長いです。よろしくお願いします。
雄英高校職員室
『緑谷出久!まったく!おかげで減給と半年間の教育権剝奪だ、まァ結構な情状酌量の余地あってのこの結果だがな』
受話器からしわがれた老人の声、それに対して電話越しなのにペコペコと謝る細身の男
『とりあえず体が動いちまう所はお前そっくりだよ俊典!』
「申し訳ありません私の教育が至らぬばかりで…いやはや」
オールマイトとグラントリノだ。
そうして未だにペコペコと頭を下げながら職員室を出るオールマイト。
そこからグラントリノがオールマイトに話したのは。ヒーロー殺しと敵連合についてだった。
ヒーロー殺しが今回示した『ヒーロー』についての思想。これが現在ネットニュースやTVなどのあらゆるメディアによって全国に発信されている。抑圧された今の時代では、あの思想に感化される人間が必ず現れる。
そしてヒーロー殺しと敵連合の繫がりの示唆、これによって敵連合がヒーロー殺しと同じ思想をもつ集団だと認知される。つまりヒーロー殺しに感化された人間たちが敵連合に集まるということ。
もしこうなることを敵連合がハナから想定しているのならば、敵連合の大将は相当な切れ者だ。
グラントリノが喋る
『着実に外堀を埋めて己の思惑通りに状況を動かそうというやり方』
「…やな予感はしていましたが…」
『ああ、俺の盟友でありお前の師…"先代ワン・フォー・オール所有者志村"を殺し、お前の腹に穴をあけた男…』
『"オール・フォー・ワン"が再び動き始めたとみていい』
「あの怪我でよもや生きていたとは…信じたくない事実です」
『かつても一度オール・フォー・ワンを瀕死まで追い詰めたことがあった。だが奴はしぶとく生き残った。多分今回もどんな個性を使ったか知らねぇが生き残ったんだろう…』
『お前のことを健気に憧れているあの子にも折を見てしっかり話した方がいいぞ…お前とワン・フォー・オールにまつわるすべてを』
「…わかりました」
そう言って電話を切ろうとするオールマイト。
しかしそこにグラントリノの声が響く
『待て!話はまだ終わってないぞ俊典』
「は、ハイッ!まだ何かありましたでしょうか??」
『この前の敵についての話だ。脳無つったかな…ホークスと戦っていたのは』
「ええ、それにこの前にUSJに来ていた奴と同じだったみたいですね、私は戦っていませんが…」
『確かUSJの時はお前が倒した方の脳無しか遺伝子情報が取れなかったんだろう?』
「ええ、もう一方の方は生徒が対処していまして、現場が荒れて遺伝子情報などは採取できなかったとか」
『ほう、あの敵相手に対処できる生徒がいるとはな、少ししか見れていないが相当なバケモンだぞありゃ』
『話が逸れたな、それで今回ホークスが足止めした際に飛び散った脳無のものとみられる血液が残っていてな、遺伝子情報の解析を塚内に頼んだ』
「そうでしたか…ですがなぜ今更脳無の遺伝子情報の解析を?おそらく私が戦った脳無と同様、複数人の遺伝子情報が出るだけと思いますが…」
『…あの脳無は『呪文使い』の可能性がある…!』
「じゅ、呪文使い…ですか?」
『ああ、ヤツは轟に攻撃される前に目くらましのような閃光を放った。その時に何やら言葉を叫んでいた。俺にはどうもその言葉がただの脳無の叫びには聞こえなかった。何か意味のある言葉。それこそ『呪文』…とかな』
「……」
『ん?どうした俊典……お前まさか『呪文使い』について忘れたとか言わねぇだろうな??』
「……すいません」
『このアンポンタンが!……チッ!…まァ無理もねぇか、継承者同士で語り継がれていると言っても『呪文使い』がいたのは初代の時代、そこから一切現れることは無かった。志村がお前に話したのも随分前だろう…』
「ほんとすいません…今、全部思い出しました…」
『ケッ、まぁだから『呪文使い』の可能性のある脳無の情報を探ろうって話だ』
