【ブルアカクロススレ】ルビコンからやってきたウォルター達が   作:AC組んでSS書いてる人

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ガルム
Garmr。北欧神話に出てくる猟犬。
冥界と現世の境界を守っていおり無闇に冥界へと近付く者たちを追い払い、冥界から逃げ出そうとする死者を見張る役目を持つ。






ガルム

それはふとしたことが起因だった。

 

「ニューハウンズのハンドラー・ウォルターっていっぱい部下がいるよね」

「そうだね~」

「それで私思ったんだよ。

 ハンドラーっていうぐらいだからここに来る前にもロニーとエアという奴以外にもいたんじゃない?」

「まっさか~」

 

噂話。誰も気に留めないような話。みんな知ってると流してしまうようなそんな浅はかな噂。

 

だが、それは奇しくも真実をとらえていた。

 

だからなのかもしれない。だからこそなのかもしれない。

 

彼らがよみがえったのは

 

 

 

 

 

それはある日のことだった。

622がACとMT数機、そしてテンリが駆る4脚MT一台を引き連れて違法工場を潰しに行った際のことだ。

今までの恨みか何か知らないが思ったより多くの粗製MTが襲い掛かってきた。

360度囲まれて盾持ちのMTや4脚MTが前に出て活路を開こうとしているが状況が著しくない。

 

応援は既に呼んだ。

ここで耐えればこちらのものだとパルスプロテクションを張ろうとしたその時である。

 

『622、聞こえますか?!』

「エアさん?!」

そちらに接近している機体反応が複数あります!気を付けてください!』

「援軍じゃないんですか?!」

『まだ到着できる距離ではありません!!』

 

次の瞬間、粗製MTに大量のミサイルが降り注いだ。

辺りにガトリングの音が響き渡り、レーザーの光がMTを貫通していく。

ハンドガンの連射音が耳に伝わってくる。

 

誰かが来たんだ。だがなぜ?誰が?何のために?

 

そして粗製MTが壊滅し、あたりが開けた時、彼女たちは目撃した。

 

「ロニーさん・・・?」

ACは4機。どれもRaDのフレームで統一されている。

全員武装はバラバラだがその統率された動きが歴戦であることを証明している。

誰しもが感じた。まるで、統率された猟犬…狼の群れのようだったと。

 

「いや、違う。あなたたちは誰なんですか・・・?」

 

「阿手ケンナ、ただいま現着しましたわ!・・・あれ?敵はどこでして?」「河岸コエ、現着した。・・・なんだ、これは…?」「文月ツヅル、今到着したよ。え・・・戦闘が、すでに終わってる…?」

622の疑問が口からこぼれたと同時に仲間たちも駆けつけてくる。だがすでに終わらされた戦闘後の光景に皆唖然とした。

 

「あの人たちが全部破壊したよ・・・」

「え、そうなんですの?有難う御座いますわ!感謝いたしますわ~!」

そう言いながら不用心に武器すら構えずに近づいていくポワン・ユヌ。それに対してガトリングを持っている機体はパルスブレードを携えてる左腕を上げた。

 

「待て!ケンナ!」

しかし声をかけるのには遅すぎた。彼女は不明機体の目の前まで近づいていた。

だがコエが危惧していたことは起こらなかった。

その機体はポワン・ユヌの頭部に左のマニピュレーターを置いたのだ。まるで頭をなでるかのように。

 

「・・・?」

これには思わずケンナもぽかんとしてしまった。

少しすると頭部から左手を離し、どこかへ去ろうとする。そして追随している3機も後に続こうとした。

 

「待ってください!!」

しかしそれに待ったをかけたのはツヅルだった。その通信に思わずと言った様子で4機のRaDフレームは止まる。

 

「もう少し、私たちに付き合っていただけませんか?悪いようにはしません。それに・・・あなたは私達と無関係とは思えません」

するとそれに対してガトリングを持った機体はカメラアイを彼女に向けた後、周りの機体・・・自分たちと共にきた機体に向けた。何かしら別の回線を使っているのかもしれない。

