11.ジバリア
・・・・・・・・・・・・・・
先ほど完璧(笑)な選手宣誓を披露した我らが勇間勇は今にも消え入りそうな表情で空を仰いでいた。
(消えてしまいたい…)
ほぼ放心状態と言った様子である
会場が何とも言えない微妙な空気に包まれる中、進行のミッドナイトが口を開く
『コ、コホンッ!!それじゃあ気を取り直して早速第一種目に行きましょう!』
放心状態の勇間を置いてドンドンと体育祭は進行する
『いわゆる予選よ!毎年ここで多くの者が涙を飲むわ!!』
『さて運命の第一種目!!今年は…』
『コレ!!』
そう言ったミッドナイトがビシッと指さす電光掲示板にはでかでかと
『障害物競走』と書かれている。
そしてミッドナイトは競技の説明を始めるも
勇間はまだ心ここにあらずと言った様子でうつ向いている
そんな勇間の様子を見た他のクラスのA組を目の敵にしている生徒達は、ひそひそと話す
「ねぇ見て、なんかまだアイツ下向いてるよ」「この前あんだけ偉そうにしてたのにダサすぎんだろw」「あんなのが入試1位とか今年のヒーロー科たいしたことないんじゃない??」「ヴィランの襲撃を生き残ったって逃げ回ってただけだろw」「あとピアスダサすぎ」
心にもない言葉を発する他クラスの生徒達、その言葉は勇間に届いているのかはわからないが
「…」
勇間は何も言わずにただ下を向いたま立ち尽くしている
しかし、他のA組の面々は特に気にしている様子はない
『さぁさぁ位置につきまくりなさい!』
そうこうしているうちにぞろぞろと障害物競走のスタート位置に生徒たちは移動する
しかし勇間は動く気配はない
一人ポツンと立っている勇間に爆豪が声をかける
「おい!豆腐メンタルピアス!!はよ行くぞ…」
「…ああ」
と勇間はそれだけ言いスタート位置の一番後方に立つ
「アイツあんなに後ろでもう諦めたんじゃねぇのw??」「ヒーロー科の枠一個空いたな」「あとピアスダサすぎ」
そんな声も見受けられる
そして…
『スターーーーーート!!』
障害物競走が始まる
全員が一斉に狭いスタートゲートに向け走り出す
ギチギチと生徒たちが団子状態となる中。
そこに飲み込まれ、もみくちゃにされている緑谷は考える
(これってつまり、スタート地点がもう…)
そして団子状態から抜けた轟が呟く
「最初のふるい…」
そしてピキピキと地面が凍る
一部の一般生徒たちはなすすべなく凍り付いてしまう
「ってぇー!!何だ凍った!!動けん!!」「寒みー!!」「んのヤロォォ!!」
阿鼻叫喚となる生徒達、しかし…
「そう上手くはいかせねぇよ半分野郎!!」
そう言って爆破で抜け出す爆豪をはじめ、A組の面々が各々の方法で轟の氷から抜け出し
最前線に躍り出る
A組以外にも様々な方法で氷を攻略している者もいる
その様子を見て轟は呟く
「クラス連中は当然として、思ったよりよけられたな…」
そして抜けてきた生徒達をチラリと確認し、轟は思う
(アイツは…いないか…まあアイツのことだ---)
そのとき実況のプレゼントマイクが叫ぶ
『初っ端から飛ばすのは1Aの轟ィィ!!しかし後続もしっかり対応しているぞ!!』
しかし、最初のふるいに生徒達がかけられている中、まだスタート地点で立ち止まっている男が居た…
『おおっとぉ!?1A勇間!スタート地点に棒立ちぃぃ!?勝負を捨てたか!?』
そう叫ぶプレゼントマイクに対し、相澤先生が答える
『アイツはそんなタマじゃない、おそらくこの体育祭は長期戦になる、それを見越して精神を研ぎ澄ましてるんだろう…最小限で最大限の力を発揮できるようにな…』
そして…
ついに最後尾の勇間が口を開く
「…メラ…バギ…ピオリム」
テレレレレレレッ♪
独特な音が辺りに響き渡る
「ん?なんだこの音??」
氷に妨害されている生徒たちは突然鳴り響いた奇妙な音になんだなんだと戸惑う
しかし、前方にいるA組一同は違った
(来る…)
(やっと来やがったか…)
(来るぞ…)
(やっと来ましたわね)
その聞き覚えのある音を聞けば、いやでも分かる
開会式の時のようにA組の心の声が重なる
(((
ビュォォォ!!
