【ブルアカクロススレ】ルビコンからやってきたウォルター達が 作:AC組んでSS書いてる人
・先生はロニーと飲んだ後、そのままの勢いでサヤの依頼を受諾。実験に付き合うことになった。
・ここまででロニーの過去を知る者は星外人を除けば622しかいない。
『た、大変なのだ!ロニーさんと先生に幼児化する薬を飲んでもらったらとんでもないことになったのだ!!』
そんなサヤの悲鳴にハウンズは動き出した。
途中で先生に何が起こったのかわからないので救護騎士団と救急医療部にも声をかけた。
彼らが到着すると、それはいた。
ラップ巻きのような、人型のような・・・よくわからないものが地面に転がっていた。近くにいる先生は呆然としてしまっている。小さくなっていた。
医療関係者ですらそれが人間か否か判断がつかなかった。ハウンズですら何か判別ができなかった。
「ろ、621・・・」
ウォルターが思わず動揺した声を出してしまった。しまったと思ったが時すでに遅い。
「ロニーさん?!な、何があったんですか?!」
「じょ、冗談ですよね?いつものようにふざけてるだけですよね…?」
ハウンズの子犬たちにも動揺が広がってしまう。
それを見て、もう隠し通せないと判断したウォルターは、少し狼狽えながらも懐からチョーカーを取り出すとラップ巻きの人型の首に巻き付けた。そしてすぐにタブレットを叩きながら話しかける。
「621、聞こえるか?聞こえるなら返事はできるか?」
するとタブレットの画面に文字が書きこまれる。
【き こ え る】
「そうか、621…記憶はあるか?」
【る び コ ん い く ?】
「成程…そこの記憶か。落ち着いて聞いてくれ621。
今のお前はルビコンに入る前のお前ではない」
【・ ・ ・ ?】
「ルビコンでの戦いは終わって、いろいろあってお前は人としての機能を取り戻した。
今のお前は様々な事情が起こって肉体と記憶が戻ったお前だ。つまり、ルビコン突入前のお前ではない」
【・ ・ ・】
「言っていることがわからないかもしれない。だが、信じてくれ」
【・ ・ ・ し ん じ る】
「そうか。無茶をかけてすまないな」
【だ い じ よ う ぶ】
「今は眠っているといい。時が来たら、目が覚めるだろう」
【・ ・ ・】
すると音声がタブレットから流れる。
《強化人間C4-621 スリープモードに入ります》
ツヅルが震える声でウォルターに話しかける。
「う、ウォルターさん、これ・・・どういう・・・」
「・・・まず、謝罪をさせて欲しい。
お前たちには、いずれ話さないといけないと思っていた。
だが、俺たち…俺と、エアと、621はタイミングを計り損ねていた。お前たちを俺の、俺の父親の犯した罪を話すには…あまりにも酷だと思ったからだ」
「ウォルターさんの、お父さんの・・・罪?」
「あぁ…コーラルという物質は、知っているな?」
「総隊長から聞いたことあるねぇ…確か、燃料にも、伝導体にも、向精神薬にも、食料を育てるための穀物にも値する、万能物質だったと」
「あぁ」
「そして、エアさんはその唯一の生き残りだとも、ね」
「あぁ。あいつは元々実体がない」
それにミネが反応する。
「実体がない…?」
「あいつは元々コーラルという物質の中に発現したパルス変異波形…人を介し、理解し、交信した人しか話せない…所謂、幻聴に近い存在だ。旧型の強化人間ほど、そういう交信が多い傾向にあった。621も、その一人だ」
「・・・待ってください、じゃあロニーさんは」
「・・・お前たちも薄々気づいているだろう。621はコーラル使用型強化手術、その第4世代、621番目だ。
C4-621
それが、本当の名前だ」
「621…番目…」
それじゃあ、それじゃあまるで、人の扱いではないみたいじゃないか。
「でも、617さんたちは人の姿でした! こんなっ こんな人の形をしているだけとは、言えなかった!」
「・・・あいつらは比較的手術が成功した類でな、人としての機能はまだ残っていた。だが、621はとりわけ酷かった。恐らく、ろくな手術が行われなかったんだろう。
脳がコーラル手術の弊害で焼けて、操縦以外の機能は死んでいた。危うく廃棄処分される手前だったのを、俺が買い取った。そして今に至る」
「操縦以外の機能が死んでいるって・・・それってつまり、ACを動かす部品扱いってことですか??!!」
「・・・言い方は悪いが、その通りだ」
「・・・オェ」
ツヅルが思わず吐いた。自分でもわかる。自分も強化手術を受けたからわかる。だが、ここまでひどくない。これでは、人扱いされてないじゃないか。
「・・・・・・・最初はタブレット越しに話すことさえできなかった」
「え」
「俺がリハビリの一環で話しかけ続け、ACの操縦訓練をし続けて、ようやくここまで持っていけたんだ。ルビコンで過ごすうちに、あいつは自力で声を出せるようになり、自力で歩けるようになるまで回復した。そして、今のお前たちが知っている621、ロニーになった。