 

『・・・そちらに任せる』

すると突然通信に割り込んできた。ニューハウンズの面々は少し驚くも機体にその動揺を出さずについてくるよう促した。

 

「こちら622.不明機体とともに帰還します」

『彼らはどうしますか?』

「確かザイレム下部に予備の格納庫があったはずです。あそこに停めてもらいましょう」

そうしてMTを回収しに来たヘリと共に全員ザイレムに併設しているニューハウンズ本部に帰還した。

 

 


 

 

「話は全部残らず聞いちまった」(悪魔博士)

「金田ァ!」「なんでブリキ仮面の真似を?」

「で、不明機体はどれ?」

「あれです班長」

「全部RaDのCC-2000一式で統一か。武装はベイラム系が多いな」

「コックピット開きましたー!」

「足場を用意しろー!」

格納庫内で整備班の怒号や指示が飛び交う中、不明機体4機から人が降りてくる。ごついパイロットスーツにヘルメット。全員が各々ヘルメットを外していく。

男二人・女二人。身長はバラバラで、全員ヘイローはない。

 

「星外人でしたか」

「なんか総隊長に似てません?」

「皆さま名前はなんと?」

 

「…617だ」

「618」「619」

「620だよ」

 

「数字・・・識別名でしょうか」

「622隊長と同じような?前の名前は捨てたみたいな」

「じゃあ621は?」

「621は総隊長では?ウォルターさんが621って言ってるでしょ」

「でも平行世界から来たムツヒさんも621って聞きましたよ?」

そんな話をしていると女性が声をかけた。

 

「ウォルターがいるの?」

「え?えぇ…私たちの司令官ですけど」

「そっか…元気してる?」

「心労も多いみたいですけどたまにACで出撃してますから元気かと」

「・・・フフッ」

「?」

「いや、ウォルターいつも縛られてるように見えたからさ。今はそんな風に自由に動けてるのが少し嬉しいだけ」

「・・・あなた方は、いったい」

するとそこに杖をつく音が聞こえてきた。

ニューハウンズの面々が音の方へ顔を向ける。

そこにはニューハウンズ総司令ハンドラー・ウォルター。その少し後ろから付随するようにニューハウンズ総隊長ロニー、そしてニューハウンズ秘書兼諜報・通信部隊隊長のエアが歩いてきていた。

 

「ウォルターさん!」

「任務、よくやったな。・・・それで、お前たちを助けたACのパイロットは?」

「あぁ、あちらです」

622が手を差し向けた方へ3人は視線を向ける。

途端、ウォルターの目が見開かれた。まるで、ありえないとでもいうように。

 

「617・・・そこにいるのは、お前たちなのか…?」

 

愕然とした様子でウォルターがつぶやく。ロニーも困惑と驚愕が入り混じった声で確かめるかのように言葉を発した。

 

「アンタらが・・・俺の、先輩か?写真でしか見たことないが・・・」

すると621ほどではないが大柄な男が話しかけた。

 

「・・・そういう君は・・・」

「俺はロニー、正式に言えばC4-621。アンタらの、後輩になる」

「・・・お前が後輩か、ずいぶんと強そうだ」

「ウォルターはあんたたちの写真をいつも持ち歩いている。ウォルターにとって、アンタらは間違いなく大事な人たちだったはずだ」

すると女性が顔を少しほころばせながらつぶやいた。

 

「・・・そっか・・・そっかぁ」

それは嬉しい声。精一杯で出た喜びの顔だった

 

「・・・617、618、619、620、俺は…」

するとすごく重く、そして今にも罪で張り裂けそうなほどか細く、だが同時に力強さを感じる声を漏らしながらウォルターはこぼす。

 

「待ってよウォルター!」

 

それに待ったをかけたのは女性だった。よく見たら肩に『620』と刻まれている。

 

「私たちは、あなたに感謝しているんですよ」

「そうだぜ。なんせ、アンタがいなかったらそのまま廃棄処分にされる運命だったんだからな」

 

