この世界でも勇者になります。   作:shch

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久しぶりに1日中暇だったので一気に書いてみました。

また普通に長いんですけど、読んでくれると私は喜びます。


13.ベホイム

 

 

「な、なんだったんだ??さっきの梅雨ちゃんの猛攻は??」

 

気持ちよく睡眠をしていたところクラスメイトの女の子に顔面叩かれて起こされました。

 

どうも勇間です。

 

てか控室で寝ていたハズなのに廊下で目覚めるのは何なんだよ…

 

もしかして俺、寝相悪すぎ…!?(違います)

 

まあ丁度昼休憩が終わるころに起こされたから別にいいんだけど

 

睡眠できた時間は大体1時間程度、MPも完全ではないにしろそこそこ回復できているようだ

 

そして今、俺はなぜか廊下で座らされて女子達の準備が終わるのを待たされています

 

マジなんで?

 

何かの準備をするからそこで待っとけという梅雨ちゃんの指示なんだが、何やるつもりだ??

 

途中でなぜかB組であるはずの拳藤さんがA組の控室から出てくるし、全く事態が把握できない

 

ぼちぼち時間だし、早くグラウンドに行きたいんだが…

 

その時

 

ガチャリ

 

という音を立てて、控室の扉が開く

 

そしてゾロゾロとA組女子一同が出てきたんだが…

 

なぜか全員チア衣装、しかもちゃんとへそ出しのガッツリのやつ

 

え?え?こんなん高校生がしていい格好?TVで放送していいヤツこれ??

 

ナニコレ?目のやり場に困るんですけど??

 

「」

 

俺が絶句し声が出せないでいると

 

「ど、どうかな?これ?」

 

と麗日さんがもじもじしながら訪ねてくる、

 

(ありがとうございます)

 

なぜか自然にお礼の言葉が心に浮かぶほどに破壊力のある光景に俺は動揺する

 

どうっていわれても、どうなんだこれ

 

目の前の光景を直視できない俺は俯きながらなんとか答える

 

「……まぁ…いいんじゃないか?皆、似合ってて…」

 

するとなぜか女子達はもれなく驚いたような表情をする。

 

「な、なに驚いてんだよ…」

 

気を抜くと顔面が二ヤつくので必死に表情筋に力を入れ、真顔を保ちながらそう俺が聞く

 

「……」

 

何この沈黙気まず

 

目のやり場が…あ、葉隠さんならまだ何とか見れそうかも、見えないし(矛盾)

 

葉隠さん見とこ

 

そんなしょうもない作戦を俺が立てていると、驚いたままの表情で芦戸さんが答える

 

「勇間って女の子のことちゃんと褒めれたんだね」

 

え?なめられてる俺?俺だってかわいい女の子がいたら褒めますけど??

 

……(思考)

 

うん、ダメだこれまでの人生振り返ってもそんな記憶ないわ

 

「…てか、なんでわざわざ俺のこと廊下で待たせたんだよ?」

 

一番気になってたことを俺は聞く

 

するとまたもや芦戸が口を開く

 

「いや、もうそれは確認できたからいいや!皆行こ!!」

 

そして女子達も頷きあいゾロゾロとグラウンドの方へと歩く

 

え?なんか最近俺の扱い雑じゃない??

 

俺は呆然と立ち尽くしたままでいると

 

「勇間!はよ行くぞ!」

 

と耳郎に声をかけられる

 

ああ、俺も一緒に行く感じね…

 

ゾロゾロと歩く女子集団に合流、そして自然な動きで葉隠さんの横に移動し隣を歩く

 

ここじゃないと心臓が休まらんからな…

 

すると

 

「あれ?勇間くん?私の隣に来るの珍しくない??いつも女の子なら一緒に居るの梅雨ちゃんとかお茶子ちゃんなのに、どうしたの??」

 

と葉隠から声を掛けられる

 

「…いや、正直(今は)葉隠の隣が一番落ち着くから」

 

率直に今感じていることを俺は答える

 

「え!も、もぉー何言ってんの!」

 

葉隠はそういいながら可愛らしい威力でポカポカと俺の肩を叩く

 

いやマジなんだけどな

 

「いやマジで」

 

俺はマジな顔でそう伝える

 

「え?…マジ??」

 

葉隠が確認してくる

 

「マジ」

 

「マ、マジかぁ」

 

と葉隠は言い、よく見えないが何やらもじもじしているようだ

 

なんで?

 

そして

 

「う、嬉しい…かも」

 

などと言い出す、なんでちょっと照れてんの?

 

試しに葉隠の顔があるであろう場所を見つめてみる

 

「……」ジッ

 

しばらく見つめる

 

すると

 

「……キャッ」

 

とわざとらしく小さい悲鳴を上げ、手元のチアのポンポン?が顔付近に上がる、まあ恐らく顔でも隠そうとしているのだろう。

 

もとから見えてないんだけど

 

「…あんま見ないでよ」

 

「……」

 

…これもしかして甘い??雰囲気甘い?大丈夫コレ??

 

なんか最近多くないコレ?俺またなんかやらかしたパターンコレ?

 

「そ…そか」

 

何とか俺がそう返すが、その後会話は無く俺たちは歩く

 

「…」

 

「…」

 

いや全然落ち着かなくなっちゃったよコレ!!??(木の葉丸)

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

グラウンドでは今後の流れと俺が出る最終種目の組み合わせを決めるためのくじ引きが行われた。

 

本来なら騎馬戦で生き残った上位5チーム、総勢20名とかいう中途半端な人数(あんまツッコむな)でのトーナメントが行われるのだが、心操チームにいた尾白と庄田くんが棄権して18名でトーナメントを行うことになった

 

どうやら尾白達は心操の"個性"で操られていたらしく、「何もしていない自分が本戦に残るのはおかしい」といった理由で辞退したそうだ。

 

偉い

 

まぁ同じく操られていた青山はしっかりと本戦に出るみたいだが…

 

そんなこんなで一悶着あったのだが、トーナメントの組み合わせは決定した.