「……あの、非常に申し上げにくいのですが」
『なんだ』
「……私の生徒に1人いました…『呪文使い』…」
『な、なんじゃとぉ!!??このアンポンタンのポンコツ弟子が!!なんでそれをもっと早く言わん!?』
「……忘れてたもので…」
『ケッ!!言葉にならんわい…じゃあまだ『確認』もしてないってことか?』
「…その通りです」
『早急にやれ!』
「…でも彼は職場体験中でして…」
『じゃあ帰ってきたらすぐやれ!このバカモンが…』
(でもこの人だって体育祭見てたんなら勇間少年が呪文を使うことを見ているハズじゃ…)
『わしはボケ老人じゃぞ!!お前の後継しか見とらんかったわ!!』
「なぜ心の声が…!?すいません!」
『はぁ…まァまだ遅くは無い、違う可能性もあるから『確認』だけしっかりな』
「はい、わかりました」
そう言ってオールマイトは静かに電話を切った。
・・・・・・・・・・・・・・
現在俺は職場体験からの帰りの新幹線に乗っている。隣には常闇、寝てるんだけどね。
あの事件があってから2日間、ずっとホークスの元にいたのだが、色々あった。ホークスを追いかけたり、常闇とホークスを追いかけたり。ホークスの後を飛んで行ったり。
…うん、ホークスに着いて行ってただけだったわ。
しかし、自分にとって実りのある職場体験だったことは確かだ。
まだ空中での呪文の併用は行えないものの、空を飛ぶタイプの敵との戦闘ができるようになったのは大きい。
あとはどんどん慣らしていって、飛行中にできることを増やしていくだけだ。
俺たちがお世話になったホークスの事務所を去る時、ホークスから何か言われるかと思ったがそうでもなかった。
『『五日間ありがとうございました。』』
『うん、じゃあまた来てねー』
これだけだ。にこやかに手を振り俺たちを送り出すホークスを見て、ずいぶんあっさりしているなと思ったが、違った。
目が違った。目が明らかにいつもより鋭かった。アレはまさしく獲物を狙う鷹の目だ。めっちゃ怖い。
『インターンも来るよね?来なかったらどうなるかわかるよね?』
と目が言っていた。間違いない。
俺はおびえながらも事務所を後にし、その後一回も振り返ることは無かった。
こわいねぇー(ボル〇リーノ調)
まぁとりあえずそれは置いといて…
3日目の保須での事件の後、無事九州に帰って来れたのではあるが、その時MPがほとんどなく、疲れていたのですぐに寝てしまった。
だから次の日の朝、緑谷に詳しい事情と安否を聞くために電話したのだ。
・・・・・・・・・・・・・・
4日目朝
「もしもし?緑谷?」
『もしもし勇間くん?どうしたの?』
「いや、昨日何があったのか聞こうと思って。あと安否確認」
『なるほどね、僕と轟君は大丈夫だったんだけど…飯田君が…え?誰からの電話だって?勇間くんからだけど…『勇?』『勇間くんか!』
緑谷の声とは別の声が受話器の遠くから聞こえてきた。この声は焦凍と飯田か?
『ごめん勇間くん、いま轟くんと飯田くんと一緒に病室にいるんだけど、二人(主に轟)も話したいって言ってるからビデオ通話にしてもいい??』
「おお、全然いいけど」
俺は緑谷の提案を了承する。
しかし、さっきの緑谷の口調的に飯田に何かあったようだが…
俺は心配しながら、ビデオ通話となったスマホの通話画面を覗く。
そこには腕などに包帯を巻く緑谷と轟の姿。
飯田も包帯を巻いている。しかし2人とは違い両腕にゴツいのを巻いており明らかに二人よりも重症のようだった。
それが目に入った俺は真っ先に飯田に心配の言葉を掛けようとする。必要なのであればホークスに頼んで、治療に行くつもりでもあった。
しかし、そんな俺よりも口を開くのが速かったのが焦凍だった。
『おい勇、なんで最初に電話かけんのが俺じゃなくて緑谷なんだ??』
…ええ?
