【ブルアカクロススレ】ルビコンからやってきたウォルター達が 作:AC組んでSS書いてる人
・本編開始前→本編のどこか(ハウンズ編第3章)
【人物紹介】
金田
・元ミレニアム生。現ニューハウンズ整備班班長。
・ミレニアムで荒んでしまい、脱走。紆余曲折あってニューハウンズに所属することになる。
・よく呼ばれすぎて発狂したりしてる。
自分は天才だ。最初はそう思っていた。
人型の汎用性に長けた大型機。誰もその発想なんかなかった。
ふざけるな。
ふざけるな。
ふざけるな。
わかってる。
お前らに言われなくてもわかってる。
あれは未完成品だ。
それを無理に実体化させたとて失敗するし、不備があることくらいわかってる。
あいつが勝手に盗み出したんだ。
それでなんで責められなければならない。
気がついたら盗んだやつは廊下にくたばっていた。顔が血まみれで、震えている自分の拳にべったりとついた血がいやでも自分が犯人だとわからせる。
何もかも嫌になって逃げ出した。
自分なんて大したことなかったんだ。
ウタハとかいうやつの方がすごかったんだ。
盗んだあいつさえいなければ…
あいつが盗んでさえいなければ
泣きながら私は目的もなくただ走り続けた。
ミレニアムを感じる場所に少しでもいたくなかった。
走り続けて倒れた先はブラックマーケットだった。
ここは弱肉強食。弱者はただ搾取されるだけだ。
あいにく自分には忌まわしきあの場所で培った技術力と知識がある。
自分は弱者にはならない。
気がついたらブラックマーケットでモグリの技術屋として働いていた。
ここは碌に日銭を稼げない連中も多い。そいつらに格安で修理を持ち掛けるのは気が楽だった。
自分より学がない連中だ。10割いかずに修理しても怒られない。
固く冷えたパンをギリギリと噛み千切り、強く咀嚼しながら思う。
自分は他の奴らよりましだ。
マシのはずなんだ。
そう自分に言い聞かせるかのように再びパンを噛み千切った。
そんな怠惰な日々をむさぼっていたある日、表が騒がしかった。何事かと思い、見に行った。
そこには装甲車にどんどん投げ込まれている不良たちと投げ込んでいる大柄な男と女がいた。
女はいい。自分と同じキヴォトス人だ。
だが男の方は違う。男はよく見るとヘイローが無かった。キヴォトスでは珍しい生身の男。
もしかして近頃噂になっている『人攫い装甲車』だろうか?
あまり現実味の無い光景を私はぼんやりと見つめていた。
男と女の顔がこちらを向く。目が合った。
急に意識が引き戻された。一気に恐怖が襲ってくる。思わず逃げようとその場を離れようとする。
だが誰かにぶつかって転んでしまう。見るとガスマスクを付けている女がいた。後ろから足音と声が聞こえてくる。
「そいつであってるのか?622」
「うん。顔写真と照らし合わせてコイツで間違いない」
目標が自分だった。とっさに拳銃に手を伸ばす。
しかしつかんだ拳銃を引き抜くよりも先に首筋に何かが当たった。
瞬間、強烈な痺れと共に来る重い衝撃。それと同時に暗転する視界と意識。途切れる寸前、言葉が耳に入ってくる。
「なんで逃げたんだろ?」
「さぁ?まだ声もかけてないのにな。おーい、ロニーさん」
「ご苦労だったな」
気がついたら自分はふかふかの布団の中だった。
こんな寝心地のいい場所は何時ぶりだろうか。
もしかしてこれが夢なんじゃないかと思いつつ再び意識を落とそうとする。
「起きろ」
しかしそれは男の人の声で遮られた。
少し顔をあげて辺りを確認すると視界の中に椅子に座っている男の人がいた。どうやら初老のようだ。手元に杖を握っているのを見るに足に何かしら不自由でもあるのだろうか?