 

今回のトーナメントは18人、普通トーナメントってのは16人とか32人でやるもんなんだが…

 

そのためクジ引きによって運が悪い4人が最初に1回戦もとい0.5回戦的なものを行わないといけないのである

 

体力的に普通に不利なのだがミッドナイトによると運も実力の内らしい

 

まぁ運良く俺はその枠にならなかったからいいけど

 

俺の最初の対戦相手は芦戸さんと青山のどちらか勝った方みたいだ

 

順調に勝っていけば緑谷や轟と当たるのは準決勝、爆豪は決勝になる

 

トーナメントを確認した俺は早速睡眠を取ろうとグラウンドを後にして、廊下を歩いていた。

 

その時

 

「勇、ちょっといいか」

 

焦凍に声を掛けられた

 

「どうした焦凍??」

 

俺がそう返す

 

「さっき親父に会った…」

 

ああ、あの人来てんのか

 

というか…

 

焦凍の顔が明らかに暗い

 

「勇…また、わからなくなっちまった。勇があの時教えてくれたのに…」

 

ポツリと焦凍が喋る

 

そんな焦凍の目を俺は見る、その目は

 

あの時の、初めて会った時のように、濁った眼だった。

 

「勇と戦ったあの日から親父は俺にあまり干渉しなくなった、俺に訓練を付ける時もあったが以前のように無茶苦茶なことは言わなかった」

 

「勇、お前は教えてくれた。この俺の炎の力はアイツの力じゃない、俺自身の力だって、頭では分かってるんだ、でもどうしても炎を訓練で使うとき、今日みたいな勝負で炎を使うとき、アイツの顔がよぎるんだ」

 

俺は焦凍の心の傷を少し侮っていたようだ。

 

まだ焦凍の中にはエンデヴァーによって着けられた深い傷が残っている…

 

確かにこれまでも少し、違和感はあった。

 

焦凍は炎と氷どちらを使ってもいい条件の場合は必ず氷を使う

 

明らかに使用頻度が炎より氷の方が多いのだ

 

個性の熟練度も明らかに炎よりも氷の方が上

 

そのことに気が付いていながら、何もしなかった俺にも焦凍がこうなってしまった落ち度はある

 

「そしてさっき、コスチュームを着たヒーローとしてのアイツに久しぶりに会って、言われた「お前は俺の力でオールマイトを超える必要がある」ってな、その時思っちまった、勇に会ってからずっと心の中にしまってた想いがまた出てきちまったんだ…」

 

焦凍の目が復讐の色に染まる

 

「アイツを否定してやりてぇ」

 

「…焦凍…お前」

 

「勇、俺はやるぞ…中途半端はもうやめだ、ここからは左は使わねぇ…使わないで緑谷も勇も倒して、アイツを否定する。」

 

そんな焦凍の顔は苦しそうで…

 

…自分が情けない

 

まだ俺は焦凍を救えてなかった…

 

勝手に救ったつもりになって、都合の悪いところは見ない振りして

 

友達の一人も救えず何が『勇者』だ

 

…もしかしたら、今の俺に出来ることは少ないかもしれない

 

でも

 

俺は俺なりのやり方で

 

「わかった。焦凍お前がやりたいようにやればいい…でも約束しろ、必ず勝ち上がってこい、俺も勝ち上がって必ずお前と戦う」

 

「お前は俺と戦うまでに、一番になるために、全力でお前に挑んでくる相手と戦うことになる。そして壁にぶち当たる。その時にお前は気づくハズだ。自分がどれだけふざけた事をやっているのかを」

 

「そして、俺と戦う」

 

俺は先程までの真剣な表情を崩し、軽く焦凍の頭をポンと叩く

 

「まぁその時まだお前がバカな事言ってるようだったら、また俺が頭ぶっ叩いてやるよ」

 

おそらく、焦凍は自分が間違ったことをしているのは薄々分かってるハズだ、しかしその心に深く刻まれた幼少からの根強い傷が焦凍をこうさせてる。

 

でもこのトーナメントで戦えば嫌でも理解るはずだ、他の皆がどれほど本気で、全身全霊でトップを取りに来ているのか、自分のやっていることがどれだけ馬鹿なことなのかを…

 

それでも尚、焦凍が変わらないなら、俺が理解らせる。何度だって

 

「もう…叩いてんじゃねえか…」

 

焦凍はそう言って頭の俺の手を退ける、

 

そして俺の横を通り過ぎる

 

「勇、頼む…」

 

その瞬間、消え入りそうな焦凍の声が耳に入った

 

去り行く焦凍の背中に俺は優しく声を掛ける

 

「なぁ焦凍、お前…自分の「なりたい自分」ちゃんと見えてるか…?」

 

俺の声に焦凍は一瞬硬直するがそのまま歩き出してしまった。

 

 

 

 

「……」「……チッ」

 

勇間と轟はこの会話を2人の友人に聞かれてしまったことには気が付かない…

 

・・・・・・・・・・・・・

 

ある部屋に幼い男の子と女の子がいた

 

男の子はテレビに向かいコントローラーを手にピコピコと何やらゲームをしている。

 

そんなゲームに夢中な男の子に女の子は少し腹を立てながら言う

 

「ねぇ***くん、またどら…くえ?っていうゲームやってるの?はやくお外に遊びにいこうよ」

 

そんな女の子には目もくれず、目線はテレビに固定されたまま男の子は答える

 

「ちょっと待って、もうちょっとで倒せそうなんだよ」

 

「もー」と言わんばかりの表情の女の子は男の子に言う

 

「そういえば***くんってこのゲームに出てくるゆうしゃ?みたいになりたいってこのまえ言ってたよね??」

 

女の子は続ける

 

「でも知ってる?わたしたちは大人になってもこのゲームの人たちみたいに剣も魔法も使えないんだよ、だからこのゆうしゃみたいにはなれないんだよ??」

 