と大きな音を立ててスタートゲート後方から熱風が吹き荒れる
轟が作った氷がみるみる溶け始める
「今度は熱いぞ!何だよコレ!!」「あちぃ!!」「後ろからだ!!」
あわてふためく一般生徒達
そしてその中の一人が叫ぶ
「後ろからって言ったって、俺たちの後ろには…あのダサいヒーロー科のヤツしか…」
そして、その生徒が後ろを振り返ったその瞬間
ビュン!!!
と凄まじい風音と共に「何か」が真横を通り過ぎる
「い、今のって…」
「は、はえぇ…」
高速で生徒たちを蹴散らし、走りぬける「何か」は
あっという間に最前列グループへと到達する…それどころか先頭の轟まで並び立つ
「…コいいだろうが…」
そして何か呟いている
「俺のピアスは…カッコいいだろーがぁぁ!!!!」
そう叫ぶ男
それは
変なピアスを揺らしながら駆け、怒りの表情を浮かべる…
我らが勇間勇だった。
『えええぇぇ!!1A勇間ぁ!!まさかの!最後尾から最前列まで!!前代未聞のゴボウ抜きだあああ!!』
プレゼントマイクの実況が響き渡る
『言ったろマイク、ウチの勇間はそんなタマじゃないってな…』
そして、ほとんど追い抜かれてしまった1Aの面々は悔しそうな表情を浮かべるもどこか安堵したような顔をしている。
彼らは勇間が他のクラスの生徒達から陰口を言われているのを聞いていた。
そして、いつもなら
「べ、別にかんけぇねぇし!」などと強がりを言う勇間が俯き黙ったままだったため、少なからず皆勇間を心配していたのだ。
しかし、それでもA組の皆が仲間の陰口を何も言わずに黙って聞いていたのは…
全員が理解っていたからである、
どれだけ馬鹿にされても、どれだけ笑われても、どれだけふざけていても、どれだけ変なアクセサリーを付けていても
自分たちの信じる勇間勇なら…
その圧倒的な実力で黙らせてくれると……!!
最前線を走る勇間を見て、緑谷は思う
(やっぱり勇間くんは凄いや!)
「焦凍!!俺のピアス変じゃないよなぁ!?」
「……ああ、変じゃないぞ……多分な」
まだまだ、障害物競走は始まったばかりだ…!
・・・・・・・・・・・・・・
俺はイライラしながら走っていた
誰だよ、また俺のピアス馬鹿にしたやつ!!
