僕は星野に関わりたくない 作:サササ
それでも良かったら是非読んでいただけると嬉しいです。
明日は土曜日。星野を家に招き僕の手料理を振る舞うイベントが訪れる日だ。
…い、いよいよ明日か……星野のヤツ、喜んでくれるかな……喜んでくれるとうれ……い、いやいや何だこの思考!?
乙女か!?初めて手料理を食べてもらう乙女の思考かこれ!?ああくそッ、頭の中がグチャグチャする。
「……そもそも何で僕はこんな悶々としてるんだ?」
ただ友達を家に呼ぶだけなのに。
……いや、本当は分かっている。相手が星野だからだ。星野だからこそ僕はこんなにも……。
「…やっぱり僕って星野の事……好き……なのかな……っていやいや!そんなわけっ……ない…よな?」
僕は星野に関わりたくない。
僕は星野アイが迎える結末を知っている。だからこそ関わりたくなかった。どう足掻いても、変えられない運命がある
からだ。星野がドーム公演のあの日消えてしまうと言う運命が。
だから…だからこそ関わりたくなかった。だって僕は前世の頃からずっと星野アイと言う人間の事が好きで…関わってしまうとその消失に耐えられないと思っていたから。星野から逃げていた。失う恐怖から逃げていた。
「………神様って趣味悪いよな」
僕は星野が好きだ。それが友達としてなのか女の子としてなのかは分からないけど……やっぱり好きなんだ。
推しの子のキャラクターとしてではなく、一人の人間として好ましく思っている。
だって星野と一緒に居ると…凄い楽しいから。だから僕は星野には笑っていて欲しいし、出来ることならずっと一緒に居たいと願っている。
『マリア!また明日っ』
あんな風に普通に笑っていて欲しい。
嘘で塗り固まれた偽物ではなく、本当の笑顔で笑っていて欲しいんだ。
「…ちょっと臭すぎるかな……なんて」
……星野は嘘が得意なだけの普通の女の子なんだと僕は識ってるし、知ってる。
本当は寂しがり屋で、ただただ普通の愛が欲しかっただけの何処にでもいる普通の女の子。
……知ってるよ、見てきたから。一番近くで。ずっと。
だから…だから僕は……!
「星野を完璧で究極のアイドルになんてさせたくないっ……嘘はとびきりの愛だなんてそんな寂しい事言わせたくないっ……」
分かってるさ。これが僕のエゴなんだってことは。
でも仕方ないじゃないか!だって僕は星野の友達で……!大切で……!
彼女には幸せになって欲しいんだよ!悪いか!くそっ!!
「……自分勝手にも程があるよな…僕って……はぁ」
自己嫌悪に苛まれながら明日の料理の材料を確認するべく、冷蔵庫に……。
「…あれ?なんか卵とか色々足りなく……あっ!?そう言えば練習しまくって足りなくなってたの忘れてた!やばっ」
星野に美味しいふわトロオムライスご馳走する為に毎日死ぬほど練習してた影響がここにきてしまった……!
「い、いやまだ大丈夫だ…まだ夕方だし今からスーパーに行けば材料は全然揃うはず……。早く気づいて良かった……」
思い立ったが吉日。早速僕はスーパーに全速力で向かう為の準備を最速で整えた。
「…星野。喜んでくれたら嬉しいな……頑張るか、本気で」
僕が星野アイに抱いている感情はただの同情なのか、それとも別の何かなのかはまだ自分でもハッキリしない。
それでも……。
「彼女の嘘偽りない幸せそうな顔……見られたら幸せだよな……」
案外理由はそれだけなのかもしれない。アイの笑顔が見られたら僕はきっと凄く幸せな気分になれる気がして……。
…ってあれ?これって……。
「…や、やっぱり僕って星野の事普通に好きなんじゃ……っていやいや!そんな訳ない…よな?」
………………………………。
「……いや、今考えてもしょうがない事だ……。とりあえず後回しにしておこう……うん」
逃げているわけではない。決して。
それに今は買い物に行く事が先決だし……。
「そうと決まったら早速買い出しに…出発するか」
ーーーーーーーーーーーーー買い物中ーーーーーーーーーーーーーーーー
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ーーーーーーーー
ーーーーー
ーーーー買い物終わりーーー
ーーー帰路ーー
「…取り敢えず卵とか調味料とか色々補充出来てよかった……」
これで明日は何とかなりそうだ。
「…意外と重いなコレ……まあいいけど」
そんな色々な事に思考を巡らせながら、夕方の帰り道を何となしに歩いていると、僕と星野の家の間にある公園までたどり着いた。
「いやほんと…アイツの家と僕の家ってかなり近い距離にあるよな……ってあれ?」
通り過ぎる際にふと公園内のベンチを見てみると、何やら見覚えのあるシルエットが見える様な気がして……。
…て言うかアレ、星野じゃないか?いやでも何で今こんな所に……は、話しかけた方がいいのか?