幼いながら夢のない事を得意げに言う女の子

 

すると男の子は少しムッとした表情で言葉を返す

 

「ぼくだって知ってるよそれくらい、…たしかに剣や魔法を使って世界を守るこの勇者はカッコいいし、そんな風になれるならなってみたいさ」

 

「でもね○○ちゃん、ぼくが本当になりたいのはさ……」

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「勇間ちゃん、起きなさい、もう本戦始まっちちゃうわよ」

 

体がゆさゆさと揺さぶられ、声が聞こえてくる

 

意識が覚醒する

 

「ん…んん、おはよう梅雨ちゃん、ありがとう起こしてくれて」

 

なんか懐かしい夢でも見てた気がする

 

「本戦、見なくていいの?」

 

もうそんな時間か…

 

結構寝れたな、MPもほとんど全快だ

 

「いや見るよ」

 

そう言って俺たちは控室を出てA組の観戦席へと向かう

 

観戦席に戻ると

 

「あ、やっと起きたかよお昼寝王子!」

 

と言う上鳴の声

 

お昼寝王子!?

 

「んだよそれ」とだけ返して、なんとなく爆豪の隣に座る

 

焦凍の姿は見えない、大方どこかで精神統一でもしてるんだろう

 

「どうだ、MPは??」

 

おもむろに隣からそんな声が聞こえる

 

「ほぼ全快だ、心配すんなよ」

 

俺がそう答える

 

「心配してねぇ!テメェが全快じゃねえと俺が完膚なきまでの一位になれねぇから聞いただけだ!!」

 

いつも通りの爆豪を見るとなぜか少し安心する

 

「…そうか」

 

とだけ俺は答えた

 

「…」

 

「…」

 

俺たちの間に沈黙が流れる

 

「…チッ…またなんかあったんか勇間?」

 

珍しく心配そうな表情の爆豪

 

無駄に鋭いんだよなぁコイツ

 

「いや、どうやってお前をあのステージ上で血祭りにあげてやろうか考えてただけ」

 

「んだてめェ!!無駄な心配させんじゃねェ!上等だァ!!受けて立ってやるよ!」

 

そんなこんなでやいのやいのと騒いでいると

 

プレゼントマイクの実況が辺りに響く

 

『色々やってきましたが!!結局これだぜガチンコ勝負!』

 

『行くぜ一回戦!!』

 

おっ始まりそうだ、

 

最初の戦いは芦戸さん対青山

 

この戦いの勝者が次の俺の対戦相手になる、よく見ておかなければ…

 

『腰にベルトがあっても変身しねぇぞ!!ヒーロー科青山優雅!!』

 

ん?なにその口上みたいなやつ

 

『対…あの角から何か出んの!?ねぇ出んの!?ヒーロー科芦戸三奈!!』

 

これ俺のもあるのかな?どんなのになるかな?でも流石にちょっとハズいんだけど(ちょい楽しみ)

 

『運悪く他の奴らよりも一戦多くなったが、ここで勝つと勢いに乗れるかもだぜ!?』

 

「青山君と芦戸さんの対戦…2人の個性から考えると、青山君は遠距離からのレーザー主体の攻撃をしてくるハズ、芦戸さんが青山君の攻撃をかいくぐっていかに接近戦に持ち込めるのかが勝負の分かれ目…だけどステージには遮蔽物がないから芦戸さんの方がちょっと不利か…??」ブツブツ

 

緑谷の分析が聞こえてくる、確かにそう聞くと芦戸さんの方が不利なのか??

 

だとすると次の俺の対戦相手は青山になるな…

 

などと思ってた時期が僕にもありました

 

いざ試合が始まると

 

青山のレーザー攻撃を芦戸さんが軽快な動きですべてかわし、

 

青山が腹痛で苦しんでいる隙に酸でベルトを溶かして、顎をぶん殴り青山まさかの1発KO

 

芦戸さんの圧勝となった

 

いや強くない??

 

大丈夫かなコレ

 

そんな心配をする間もなく次の試合が始まる

 

次は上鳴と塩崎さん…なのだが

 

…この勝負も一瞬だった

 

初手上鳴が放電をかましたが、塩崎さんのツルで普通に防がれて、普通に拘束されて普通に上鳴が負けた

 

ドンマイ上鳴…相手が悪かったな

 

だがこれで1回戦は終了、16人が出揃った。

 

ここからが本当の本戦と言ってもいいだろう

 

『2回戦!!まぁこっからが本番だな!!』

 

『成績のわりになんだその顔!ヒーロー科緑谷出久!!』

 

『対…ごめんまだ目立つ活躍なし!普通科心操人使!!』

 

遂に緑谷の番か俺の試合は次の次なのでこの試合を見届けてから、準備しに行こう

 

正直、緑谷に勝ってほしいが、心操の個性が気になるところではある

 

洗脳と言っても洗脳する条件や解ける条件によって全然対応が変わるだろうしな…

 

『START!』

 

試合が始まった。

 

その直後

 

心操が何か喋っている様子で、それに答えながら攻撃を仕掛けようとした緑谷が完全に動きを止めた

 

あれが洗脳か…

 

あまりに強すぎるな

 

そして硬直状態の緑谷に心操がまたしても声を掛ける

 

すると緑谷は何のためらいもなく、回れ右をして場外へと歩いていく

 

「…緑谷!?」

 

ドンドンと場外へ向け足を進める緑谷

 

このままだと負けるぞ、

 

(お前はこんなところで負ける奴じゃないだろ…!)

 

まさに場外一歩手前、

 

そんな時だった

 

ゴオォォ!

 

と緑谷の周りに衝撃波のようなものが発生する

 

その拍子に洗脳が解けたのか緑谷は場外へと進めていた足を寸のところで止める

 

よく見れば指が腫れてる、ワンフォーオールを暴発させたのか?