俺のことは馬鹿にしてもピアスのことは馬鹿にすんじゃねぇよ!!(AK〇)
それにしてもうまいことできて良かった。
今回の体育祭は、例年通りであればかなりの長期戦が強いられる。
普通にずっと呪文を唱えていれば、最後まで残った場合、十中八九MPが足りなくなるだろう
そこで、俺はこの間のUSJでの脳無との戦いで見た、
ヤツの『魔力暴走』に目を付けた
これまで15年生きてきたのになぜか会心の一撃や魔力暴走が出なかったが、初めて魔力暴走を見て気が付いた。
『魔力暴走』は体中を流れる魔力の『流れ』がある特定の流れ方をする時があり、その瞬間に呪文を唱えることで普段流れている魔力の数倍の魔力が体に流れ呪文の威力が大幅に上がるというものである。
俺はこの2週間、その『特定の流れ』を充分に集中することで作り出すことができるようになり、『魔力暴走』を任意のタイミングで起こせるようになったのである。
今回スタートが遅れていたのは選手宣誓ミスるわ、ピアスバカにされるわで集中にいつもより時間がかかってしまったからだ。
そしてこれは新発見なのだが…『魔力暴走』を1回起こしてしまえばしばらくの間、魔力効率がグンと上昇するのだ。
これは長期戦においてかなり重要になってくる。
集中にかなり時間はかかってしまうが、この辺は要練習である。
まぁそのことは一旦置いておいて…
俺は焦凍と並走している
念のため聞いておくか
「焦凍!!俺のピアス変じゃないよなぁ!?」
焦凍ならわかってくれるだろう
「……ああ、変じゃないぞ……多分な」
ああ、良かった…やっぱり焦凍は分かっている。
ちょっと歯切れが悪いのが気になるが、まぁ気のせいだろう…
そんなことを考えていると
「轟と勇間のウラのウラをかいてやったぜざまあねぇってんだ!!」
峰田がそう叫びながら頭のもぎもぎを使い軽やかな動きでこちらに接近してくる
別に俺はウラをかかれては無いと思うが…
そして峰田は飛び上がる
「くらえオイラの必殺…」
その時だった
ガァン!
と言う金属音と共に峰田が吹き飛ばされる
『ターゲット…大量!』
そこには入試の時に戦った仮想敵のロボットが居た
まぁそら障害物競走なんだから、障害あるよなぁ
『さぁいきなり障害物だ!!まずは手始め…』
プレゼントマイクの実況が辺りに響く
『第一関門ロボ・インフェルノ!!』
そして俺たちの前にあの時、爆豪と2人で倒した巨大な0P敵が大量に現れた
ズゥン!
と言う音と共に俺たちの前に立ちはだかる巨大なロボたち
これじゃあ多すぎて通れないな…
「一般入試用の仮想敵って奴か」
隣の焦凍は呟く
「どこからお金出てくるのかしら…」
それな
俺が呟く八百万に心の中で同意する
そんなことをしていると焦凍がバッと低い攻撃態勢を取る
アッ、これ巻き込まれる奴や…
そう考えた俺は避ける姿勢を取る
その直後
パキィィィ!!
と言う音を立てて0Pの敵が完全に凍り付く
流石だな…ここまでの氷は俺にはまだ出せないだろう
そして凍らせたロボの間を走り抜ける焦凍
その後に続こうとする他の生徒達
しかし、焦凍のことだ、他に何か仕掛けがあるのだろう
そう考えていると、凍った0P敵が傾き倒れてくる
ズゥゥゥ…と倒れてくる巨体を見て俺は思う
アレ?これやばくない??死人出るくないコレ?
俺は備えていたこともあり、避けられるが…
ロボが倒れるであろう箇所を見る、ほとんどの生徒は避けられているようだが
巻き込まれそうな生徒が2人ほど居る
片方は切島、まぁアイツなら大丈夫だろう
問題はもう片方、もし普通科の人なら本当に危ない
俺は今が競走中だということも忘れ、そこに向けて走り出す
ピオリム中と言うこともあり、ロボが倒れる前にその人の前にたどり着く
そして倒れてくるロボに手を向け唱える
「イオラ!」
Booom!
と言う爆音とともに俺たちがいる場所に倒れてくるであろうロボの部分のみを吹き飛ばす
間に合った…
「ふぅ間に合った」
俺が安堵の声を漏らすと後ろから声が聞こえる
「なっ!お前!!あの調子乗ってるやつ!!」
あ、この人確か、B組の怖い人だ
ヒーロー科なら助けなくても大丈夫だったか?