知らんけど、たまたまなんだけど、他意はないんですけど、
「いやなんとなくだけど…」
俺がそう答えると、若干目をすぼめる焦凍
怖いよ、なんでちょっと怒ってんの…?
「あーなんかごめんな焦凍…っていやそんな事より!飯田!お前その怪我大丈夫なのか!?必要なら俺がそっち行って治すぞ??」
俺の上擦った声が響く。
焦る俺とは対照的に落ち着いた様子で飯田は口を開く。
『気遣いありがとう勇間くん。そしてこの腕だが…後遺症が残るらしい』
後遺症!?
「なんだって!?やっぱり今からそっちに行く!俺なら治せるかもしれない!ちょっと待ってろ今ホークスに…『いいんだ…』
益々焦る俺の声を遮り飯田が声を上げる
「え?」
『いいんだ』って何だ?後遺症をそのまま放っておくって言うのか?
『俺は今回復讐心に囚われてヒーローを志す者としてあるまじき行為を取ってしまった。君も聞いただろ?ヒーロー殺しの言葉…奴は憎いが奴の言葉は真実だった』
飯田は真剣な顔でそう話す。
『だからこれは自分への戒めだ。俺が本当のヒーローになれるまでこの左腕は残そうと思う』
そんな飯田の言葉、正直に言って納得は全くしていない。
後遺症なんて、緑谷の時も言ったが残しておけば今後の活動に大きな支障をきたすだろう、治した方がいいに決まっている。
しかし…
俺は飯田の表情を見直す。
(こんな真剣な顔の奴の言うこと、聞かないわけにはいかない…か)
何があったのか俺には詳しくわからないが、相当なことがあったのだろう。
何より本人が決めたことだ、俺にそこをとやかく言う権利は俺にはない。
「分かった。飯田がそう言うなら俺は何も言わないさ、でも俺にできることがあるならすぐ言ってくれ。なんでも協力するからな」
『勇間くん…ありがとう』
飯田が俺の言葉にそう答えた。
「ああ、任せろ飯田、ところで一体お前らに何があったんだ?なんかヒーロー殺しと一緒にいたみたいだけど」
『ああ、それはね…』
俺に何が起こったのかを丁寧に説明してくれる緑谷
『なんで俺じゃなくて緑谷に…』
めんどくさい彼女みたいなムーブを一生やっている焦凍。
うん、緑谷くんの話をちゃんと聞かせて??
・・・・・・・・・・・・・・
こんな感じであの日アイツらに何があったのかを聞くことができた。
まさかヒーロー殺しと交戦して、捕まえてしまうとは驚いた。
ニュースではエンデヴァーが捕まえたことにはなっていたが、これは緑谷達が許可なく個性を使用して戦闘したという規則違反をもみ消すためのものらしい。
…てかこれ俺に話して大丈夫だった?一応当事者ではあったし、口止めもされたけど…
深くは考えないようにしよう…
そう言えば、途中でベストジーニストの事務所に行った爆豪の様子が気になってメッセージを送ったりもした。確か4日目の夜だったかな?