 

そこから、決着は直ぐだった、正気を取り戻した緑谷が場外ギリギリまで心操を押し出し

 

そこから背負い投げで場外へと心操を放り出した

 

『3回戦進出!!緑谷出久!!』

 

(ヒヤヒヤさせんなよ)

 

それを見届けた俺は控室へと歩き出した

 

俺の前の試合は焦凍対瀬呂

 

瀬呂には悪いが、おそらく焦凍が勝つだろう、しかも割と直ぐに決着が着きそうだ、瀬呂には悪いが(2回目)

 

ということであんまりゆっくりしている暇はなさそうだ…

 

そう思いながら足早に廊下を歩く

 

もうすぐ控室なのだが、控室手前のステージへと続く廊下から出てくる見覚えのある猛々しい炎を纏った巨漢が見えた

 

その表情は少しイラついているのか険しい

 

俺が見ていると向こうもコチラに気が付いたようで体をこちらに向けて声を掛けてくる

 

「勇間ではないか、久しいな」

 

コイツ、試合前の焦凍に何か吹き込みやがったな

 

「どうも、エンデヴァーさん」

 

一応、挨拶は返す

 

「勇間、お前の活躍見させてもらった。やはりお前は中々に良い動きをする。流石に俺が見込んだだけあるな」

 

え、俺見込まれてたの?

 

No2に褒められて若干喜びそうになるが、そこをグッとこらえる

 

この人、家族が関わらなかったら普通に良い大人なんだけどな…

 

「エンデヴァーさん、あんた焦凍に何吹き込んだ??」

 

俺がそう聞くとエンデヴァーが答える

 

「今日のアイツは醜態が多すぎる、お前と焦凍が戦ったあの日から、多少はマシになったと思っていたが、炎の使い方がまるでなっていない、どうやらくだらん反抗期はまだ続いていたようだ」

 

「だから今一度教えてやったのだ、お前は俺の野望を果たすために成すべきことを成せとな」

 

そう話すエンデヴァーの瞳はひどく濁っている、「オールマイトを超える」という執念だけがエンデヴァーを突き動かしているのだろう

 

「するとどうだ今度はこの俺の力を使わないで本戦を勝ち上がるなどと言い出した。くだらん、これではお前と会う前に逆戻りではないか…」

 

そう言って額を抑えるエンデヴァー

 

コイツ、あれから全く変わってない、焦凍のことを自分の野望を果たすための道具としてしか見ていない

 

「…あんた焦凍のことをなんだと思って…!」

 

思わず俺が声を荒げたその時、

 

ゴゴゴゴゴゴゴ!

 

と会場が大きく揺れる

 

なんだ???

 

「…チッ、焦凍め、また下らんことを…」

 

そう言うエンデヴァー

 

(何が起こった??)

 

俺は試合会場へと続く廊下を走り、ステージを確認する

 

すると、そこには

 

スタジアムの天井を覆うまでの大氷壁が築かれていた

 

これ焦凍がやったのか…??

 

明らかな過剰攻撃だ、

 

瀬呂相手に冷静な焦凍がここまでやるとは思えない

 

焦凍の奴、そこまで思い詰めてたのか…

 

「…ッ!!おい!エンデヴァー!もう一度言うが焦凍はアンタの道具じゃない!アイツにもアイツのなりたいものがあるんだ!なんでそれを父親のアンタが邪魔するんだ!」

 

こんなに声を荒げるのはいつ以来だろうか、しかし俺はそれほどまでに怒っていたんだ

 

友達を…親友をここまで追い込んだ目の前の男に

 

しかしエンデヴァーは俺の言葉をほとんど無視するように言う

 

「そんな事より、勇間お前の試合は次だろう…行かなくていいのか??」

 

(クソッ…!!)

 

悔しいけど今、多分コイツに何を言っても無駄だ

 

冷静になれ…

 

俺は俺にできることをやろう…

 

そこから俺は何も言わずエンデヴァーに背を向けて歩き出す

 

「勇間!お前には期待している、下らん事を考えている焦凍の目を覚ましてやってくれ」

 

(...チッ)

 

背後から聞こえるその声に思わず心の中で舌打ちをしてしまうが、

 

なんとかこらえて俺は試合会場へと足を進めた

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

『エブリバディ!大変長らくお待たせしたぜ!』

 

『さっき氷漬けになったステージがやっと乾いて次の試合だ!』

 

『一回戦では華麗な身のこなしで一発KO!勢いに乗れるか!?1A芦戸三奈!!』

 

『対…これまでの成績2位、1位、個性も万能な優等生!!強すぎんぜ!!1A勇間勇!!』

 

プレゼントマイクの口上が述べられると両者がそれぞれが入場しステージへと立つ

 

しかし入場してきた勇間の様子を見て、観戦席の緑谷は違和感を抱いた

 

(勇間くん…怒ってる??)

 

普段は基本的に無表情な勇間であったが、その顔に若干の険しさが見られた

 

緑谷に心当たりがあるとすれば

 

昼休憩の後にしていた轟と勇間の会話である

 

緑谷はあの会話を聞いてしまった人物の一人だった。

 

(轟くんの左は使わないという宣言に勇間くんは思うところがあったのかな?あの2人は中学からの付き合いみたいだし…)

 

(まあ僕も思うことは無いことは無いんだけど…)

 

そう緑谷がそのような考え事をしていた時

 

蛙水がつぶやいた

 

「勇間ちゃん、なんだか怒ってるわ…」

 

それを聞いた常闇が口を開く

 

「そうか?怒っているようには見えないが…」

 

その言葉に周りもうんうんと頷く

 

「だっていつもよりちょっと顔が険しいもの」

 

その言葉を聞いたA組一同はもう一度勇間の顔を確認する

 

(((いや変わらんだろ!!)))