俺の頭に「余計なお世話」と言う言葉が浮かぶ
一応声かけるか…
「どうも、大丈夫だったか?」
そう言うと
「俺の個性は『スティール』!体を鋼鉄のように固くできる!!だから助けてもらわなくてもかまわねぇ!!」
やっぱり、でも助けてしまったものは仕方ない
俺はそう思い、言う
「そっか、まぁごめんな…じゃあ俺急ぐから」
焦凍が先に行ってしまった、早く追いつかないと…
俺が背を向け走ろうとすると
「待て!!」
呼び止められる
「何で俺を助けた!?てめぇに得はねぇだろうが!!ダチってわけでもねぇし!」
何を当たり前のことを
「人を救うのに、ダチとか損得とか関係ないだろーが…『ヒーロー』なんだから」
そう言って俺は走り出す
「…テメェ…漢じゃねぇか…!」
なにやら声が聞こえたが気にせず走る
そして0P敵の目の前に立つ。
今の俺なら…
「バギマ!!」
そう唱えて俺は風に乗って跳躍をする。
ピオリムがまだ続いているということもあり、跳躍力も増しているため、0P敵の頭部まで跳躍することができ、頭部に飛び乗る
確か、入試の時はバギマが2回必要だったが…
俺は成長を実感しながらも、0P敵の頭部から頭部へと飛び移り、先を急ぐ
ピョイピョイと移動していると
周りに見覚えのある顔がいくつか見られる
あ、爆豪だ
正面に爆豪の姿を捉える
追いついてやろうかと下半身に力を入れると、後ろから声が聞こえる
「勇間!おめーも上からかよ!」
テープをロボに貼り付け器用に上る瀬呂
「さっきのゴボウ抜きはシビれたぞ、同士よ」
なぜか最近俺のことを同士と呼ぶ常闇
「まあな、こんなデカいの一々相手してられないからな!」
と俺が返す
「へっ、そーいや、選手宣誓のダメージはもう大丈夫なのかい??」
と瀬呂がからかうように聞いてくる
その記憶は抹消することにしていたので答える
「ナンノコトカワカリマセン…っね!」
と言ってロボの頭部をより強く踏みつけ加速する
「あッ!待てよ!」
と言う瀬呂と常闇を置き去りに俺は先へと進む
「爆豪!!」
そして爆豪に追いつく
「来やがったか!ピアス!!」
しかし、やっと追いついたというところでロボのゾーンは終わり俺は地上に降り走る
爆豪は爆破でそのまま空を飛び続けている
スピードは同じくらいなのでしばらく進む、谷のようなゾーンに突入する。
後続も続々と追いついてきているようだ
『オイオイ第一関門チョロイってよ!!んじゃ第二はどうさ??』
『落ちればアウト!!それが嫌なら這いずりな!!…ザ・フォール!!』
なるほどな、ピオリムで伸びている跳躍で飛んで行ってもいいが…
飛んだままギミックを無視しながら進む爆豪と、そこそこ先で氷を使ってロープ上を滑る焦凍を見る
それじゃ追いつけなそうだ…
…アレ使うか
「フゥ」
俺は一呼吸おいて唱える
「トベルーラ!」
俺の体は宙に浮かぶ
これ難しいんだよな…
『トベルーラ』はダイの大冒険に出てくる呪文でルーラの応用技で使用者は自由自在に空を飛べるのだが…
ちょっと俺にはまだ難しいな…
宙に浮くだけでもフラフラと安定感が無い俺
魔力を空中に放出し浮かぶのだが、めちゃくちゃ難しい、そこそこ練習したつもりだが全然ままならない。
でも、これ使わないと勝てないよなあ…
俺は意を決し、進行方向へ向け進むため
魔力を放出する
(ちょっとだけ、ちょっとだけ…)
その瞬間
バビュン!!
と言う音と共に結構な速度で前に飛ぶ
『勇間飛んだぁぁ!!!』
プレゼントマイクの声が響く
(ピオリム状態なの忘れてたぁぁぁ!)