すると写真が一枚送られてきただけだったんだが…
カメラに向けて人差し指を立て、自撮りのような画角で撮影されたその写真。立てている指が中指じゃないのが妙に爆豪のリテラシーの高さを感じられるが問題はそこではない。
髪型が七三分けになっていたのだ。
それを見た瞬間俺はあまりの似合わなさに過呼吸になるくらい爆笑してしまい、同室の常闇に心配されてしまうほどだった。
ちなみにこの写真を常闇に見せたら常闇も笑いをこらえきれない様子だった。
笑いすぎて返信するのを忘れてしまい爆豪にブチギレられたのは別の話なのだが…
そんなこんなで職場体験の期間は終了した。
改めて俺は隣の座席で眠っている常闇を見る。
気持ちよさそうに眠る常闇を見ているとコチラまで眠くなってきた。
ウトウトしながら俺はゆっくりと目を閉じて、眠りにつくのであった。
・・・・・・・・・・・・・・
翌日
勇間は轟(和解済み)と共に久しぶりの雄英高校へと登校する。
2人で教室の扉を開けるとそこには勇間にとっては五日ぶりの懐かしい我らがA組の面々がいた。
「お!勇間来た!!」
教室に入った瞬間真っ先に切島に話しかけられる。
そして切島に続いて瀬呂もコチラにきて話す。
「おい!爆豪見てみろよ!すげぇことなってんぞ!」
笑いながらそう言う二人につられて勇間が爆豪の方を見る。
そこにはベストジーニストよろしく、髪型が七三分けになってしまった爆豪の姿があった。
勇間は職場体験中に写真では見たことがあるものの、実物を見るのは初めてだった。
違和感の塊のようなその頭部を実際に目にした勇間は思わず吹き出し、瀬呂と切島と共に爆笑する。
そして笑っている3人を見ていた爆豪が激怒し言葉を発した
「てめェらいつまで笑ってんだ‼!アァ!?」
そしてその怒りと共に頭部が爆発しいつもの髪形に戻る。
「「「戻ったー!!」」」
その様子を見て再び爆笑する3人。
しばらく笑い、呼吸困難な勇間は少しずつ呼吸を整えようとする。
そして笑いをこらえながら勇間が言う
「…フゥー…フゥー…ど…どうなってんだよ…お前の頭w…!」
「勇間って、あんな大爆笑することあるんだね…」
そんな男子たちの様子を横目で見ていた芦戸が一緒にいる蛙吹と耳郎、葉隠にしゃべりかける
「そうね、私も初めて見たわ…」
「なんつーか、ギャップだわ」
「最初の頃のクールイケメンはどこに…」
蛙吹も耳郎も同意の言葉を芦戸に返す。
そんな女子達の会話に割り込んでくる人物が一人いた
「勇は結構笑うぞ」
轟である。
「特に年末のガ〇の使いとか見た時はこんなもんじゃなかった」
普段なら絶対に会話に入ってくることのない轟の乱入に女子達3人は驚く。
「へ、へぇー意外だねー」
芦戸がそう返す。
(((めずらしいこともあるもんだ…)))
残りの女子3人の心の声も重なる。
その時、少し離れたところで峰田と職場体験の話をしていた上鳴が突然轟、飯田、緑谷に向けて声を掛ける
「そーいや、お前ら3人は職場体験大丈夫だったん?大変そうだったみたいだけど」
すると周りもそれに同調するように3人に色々な声を掛ける
「そうそうヒーロー殺し!」「…心配しましたわ」「命あって何よりだぜマジで」
この場で本当はこの3人がヒーロー殺しを捕らえたのだという事実を知っているのは、当事者である3人と半分当事者である勇間だけだ。
「エンデヴァーが助けてくれたんだってな!流石No2だぜ」
そんな言葉を掛けてくるクラスメイト、それに対して少し複雑そうな表情で轟が答える
「…そうだな救けられた」
そんな轟をフォローするように緑谷も続ける
「うん…というか僕たちよりも勇間くんだよ!」
ヒーロー殺しの話題になりそうな空気を感じた緑谷は話題を変えようと勇間の名を上げた。
ちゃっかり脳無を一体倒してネットニュースの記事になった男だ。話題を変えるにはもってこいだろう。
その声で一斉に目線が勇間に向く
「…ヒィー…ヒィー…お前本当に……っくw…ウワへへェw…」バンバン
「おいコラピアス野郎!キメェんだよ!そんでいつまで笑ってやがんだ!」
「「「……」」」
そこにはいまだに爆豪の肩をバンバンと叩き、もはやツボに入りすぎてわけのわからない笑い方をする勇間とそれに対しキレる爆豪の姿があった。
(((いや勇間笑い方キモッ)))
A組一同の心の声が重なる。
そんなキモい勇間に声を掛けられず無言で見守るA組達。
すると自分の周囲が明らかに静かになったことで皆の視線が自分に集まっていることに勇間が気付く
「ワェでへへw…へへw……へ………ん?」
(あれ?なんか急に静かになったと思ったらなんでみんなこっち向いてるんだ?…てか待て、思い返せば俺さっきもしかしてめっちゃキモい声で笑ってなかったか?……気のせい?)