「(随分…落ち込んでるみたいに見えるし……)」
「…………………」
遠目から見ても星野は公園のベンチで俯きながら微動だにしていない。オマケに瞳の色は…此処からでもハッキリと視える。真っ黒だ。
……きっと、何か合ったんだろう。何かが。
……話を、聞いてみたい。少しでも力になれるかもしれないし。お節介かもしれないけど…それでも……星野アイは僕にとって、この世界における初めての友達で……何と言うか…大切な存在みたいな……。
「(って何を小っ恥ずかしい事考えてるんだ僕はっ!?アホかっ!!キモキモのキモだぞこの思考はっ!!)」
…だけど、やっぱ放っておくことなんて出来ないよな。…と、友達だし。
「(……あっ、だけどここでいきなり話しかけるのももしかしたら迷惑かもしれないよな?一人になりたいって可能性もあるだろうし……何か待ち合わせしてるって説も低い確立だけど有るかもだし……よ、よし。ここは一旦家に帰って、防寒着とかココアと持ってもう一回来てみようか…最近結構冷えるしな……全力で走ったら5分ぐらいで直ぐ戻って来れるし…居なかったら居なかったで何事もなく良かったって事で……)」
「よしっ」
取り敢えず僕は一旦家に帰ってオムライスの材料とか色々置いてきてから、全速力でここまで戻ってくる事にした。
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「はぁ…はぁ……け、結構疲れるんだな……全力疾走するのって……」
星野のヤツ、まだ居るのかな……?居なかったらただの取り越し苦労なんだけど……。
「まあそれはそれで良いんだけどさ…何もなかったって事だし」
そして例の公園まで辿り着いた僕の視界に映るのは。
「…………………………」
先程と何ら変わらない、ベンチで俯いてる星野アイの光景だった。
………………行くか。
僕はそのまま星野のとこまで歩き出し。
「…なにしてるんだ?こんな所で。……冷えるだろ」
そう尋ねた。
彼女はそんな僕の唐突な問い掛けに一瞬信じられない様な顔を見せて。
「……え?な、何でマリアがここに居るの?」
「何でって…ここ家までの通り道だし……それでふと公園を見たらベンチに星野が座ってたから何してるのかなって思って」
「あ…そ、そうなんだ……そう言えば近かったねー。マリアの家とここの公園。…明日の待ち合わせもここだったしねーあはは」
…一見するといつも通りの星野アイだ。だけど僕には分かる。彼女は今少し落ち込んでいる。
それは彼女の瞳の星の色が黒く翳っているのが視えるとかそんな理由ではない。
……顔を見れば直ぐ分かる。理由なんて言うまでもない。
「それで?何してるのこんな夕方にベンチに座って黄昏て。……何か合った?」
「……別に…何もなっ……クシュンッ」
…星野でもくしゃみとかするんだな……かわ……い、いやいや!今はそれどころじゃないだろ!?バカやろう!!
「うぅ…さむっ。やっぱ冷えるねーこの時期でも結構」
……さ、寒そうだな。防寒着…一応持ってきたけど……これ僕のなんだよな……『さ、寒いならちょっとこれ着る?僕のだけど』ってキモいのでは?