 

実の所、勇間の顔の変化は本当に少なく、見分けることが出来たのは、蛙水の言葉にうんうんと同意するもじゃもじゃ頭とシレッと端っこでステージを凝視している勇間大好きクラブ会員番号2番(所属人数2名)の爆発頭だけだった。

 

「なんだか、嫌な予感がするわ…」

 

『それではバトル……START!!』

 

「手加減無用だよ!!」

 

そう言って先手必勝と言わんばかりに駆けだす芦戸

 

それに対して勇間はこう呟くだけだった

 

「バギマ」

 

その声とほとんど同時のことだった

 

テレレレレレレッ♪

 

という音が会場に鳴り響く

 

一瞬の静寂…

 

しかし次の瞬間

 

ビュオォォォ!!

 

と音を立てて凄まじい勢いの竜巻がステージの中央に発生する

 

そしてそれによって起こる凄まじい突風は緑谷達のいる観戦席まで及ぶ

 

「な、なんて威力の風だ…!」

 

顔を腕でガードしながら緑谷はつぶやく

 

風は会場全体にしばらく吹き荒れる

 

そしてしばらくすると発生していた竜巻はおさまる、会場に吹き荒れていた突風も徐々にやんでいく

 

「……」

 

観戦していた観客やプロヒーロー達も突然の竜巻と突風に言葉を失っている

 

竜巻がおさまり、徐々にステージが見えてくる

 

そこには勇間が初期位置から全く動かずに立っているだけで、芦戸の姿はなかった

 

それもそれハズ、芦戸は竜巻のすぐ近くにいたわけで、あっという間に場外に吹っ飛ばされてしまっていた。

 

何が起こったかわからないといった表情でポカンと場外に尻餅をつく芦戸

 

それを見たミッドナイトが宣言する

 

「あ、芦戸さん場外!勇間くんの勝利!!」

 

『瞬殺!!またもや瞬殺!!勇間!轟同様一瞬で勝負を決めやがったぁ!!』

 

高らかに実況するプレゼントマイクの声に観客も何が起こったのかを徐々に把握し

 

歓声が起こる

 

ワアァァァァ!!

 

(アイツらしくねぇな…)

 

テンションの高いプレゼントマイクの横で相澤は考える

 

(普段のアイツならもっとスマートに、MPを節約した戦い方をするハズだ…)

 

(余裕がなくなってる??なにかあったのか??)

 

勇間は場外で尻餅を付いている芦戸の元まで歩いていた

 

「ごめん、ちょっとやりすぎた…」

 

勇間はそう言って芦戸に手を差し伸べる

 

「ちょっとびっくりしたけど大丈夫!むしろ勇間があたしにそこまでガチになってくれてちょっと嬉しい!!」

 

そう笑顔で言い放ち差し出された手を掴んで立ち上がる芦戸

 

それを見た勇間は思う

 

(笑顔眩しっ!!良い子過ぎる…!)

 

「ほんとに大丈夫か?ケガとかはしてないか??」

 

罪悪感を感じたのか勇間はしつこく芦戸に聞く

 

「だから大丈夫だってば!…じゃあそこまで言うなら観戦席まで戻るから一緒に戻ってよ」

 

(いやなんで?)

 

「わかった」

 

少し脈略のない芦戸の願いに戸惑う勇間だが反射的に了承をする。

 

そして勇間は芦戸と一緒に芦戸が入場してきた方のゲートから退場する

 

『おいおい!紳士かよ、勇間!!』

 

『いじってやるなマイク…』

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

「いやぁ!完敗だ!すごかったよ風!!」

 

俺はそんな賞賛の声を聴きながら観戦席への帰り道を芦戸さんと歩く

 

というかそんな事よりも…やっちまった

 

明らかにやりすぎだ、これじゃ、焦凍のこと何も言えないな…

 

少し頭に血が上っていたし、色々考えることが多くて余裕がなかった

 

でも

 

「ビュオーって!ビュオーって!いつの間にか場外にいるんだもん!」

 

笑顔で俺に話しかけてくれる芦戸さんを見ていると、少し気持ちが和らぐ

 

とにかく芦戸さんに怪我がなくて良かった。

 

「てか勇間さー」

 

「どうした??」

 

「あたしのことばっか心配してたけど、勇間の方はどうなの??大丈夫なの??」

 

突然俺に心配の言葉を掛ける芦戸に俺は少し驚く

 

「別に心配されるような心当たりはないけど…?」

 

「噓だね!顔に「僕今ちょっとしんどいです」って書いてあるもん」

 

「はぁ?」

 

それを聞いた俺は反射的に顔を触る

 

「ほら!やっぱり!」

 

あれ?騙された??カマかけられた感じ?

 

「まーでも対戦前からちょっと顔険しいなって思ってたし、あの戦い方もちょっと勇間らしくなかったからね」

 

俺の周りちょっと鋭い人多くない??

 

気のせい??(違います)

 

「でも私と話してたらちょっとずつ表情柔らかくなってきた感じするねー、もしかして私のこと好きか~??このこの!」

 

ち、ちげえし!

 

「ち、ちげえし!」

 

ちょっかいを掛けてくる芦戸さんに否定の言葉を掛けるが、確かに心が少し穏やかになっていくのを感じる

 

「勇間が何に悩んでるか知らないけどさ…ちょっと気負いすぎじゃない??もっと気楽にいこうよ、そういうのってしれっと他の誰かが解決してくれたり、そうじゃないにしても自分が出来ることを全力でやったら何とかなるもんだよ!!」

 

…そうか、確かにそうかもな焦凍の次の対戦相手は緑谷だし、アイツなら何かやってくれそうだ。

 

それに俺は俺のできることしかできない…それならせめて全力でやる。それでもだめなら最後は焦凍自身を信じてやれればいい

 

「…ありがとう、芦戸さん」

 

芦戸さん、すごい人だ…普通自分を負かした相手にここまでできるだろうか??

