「駿介、明日暇?」
「暇だが、どうした?」
「ボクの家に来ない?」
女の子に「家に来ない?」と誘われるイベントは、年頃の男の子の憧れの一つである。
しかも美少女であるこのはの誘い、もはや胸がドキドキの甘酸っぱい青春の一ページである。
「分かった、このはの家でどこだったっけ?」
だというのに、この駿介という朴念仁は全くドキドキもワクワクもしていないのだ。
このはの家なら、このはが待ち合わせより早く来る事なんて無いから楽だな程度にしか考えていない。
翌日は休みという事もあり、昼前の時間を希望するこのは。
特に反対意見のない駿介は、このはの希望通りの時間で約束を取り付けた。
そして、迎えた翌日。時刻は午前十時前。
教えられた住所を元に、このはの家を見つけた駿介。
何の変哲もない一軒家である。
「これ、必要だったかな?」
このはの喜びそうなおもちゃをカバンに入れてきた駿介。
このはの事だから、部屋にはたくさんオモチャがあるだろうし不要だろうと思いつつも律儀に持ってきたのだ。
なんだかんだでこのは思いである。
駿介がチャイムを鳴らすと、中から「どうぞ」とこのはの元気な声が聞こえてくる。
このはの声を聞いてからドアを開ける駿介。
ドアを開けてすぐに彼は頭を抱えそうになる。
「お帰りなさいませ、ご主人様」
玄関でメイド服を着たこのはがお迎えしていたからである。
コイツはアホなのかと思った駿介だが、即座にアホだったわと思い直す。
どう反応して良いか分からず立ち尽くす駿介。
「ご主人様、お荷物お預かりしますね」
「あ、あぁ」
駿介のカバンをやや強引に奪い取るこのは。
思考が停止していたせいで反応が遅れた駿介。
カバンを取られたことにより、このまま帰るという選択肢がなくなったのは言うまでもない。
「それではこちらへどうぞ」
このはの案内に従いついて行く駿介。
「家の人は?」
「弟が子供会の家族でお泊り旅行で、両親はそっちに付いて行ったから今日は居ないよ」
「そうなのか」
年頃の娘が男を家に呼んだとあれば、両親は興味本位で見てくるだろう。
駿介がこのはを家に呼んだ時も、両親がそんな感じだったのだから。
なので、このはの両親から好奇心の眼差しを受けないのはありがたくある駿介。
ありがたくはあるのだが、一つだけ懸念が。
「このは」
「どうなさいましたか、ご主人様?」
「俺以外の男を、親が居ない時に家に上げるなよ」
「分かりましたご主人様♪」
なにが「♪」だ。こいつ本当に分かっているのかと不安になる駿介。
まぁ、それでも一応念を押しておく必要があった。
家に誰もいない状態で、年頃の娘が男を家にあげるなどどうかと思う駿介。
駿介の「俺以外の男を」発言もどうかと思うが。
「ちょこっと散らかっていますが、どうぞ」
このはがドアを開け、中へどうぞと促す。
このはの部屋は、駿介が思った通りの部屋だった。
(散らかってるなぁ)
足の踏み場がない程汚いわけではないが、食べかけのスナック菓子の袋とかが散乱している。
読みかけの漫画や、コードが絡み合っているゲーム機などツッコミどころしかない。
「このは、ご主人様として命令良いか?」
「はい、ご主人様!」
「部屋の掃除をするぞ」
駿介の言葉に、このはの顔が曇ったのは、言うまでもない。