620の言葉に少し体格が大きい男が続けるように話す。肩には『619』と刻まれていた。

 

「うん、わたしたちはうれしかった。わたしたちをあんなにだいじにしてくれて、とてもうれしかった」

 

たどたどしい口調で小柄な女性は言葉をさらに続ける。肩には『618』と刻まれている。

 

「ウォルター。僕たちはあなたに最期まで従えれて満足でした。

 

 だってあなたは、ぼくたちに『意味』をくれたから」

 

本当に嬉しそうに顔をほころばせながら平均的な身長の男性は締めくくるかのごとく言葉をつづける。肩には『617』と刻まれていた。

 

「そうか・・・・すまない・・・・すまない…!」

その言葉を最後まで聞いたウォルターは顔を下に向けながら言葉をこぼす。その肩は震えていたし、声も震えていた。だが皆誰も言わない。

 

ニューハンズの皆は泣いていた。

事情は分からない。

でもきっと二度と会えないはずだったんだ。きっと誰かが、もしかしたら神様が彼らとボスを会わせたがったんだと。

エアも顔がぐっしゃぐしゃになるぐらい泣いていた。もう顔から出る液体全部出していた。

 

4人の猟犬がこちらに走ってくる。

彼らも泣いていた。そしてそのままの勢いでウォルターやエア、そしてロニーをまとめて抱きしめる。

そしてまたそれを囲むようにニューハウンズの面々が抱きしめた。

 

そんな中涙を流さなかったロニーは、621は上を向いた。

きっとウォルターは常に何かに対して負い目を感じていた。彼らもその負い目の一つだったんだろう。

だが責める気は一切ない。自分も同じ立場だし、何より彼らと一緒なら絶対同じことをすると確信しているからだ。

少し息を吐く。きっとこれは飛沫の夢に過ぎないのだろう。空に浮かぶシャボン玉がごとく、すぐに割れてしまうような夢。

だが、今ここで奇跡が起こったことには感謝しようと思った。誰に感謝すればいいか、彼には分らないが。

 

 


 

 

しばらくしたのち、彼らを労わる為の大規模な食事会が開かれた。タカハシさんやユウナ他給食部隊が全力でふるまい、豪勢な食事にしたのだ。皆次々と大皿に山盛りに積まれた食べ物を消し去っていく。

そして旧ハウンズのメンバーも例にもれずドンドン口の中に放り込んでいた。それを食事をいつもより進めながらウォルターが窘める。

 

「お前たち、うまいのはわかるが焦り過ぎだ…」

「んぐんぐ」

「もごもご」

「んぐっ…でもウォルター、これおいしいです」

「それは何よりだが・・・こら、618。焦りすぎて水をこぼしたぞ」

「うぉるたーごめん」

「いや、次は気を付ければいい」

そう言いながらウォルターは618の服をハンカチで拭う。そんな様子をロニーは見ながら食事を勧めた。するとそんな彼にエアは隣でどんどん皿を綺麗にしていきながら声をかけた。

 

「ロニー」

「なんだ?」

「やはり、気になりますか?」

「ん、まぁな」

「あの人たちがロニーの前任者…いうなれば先輩です」

「あぁ、俺やエアがウォルターと関わったのがついぞ10年にも満たない。恐らくは、アイツらの方が関わりが長かったと思う」

「えぇ」

「だからなのかもしれん。なんか、先輩たちに関わりにくい。俺はウォルターやエアがいたとはいえ基本単独で戦場に立っていた。あいつらは群れで動いていた。こっちが強いとは言わないが…連携でいえば俺よりもうまいだろうな」