 

「良いってことよ!!」

 

そう言ってグっと親指を突き出す芦戸さん

 

「勇間がそんな辛気臭い顔してたら解決するもんもしないよ!せっかくの体育祭、もっと楽しまなきゃ!」

 

(今日の俺はほんと情けないな…)

 

そんなことを思いながら俺は観戦席まで戻った

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

その後も滞りなく試合は進んでいく

 

最初は飯田とサポート科の発目さんの試合

 

ちなみにこの試合の勝者が俺の次の対戦者である

 

じっくりと観察しようと思ったのだが…

 

ただの発目さんのベイビー紹介コーナーで全く参考になりませんでしたね…

 

ドンマイ飯田

 

ということで俺の次の対戦相手は飯田となった

 

その次は塩崎さんと拳藤さんのB組対決、

 

どちらも元チーム仲間なので思わず観戦に力が入ってしまったが

 

シンプルに武闘派の拳藤さんでは拘束系の塩崎さんの個性と相性が悪く、拳藤さんは善戦したのだが最終的には拘束されてしまい、塩崎さんの勝ちとなった。

 

そして常闇対八百万さん、この戦いは一瞬だった。創造で武器や防具を創ろうとする八百万さんだったが、その創造の隙を常闇はダークシャドウで攻め、八百万さんは何もできずに場外へと押し出されてしまった。

 

いや強ない?ダークシャドウ1対1最強やん

 

そして個性ダダ被り組

 

切島対鉄哲

 

アツいアツい殴り合いの末に両者ダウンでまさかの引き分け

 

正直、途中で熱くなりすぎて叫びそうになったが、俺のクールなイメージが崩れる(もう崩れてますよ)と感じたため何とか踏みとどまった。

 

引き分けの場合どちらがトーナメントで次に進むのかは何らかのミニゲームで決めるらしい。

 

そしてあっという間に2回戦最終対決

 

麗日対爆豪

 

正直、最初は麗日さんが心配で仕方なかったが、試合を見ているとそんな心配は無用だということに気付かされた

 

最後まで諦めずに爆豪に挑み続ける麗日さんの姿は俺が心配するほどのか弱い女の子なんかではなく、立派なヒーローの卵だった、最後の切り札の流星群が爆豪に破られ、惜しくも負けてしまったが、麗日の根性が光った良い試合だった。

 

あと爆豪を批判するプロヒーロー達に説教する相澤先生カッコよかったです。一生ついてきます。

 

その後鉄哲と切島のミニゲームとして両者による腕相撲が開催され、見事切島が勝利し三回戦進出となった。鉄哲の敗因は金属疲労らしいので後で鉄分たっぷりのブルーベリー〇イでも持って行ってやろう(もう遅いよ)

 

・・・・・・・・・・・・・

 

遂に3回戦

 

緑谷対轟の対決がやってきた

 

勇間は次の試合に出なくてはいけないので控室に…

 

行こうと思ったが対戦相手の飯田が普通に観戦席にいたため俺も普通に観戦席で見ることにした

 

(緑谷、頼むぞ…)

 

『今回の体育祭、両者トップクラスの成績!!』

 

『まさしく両雄並び立ち今!!』

 

緑谷は思考を巡らす

 

(まず氷結が来る!!)

 

(開始瞬間に…)

 

『緑谷対轟!!START!!』

 

プレゼントマイクの開戦の声が響くと同時に緑谷の予想通り轟の氷による範囲攻撃が緑谷を襲う

 

緑谷は迫りくる氷に向け指一本を犠牲にデコピンでスマッシュを放つ

 

(間に合え!!)

 

「SMASH!!」

 

その風圧で見事に迫りくる氷を粉砕する緑谷

 

しかしその指は酷く腫れ上がりもう使い物にならないだろう…

 

砕かれた氷を見て轟は呟く

 

「やっぱそう来るか…自損覚悟の打ち消し…!」

 

(緑谷…たしかにそれしか氷結を防ぐ方法はねぇかもしれないが…そのままじゃお前の体が…)

 

観戦席の勇間がそんなことを考えている間にも轟が氷結を放ちそれをスマッシュで緑谷が防ぎ、緑谷の指がまた1本、使い物にならなくなる

 

(考えろ…見つけるんだ…轟くんの隙を…)

 

(あと6回の中で…!)

 

「お前は…なんでそこまで…」

 

そんな緑谷の気迫に轟も思わず声を漏らす

 

しかし、

 

パキパキパキ

 

という音を立てて再び氷結が緑谷に迫る

 

「SMASH!!」

 

そして緑谷がそれを破る

 

(あと5回…!)

 

そんな時

 

観戦席では、腕相撲から帰ってきた切島が爆豪に喋る

 

「おめーも轟も…まぁ勇間もそうか、強烈な範囲攻撃ポンポン出してくるからなー」

 

「いや俺はポンポンは出せないけど…」

 

と勇間がこたえると

 

「俺だってポンポンじゃねぇよ舐めんな」

 

「個性だって身体機能だ、俺にだってピアス野郎みたいにわかりやすくはねェが限度がある、半分野郎にも何らかの形でそれがあるハズだろ」

 

爆豪がそう言う

 

「考えればそりゃあそうか…じゃあ緑谷は瞬殺マンの轟に耐久戦を仕掛けてるってわけだ」

 

(やっぱ爆豪鋭いな…)

 

この場で唯一その「何らかの形」を知っている勇間は爆豪の考察に唸る

 

そしてその間にも氷結を緑谷を襲い、スマッシュでそれを壊す

 

もう緑谷の右手は全滅している

 

(焦凍、そろそろなんじゃないか??限度…)

 

そう勇間が思った瞬間に轟が生成した氷の上を走り緑谷に接近する

 

『轟!緑谷のパワーに怯むことなく近接へ!!』

 

(っくしょっ…!)

