隣の席の彼女は今日もアホ可愛い   作:138ネコ

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第21話

「このは、これは捨てて良いやつか?」

 

「うーん、まだ使うかもしれない」

 

「そうか、こっちのこれは? もう壊れかけだけど?」

 

「まだ動くし勿体なくない?」

 

「そうか……」

 

 明らかなゴミ以外は、一つ一つこのはに確認しながらゴミと仕分けする駿介。

 大体が「必要になるかもしれない」というせいで、捨てられずにいるせいで掃除の成果はあまり出ていない。

 とはいえ、ちゃんとしたゴミが減るだけでも見栄えは違う。

 

 先ほどまで散らかっていて汚い部屋だったのが、物が多い物置部屋程度には片付いていた。

 とはいえ、散らばるゴミはまだまだある。

 

「このは、これは……」

 

「あっ……」

 

 四つん這いの姿勢でゴミを拾い集めていた駿介。

 その彼が手に取ったのは、一枚の白い布。このはのパンツであった。

 

「「……」」

 

 気まずい空気が二人の間を流れる。

 脱ぎ散らかした服があるのだから、これもそうだろうと引っ張り出して初めてパンツだと理解したのだ。

 衣類が散らかっているならまだ分かるが、下着類まで散らかっているのはどうかと思う。

 更に言うなら、そんな状態で友達を招き入れるのはもっとどうかと思う。

 

 まぁ、このはは駿介を呼んだ時点ではそんな事頭に入っていなかったのだから仕方がない。アホな子なので。

 呼んでから部屋の惨状に気づき、必死に掃除をしたのだ。なんとか人が入れる程度に。

 このはにとっては相当綺麗にしたつもりだが、他の人から見れば当然汚いので、駿介が掃除をしようと言い出した。

 

 結果、この惨劇である。

 駿介が親指と人差し指で摘まんだ下着が、無常にもプラプラと揺れる。

 

「そ、それは洗濯機だね!」

 

「そうだな、衣類の上に置いとくからさっさと出してこい」

 

「多分ブラとかまだあると思う!」

 

「そ、そうか。あっ多分これだな」

 

 ポイポイっと脱ぎ散らかした衣類の上に下着を投げる駿介。

 それを衣類と共に持ち上げ、部屋を出ていくこのは。

 

(駿介にパンツ見られた、ってか触られた)

 

 顔を真っ赤にしながら、ドタドタと洗濯機へ向かうこのは。

 意識するなという方が無理である。

 そして駿介はというと。

 

(ブラって思ったより硬いんだな……)

 

 まじまじと自分の指を見つめ、このはの下着の感覚を思い出していた。

 相手はこのはだぞと必死に自分に言い聞かせようとする駿介だが、そう思えば思うほど、指先に先ほどの感覚が甦る。

 お年頃である。

 

「しゅんすけー?」

 

「うおっ、どうした!?」

 

 指先の感触に気を取られ、このはが戻って来ていた事に気付かなかった駿介。

 このはの声に驚き、ぴょんと飛び上がり、ピシッと直立を決める。

 

「どうしたの?」

 

「なんでもない。このはこそどうした?」

 

「うん。そろそろお昼ご飯にしない?」

 

「そうだな。掃除もひと段落着いたし、昼めし食って遊ぶか!」

 

「うん!!」

 

 部屋はまだまだ掃除をするところが多い。

 だが、駿介はここで一区切りつける事にしたようだ。地雷がまだありそうなので。

 

 そんな駿介のお掃除終了発言に、このははルンルンである。

 やっと遊べるので。先ほど下着を見られたどころか触られた事などとうに頭から抜けている。

 

「じゃあ今から作るから、駿介はTVでも見て待ってて」

 

「このはに任せてばかりじゃ悪いし、何か手伝うよ」

 

「良いの良いの、駿介は今日一日ご主人様なんだから!」

 

「お、おう。分かった」

 

 このはに背を押され、リビングに戻る駿介。

 実際のところ、手伝うと言っても駿介が出来る手料理はカップラーメンくらいである。

 なんならカップヤキソバの湯切りを失敗し、麺を全部流してしまったり、粉末ソースを湯切りせずにかけたりするくらいのダメっぷりである。

 