「・・・」

「俺も多くの部下を持った。エアも肉体を得て今こうして皆と話せている。ただ、今まででも今でも時々考えることがある」

「・・・なんですか?」

俺も同時期に一緒に動いていたら、きっと俺はあいつらがいないことに泣けていたんじゃないかって。

俺はどこまでも闘いに最適化された人間だ。感情もあるにはあるが…外部からの刺激、その模倣に近い。

 怒りと悪態はイグアスから、

  冷静さと優しさはチャティから、

   いたわりと勇気づけはラスティから、

    激励と指示はウォルターとミシガンから、

     嫌いな奴への煽り方と分析能力はスネイルから

…どこまで行っても俺は俺という芯が無いように思えてならん。

肉体は魂を閉じ込める檻という奴もいるが…俺からしたら魂は肉体を構成する一部分にすぎない。自意識すらはっきりしていなかった自分があのルビコンで戦い、お前と会い、そして今はこうして自我を獲得した。

だがあいつらは最初から自我がある。

きっと俺よりも脳が焼けてなくて…俺より外部の刺激が多くて、きっとウォルターとあいつらしか知らない景色もたくさんあるんだろう。

そう考えると、やっぱ少し羨ましいのかもな」

「ロニー・・・」

エアは少ししみじみとした表情を見せたがぐっと顔を引き締めると再び声を発した。

 

「私はそうは思いません」

「エア?」

「あなたが致死量のコーラルに呑み込まれ、私と交信できるようになったあの日から…私はあなたをずっと見てきました。あなたたちについてきました。だから言えます。

 

 ロニー、C4-621…過去人類と私たちコーラルの負の遺産によって生まれた貴方。貴方はあの時から自我を持っていました。いうなれば

 

貴方はずっとウォルターに報いたいと願っていました。碌に喋れず、碌に体も動かせず、日々ウォルターや私・カーラと一緒にリハビリしていたあの日から…貴方はずっとウォルターのために何かしてあげたいと思い続けていました。

 

それは、芯ではないでしょうか。だから、622を初めとしてキヴォトスの子たちを拾い続けたんでしょう?戦力増強もありますがその根底には、今生きることすら必死な子たちを掬い上げたかった。ウォルターにしてもらった時のように、あなたも、また誰かを掬い上げたんです」

息継ぎ。

 

「人は人に優しくしてもらって生きています。時に恩をあだで返されるかもしれません。時にひどい仕打ちを受けることもあります。時に誰かを蹴落とさなければならないこともあるでしょう。

 

ここに来るまでにルビコン星外で活動していた多くの独立傭兵と協同し、蹴落とし合い、時に命を奪ってきました。でも、そんなあなたでも、今こうして皆をまとめてるんです。

 

今のあなたには誰にも壊せない芯があります。ウォルターを支える芯に皆が重なり、集まり、だれにも壊せない・崩せない柱と化した。それが今のあなた含めた私たちだと思います。

私は、その一部でありたい。だから、ロニー。

 

私が誰よりも信頼して、誰よりも好き*1である貴方を悪く言わないでください」

 

ここまでエアが長く、そしてもって強い気持ちを込めて喋っただろうか。思わずロニーはあっけに取られてしまう。食事の手も止まった。それを怪訝に思ったのかこっそりパスタを皿ごと盗もうとするテンリの手をケンナがぺしっと叩く姿を視界に入れながらエアははっとした顔をして慌てるように続ける。

 

「も、勿論ウォルターもタカハシサンも好きですよ?子供たちも好きです」

「わかった。わかったよ。負けだ、俺の」

ロニーが少し落ち着かせるように手を軽く振る。

 

「お前にそこまで言われちゃ俺もお前の信頼を悪く言えねぇわ」

「わかってくれましたか?」

「あぁ、わかったよ。ガツンときた。お前にそこまで喋らせたのは俺が悪かった。・・・ありがとな」

「フフッ、どういたしまして」

するとそこに大きな声が響く。

 

「G13!!!ヴェスパー及びうち(ゲヘナ)とミレニアムとトリニティとレッドウィンターとお前たちで近々合同訓練をしたいんだが…」

 

ミシガンだ。だが彼は何かに気づくとドンドン声量を下げていく。

 