チラリと皆の表情を確認する勇間、全員もれなく引き気味の表情で勇間を見ている。
(…もしかして気のせいじゃないなこれ)
勇間は息を整えて軽く咳払いをして声を上げる
「…スゥー……コホンッ……で、俺がなんだって?(イケボ)」
「「「もうおせぇよ!?」」」
そんなツッコミを受ける勇間だった。
この後勇間は色々話を聞かれたり、結局上鳴のせいでヒーロー殺しの話題になってしまったり、でも飯田はもう切り替えた様子で委員長として仕切り始めたりと、相澤先生が来るまで騒がしい時間を過ごしたA組一同だった。
・・・・・・・・・・・・・・
「ハイ私が来た」
いや流石に抜きすぎだろオールマイト
「ってな感じでやっていくわけだけどもね、ハイ、ヒーロー基礎学ね!」
もはや最近挨拶が適当になってきつつあるオールマイトを俺は眺める。
まぁ毎回あんなに気合入れた挨拶してたら疲れるわな。
俺はあんたの味方だぜオールマイト。
「ヌルッと入ったな」「久々なのにな」「パターンが尽きたのかしら」
辛辣なクラスメイト達にの言葉に小言で「尽きてないぞ、無尽蔵だっつーの」と小言を言いながらオールマイトは今日のヒーロー基礎学の内容を説明し始める。
「職場体験直後ってことで今回は遊びの要素を含めた救助訓練レースだ!!」
オールマイトがそう言う。
今回のグラウンドは運動場γ、複雑に入り組んだ迷路のような細道ばかりの密集工業地帯を模したグラウンドだ。
どうやら今日はここで5人4組(1組は6人)に分かれて、その5人の中で誰が一番に救難信号を出したオールマイトの元にたどり着けるかを競うらしい。
俺は二組目のようなので他の組のレースを見れるスクリーンのようなものがある場所へみんなと向かう。
一組目に出走するのは緑谷、飯田、瀬呂、芦戸、尾白の五人
皆の話を聞く限り、瀬呂が一番人気のようだ。
うーん俺は尾白の複勝に千円くらい賭けようかな、彼ならシレッと複勝圏内には入ってくれるだろう。
一応隣にいた爆豪に声を掛けてみた。
「いやー爆豪さんはこのレースどう見ますか?」
「デクが飛んで終わりだ」
またそういうこと言う…
でも確かにこのレース、移動手段を持たない緑谷が機動力のある他の奴らと比べると若干不利っぽいな。
でも…
(なんか策はありそうなんだよなぁ)
スクリーンに映るレース前の緑谷のいつもよりも自信ありげな表情を見て俺は思う。
「START!!」
オールマイトの開始の合図が響く。
一斉にスタートする5人。
俺としても疑似スパイ〇ーマン瀬呂がこういう場では強いのではないのではないかと思ってはいたが、真っ先に先頭に躍り出たのは意外にも緑谷だった。
体全体を大きく使い、普段では考えられないようなスピードとジャンプ力でピョンピョンと障害物を乗り越えていく。
流石緑谷…この五日間で相当成長してきたらしい。
(でもどうやってこんな動きを?後で聞いてみるか…)
キラキラとした稲妻のようなものを身に纏い、どんどんと障害物を乗り越えていく緑谷を眺める。
…なんかあれだな
「なんか勇間と爆豪足して2で割ったみたいな動きだな!」
スクリーンを見ていた切島がそう言う。
そうなのである、俺がピオリムをかけて走る姿に似ていると思ってたんだ。そしてピョンピョン跳ねるところは爆豪に似ている。
緑谷のことだ、日頃から俺たちのことを観察して、自分のモノにしていたのだろう。
別に俺は自分の動きを真似されても全然嫌というわけでは無い、むしろ嬉しいくらいだ。