「気分はどうだ…?」
「良いです…夢かと思うくらいに」
「そうか。・・・お前は今回連れてこられた子供の中で一番よく寝ていた。たてるか?」
「ん、あ…えぇ」
名残惜しく思いつつも布団とおさらばし、立ち上がる。微妙にふらつくが問題ない。
「食事を用意してある。食べるか?」
タイミングよくお腹が鳴った。どうやら自分のお腹らしい。
思ったよりなんか恥ずかしくなった私は老人・・・ハンドラー・ウォルターさんに早く行きたいと急かして案内してもらった。
食堂にポツンと用意されていた。本当に一番よく寝てたらしい。
内容は白米に味噌汁、漬物に焼き魚だった。どれもホカホカで自分のために温め直されたのがわかる。思わず厨房の方を見るとロボットの大人がサムズアップしていた。雇われ料理人だろうか?
一口つけるともう我武者羅だった。とにかくかきこみ、次々におかわりする。
途中からどんどん味がしょっぱくなっていくのがわかった。視界がそれに比例するかのように滲んでいく。
あぁ、自分は泣いているのか。泣くなんていつぶりかな。
もう何も食べれないくらいお腹の中に詰め込むと今度は風呂場に案内された。久しぶりの熱い風呂だった。水で体を洗っていた時を思い出しながらうとうとして溺れそうになったが風呂番をしていた子に引き上げられた。どうやら名前は陸奥というらしい。
お風呂から出て用意されていた寝間着を着て廊下に出ると今度は寝室に案内された。
四人一部屋で、先に3人部屋にいた。さっき助けてくれた「陸奥」、それに今日一緒に連れてこられたらしい「吉田」に最初期に入ってきたらしい「茨木」。
皆で今までの苦労を語り合い、分かち合いながらその日は布団にもぐりこんだ。
だが眠れない。
目が嫌に冴えてしまっている。少し探検しようかなと思いベッドから抜け出すとそっとドアを開けて廊下をひたひたと歩く。
気が思うままに歩き続けていくと重厚なドアの前に立っていた。
それをぐっと力を入れて開けるとその先には信じられない光景が広がっていた。
むき出しの機械と備え付けられたモニター。無骨な換気扇。鉄格子でできた手すり。
そして何より目を惹くのはその奥に静かにたたずんでいる巨大なロボット。
自分の夢が、理想が、今現実に、目の前にある。
呼吸を忘れるほどの興奮が
忘れていたはずの熱が心に、体にこもる。
知りたい。
もっとあの鉄の巨人を知りたい。
灯りに吸い寄せられた蛾のようにふらふらと、よろよろと近づいていこうとしたその時、
「寝れないのか?」
意識が元に戻される。バッと後ろを振り向くと、あの装甲車に不良を投げ込んでいた大男がドアの前に立っていた。
もしかして自分を捕まえに来たのだろうか?そんなことを考えていると彼はドアを後ろ手に閉めて近くにある備え付けのベンチにドカッと座るとポンポンと隣を叩いた。
「え?」
「座れ。話そう」
その言葉に何となく従って座ると二人でその巨大なロボットを見上げる。やはり熱が体にこもる。ワクワクがあふれて止まらない。
「お前、ACを見るのは初めてか?」
「え、えー、しー…?」
「ACだ。あの巨大な人型機械、その総称だ。非常に高い汎用性を誇る道具だ。見るのは初めてか?」
「はい」
「皆そうだ。ACを見せるとみんな同じ反応をする。自分から誘われるように観に来た奴は、お前が初めてだがな」
そう言いながら彼はニヤッと歯を見せて笑う。不器用なその表情にほだされたのかどうかわからないが、自分は自分のことをぽつぽつとこぼす。
「・・・私、少し前までミレニアムにいたんです」
「ミレニアムサイエンススクールのことか?あそこは科学に最も熱意がある学校だと聞いたが・・・それがどうした?」
「そこで、私、あるものを作っていたんです」
「・・・」
「大型の人型機でした。汎用性に長けて、道具を持ち、空を飛ぶこともできる乗り物です」
「・・・」
「例えるなら、そう、今目の前にあるAC、でしたっけ?そんなものです」
「それは、すごいな。それが発表されればお前は企業から勧誘されること間違いなしだな」
「えぇ。・・・もう叶わない夢ですけど」
「・・・何故?」
「同僚に設計図をパクられたんです。まだ、未完成の。
それを勝手にミレニアム最大の品評コンテスト『ミレニアムプライス』に出されたんです」
「・・・」