「そこにいるのは、ウォルターの猟犬たちか?」

「ミシガン?」

617がびっくりしたような表情で返事する。それを確認するとミシガンは軽く頭を下げながら617達に近づいていく。彼用の椅子をニューハウンズの一人がすぐさま持ってきた。彼はその子に軽く礼を言いながら座り、再び話しかける。

 

「どうしてここにいるんだ。死んだと聞いたが?」

「どうしてここにいるのか僕たちにもわかりません。ですが、今こうしていることだけが事実なんです」

「そうか・・・ウォルターはお前たちが死んだあと少し暗かったからな。G13が来てから大分調子を取り戻していたが」

「ミシガン、その話はあまり出さないでくれと言ったはずだが」

「すまないな。だが旧知の顔を見て思わず弾んでしまった」

ミシガンは神妙そうな顔で顎髭に手を添える。ウォルターはすっと彼に唐揚の乗った皿を流しながら話を続ける。

 

「ミシガン、俺にも617達が帰ってきた理由はわからない。だが、ここはキヴォトス。神秘が集まる地だ。そういうこともあるかもしれん」

「・・・そういえば、噂話が形を持って現れることもあったな。そういうことか?うまいなコレ」モグモグ

「かもしれない。だが、そうなるとそういううわさを流した誰かがいるのかも…。まぁ、うちの自慢の調理師があげたんだ。味は保証付きだ」

二人が話している間に621は617達に席を近づける。

 

「先輩方、アンタらと涼しい場所で話がしたくなった。付き合ってくれないか?」

「ん?いいよ。ウォルター、少し失礼します」

「あぁ、こっちは大丈夫だ」

「ミシガン総長、少し席を外す」

「かまわないぞ」

「お前ら、俺の分は食っていいぞ」

ロニーはそう言うと617達を連れて食堂の外へ出て行った。

 

「じゃあこれは私が…」

「へへーん!私んもんだ!」

「分け合いっこ!分け合いっこしませんこと?!」

「意地汚いぞテンリィ!」

「じゃんけん!じゃんけん!」

 

 


 

 

食堂の喧騒から離れて彼らはニューハウンズのガレージまで歩くとベンチや席を寄せて机を囲むように座る。

 

「君が621?」

「あぁ。でも、今はロニーだ。621はもう一人いるんでな」

「どういうこと?」

「それは…」

 

「ん、誰?」

 

するとガレージに女の子の声が聞こえる。全員が視線を向けた。そこには女の子が立っていた。ロニーはその少女を知っていた。617達は知らないはずだ。だが、617達に直感めいた感覚が走る。

姿かたちこそ普通の人間に見えるがその立ち振る舞い、雰囲気から自分たちと同じ強化人間だったものだ。再手術をしたのだろう。

 

「ムツヒか。何の用だ」

「あなたにアビドスのハウスキーパー含めたACの合同訓練をお願いしたかったんだけど…ウォルターに訊いたらどこかにいるって言われたから探してたの」

「ミシガンもいたろ」

「うん。総長に話もちかけたらアビドス・ゲヘナ・トリニティ・レッドウィンター・ミレニアム・ニューハウンズの合同訓練にしようってなった」

「スウィンバーンはどうした?」

「今トリニティに行ってる。アビドスの子たちも一緒」

「お前もついていけばよかっただろうに」

「私は…別にいいかなって」

「きっとアビドスの奴等も寂しかってんじゃないか?」

「そんなことないでしょ。シロコも強いし、ホシノ先輩も今は大丈夫そうだし」

「・・・もしも前と同じことがあれば、今度こそ俺はやる(・・)ぞ」

「あなたには背負わせない。私がやる。これだけは譲れない。それに黒幕はもう動けないから事は起こらないと思っていい」

「あの時ツヅルが飛び出していったから俺たちも出しゃばらないといけなくなったからな・・・悪いとは言わないが」

「あの時はありがとう。困ったことがあったら呼んでよね」

「あぁ、お前らもな。

 そんなことはいい。ま、こっちに来いよ」

「いいの?」

「お前にも関係あるはずだ」

「じゃあ遠慮なく」

するとムツヒは近くにあった折り畳みチェアを持ってくるとドカッと座る。すかさずロニーは先輩たちに彼女を紹介した。

 