 

近づく轟に向け、緑谷がスマッシュを放つが轟はタイミングよく飛び上がりそれを回避する

 

そして着地の瞬間に緑谷に直接攻撃を繰り出す

 

「っぶなっ!!」

 

何とかそれを緑谷は回避する、しかし回避したと思った右腕からさらに氷が生成され緑谷に襲い掛かる

 

その氷結が緑谷の足を覆うその瞬間、緑谷は危険を感じ、これまでのデコピンではなく左腕全部を使ったスマッシュを繰り出し、かろうじてその氷から逃れる

 

しかしその左腕は指同様酷く腫れ上がり、緑谷も苦しそうに呻く

 

(個性だけじゃない、判断力、応用力…機動力…全ての能力が…強い!!)

 

絶望する緑谷に轟は近く

 

「守って逃げるだけでボロボロじゃねえか、…チッ、やっぱり俺は…このまま…」

 

轟がそう言いながら顔を曇らせる

 

「悪かったな緑谷、くだらねぇ事に付き合わせて…その両手じゃもう戦いにならねぇだろ、終わりにしよう」

 

完全に追い詰められてしまった緑谷

 

誰もが緑谷の敗北を予想する中

 

観戦席の勇間はまだ緑谷の勝機を見ていた

 

(緑谷、今だぞ…お前なら気が付くハズだ焦凍の「限度」に…!そして、お前なら…)

 

『圧倒的に攻め続けた轟!!とどめの氷結を…』

 

その時だった

 

「どこ見てるんだ…!!」

 

緑谷が呟く

 

そして…

 

「SMASH!!」

 

既に壊れている右手の指で再びスマッシュを轟に叩き込む

 

「震えてるよ、轟くん」

 

(緑谷、気が付いたか…)

 

勇間は観戦席からではあるが、緑谷が轟の弱点を遂に見出したことを感じる

 

「ッ!!」

 

「個性だって身体機能の一つだ、君自身冷気に耐えられる限度があるんだろう??」

 

「で、それって左側の熱を使えば解決できるもんなんじゃないのか??」

 

「…ッ!!皆本気でやってる…!!勝って目標に近くために…っ、一番になるために!」

 

勇間は緑谷を信じていた

 

(そう、緑谷なら…気が付いただけで終わらない…だってお前は俺の知っている中で…)

 

()()の力で勝つ!?まだ僕は君に傷一つつけられちゃいないぞ!」

 

(最高の『ヒーロー』なんだから…!)

 

()()でかかって来い!!!」

 

「…緑谷」

 

緑谷のその言葉は轟の中の懐かしい記憶を呼び覚ます

 

『こいよ、全力で…』

 

轟の中でその姿と目の前にいる緑谷の姿が重なる

 

「…っ!いやっ!まだだ!」

 

そんな記憶を振り払い轟が緑谷に攻撃を与えるべく走りだす

 

(近距離ならお前は対応出来…)

 

駆けだそうと轟の右足が上がったその瞬間、

 

「イメージ…電子レンジ…爆発…しない…爆発しない…!しない!」

 

「SMASH!!」

 

攻撃が飛んでこない焦凍の左側に攻撃を入れる緑谷

 

『モロだぁー!生々しいの入ったぁ!!』

 

吹っ飛ぶ轟

 

「ぐぅう!」

 

しかし同時にスマッシュを打った緑谷の腕にもダメージが入る

 

(何で…)

 

再び轟が氷を出すがその勢いは弱い

 

そして

 

指を弾くための指も使い物にならなくなっている緑谷は口を使い親指を弾き、スマッシュを放つ

 

指も腕も酷く腫れ上がり満身創痍の緑谷を勇間は見ていることしかできない

 

(緑谷…もう体が…)

 

実はこの2週間、リカバリーガールの下で回復について学んでいた勇間だからこそわかる

 

もう、緑谷の体は…

 

(これ以上無茶するなら、腕に後遺症が残る…!)

 

「後遺症」それは今後一生残る傷、緑谷の今後のヒーロー活動や戦闘スタイルに大きな影響を及ぼすだろう…

 

(本当ならここであの二人の間に入って戦いを止めたいくらいだ…ッ!)

 

(でもっ!)

 

「なんでそこまで…」

 

緑谷の狂気的なまでの猛攻に轟は疑問の声を漏らす

 

そんな轟に対し緑谷は答える

 

「期待に応えたいんだ…!!」

 

「笑って、応えられるような…カッコイイ人に…()()()()()()

 

そんな緑谷の言葉に轟が思い出すのは友の…親友の言葉

 

『なぁ焦凍、お前…自分の「なりたい自分」ちゃんと見えてるか…?』

 

(これを言われた時、俺は何も答えられなかった…でも…緑谷は…)

 

「だから全力で!やってんだ皆!!」

 

緑谷がそう言って突進してくる

 

「君の境遇も君の決心も、僕なんかに計り知れるもんじゃない…」

 

「でも…全力出さないで一番になって…完全否定なんてフザけるなって今は思ってる」

 

『壁にぶち当たる。その時お前は気付くだろうぜ、自分がどれだけフザけたこと言ってんのか』

 

(ああ…そうか…)

 

「だから…僕が勝つ!!君を超えてっ!!」

 

焦凍の頭に過去の記憶が蘇る

 

兄弟が遊んでいるのに、自分だけが訓練させられた時…

 

夜中に優しかった母の本音を聞いてしまった時…

 

母が「あの目」で自分を見た時…

 

(でも…俺は…)

 

「親父を…」

 

「君の!」

 

「力じゃないか!!」

 

そんな緑谷の叫び

 

思い出したのはずっと忘れていた母の言葉

 

記憶の中の母はテレビの中のオールマイトに憧れる俺に優しく言ってくれたんだ……

 

『いいのよおまえは、血にとらわれる必要なんかない』

 

『なりたい自分になっていいんだよ』

 

(そうだ、思い出した…俺の『なりたい自分』)

 

(そして…こんな中途半端な俺に三年間もずっと寄り添ってくれた親友…)

 

チラリと観戦席にいるであろうその『親友』に目を向ける

 

すると…

 

「そうだ!焦凍!何回でも言ってやる!!それは!!」

 

「お前の力だ!!」

 

手すりから身を乗り出して叫ぶそのらしくない姿に思わず笑みがこぼれる

 

そして目が合った。

 

するとアイツは大きく、「大丈夫だ」と言わんばかりに大きく頷いた

 

「…馬鹿なやつらだ、アイツもお前も…」

 

その瞬間

 

ゴオ!!

