隣の席の彼女は今日もアホ可愛い   作:138ネコ

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第11話

 学校の終わった帰り道。

 駿介、このは、真紀、ともの四人で帰路に着いていた。

 真紀とともが仲良く雑談し、その横で駿介が時折相槌を打つ。

 

「フフーン」

 

「このは、危ないから普通に歩いた方が良いぞ」

 

「大丈夫大丈夫」

 

 縁石を見つけては、その上を歩きたがるこのは。

 駿介に注意されるが、このぐらい平気だと言わんばかりに、縁石の上でジャンプをしたりくるくると回ってみたりする。

 完全に逆効果である。

 

「あっ」

 

 だがお約束のように拍子に足を踏み外し、バランスを崩すこのは。

 それを読んでいた駿介がさっと手を出し、このはを支える。

 

「だから言っただろ。ったく、大人しくしとけ」

 

「うん。ありがと」

 

 流石に転びそうになったばかりなので、このみは自重をして駿介の隣を普通に歩き始める。

 が、何かに興味を持ったのかフラフラと離れて行こうとする。

 

「全く、あちこち動き回ってばかりで困ったやつだ」

 

 駿介はそんなこのはの首根っこを掴み、自分の方へと引き寄せる。

 

「いっそゴローさんみたいに首輪をつけるべきか?」 

 

「ゴローさんとおそろいの首輪!?」

 

 首輪と言われ、嫌な顔どころかむしろノリノリのこのは。

 前にゴローさんと遊んで以来、このはは「次はいつゴローさんと遊ぶの?」とばかり言うほどにゴローさんの事を気に入っていた。

 なので首輪をつけられると言われても、単純にゴローさんとお揃いとしか思っていないのである。

 

「駿介、首輪はやめておいた方が良いわよ」

 

 真紀の言葉に、ともが頷く。

 

「動物用の首輪って色々薬が塗ってあるから、すぐにかぶれるし」

 

 違う、そうじゃない。思わずともが心の中で叫ぶ。

 友人の心配する点がおかしい。  

 

「じゃあ湯煎して薬を落とせば大丈夫じゃないか?」

 

「確かに! このはちゃん、その時は私にもリード持たせてくれる」

 

「うん! 良いよ!」

 

 駿介と真紀が仲良くこのみに首輪とリードを付けて歩く姿を想像するとも。

 どこからどう見ても犯罪臭しかしない。事案である。

 このままでは友人が警察のお世話になってしまう。

 だが常識で説いたところで駿介と真紀は止まらないのは、ともは既に分かっていた。

 

「首輪だと引っ張った時に首が締まって危ないよ」

 

 なので、別視点の問題を提訴してみた。

 ともの発言を聞き、三者三様の反応を示す。

 

「確かに、首が締まるのは危ないし、このはも痛い思いをするからダメだな」

 

 駿介のその言葉に、真紀とこのはが「そうだね」とがっくりした様子で同意をする。

 なんとか事案は避ける事が出来たが、こうもあからさまに落ち込まれれば、自分が悪くないとはいえ申し訳なく感じる。

 なので、ともはスマホを開き、代案を出す。

 

「代わりにこういうのはどうかな?」

 

 スマホの画面には、子供がハーネスを付けそこにリードが付けられていた。

 これなら引っ張られたとしても安全だろう。代案としては間違っていない。

 間違っていないのだが。

 

「これはちょっとなぁ……」

 

「ボク、こんな小さい子じゃないよ!」

 

「とも、流石にこれはこのはちゃんに失礼じゃないかな」

 

 言う相手が間違っていた。

 犬と一緒にする方が失礼なのでは?

 ともの頭をその一言がよぎるが、彼らにそれが言って通じるわけもなく、「そっか、ごめんね」と苦笑いで謝るだけであった。

 苦労人である。

 

「首輪付けたかったなぁ……」

 

「じゃあコスプレ用の首輪とかどう?」

 

 あまりにこのはが悲しそうだったので、ともがスマホでコスプレ用の首輪を調べこのみに見せる。

 適当に「そうだね、残念だね」と流せば良いだけなのに、お人好しなのだろう。 

 コスプレ用の首輪を見て、こんなのがあるんだと嬉しそうに興奮するこのみだが、すぐに困った表情になる。

 

「ボク、可愛くないから似合わないと思う」

 

 スマホには首輪と犬耳を付けた女性が映っていた。

 そんな女性と比べて、ボクじゃだめだよねとこのはは力なく笑う。

 

「もしもし、そういやアンタってコスプレが趣味だったよね。首輪とか色々ない? 特に首輪」

 

「荷物持ちが必要だろ? 手伝おう」

 

 このはの言葉を聞き、即座に駿介と真紀が動いていた。

 コスプレ衣装を借りる約束を取り付け、受け取りに行くと何も言わずに駿介が荷物持ちを始める。

 

「流石に俺の家に連れ込むのは問題があるだろうし、真紀の家で良いか?」

 

「構わないわ」

 

「あの、ボクなんかが着ても良いの?」

 

「当然よ。このはちゃんが着た姿が見たいわ」

 

 真紀にそう言われ、このはが恥ずかしそうに目線を逸らし、駿介を見る。

 駿介が笑顔で頷くと、このはもパッと笑顔を咲かせ「うん!」と力強く答えた。

 

(まぁ、リード付けて外散歩されるよりは健全だし大丈夫でしょ)

 

 これ以上何か口出しすれば、余計に泥沼になりそうなので口をつぐむとも。

 話が大分逸れてはいるが、本人たちが良いなら、それで良いじゃないかと半分開き直りのように自分に言い聞かせる。

 この場にいれば巻き込まれるだろうし、帰ろうとしたその時だった。

 ニッコリと笑顔でともの肩を掴む真紀。拒否の意思を出すため笑顔で首を横に振るとも。そんなともに笑顔でうんうんと頷く駿介

 ともの強制連行確定である。

 

(んんんんん、わけわかんねぇ)  

 

 ちくしょう、帰りてぇと心の中で大暴れするともを引き連れ、駿介たちはこのはを着せ替え人形にコスプレを楽しんだ。

 この日のこのはのコスプレ写真は、駿介のアホ可愛いフォルダの中に大切に保存されている。

 

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