想像の2倍のスピードに俺はビビりまくる
これじゃ飛んだというよりは吹っ飛んだという方が正しい
俺は空中を飛びながらも考える
多分この初速ならトベルーラをやめても向こう岸にはたどり着く
そう考え俺は魔力の放出をやめる
すると俺は前方に落下し始める
いうなれば放射線状に飛んだような感じだ
そして落下の直前に…
「バギ!」
フワッと弱めのバギで落下の衝撃を和らげ、着地する
そして、前方と後方を確認する。
結構一か八かだったのだが、どうやらうまくいったようだ
焦凍と爆豪の丁度真ん中あたりに着地できた。
俺は「もちろん全部計算してましたよ」と言ったすまし顔で走り出す。
『すげぇぇ!!勇間!突然の飛行で一気に2位に浮上!!俺には暴発したように見えたがあの顔は狙ってやった顔だ!!カッケェ!!』
プレゼントマイクの声が響く
いやいやどうもどうも
『いや、飛んでる最中もの凄い焦った顔してたから多分博打だな、コレ』
と相澤先生。
『カッコ悪ィィ!!』
やめてくださいよ
すまし顔の俺がバカみたいじゃん
「ピオリム!!」
切れかけのピオリムを再度唱えて焦凍を追いかける
しばらくすると次の関門と思わしきエリアが見えてくる
『先頭が一足抜けて下はダンゴ状態!上位何名が通過するかは公表してねぇから安心せずにつき進め!!』
『そして先頭は早くも最終関門!!かくしてその実態は…一面地雷原!!怒りのアフガンだ!!地雷の位置はよく見りゃわかるようになってんぞ!!目と脚酷使しろ!!』
というプレゼントマイクの説明に地雷原を見ると確かに薄っすらと地雷が埋まっているであろう印のようなものが見える
俺のスピードなら…
俺は地雷原を正面から全速力で走り抜け…ようとするがリスキーなのでやめる
注意して走っても、ピオリム状態の俺の方が普通の焦凍よりも速い
地雷原に注意しながらも走る
案の定すぐに焦凍に追いつく
「焦凍、久しぶり。待った??」
「待ってねェ…よッ!!」
と言いながら俺を掴もうと右手を伸ばす焦凍
ヒョイとそれをかわした俺は
「バギ!」
と唱えるかなり魔力を抑えたため弱い風が吹くが
焦凍をよろめかすには十分だ
「チッ!」
焦凍は舌打ちを鳴らしながらもよろめき、地雷原を踏む
ボォォン!!
と言う音と共に爆発が起こる
『ここで先頭が変わったー!!喜べマスメディア!!お前ら好みの展開だぁぁ!!』
まだ気は抜けない、多分そろそろ…
俺はそう考え地面に手をチョンと触れ、『ある呪文』を唱える
そしてそこに魔法陣が生まれる
よし
Boooom!
と言う音が聞こえてくる
来たな、爆豪!
この地雷原は飛行できる爆豪にとっては無いも同義
地面スレスレを飛行する爆豪はこちらに向けて一直線に飛んでくる
「ピアス野郎ォォ!!」
「宣戦布告する相手間違えてんじゃねェ!!!」
俺は一瞬足を止めて言う
「来いよ!!爆豪!!」
俺が迎撃する体勢を取ったのをみて
爆豪はニヤリと笑いながら叫ぶ
「望むところだ!!ピアス!!」
そしてこちらに爆破しながら突っ込む爆豪
まだ引き付けろ
まだ
まだ
そして爆豪が右腕を振りがぶったその時
爆豪の影が俺が先ほど作った魔法陣と重なる
ここ!!
「ジバリア!!」
俺がそう叫ぶと魔法陣から尖った岩のようなものが生成され爆豪に直撃する
「こっちは自前の地雷だ!!」
「ぐっ!テメェ…また変なもん覚えやがって…」
そう言いながらも爆豪は飛行のバランスを崩し、地雷原に突っ込む
ボォォン!!