いやでも………。
……………………………。
「あ、あー…そ、その…これ、僕のお古のやつなんだけど良かったら着る?まだ一度しか着てないから汚いとかはないと思うけど……あっ!で、でも嫌なら別に強要とかはしないから……!」
「!……ううん、ありがと。…わっ、あったかいねこれ。それに……」
「?それに?」
星野は僕のコートに顔を埋めて。
「……マリアの、匂いがする」
そんな事を……。
「!?そ、そんなに臭かったかな!?ご、ごめん!」
「え!?い、いやそうじゃなくて!なんか…落ち着くなーって」
「そ、そうなんだ…な、ならよかった……」
「う、うん……」
そこでふと、妙な沈黙が過ぎる。
お互いの顔が見れない。なんだか気恥ずかしくて。
その静寂に耐えきれなくて、僕は咄嗟にもう一つの目的を果たす事にした。
「あ、あとこれ…缶ココアも一応持ってるから……よ、良かったら飲んで」
目を逸らしながら渡すことしか出来ない自身の情けなさに割と絶望している僕を尻目に星野は。
「……あ、ありがと!」
満面の笑みで、瞳の星を輝かせながらそう言ってくれた。
「んっ…ふふっ、やっぱ美味しいね。このココア」
「そ、そうかな?…元気が出たならまあ……良かった」
「!…う、うん……ありがと……」
「それで…話を戻すけどさ、何で星野はこんな所で座ってるんだ?もう結構遅いし……あ、危ないのでは?」
「…えっと…その……お母さんと喧嘩……と言うか……言い合いになっちゃって……それでお母さん家から出て行っちゃってさ」
……星野アイの家庭環境はやっぱり…原典通りって事なのかな……。
…クソッ!!
「それで…家に一人で居るのもちょっと嫌になっちゃって。気分転換……みたいな?今日は多分、もう帰って来ないだろうしねー。あはは」
……星野はやっぱりアイドルとしての才能が有るだけの普通の女の子だよ。
普通に傷つくし、取り繕うのが上手いだけで、やっぱり今も当たり前の様に落ち込んでいる。
…………………僕に、出来ること。
「……お母さん帰って来ないんだったら…今日のご飯とかどうするの?帰ったら、何かあるの?」
「え?うーん…多分何もないかなー。でも大丈夫だよ!一日くらい全然問題なし!!ダイエットみたいな?それに、明日になったらマリアの美味しいご飯食べられるしね!楽しみだなー」
あっけからんと笑う彼女はやっぱり嘘が上手いんだろうな。
………。
「…………良かったら、今から家来る?」
「………え?」
「材料あるし、星野の分も全然作れるけど」
「……でも……迷惑じゃない?突然だし……明日も……」
「全然、迷惑なんかじゃないよ。寧ろ僕は…星野が来てくれると……嬉しいかな。僕の料理食べて欲しいし……それに」
「………それに?」
「ぼ、僕はその……星野と一緒に居るの……凄く楽しいから」
「!」
「だ、だからその!星野が迷惑とかじゃなかったら是非来て欲しいかな……ってどうした?」
「…えっ?あっ、な、何でもないよ!大丈夫だから!!」
「そ、そうか?」
「う、うん!全然大丈夫だからね!!あはははっ!!」
「そ、そうなんだ…ならいいけど……そ、それで星野は結局……家、来る?」
「……本当に、いいの?」
「さっきも言ったけど、来てくれた方が僕は嬉しいかな。…ほ、星野と一緒に過ごすのは退屈しなくて凄く楽しいし…一緒にご飯、食べたいし。
……僕は星野と居るの結構好きなんだ。……楽しいから」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!」
「えっ!?ど、どうしたの!?大丈夫!?」
「……ねっ、マリア?」
「?な、なに?」
「マリアの家まで手、繋いで行ってもいい?」
「へ?そ、それは何で……?」
「………駄目?」
「い、いや別に駄目じゃないけど…んっ、こ、これでいいの?」
「うんっ!…マリアの手、あったかいね?」
「そ、そんな事ないだろ。普通だよ」
「えー?……凄くあったかいよ?マリアは……私の手、あたたかくない?」
「………ま、まあ確かに…あったかい……かも………な?」
「!でしょ!?凄くあったかい!……マリア」
「?なに?」
「………ありがとね」
「…気にするなよ。らしくないじゃん」
「それでもありがと。……本当に、ありがと!マリア!!」