ◆

 

 ルイナと別れてから、玲奈は『せっかくだから』と街を回っていた。

 これからお世話になるであろう大型ショッピングモール。

 学生なら無料で施設を利用できるという夢のような温泉施設。

 見ているだけで癒されるペットショップ。

 

「あぁ~、可愛かったな~」

 

 特に猫~、にゃんにゃん。と、触れさせてもらった記憶が思い返される。

 その癒されから、ふにゃふにゃの顔になっていることに気づかず玲奈は道を歩いていく。

 ――と、

 

「……っ、」

 

 ふと、足が止まった。

 誰かに止まらされたわけではない……何かを感じ(・・・・・)、体が自分から動きを止めた。

 

(……こっち?)

 

 何かを感じる方へと歩いていく。

 ……こっちは家とは正反対。さらには街から外れる道。

 いや……途中からは道もなく、木々に囲まれた場所になる。

 だというのに玲奈はまるで導かれるように足が前へと進み……そして、

 

「――――」

 

 木々を抜けた先。街外れもいいところの場所に、

 

(ここは――)

 

 

 …………焼き払われた廃村(はいそん)が広がっていた。

 

 

 さっきまで街だったとは、木々が広がる緑の場所の近場だとは思えない。

 ……廃村だからといって片付けられるコトもなく、新たに緑が植えられるコトもなく……完全に、捨てられた場所と化した人々が住んでいた(あと)

 

 暫しの間、この残酷(・・)な光景から目が離れなかった玲奈だが……ふと、気づく。

 焼き払われた廃村の前に両膝をつき、花を添えながら、まるで(いの)りを捧げる聖女(せいじょ)のように両手を合わせていた子どもの存在に。

 

「女の、子……?」

 

 背は自分よりも、ルイナよりも小さい……一〇歳くらいの身長。

 青い髪が特徴的な小柄な少女。

 街の音も聞こえないような村の跡に人の声が流れたからか、祈っていた少女はこちらへと振り向くと、微笑みながら挨拶をした。

 

「こんばんは。――お姉ちゃんも祈りにきたの?」




『月河七美』

 七美を引き取った張本人であり、母親となった女性。
 最近では、七美に友達ができた事を大喜びしていた。
 現存する“最強の魔術師”――魔帝(エンペラー)の一人。


『トップ』

 名称不明の魔術師。よく仕事をサボって遊び惚けている魔術塔のトップ(……こんな奴がトップで大丈夫か?)。
 七美によって、魔帝(エンペラー)の一人である事が明かされた。


『青い髪の少女』

 玲奈が残酷だと感じた廃村に花と祈りを捧げていた少女。
 サブタイトルにも書いてある通り、この子が妹枠。


【用語】

魔術師(まじゅつし)

 魔力や魔術を行使する者。


魔帝(エンペラー)

 現存する魔術師の中でも、最高位に位置する魔術師たちの総称。
 ――この肩書きを持つ魔術師は、誰もが認める“最強の魔術師”のみであり、強さも技量も他の魔術師とは次元が違う。

          ◆

【予告】

 次回はこの作品初の玲奈の戦闘シーン!
 玲奈はただ可愛いだけの女の子ではないのだ!
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