「紹介する。こいつが分けあって平行世界から来た別世界の元第4世代コーラル強化人間C4-621ことムツヒだ。

 で、ムツヒ。この人たちは俺達より前にウォルターに仕えていた強化人間独立傭兵チーム『ハウンズ』の4人だ」

するとムツヒの顔が驚愕に染まっている。まるで幽霊に出会ったかのような、ありえないとでもいうような表情だ。

 

「嘘だ。だって、ハウンズは一回壊滅して私だった…!」

「俺もだ。ここに来るまでハウンズは俺とウォルター・エアだけだった」

「じゃあなんで…!」

「それはわからない。なにがどうして僕たちがここにいるのか、ぼくたちもわからなかった。気が付いたときには皆この世界にいて、そこでACとMTがMT達に襲われていた。そのACとMTにはハウンズと書かれたロゴが書かれていた。

きっと直観だった。このMTとACに乗ってる人たちは僕たちに関係ある人たちだと思ったんだ。618達も同じ気持ちだった。僕たちは横槍入れて殲滅して今ガレージに機体を置かせてもらっている。そしてウォルターと再会して、泣いて、ご飯食べて、こうして君たちと話している。それだけが事実だよ」

617が二人に割り込むように話す。ムツヒは混乱していたようだったがその言葉を聞くと崩れていた態勢を整えて話し直す。

 

「ごめん、なさい。動揺しちゃって」

「いいんだよ。わたしたちもさいしょここにいたときにどうようしたから」

「何が起こったのかわかんなかったよなー。あそこで死んだはずなのにいつの間にかここにいたんだ」

「そうね。何もわからなかった。でも、あそこであなたの子たちを助けたのは間違いじゃなかった」

「それに関して、俺からも礼を言おう。感謝する」

「・・・あなた、本当にウォルターに似てるわね」

「・・・そうか?」

「フフッ、本当に似てる。少し、羨んじゃうくらい」

「だったら今から」

「いや、無理よ」

ロニーの言葉を強めに遮ると620は少し寂しそうな顔をする。

 

「私たちはどこまで行っても死者。どこまで行っても過去においてかれた。だから、死人は死んでなきゃおかしいのよ」

「でも、こうして…」

「それでもよ。私はウォルターに生きて欲しいと、目的を果たして欲しいと託したの。だから、私たちの生はあそこで、あの戦場で終わったの」

「・・・」

「泣かないで、ムツヒちゃん。ウォルターから私たちが今でも大切に思われてることを知れただけで十分お釣りが出るほど幸せをもらった。後輩ともこうして話せて、もうこれ以上何を望むというの」

620はムツヒからこぼれそうな涙をすっとすくうと遠くを見るような目でガレージを眺める。

 

「・・・たくさんの子を拾ったのね」

「あぁ。だが全員がACに乗れるわけじゃない。だが、全員見込みがある連中ばっかりだ。育てがいがある。・・・ウォルターの気持ちも今なら理解できる、気がする」

「そう・・・」

「あ、あそこのフィンダーアイの機体は俺の機体だ」

「マジで?」

「僕たちも同じフレーム使ってたけどなんかそういうこだわりとかあるの?」

「頭部以外は特にねぇかな」

「とうぶはあるんだ?」

「今のハウンズ…ニューハウンズのロゴだ。ある意味象徴だ。エンブレムもあるしな」

そう言いながら彼はジャケットの胸に書かれてあるエンブレムを見せる。すると先輩たちはみな笑い出した。

 

「ハハハッ、そういうこと」

「うぉるたーのことだいすきだね。わたしたちもだけど」

「いいじゃないの。似合うわよ?」

「こりゃあ参ったぜ。後輩がここまでだったとは」

「だろ?」

「私もジャケットは持ってるよ。あくまで外部協力者って形だけど」

そんなことを話ながらもロニーは次のACを紹介していく。

 

