隣の席の彼女は今日もアホ可愛い   作:138ネコ

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第26話

 暑さが増していく七月某日。

 教室で下敷きをうちわ代わりに使い、涼を取ろうとしている駿介の元にこのはがいつものように寄ってくる。

 

「駿介。相談があるんだけど」

 

「どうした? 落ちてたものでも拾ってお腹を壊したか?」

 

「違うよ」

 

 ふむ、と顎に手をやりこのはを見る駿介。

 普段なら元気いっぱいにツッコミを入れてくるこのはが、今日はしおらしくしている。

 

(乗ってこないという事は、真剣(マジ)で悩んでいる事か)

 

 真面目に答えてやろうと、手に持った下敷きを机の上に置き、このはに向き直る。

 

「それで、相談っていうのは?」

 

「うん。実はね……」

 

 少しモジモジしながらこのはが口を開く。

 そんなこのはの話を聞き、駿介が「分かった」と頷くと、このはがパッと笑顔になる。

 そして迎えた土曜日。

 

「このは、お前は前に乗るだろ!?」

 

「当然だよ!!」

 

「「ヒャッホー!!」」

 

 駿介とこのはは、プールに来ていた。

 二人乗り用のゴムボートに乗り、ウォータースライダーを一気に駆け抜ける。

 ぐねぐねとカーブを曲がるたびに、キャッキャと楽しそうな声を上げ、ゴール地点のプールに着水すると楽しそうに笑い合う。

 

「このは、流れるプールがあるぞ!!」

 

「フフーン、こんな事もあろうと、ボクはちゃんと浮き輪を持って来てるもんね!!」

 

 普通よりやや大きい程度のドーナツ状の浮き輪だが、小柄のこのはが持つと巨大サイズの浮き輪に見えなくもない。

 流れるプールに浮き輪を浮かせ、その上にすっぽりと収まるこのはを見て、小柄な体系も良いなと羨ましがる駿介。

 このはの持っている浮き輪は貸出品。

 同じ物を借りてこれば、駿介も乗れなくはないだろうが、乗った所で窮屈なのは目に見えている。このはのように快適とはならないだろう。

 

「クソ、羨ましい」

 

「だったら駿介も小さくなって見ればぁ?」

 

 ニヤニヤと笑うこのはに、そんな都合よく伸び縮み出来るわけないだろと呆れ顔を見せる駿介。

 

「そんな事言うやつは、こうだ!!」

 

 そう言って駿介はこのはの浮き輪を掴むと、ぐるぐると回し始める。

 水の上なので浮き輪は抵抗がなく、駿介が回すたびに、回転の勢いが強まっていく。

 

「地獄のコーヒーカップの刑だ!」

 

「うわっ、駿介。アハハ、もっともっと!!」

 

「どこまで耐えきれるかな!!」

 

 勢いよく回し過ぎた結果、浮き輪から出たこのはの足が顔面ヒットし、水の底に沈む駿介。

 いてぇと言いながら浮かび上がった駿介を、このはが「バーカバーカ」と指を差しながら笑い飛ばす。

 そのお返しにと、駿介がこのはの浮き輪を下から持ち上げプールに叩き落とす。お返しも何も、自分が原因だというのに。

 プールに落とされたこのはが、浮き輪に捕まりながらプンスカと文句を言っているが、どこ吹く風の駿介。笑って適当な相槌を打つだけである。

 全くもうと言いながらも、それはそれで楽しかったのだろう。駿介に釣られこのはも笑いはじめる。

 

「いやぁ、プール楽しいな」

 

「うん!!」

 

 休憩時間になり、プールから上がると、備え付けのビーチベッドにそれぞれ寝転び、次は何をしようかと話し始める。

 もう一度ウォータースライダーに行くのも良いし、波のあるプールに行くのも楽しそうだ。今日はとにかく遊び倒そう。

 ワクワクと周りを見回すこのはが、ある事に気づく。

 

「って、駿介。今日はボクの泳ぎの練習に付き合う約束でしょ!?」

 

「あっ、やっと思い出した?」

 

「『思い出した?』じゃないよ!!」

 

 駿介としては、もうちょっとこのはで遊びたかった気持ちはあるが、バレてしまっては仕方がない。

 

「それじゃあ、休憩したら練習するか」

 

「うん!」

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