でも俺の隣に立っているこの男は違うだろう
俺は隣の爆豪をチラリとみる。
爆豪は歯をギリリと鳴らして険しい表情をしていた。
やっぱりな…
コイツの性格上、緑谷と自分の動きが緑谷に模倣されるのは何か思う所があるのだろう。
再び俺はスクリーンを見つめる。
でも本当にすごいな…よく五日でここまで…あ、落ちた
俺が緑谷の動きに感動していると、突然緑谷が足を滑らせて落下した。
足場が不安定なところでピョンピョン飛び回ったからだろう…俺もよくやった奴だ。
ということで最前列を走っていた緑谷はあっという間に最下位に転落、結局1位は皆の予想通り瀬呂となった。
しかし負けてはしまったがこれまで自身を傷つけなければ個性を使えなかった緑谷にとってこの進化はかなり大きな一歩だったんではないだろうか。
そんなことを考えていると
「じゃあ次の組行ってみようか!」
オールマイトの声。
俺の番だ。
確か俺の組は俺、爆豪、峰田、砂籐、青山だ。うん男くさいね。
俺はスタート位置に着く
「おいピアス、テメェにはぜってぇ負けねぇからな!」
隣で爆豪がそう言う。
おそらくトベルーラを使えば勝てそうだが、なんかそれだと味気ない気もする。
…よし!緑谷にお手本でも見せてやるとするか!(慢心)
・・・・・・・・・・・・・・
「…落ちた」「…落ちたね」「…落ちたわね」
スクリーンを見ていたA組の面々がそうつぶやく。
そう、緑谷に手本を見せてやると意気揚々にピオリムを使い飛び出していった勇間。
最初こそいいスタートで、皆を沸かせた勇間であったがその数秒後、普通に足を滑らせ地面に顔面からダイブを決め込んだ。
「ぶべらっ!」
という情けない悲鳴が運動場γに響く。
これにはさっきまで「勇間くんやっぱり参考になるなぁ…それにまた前より速くなってる…!」と真剣な顔で解説していた緑谷も顔をしかめる。
「あー、あの辺さっき私が通ったところだ。酸が飛び散ってるから滑りやすくなってたんだ」
そう小さく呟く芦戸
それに対してスクリーン越しの勇間が口を開いた。
『それ先に言え!!』
「いやーごめんねぇ勇間」
『素直に謝るなら許す』
「ありがとー」
(((いやなんでお前ら画面越しで平然と会話してんだ)))
コチラの声は向こうに聞こえないハズなのになぜか普通に会話する2人にA組から心中で突っ込みが入る
「しかし、運が悪かったとはいえこのままじゃ勇間が最下位かー、珍しいこともあるもんだな…」
落ちてしまった勇間を見てそう言う上鳴
「猿も木から落ちるってやつだねえ」
麗日もそう零す。
それに続けて緑谷も喋る
「この運動場に来るのは初めてだろうし『ルーラ』は使えない。流石の勇間くんでもここから逆転は厳しいか…」
現在の先頭は爆豪。
落下した勇間を見て高笑いしながら爆破で空を飛び障害物を無視してドンドンと進んでいく。
「じゃあ今回は爆豪の勝ちか!」
その様子を見た切島がそう言う。
しかし、そこで勇間と職場体験を共にした常闇が口を開いた
「いや、まだだ。
常闇がそう言った瞬間
スクリーン上の勇間の体がフワリと宙に浮き上がり、そこから風を切り高度を上げていく。
そしてグングンと先頭の爆豪に迫る勇間
「おー!勇間も飛んだ!!」
「勇間ってあんな普通に飛べてたっけ?」
(アレは勇間くんが前に出来ないって嘆いてた『トベルーラ』…そうか、だから飛行系のヒーロー『ホークス』を職場体験先に選んだんだ…!!)