「もともと未完成の物です。それを無理やり実体化させたとて、不具合が発生することなんて当たり前のことでした。それで、ぼろくそに言われましてね…責任、押し付けられたんですよ。別の部活の同じ新入りにも負けましたからね」
「・・・」
「それでパクって押し付けてきた同僚を血まみれになるまで殴っちゃって…嫌になって逃げて…それでブラックマーケットでモグリなりに仕事して・・・今ここですよ。
嗤えるでしょう?」
思わず言ってしまった。笑える話じゃなかった。でもそういわないと何か耐えれない気がした。
それに対して彼は少し悲しそうな顔をしながら口を開いた。
「・・・笑わないよ、俺は」
「え、なんで」
「お前、泣きそうな顔してんのに笑えるかよ。カーラでも笑わない」
彼の言葉にのどが詰まる。声を出したくても出せない。だそうとすると涙が代わりにあふれ出そうになる。
すると彼が自分の頭を抱き寄せると胸に軽く押し付けてくる。
「な、なにを」
「俺以外誰も見てない。
大丈夫だ。ここにお前の場所を作ってやる。
俺がウォルターにしてもらったように、今度は俺がお前に…いや
それを聞いた途端、涙と嗚咽があふれた。
あぁ、よかった。
自分は必要とされるんだ。
こんな、優しい大人の人たちに。
散々泣いて泣いて泣き疲れて、そのまま自分は意識を落とした。
「・・・621」
「・・・ウォルター、寝たよ」
「あぁ・・・」
「ウォルター、あまり気を病まないでくれ。
俺たちは俺たちのやり方でこいつらを助けよう。
俺がウォルターに助けてもらったように、俺もこいつを、こいつらを助けてやりたい」
「そうか、621・・・」
「なくなウォルター。最近涙もろくなったんじゃないか?」
「あぁ、そうだな・・・」
その後私は整備班として動くこととなった。
日々あこがれのMTやACを整備してまあ絵よりも忙しいが充実した日々を送っていた。
だが事態が一変する。
次々と出撃する皆々。ACに乗り込んで出撃するロニーさん、622先輩、コエ先輩、ケンナ。そしてTENDERFOOTを借りに来たムツヒ*1さん。
今まで以上に不安と焦燥感にかられながらも確実に、かつ迅速に整備していく。
そしてへとへとになって仲間たちとガレージの床にくたばっていた自分にウォルターさんとエアさんが近づいてきた。
「ウォルターさんにエアさん・・・何か、用事でも…?」
「金田、お前に・・・いや、お前たち整備班にもう一仕事してもらいたい」
「なんです…?」
「昔・・・約50年前にとある研究の過程で造られたAC、その現物を出撃できる状態に整備し直して欲しい」
「私が乗り込みたいのはその試作型です。ですが、パーツはバラバラで組み立てるための設計図すらありません。かなりの無茶を強いります。頼まれては、くれませんか・・・?」
とんでもない要求だ。50年前、約半世紀前、自分が産まれるよりとうに前のものだ。そんな骨董品を、直して使える状態にまで戻せなんて・・・・
だが、やらなければならない。この再点火してもらったこの自分が、自分たちが、ツヅルの為にも。自分を優しく見守ってくれたウォルターさんたちの為にも。
今こそ恩を返す時だ。
よろよろと立ち上がる。疲れで気絶するようにぶっ倒れた皆も立ち上がっていっている。皆同じだ。皆助けられたんだ。
「任せてくださいよぉ!!」
声を、張り上げた。
最速、かつ迅速に速攻で設計図を引き、整備していく。皆々目が充血するほどの集中。限界などとっくに超えている。だが皆口元は笑顔だった。
そしてできた2機のAC。赤色と白色のAC。
それを見たウォルターさんとエアさんが微笑んで声をかけてくれた。
「よくやった。あとは俺たちに任せてくれ」
「ありがとうございます。私達は行きます。帰りを、待っていてください」
そして二人がコックピットに乗り込み出撃していく。
「ばんざーーーーーーーい!!!!」
誰かが声を張り上げた。するとみな口々に万歳三唱を始める。誰への万歳か、もうわからない。だが今は万歳三唱しなければならないような気がしたのだ。
そして2機の姿が見えなくなった途端、自分たちは気絶した。
気が付くとボロボロの7機のACが基地前に転がっていた。
走っていくとそこからよろよろと皆が歩いてくる。ツヅル先輩も一緒だ。
思わずロニーさんに抱き着いた。
「よかったです・・・!!」
「あぁ」