 台所ではこのはが鼻歌交じりに料理を作っている。

 その姿をリビングから覗く駿介。

 普段のこのはの弁当を知っているので不安があるわけではない。

 ただの、本当にただの興味本位である。

 

「どうしたの駿介?」

 

「なんでもない」

 

 自分の事を「ボク」と呼び、小学生の男の子が好みそうな物にばかり興味を持つ少女。

 普段はそんなこのはを見ても、アホの子としか見れない駿介。

 

 金髪ツインテールに、ハイソックスとミニスカートの間に見える絶対領域。

 可愛い後ろ姿だが、前から見ても可愛らしい顔つきのこのは。

 それは、どこからどう見ても美少女そのものだった。駿介の目が奪われる程の。

 

「さては、お腹が空いてつまみ食いしようと考えてたな」

 

 そんなガキみたいな事考えるか。

 そう言い返したい駿介だが、じゃあ何で見ていたか聞かれたら答えようがない。

 

「あちゃー、バレたかー」

 

 なので、おちゃらけた感じで、このはに同意する。

 そんな駿介にこのはも「しょうがないな」と笑って返す。

 あっはっはと笑って誤魔化そうとする駿介の前に、このはが小走りで近づく。

 

「はい、アーン!」

 

 そう言って、爪楊枝で刺した唐揚げを駿介の口元に差し出すこのは。

 このはにとってはいつものノリである。

 駿介もこれを口にして、アホな事を言ってこのはを調子に乗らせるのがいつものパターンなのだが。

 

「お、おう」

 

 からあげを口にして、駿介は「うん。美味い」とモゴモゴいう程度である。

 一度「女」と意識してしまうと、行為の一つ一つがやたら恥ずかしく感じてしまう。

 自分を見つめるこのはの目を直視できない駿介。

 

「フライパン火つけたままだけど大丈夫か?」

 

「あっ、そうだった」

 

 台所にまた戻り、料理を再開するこのは。

 少しだけ駿介の反応に違和感を覚えるが、お腹が減っているんだろうな程度で違和感を流し料理に集中し始める。

 

「ご主人様ランチ完成です!」

 

 お皿の上には、ハンバーグ、唐揚げ、オムライスにポテトサラダと子供に大人気の料理ばかりが並んでいる。

 オムライスに旗は立っていないが、どこをどうみてもお子様ランチである。

 なんならデザートのプリンまで添えられている。

 

「このは、これってお子様ランチじゃ」

 

「いいえ、ご主人様ランチです!」

 

 思い出したかのようなメイド口調で、ご主人様ランチと言い切るこのは。 

 実際に料理中に『ご主人様』設定を思い出し、急遽作ったわけだが。

 

「はい。ご主人様。アーンです!」

 

 まずはオムライスをスプーンですくい上げ、駿介の口元へ持って行くこのは。

 

「いや、このは?」

 

「ご主人様、好き嫌いはいけませんよ!」

 

 小さい子を宥めるように、プンプンといった感じで注意をするこのは。

 論点はそこじゃないと言いたい駿介だが、コイツの事だから何を言っても動かないだろう。

 仕方なく口を開け、咀嚼する駿介。

 

「ご主人様、美味しいですか?」

 

「あぁ、このはは何を作らせても上手いな」

 

「フフン。そうですよ。だからちゃんと全部食べてくださいね」

 

 そう言って、スプーン片手にまた「アーン」をするこのは。

 

(ええいままよ)

 

 顔を赤くしながら、ひな鳥のように次々と食べる駿介。

 この日のこのはの料理は作りたてという事もあり、いつもより美味しいはずなのだが、今の駿介には味が分からないだろう。

 胸の高鳴りがなんなのか分かっていながら、あえて目を逸らすように料理を食べる事に集中する駿介。

 

(なんだろう。駿介にはいつも食べさせてるのに、今日はなんかドキドキする)

 

 このはも同じく顔を赤らめていた事に、駿介は気づいていない。

 どちらもアホ可愛いやつである。

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