「で、あそこのタンクが俺の部下でAC/MT部隊隊長622のLOADER5だ」

「622?強化手術を?」

「いや、元の名前を捨ててな。俺の後輩ということで622だ」

すると少し剣呑な雰囲気が漂う。それをわかっていたのかロニーは更に付け加える。

 

「622は洗脳し、使い捨てる酷い奴の支配下にあってな。逃げ出して野ざらしだった。それを俺たちが拾い、今に至る。だからあいつの名前は誰も知らない。あいつも話そうとしないしな。

 だからここにいるのは622。俺たちがこの星に来て、最初にできた部下。俺の後輩622だ」

「そういうことが…」

「初めて知った…」

「え、ムツヒちゃんも?」

「だって聞かなかったしこっちも教えてくれなかったしね」

「別にしなくていいだろ。部下は部下。全員平等だ。話を戻すぞ。あそこに見えるベイラムとアーキバスの混成フレームあるだろ。Power_Pray。俺の部下で歩兵部隊隊長のコエのやつだ」

「歩兵なのにACあるんだ」

「あいつはどうやら俺に憧れているようでな、文字通り血のにじむ努力だ。あいつの適性は4脚だったが…本人の強い希望で2脚になった」

そんなことを話しているとロニーの端末に連絡が入る。

 

「ちょっと待て。連絡が入った」

そう言いながら彼は端末を操作して内容を表示する。

 

『G13に伝達!これはアーキバスとベイラム、双方の合意に基づき渡される依頼だ。

 場所はゲヘナとトリニティの中間にある緩衝地帯。そこにある施設だ。

元々はカイザーが双方に足を延ばすために造られ、今は放棄されたはずの施設だが・・・どうやら最近、ここに軍事施設が出来ているらしい。その場所は緩衝地帯ということも相まってどちらも政治の関係上、軍を動かせない。俺たちも同様だ。

 調べたところ、どうやらカイザーの残党や星外企業を良しと思わない連中が手を組んで拠点を作っているようだ。貴様にはここを襲撃してもらう。

 観測によれば複数の固定砲台と多数のMT及びACで防御を固めているらしい。単独は薦めない。そちらの伝手で誰か誘うなりしてくれ。以上だ!』

G6レッドからの威勢のいい依頼文が切れると彼は立ち上がる。

 

「ちょっと待って」

しかしそこに617から声がかかる。

 

「なんだ?」

「その作戦、私たちも参加していいかな?」

「別に構わないが・・・何故?」

「ほら、せっかく復活したんだからさ?後輩たちと一緒に出撃したくなったんだよ」

「・・・そうか、そうだな。おいムツヒ」

「何?」

「この後暇か?」

「暇だけど…そういうこと?」

「あぁ、お前も来い。安心しろ、お前のACはきっちり整備してある」

「じゃあお言葉に甘えさせてもらおうかな」

「お前との協同はほとんどないが名義は?」

「便利屋に依頼料少し流しといて。一応傭兵名義はあそこの臨時社員だから」

「OK。先輩たち、行きますよ」

「任せて」

「まさか後輩二人と一緒に出撃できるなんてな」

「たのしみ」

「指示出しは誰がするの?」

「617先輩、アンタに頼みたい。俺とムツヒはこの中で一番下だからな」

「言ってくれるじゃん」

 

続く

*1
両方の意味で




自分のハウンズたちの身長イメージ

617:172㎝(男)
618:153㎝(女)
619:181㎝(男)
620:160㎝(女)
621:200cm(男)
ウォルター:183㎝
エア(義体2号):175㎝
タカハシ:190㎝

【機体紹介】
https://f.yourl.jp/5a3494ba/
・617/619/620はストーリートレーラーを参考にしました。
・618は想像の域を出ませんがスッラの戦闘スタイルを見るに距離を縮まれたらきつい構成にしました。618は事前にルビコン入りしてて色々調査とかザイレムへドローンとか飛ばしていたのかもしれませんがね。


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