隣の席の彼女は今日もアホ可愛い   作:138ネコ

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第16話

「チクショウ、騙された!」

 

 日曜の午後、このはと軽く昼食を取った駿介。

 このはの行きたい所なんて、どうせくだらない所だろう。

 そう思いながらも付き合った駿介だが、騙されたと口にせずにはいられなかった。

 

 駿介たちが来たのは、ショッピングモールの一角。 

 そこには舞台と、観客用の椅子が並べられ、立てかけられためくり台には大きくこう書かれている。

 

 【ジャスティスマンショー】

 

 ようはヒーローショーである。

 日曜の朝早くからやっている特撮番組、正義刑事ジャスティスマン。

 それのヒーローショーをこのはは見たかったのだ。

 

 これをちびっ子たちに混じってみる。想像しただけで恥ずかしさから汗が吹き出しそうになる駿介。

 帰りたい。心からそう願う駿介だが、隣で目を輝かせているこのはをみると、とてもじゃないが口に出せなかった。

 

「あまりはしゃぐなよ」

 

「うん!」

 

 なので、せめて目立たないでくれと釘を刺すのが精いっぱいであった。

 ため息を吐きながら、空いている席を探す駿介。

 周りには子連れの親子……と同じくらい、大きなお友達も混ざっていた。

 中にはカップルもいたりするくらいである。

 

 これならあまり目立たないし問題ないだろう。

 適当な席に座り、少しだけ落ち着く駿介。

 

「フ、フヒ。実は拙者、ジャスティスマンと同じベルトがあって。良かったら触っても良いですよ」

 

「えっ、あの……ボク、良いです……」

 

「そんな遠慮しなくて良いのに」

 

 問題ないだろうと思った駿介だが、速攻でこのはが隣の席の大きなお友達に絡まれていた。

 どんな会場にも何故か一定数現れる変身ベルト自慢マンである。

 

 人見知りのこのはが、弱々しい声で断るが、遠慮していると勘違いしたのか強気に迫る変身ベルト自慢マン。

 こんなとこ一人でこれば良いじゃないかと思っていた駿介だが、その様子を見て考えを改めた。

 こんな所にこのは一人で行かせたら、危ないだけだな。

 

「俺のツレに何か用ですか?」

 

 このはの肩を抱きよせ、自分の胸元へ寄せる駿介。

 俺の女アピール。男前である。

 

「いや、拙者は、その子が見たそうにしてたから」

 

 ボソボソと言い訳を続けた変身ベルト自慢マンが、目を泳がせながら席を移動していく。

 しばらくして他の席で問題を起こしたのか、係員に連行されるが、駿介たちはそれに気づく事はなかった。

 待ってる間に流れるジャスティスマンの主題歌にこのはが興奮し、駿介にジャスティスマンの魅力を語り始めたからである。 

 

 ジャスティスマンとやらには毛ほども興味を示さない駿介だが、嬉しそうに語るこのはにとりあえず頷き相槌を打ち続ける。

 アホ可愛いのは構わないが、さっきの男が付けてた変身ベルトを買いたいと言い出さないかだけが不安であった。

 

 やがて始まるジャスティスマンショー。

 司会のお姉さんが喋り始めると、突如現れる謎の怪人たち。

 そして怪人にさらわれステージに立たされる子供たち。とこのは。

 

「お前もさらわれるのかよ!?」

 

 最近ではカップルにも配慮し、ヒーローショーで大人がさらわれる事も珍しくない。

 司会のお姉さんが、子供たちに次々と自己紹介をしてもらい、このはの番が回ってきた。

 

「お名前は何かな?」

 

「このはですっ!」

 

 緊張しているのだろう。背筋をピンと伸ばし、カチコチになったこのは。

 そんなこのはの反応に、会場からちょっとだけ笑いが零れる。

 

「今日は友達と来たのかな? それとも彼氏と来たのかな?」

 

「駿介と来ました!」

 

 今度は先ほどより大きな笑いが生まれた。

 周りは笑っているが、駿介だけは笑っていなかった。笑えなかった。

 

「そっか、じゃあ駿介君に手を振ってみようか」

 

「しゅんすけー、ボクは大丈夫だからなー」

 

 このはの反応に、会場だけでなく怪人までも思わず吹き出し、そして謎の拍手が生まれる。

 顔を真っ赤にしながら冷や汗を流す駿介。

 

 その後のヒーローショーは滞りなく進行し、目の前でジャスティスマンを見た上にサインまでもらいこのははご満悦だった。

 もう二度とヒーローショーには行かないと誓った駿介だったが、そんなこのはの反応に誓いが揺らぐ。

 

(まぁ、さらわれる事なんてもうないだろうし、たまになら連れてってやるか)

 

 そしてまた、ヒーローショーでこのはがさらわれて駿介が恥ずかしい目に合うのだが、それはまた別の話である。

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