隣の席の彼女は今日もアホ可愛い   作:138ネコ

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第13話

「しゅーんすけーくーん」

 

「己は小学生かッ!」

 

 日曜日。

 休日の朝早くから住宅街に駿介の叫び声が響く。

 スマホがあるのだから、それで着いたと連絡すれば良いだけである。

 わざわざチャイムを押して名前を呼ぶなど、今どき小学生でもやらないだろう。

 

「あっ、駿介おはよう」

 

 玄関から出てくると同時に突っ込む駿介に、このはは気にせず挨拶をする。

 

「あっおはよう。じゃねぇよ! 今何時だと思ってるんだよ!」

 

「七時!」

 

 元気よく返事をするこのはを見て、駿介が軽く頭を抱える。

 

「約束何時だったか忘れたのか?」

 

「十時!」  

 

「なるほど、確信犯か」

 

「ちょっと早く来ちゃった」

 

 ちょっとどころではない。

 

「もしかして寝てた?」

 

「あぁ、おかげで目が覚めたよ」

 

 駿介、寝起きの為かこのはに対する物言いが普段より荒くなっている。

 だが、このははそんなの気にした様子もなくニコニコとしている。能天気、いやアホの子である。

 なんなら駿介の皮肉混じった言葉ですら、お礼と受け取ってしまうほどに。

 

「まぁなんだ。とりあえず上がれ」

 

「うん!」

 

 玄関で靴を脱ぎ、ちゃんとお邪魔しますを言ってからあがるこのは。

 このはを家に上げ、部屋まで行こうとする駿介たちをコソコソとしながらもバレバレな覗きをする者達がいた。

 駿介の両親である。

 

 年頃の息子が、こんな朝早くから女の子を家に連れ込んでいるのだ。気にするなという方が無理な話である。

 勉強のために友達が来ると言ってはいたが、まさか女の子とは。

 駿介の母、物陰からこっそり親指を立て息子にグッジョブを送る。

 

(このクソババア!!!!)  

 

 親にその様な言葉遣いはどうかと思うが、親の行動も子供視点からしたらどうかと思うのでどっちもどっちだろう。

 

「駿介、今あっちから手だけ見えなかった?」

 

「さぁ? 幽霊じゃないか?」

 

「ウソッ!? 駿介の家幽霊が出るの!?」

 

 出来る限り手が見えた方角を見ないようにして、駿介の背中にぴったりとくっ付きながら歩くこのは。

 すると今度は手ではなく、満足そうな笑みを浮かべた女性の顔が出てくる。

 幽霊よりもよっぽどタチの悪い地縛霊か何かだろう。

 

 駿介が一睨みすると、「おーこわいこわい」といわんばかりの表情で顔を引っ込める。

 両親を無視し、駿介の部屋に入るが、このはが落ち着かない様子でソワソワしている。

 

「幽霊ならここまで来ないから安心して良いぞ」

 

「そ、そうなの?」

 

「あぁ。大丈夫だ」

 

 ふぃーと息を吐きながら、その場にへなへなと座り込むこのは。よっぽど幽霊が苦手なのだろう。

 大丈夫だと聞くと、一気に元気になり、駿介の部屋をキョロキョロと見渡し始める。

 本棚を見て見たり、飾り棚にある物を見たり、そしてベッドの下を覗き込んでみたりと。

 とてもお行儀が悪い。

 

「エロ本とかは探してもないぞ?」

 

「ふぇ、えろ本!? 違うよ、ボク面白いのないか見てただけだから!」

 

 このは、目が泳ぎまくりである。

 面白い物がないか探していたのも事実だが、もし駿介がえっちな本を持っていたらからかってやろうと思っていたのも事実である。

 駿介もこのはがそんな行動を取るくらい分かっていたので、そのたぐいのものは見つからないようにちゃんと事前に隠している。

 

 駿介にえっちな本の指摘をしてやろうと思っていたのに、逆に自分がえっちな本を探してると言われ、自分がスケベと言われてる気がして恥ずかしくなったこのは。

 フーフーと音の出ない口笛を吹きながら、自分のカバンを探り始める。

 

「今日は何して遊ぶ!?」

 

 このはのカバンから出てきたのは、ボードゲームやおもちゃなど様々な遊び道具である。

 なお、勉強道具は一切ない。

 

「いや、勉強だろ?」

 

 駿介のマジレス。

 次のテストの点数次第でお小遣いが決まるのだ。

 彼にとっては割と死活問題である。

 

「……そうだった」

 

 このはは決して遊ぶ事だけを考えていたわけではない。

 勉強の合間に遊ぼうと考えていただけなのだ。なのだが、合間に何をして遊ぶか考えていて勉強の事を忘れてしまっていたのだ。

 

 お小遣いは大事だが、目の前でションボリするこのはもアホ可愛い大事な奴である。

 

「勉強ある程度やったら、息抜きに遊ぶか」

 

「うん!」

 

 それじゃあどの教科をやろうかと教科書を机に置く駿介。

 それじゃあどのゲームをしようかとボードゲームを置くこのは。

 

(本当にコイツに勉強を教わって大丈夫なのだろうか) 

 

 駿介の不安とは裏腹に、このはは真面目に勉強を教え始めた。

 このはの教え方は上手く、駿介自身が実感できるほどに勉強は捗っていく。

 ただ一つ難点があるとすれば。

 

「ここはドーンって感じで代入するの!」「ズババーンと助動詞にしてみる!」「コイツはガツっと応用するだけだよ!」

 

 意味の分からない擬音が入る事である。

 

(勉強の教え方はとても分かりやすいのに、擬音が入る理由がサッパリ分からん)

 

 楽しそうに擬音を口にするこのはがアホ可愛いのでまぁ良いかと納得し、駿介は大人しく勉強を続けた。




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