 

と轟の左半身から煌めく炎の嵐が溢れ出る

 

 

「俺だって…ヒーローに…!!」

 

 

そして両雄がぶつかり合う…

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

…俺は走っていた

 

俺が真っ直ぐに向かう先はリカバリーガールの診療所

 

先の焦凍と緑谷の戦い

 

両者の全力がぶつかり合ったその結果は満身創痍の緑谷が場外まで吹っ飛ばされ、焦凍の勝ちとなった。

 

しかし、緑谷は見事に焦凍の左側を引き出した、もう一度あの力が焦凍のものだと焦凍に気づかせた

 

緑谷は焦凍を救った、俺の親友を救ってくれた…

 

やっぱり緑谷はすごい奴だ…!!

 

だが、あの最後のぶつかり合い、緑谷は散々酷使した右腕で100%再びを使った、使ってしまったんだ

 

このままじゃ緑谷の腕は歪む…

 

でも俺なら…俺の力なら…

 

今度は俺が救う番だ…

 

『リカバリーガールの出張保険所』

 

そう書かれた看板の下の扉を勢いよく開ける

 

「やっぱり来たかい…今運ばれてきたとこだよ」

 

俺はズンズンと気絶している緑谷の元まで歩く

 

「リカバリーガール、これ後遺症残りますよね??」

 

俺がそう聞くとリカバリーガールは淡々と答える

 

「流石のあんたでもそれくらいはわかるようになったんだねぇ」

 

「パッと見た感じだと、右手の粉砕骨折、まぁ綺麗に元通りとはいかないだろうねぇ」

 

それを聞くと俺は直ぐに緑谷の傍に寄り、手をかざす

 

「俺なら治せます」

 

しかしその時

 

「待ちな!」

 

リカバリーガールに止められる

 

「なんでですか!?後遺症ですよ!?今後の緑谷の人生に大きな影響が出る!」

 

俺は声を荒げてしまう

 

「あんた、この子を全回復させたら、ぶっ倒れるよ、体育祭どころじゃなくなる」

 

それくらい、厭わない、友達のためだ

 

「そのくらいかまわない!体育祭は来年も再来年もある!」

 

落ち着きのない俺とは対照的にゆっくりと俺をたしなめるような口調でリカバリーガールは話す

 

「そりゃあんたはいいかもしれないよ、あんたは優しいからね、友達のためなら自分のことなんて二の次…」

 

「でもそれは良いことだよ、ヒーローの本質さね」

 

「でも、治した後のことも考えないとねぇ…この子が目覚めてあんたが自分のためにぶっ倒れて体育祭に出れなくなったって知ったら、どうなると思う??」

 

(あ……)

 

俺は以前の相澤先生の言葉を思い出す

 

『だからその個性を使うときは一度考えろ、その力を使われた相手が動けなくなる自分を見てどう思うのか、対等でいたい存在に自分のせいで無理させたと知ったとき、どんな気持ちになるのか…とかな』

 

「じゃ、じゃあそのことを緑谷には言わないでおけば…」

 

「それはあまりに不自然すぎる、あんだけ元気だったあんたが急に棄権なんておかしいと思わんかね」

 

どうすれば…

 

「じゃあ放っておけって言うんですか!?治せるのに治さずに!俺はそんなことできない!」

 

「…まぁそういうと思ったよ、わたしだってあんたのその友達を救いたいっていう気持ちは尊重したい、だからあんたはこの子を治す。そして何事もなかったかのように…とはいかないかもしれないけど、不自然にならない程度には本戦にはできる限り出場する。そしてこの子には何も言わない。それでいいかい??」

 

でも…それって…

 

「でも、緑谷を全回復させたら俺はぶっ倒れるって…」

 

「言ったねぇ、でもそれはあくまで全回復した時の話さね…」

 

「あんたはこの子の右腕の粉砕骨折だけを治す、それ以外は私でもちゃんと元通りに治せる。」

 

でも、そんなの練習では一度も…

 

「何、しけた面してんのさ、それでもあたしの弟子かい??あんたならできる」

 

優しいリカバリーガールの言葉…

 

緑谷を助けられて、俺も本戦に出られて、その後の緑谷も傷付くことはない…

 

最高じゃないか

 

「…やります、やらせてください…!」

 

「それでこそあたしの弟子さね、ほら傷をじっくり観察しな、どこにどう魔力を注ぐかを明確にイメージするんだ」

 

言われるがままに傷を観察する、骨の粉砕骨折…

 

これは酷いな…ベホイミ…では足りなそうだ…

 

でも「この呪文」なら…

 

魔力は…結構持ってかれるな…

 

どれくらい戦えるか…

 

いやそんなの気にするな

 

例え最後まで戦えなくてもいい

 

途中でぶっ倒れたっていい…

 

今はただ友達を…

 

(救いたい…!)

 

「…多分…いけます」

 

俺がそうリカバリーガールに言うと

 

リカバリーガールはこくりとこちらを見て頷く

 

緑谷、焦凍を救ってくれてありがとうな…

 

今度は俺の番だ

 

俺はグッと大量の魔力を両手に込める

 

そしてその呪文を唱える…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『13.ベホイム』

 





戦闘描写ぐちゃぐちゃですいません。

こんなクソ長い話読んでくれてありがとうございます。

それと、いつも沢山の感想、意見頂きありがとうございます。

どんなものでも本当に嬉しいので、なにか思ったことや指摘などあれば気軽にお願いします。

誤字脱字の報告もお手数じゃなければお願いします。

あと流石にそろそろ主人公がもっとゴリゴリにいきたいみたいなのでアンケート置いておきます。
体育祭の運営になったつもりでお答えください。
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