緑谷がスクリーンを見ながらそんなことを考える。
しかし、爆豪を猛追していた勇間であったが、爆豪自身も自分が迫られていることに気が付きギアを上げる。
結局二人はほとんど同時にゴールした。
「「どっちだ!?」」
二人は一斉にオールマイトに判定を聞く
「…うーん…ギリで爆豪少年の勝ちだなコレは!!」
オールマイトの判定によりハナ差で爆豪の勝利となった。
それを聞いた勇間はがっくりと肩を落とす。
(うわー…負けちゃったよ、しかも序盤コケて負けるとか俺ダサすぎる。こりゃ爆豪に煽られても文句は言えないなぁ…)
勇間はそんなことを考えながら爆豪の方へ向き直る。
「…チッ!!」
しかし爆豪は特に何も言わずに、勇間に背中を向け去っていく
(アレ?おかしいな…絶対煽ってくると思ったのに、何かあったのか?)
いつもと違う爆豪の様子に勇間は少し心配の色を見せる
(でもこういう時の爆豪は特に何もせずにいつも通り接していればポロッと悩みを話すこととかあるし、そっとしておいてやろう…)
そう考えた勇間は自分も元の場所へ戻ろうとするとオールマイトに呼び止められる。
「Hey!勇間少年!君がミスるとは珍しいね、まぁミスは誰にでもあるさ!だが今日は訓練だったからいいが、その小さなミスで救えた命を落としてしまうときだってあるんだ。気を付けろよ!!」
そう言ってグッドポーズをするオールマイト。
「すいませんオールマイト、気を付けます」
ぐうの音も出ない俺は反省しかできない。
トボトボと俺が戻ろうとするも、再びオールマイトが俺に声を掛ける
「勇間少年!」
まだ何かあるのだろうか…
「なんですか?」
「君は…」
俺はこの次に続く言葉を全く予測できていなかった…
「『メガンテ』って呪文を知ってるかい?」
オールマイトの口から告げられた『メガンテ』という言葉。思わず俺は口をあんぐりと開け驚いてしまう
「え?…は?…な、なんで…」
驚いた顔をする俺。それを見て
「……マジかよ」
と言いなぜかもっと驚いた顔をするオールマイト
いやこっちがマジかよなんですけど??なんでオールマイトから『メガンテ』なんて物騒な言葉が出てくるんだ?
「この授業が終わったら緑谷少年と私の元へ来なさい、話がある」
そう俺に言い残し、去っていくオールマイト
一体、なんの話なんだ?
・・・・・・・・・・・・・・
授業後の更衣室
『メガンテ』って呪文を知っているかい?…か。
もちろん、知っている。というか一応結構前に呪文として習得はしている。
よっぽどのことがない限り使いたくはないが…
『メガンテ』は簡単に言えば自爆呪文だ。自身の命を引き換えにとてつもない威力の爆発を相手に与える。そんなとんでもない呪文だ。
問題はその呪文をなぜオールマイトが知っているのかだ。
…うーん、考えても全く分からない。話を聞かない限りは何とも言えない。
でもなんだってそんな物騒な呪文を…
「…なぁ…なぁ!勇間はどう思う!?」
「…いや…まぁ…いいんじゃない?」
それにこの後緑谷と話って、なんで緑谷と?
「だよなだよな!じゃあ麗日は!?麗日はどう思う?」
「…うーん…かなりいいんじゃない?」
でもこの世界の『メガンテ』って強いのかな?ゲームだと意外と耐性持ち多くて使い物にならなかったりするんだよな…
「おー!このむっつりがよ!じゃあじゃあ芦戸はどうだ??」
「…うん…うん…すごい…すごく良いと思う」
Ⅱの『メガンテ』とかもうめちゃくちゃだからなぁ、だって相手が使ってきたら即死だぜ?理不尽すぎてとんでもないだろ?子供泣くぞ?実際俺が泣いたんだから。
「勇間!!話が分かるじゃねぇか!!じゃあ最後に八百万は??八百万はとてつもねぇだろ!」
「いやぁ…とてつもないね、なんかもうとてつもなさすぎて理不尽なレベル」
てかさっきから誰かめっちゃ俺に話しかけてきてない?ほとんど考え事してて聞こえなかったから全部適当に答えちゃってるけど大丈夫?
「おい!おい!勇間!!」
グラグラと誰かに肩を揺さぶられる
「…はっ!…切島か…ごめん考え事してて…ってさっき誰か別で俺に話しかけてなかった?」
「誰かっておめぇ…峰田だよ」
そう言って地面に倒れて、なにやら悶えている峰田を指さす。
ん?なんか嫌な予感してきたぞ?