と言う音と共に爆豪は後方へと吹っ飛ぶ
『爆豪も蹴落としたぁぁ!勇間1位独走!!ちょっとイレイザー!おたくの勇間くん多彩すぎねぇ!!??』
『まぁ確かに色々出来すぎではあるが、色んな能力をあんだけ使いこなせんのは勇間の努力あってこそだ』
いやいやどうもどうも
このまま行けるか??
ゴールはもうあと少しだ
俺は走る、しかし引っかかることが一つある
(アイツ…まだ来ねぇな…)
そう俺が考えた瞬間だった…
BOOOOOOOOOOOOOOOOOM!!!!!
と言うすさまじい轟音が後ろから鳴り響く
ま…まさか
『後方で大爆発!!?何だあの威力!?』
プレゼントマイクの驚きの声が聞こえる
思わず後方を確認すると、
上空、爆風に吹っ飛ばされる機械の部品のようなものが見える
そしてその上には見覚えのあるもじゃもじゃ頭
『偶然か故意か!!A組緑谷爆風で猛追ィィ!!??』
「来たな!緑谷!!」
思わず俺は言葉を零した
・・・・・・・・・・・・・・
side緑谷
地雷を大量に集める
『先頭勇間!!最終関門を今抜けそうだがーー
そんなプレゼントマイク先生の声が聞こえる
(と、遠い…でもこれで…!!)
(借りるぞかっちゃん!)
(大…爆速ターボ!!!)
BOOOOOOOOOOOOOOOOOM!!!!!
と言う爆音と共に僕の体は宙を舞う
ものすごい勢いでグングンと前に進む
やがて、先頭の勇間くんの姿が見える
一瞬驚いたような表情を表情をするも、僕と目が合うとニヤリと笑い口を動かす
何を言ってるかはわからないが、嬉しそうな表情…
まるで僕が来るのを知っていたような、待っていたかのようなそんな顔だ
『A組緑谷爆発で猛追ィ!!…っつーか!!』
『抜いたぁぁぁー!!』
そんな勇間くんを追い越す
しかし
(やっぱ…勢いすごい!)
覚悟はしていたがとんでもないスピード
それに着地を考えていなかった…!!
「来たな!緑谷!!」
そう叫びながら勇間くんが追いかけてくる
さらにその後方
「デクぁ!!」
「俺の前を行くんじゃねぇ!!」
と叫びながら迫るかっちゃん
それに地面を凍らせ走る轟くんの姿も見える
そして
ファ…
とスピードが一気に落ちる
(やばい!)
失速…そりゃそうだ
すぐに抜かれる!!
着地のタイムロス考えればもっかい追い越すのは絶対無理!!
くっそ!!
ダメだ!放すな!!
この3人の前に出られたチャンス!!
掴んで放すな!!
もうすぐ地面に落下するというところで走る勇間くんに抜けれそうになる
やるしかない…!!
乗ってきたロボから垂れ下がる電線のようなものを掴み
振りかぶる
(追い越し無理なら…抜かれちゃだめだ!!)
僕は振りかぶった部品を思いっきり勇間くんの隣にたたきつける
カチ カチ カチ
と地雷の作動する音が鳴る
身を前に乗り出し爆風を背で受けられるような体勢を取る
そして
ボォォン!
と言う爆音と共に爆風を受けて前に転がり、地雷原を抜ける
後ろに目を向ける余裕はない!
すぐに体勢を立て直し全速力で走る
ゴールは目の前だ!!
『緑谷間髪入れずに後続妨害!!地雷原即クリア!!』
『またしてもほぼ最後尾からのゴボウ抜き!!イレイザーヘッドお前のクラスすげぇな!!どういう教育してんだ!!』
『さァさァ序盤の展開から誰が予想できた!?』
『今一番にスタジアムへ還ってきたその男ー
緑谷出久の存在を!!!!』
「ハァハァハァ」
やった!やったぞ!!
僕は息を切らしながらもある人を探す
そして観戦席にいるその人と目が合う
(オールマイト!!)
僕は泣きそうになりながらも笑顔をオールマイトに向ける
(僕が来ました!!オールマイト…!!)