恐らく幼児化の薬でこの姿になったのは、621の自認ではこの姿が幼くなる…昔の肉体に戻る限界だったんだろう。あいつは強化手術を受け、俺と出会うまでの記憶をすべて失っている。恐らく、脳が焼けた影響だろうな」
「オェ」
サヤ含めた医療関係者は思わず吐いた。こんな、こんな残酷なことがあっていいのか。こんな倫理観がない、非道な手術が許されていたのか。
「・・・」
そんな中、622は静かに歩くと621に触れて、こうつぶやいた。
「こういう、ことだったんですね」
それにコエは反応する。
「知ってたのか?」
「…私が拾われた時、コエやツヅルが来るよりもずっと前・・・621さんとエアさんとウォルターさんが話しているのを偶然聞いてしまったことがあって・・・普通にばれてある程度聞かせてくれたんだ・・・その時はよくわからなかったんだけど・・・こういうことだったんだね、ウォルターさん」
「・・・あぁ」
「今の強化人間は、どうなんですか?」
「・・・第1世代から第4世代まではコーラルを使っている。スッラは元々第1世代の強化人間だ。手術も暗中模索でお世辞にも丁寧とは言えなかった。非常にずさんで多くの犠牲者が出た。スッラはその数少ない生き残りだ。
第4世代手術は裏社会ではまだ行われている手法でもある。621がその最たる例だ。
5,6は悲惨な事故があった。今は闇に葬られて知る者は少ないが…お前たちが知るべきことではない。
第7世代からその後はコーラルを使用しない代替強化手術が行われている。ヴェスパーがその例だ。今までより然程人格に影響なく、然程副作用も少ない。
少なくとも第8世代で革命がおき、今まで行われた全ての強化手術が過去のものになった。V.Ⅵメーテルリンクは、その広告塔だったな」
「でも…なんで強化手術なんかするのですか?」
思わずセナが疑問を口にする。
常日頃患者を「死体」と言っている人間だが、本物の死体を見たことがない。だが今、目の前に死体に非常に近い人間がいる。思わずこみあげる吐き気を抑えながら彼女がつぶやいた。
「・・・元々コーラルは人間の五感を鋭くさせる効果があった。ならば更にコーラルに適した肉体にすれば、五感はさらに広がると想定・発案されて、研究された。
それが、強化人間の祖だ。今はACへの気軽な適性として強化手術を受ける者も多い」
「じゃあ、肉体にコーラルやACを合わせるのではなく、コーラルやACに肉体を合わせるってことかい?その結果が今の総隊長…」
ジャミが俯く。頭をガシガシとかきながら呻くように、怒りを抑えるように言葉をこぼした。
「私は自己理解をしている。倫理観はさほどない。発展のためなら、人は何かを平気で犠牲にできることもとうに知っている。」
「総隊長から直々に強化手術のことは伝えられていた。『もし自分が死んだら、解剖して研究資料にしてくれてかまわない』とも言われた」
「ACの部品扱いだったと総隊長直々に聞かされていた」
「だが…」
「こんなことがあってたまるものか!!!」
ハウンズの面々含めた全員が一瞬あっけにとられる。ジャミがここまで大声を出したことなぞなかったからだ。
「これでは、本当にただの部品だ!生命を使う理由がない!何故この手術が広まったんだ!」
ぜぇぜぇ言いながら思わずと言ったように叫んだジャミ。それにこたえるかのようにウォルターは口を開いた。
「ジャミ、少し昔話をしよう」
「・・・」
「・・・コーラルの研究に没頭した男がいた。家族を捨て、研究に全てをささげた男だ。
狂った発明がいくつもつくられた。強化人間は、その最たる例だった」
思わず悲鳴が上がる。
ウォルターの手に力がこもる。
全てを捨ててまで、どうしてそこまで没頭したんだ。何がその男を狂わせたのか。
「善良な科学者もいた。
男の罪を全て背負い、全てに火をつけて、満足して死んだ」
全部背負ったんだ。その狂人の代わりに、その人が全て背負って、死んだのか。
そうしてウォルターは先生に顔を向けた。
「・・・俺はシャーレの先生にそうはなって欲しくはない。今回の件は不問にする。
だが、次があれば・・・俺が」
「ウォルターさん」
622が声をかける。
「私たちがやります。次があれば」
「・・・だが」
「私たちはもう家族です。
家族が害されたならば、家族で報復する。私達は足手まといのつもりは一切ありません。
キヴォトス全てを敵にしたっていい。私達はウォルターさんについていくと決め、ここに集まったんですから」
するとウォルターは少し顔を俯ける。
「・・・すまない。お前たちに、その選択をさせてしまって」
「好きで選択したんですよ。責任は分け合うものでしょう? ・・・さ、621さんを運びましょう」
「621、少し背負うぞ」
そう言いながらウォルターが621を背負う。コエやジャミがそれを支える。
彼らハウンズが部屋を出て行った後、そこには悲痛な沈黙が残った。
つづく