いかんいかんと溢れる涙を拭う
すると声が聞こえる
「緑谷!」
顔を上げると声をかけてきたのは勇間君だった
「ゆ、勇間くん!」
「緑谷、やっぱりお前は凄いな…!!あんだけギリギリで捲られちゃ追いつけねぇよ!」
と笑いながら言う勇間くん
僕はあの時のことを聞く
「勇間くん、あの時、僕が爆風で飛んでる時、目が合って笑ってたよね、あれはどうしてなの??」
勇間くんが答える
「いやぁあの時1位だったんだけど、なんか引っかかってさ、そういや緑谷まだ来てないなー、そろそろ来るかなーとか思ってたら丁度飛んでくるんだから笑っちまったんだよ」
まただ、前もそうだった…勇間くんは僕が壁にぶつかったとき、僕が絶対に壁を越えてくるって信じてくれている。
なんでなんだろうか…
「あの!勇間くんはなんd「おい!テメェ」
僕の言葉を遮って、誰かが会話に入ってくる
「え、俺??」
勇間くんはいつもの無表情に戻りその誰かに答える
「そうだ、テメェだ」
なんか顔が怖い人だなB組の人かな
「なんだ??俺は今緑谷と話しているんだが…」
と勇間くんは言う
「なっ?そいつはすまねぇ!邪魔したか??」
その人は僕と勇間くんに謝りながら言う
怖そうに見えて案外いい人なのかも
「いや!!もういいよ!僕の話は!」
と僕は言う
「そりゃ良かったぜ!ちょっとコイツと話してぇことがあるんだ。借りても良いか??」
とその人は僕に言ってくる
「あ、どうぞどうぞ」
そう僕が返すと
勇間くんは「俺はモノじゃないぞ」と呟きながらもその人と歩いて行った
なんの話だろう…
…しかし、やっぱり僕は恵まれている
オールマイトと言う最高の師匠もいて
僕を信じてくれる友人もいる。
そんなことを考えていると
「デクくん…すごいねぇ!」
「この個性で遅れを取るとは…やはりまだまだだ俺は…俺は…!!」
「麗日さん、飯田くん」
麗日さんと飯田君が居た
麗日さんがズイと顔をこちらに寄せ言う
「1位すごいね!悔しいよちくしょー!」
「いやぁ」
麗日さん…!!近いです…!!
・・・・・・・・・・・・・・
障害物競走が終了し、順位が確定した
勇間は2位、続いて轟、爆豪といった順位になった
予選通過者は42人
次からがいよいよ本戦となる
進行役のミッドナイトが第2種目を発表する
「さーて第2種目よ!!私はもう知ってるけど…何かしら!?」
「コレよ!!」
そう言って電光掲示板を指す
そこには
『騎馬戦』の文字
「騎馬戦…!」
「個人競技じゃないけどどうやるのかしら」
各々反応を見せる生徒たちにミッドナイトは説明する
参加者は2~4人のチームを自由に組んで騎馬を作る、ただ先ほどの障害物競走の結果に応じて各々にポイントが振り当てられる。よって組み合わせによって騎馬のポイントが違い、それを奪い合うといったゲームである。
ポイントについてミッドナイトが喋る
「与えられるポイントは下から5ずつ!!42位が5P、41位が10P…と言った具合よ、そして…」
「1位に与えられるポイントは…
1000万!!!」
その発言に一斉に緑谷に視線が集まる
(い、1000万??)
だらだらと汗をかく緑谷
(あ、2位でよかった)
負けたことを安堵する主人公(それでいいんか?)
「上に行く者には更なる受難を、雄英に在籍する以上何度でも聞かされるよこれぞ"Plus Ultra"!!」
「予選1位通過の緑谷出久くん!!持ちポイント1000万!!」
(ドンマイ緑谷くん)
勇間は思う(呑気か)
ミッドナイトの説明は続く
「制限時間は15分、振り当てられたポイントの合計が騎馬のポイントとなり、騎手はそのポイント数が書かれたハチマキを装着!終了までハチマキを奪い合い保持ポイントを競うのよ」
細かな説明をミッドナイトがする。
そして、各々がそれぞれどのように戦うのかを考察していく
「個性発動ありの残虐ファイト!…でもあくまで騎馬戦!!悪質な崩し目的での攻撃等はレッドカード!!一発退場とします!」
「それじゃこれより15分!チーム決めの交渉タイムスタートよ!!」
というミッドナイトの声により生徒達はざわざわとチームを組むために動き回る
(ポイント数は僕の場合あまり関係ない…!)
(組んでほしいのはあの人とあの人…!!)
得意の思考をフルで回転させ緑谷は考える
(でも最優先はあの人…!)
そう緑谷には最優先で組みたい相手がいた
その相手は攻撃、守備、移動等の騎馬戦において重要な能力すべてが高水準…
(でもなぁ…)
しかしそれゆえに…
緑谷はお目当ての人物の元へ足を運ぶも
(やっぱり、人気だよなぁ)
「勇間!!俺と組もう!!」「えー、勇間私と組も!?」「僕でしょ!?ねぇ?」「俺と組め!!」
既に多くの人だかりができていた
当の本人は…
「えっと、あと、その…話を…」
慣れ親しんだA組が相手だというのに人数が多いせいでコミュ障を遺憾なく発揮していた。
(なんだか入学初日を見ているようだ…)
と緑谷は思う
その時
BOOM!!
と言うお決まりの音と共に爆豪が現れる
「どけ、モブ共!!ピアスは俺と組む!」
するとその反対方向からも声が上がる
轟だ
「いや、勇は俺と組む…だよな??」
(((来た…!勇間大好きコンビ…!!!)))
「うっせぇよ半分野郎…ピアスは俺と組んだ方が強ェに決まってんだろ!アァ!?」
「いや、俺の方が勇とうまくやれる、勇は俺のことをよく知ってるし、俺も勇のことをよく知ってる」
「アァ!?俺のが知ってるに決まってんだろうがァ!!」
「いや俺の方が…」
(((ま、また始まった…)))
「あの…一応、僕も組みたいんだけど…」
おずおずと声をかける緑谷
「てめぇは黙っとけ!デク!」
爆豪にそういわれるが、緑谷には謎の自信があった。
勇間は自分と組んでくれるという自信が
(根拠はないけど…!勇間くんは僕のことをいつも信頼してくれてる…と思いたい)
(…それに僕なら勇間くんを一番うまく機能させられる自信がある…!)
「かっちゃんごめん!今回は僕も引けない…!!」
緑谷はそう言って一歩前に出る
「「「オォー」」」
これには他のA組の面々も驚く
「僕が…」「いや俺が…」「俺の方が…」
もはやこの3人の三つ揃え状態
誰が勇間と組むんだと盛り上がっている中
その中心でなにやらもごもごしていた勇間がついに動く
「あ、あのっ!!」
急に大声を出した勇間に注目するA組一同
「あの、マジで言うの遅れて申し訳ないんですけど…」(余所行きモード)
「ンだよ??」
爆豪が聞くと
「ご、ごめん、俺、B組の方々と組むことになっちゃってて…」
苦笑いしながら言う勇間
「・・・・・・・・・・・・・・」
勇間(…爆豪顔おもろ)
「・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
絶句する3人、というかA組ほぼ全員
静寂が辺りを包む
シンとした空気に耐えられず勇間は
「なんか…ごめん」
と情けない声をあげ、取ってつけたような謝罪を披露する
その瞬間
「「「「「「はァァァァァァ!!!????」」」」」」」
時間差でA組(勇間除く)の悲鳴が会場に響き渡った
「何してんだ…アイツら…」
それを見ていた相澤は呟き、「はぁ」とため息をついた…
今回も読んでいただきありがとうございました。
誤字脱字の報告もしていただけると助かります。