俺は悶える峰田を見て、少しだけ状況を理解し始める。
「…俺、なんかとんでもないこと言ってなかった?大丈夫?」
俺が焦りながら切島にそう言う。
すると切島はポンと優しく俺の肩に手を置き、話す
「…言ってた。とんでもねぇ事言ってた…まァなんか…ドンマイとしかいえねェ」
…いやいや切島クン!そんな大袈裟な!(現実逃避)
俺はそう言って早々に着替えを済ませて、更衣室から出た。
そして教室に戻るべく左を向く。
するとそこには廊下を遮るように横並びに立つ、A組の女性たち6人の姿があった。
え?ナニコレ?
そしてその内の一人、八百万さんが声を上げる
「い、勇間さん!女性にあのようなことを言うのは…ど、どうかと思いますわ…」
ちょっと顔赤らめて言うのやめて?ヤバい事しちゃったみたいになるから!
うん、よく見たらなんで耳郎さんと葉隠さん以外皆顔赤いの??
そして次に麗日さんが口を開く。
「な、なんか…」
何言うんだ…
「勇間くんも…男の子なんやなって…」
もじもじしながらそう言う麗日さん。
(いやこの破壊力よ…)
「変態を〇せぇぇ!!」
俺が麗日さんのとてつもない破壊力にうろたえているところに耳郎の叫び声が響く。
それと同時に顔面目掛けて迫ってくるイヤホンジャック。正確さと不意打ちの凶悪コンボが強み!
寸のところで俺はそれを躱す。
「危なっ!なにすんだ耳郎さん!」
俺がそう言うも耳郎さんの追撃は止まらない
たまらずに俺は反対方向に走りだそうとする。
しかし、その時
ギュムと何かが体にしがみつく。
あ、あれ、なんか柔らかい
「変態を確保!!響香ちゃん!!今だよ!」
葉隠さんか!
いや、頑張ったら振りほどけそうだけど…
うん、なんでしょうね…上手く体に力が入らない…
「鼻の下伸ばしてんじゃねェ!!」
耳郎さんのイヤホンジャックが目の前に迫る。
あ、避けらんない…
ブスッ!
ドックン!!
「ギアァァァ!!!!」(三段活用)
このあと勇間は変態のレッテルを返上すべく、二日間耳郎の言うことは何でも聞く下僕に成り下がるのであった。
・・・・・・・・・・・・・・
仮眠室前
緑谷と2人で仮眠室の前のドアまで来ていた。
「ここにオールマイトが?」
「う、うん…というか勇間くん、さっきは大変だったね…」
気まずそうにそう言う緑谷
「もう言うな……ドア開けてくれ…」
そのことはもういいだろうと言わんばかりの表情で俺は緑谷に扉を開けるように頼む
「あ、うん。分かったよ」
ガラッ
ドアを開けた緑谷が部屋に入る。それに俺も続く。
部屋にはソファと丸椅子が2つ
ソファにはオールマイト(トゥルーフォーム)が座っている。
いつもとは違う張り詰めた雰囲気が部屋を包んでいた。
「2人とも、掛けたまえ」
俺たちはそんな真剣なオールマイトの声に緊張しながら丸椅子に座った。
「…勇間少年、その眼帯は?」
何故か右目に眼帯をしている勇間にオールマイトは疑問の声を上げる。
「…いえ、コレはもう本当になんでもないです。気にしないでくださいお願いします。」
「あ、そ、そう?まぁ君がそう言うならもう聞くまい…」
勇間にとってこんな場で「女子にセクハラしてその罰としてこうなりました」とはとてもじゃないが言えないだろう。
オールマイトは気を取りなおすように一回咳払いし、話を始める。
「ここに2人を呼んだのは他でもない"ワン・フォー・オール"の話だ」
え?
「オ、オールマイト!?」
ガタッと椅子を鳴らし立ち上がる緑谷。
無理もないワン・フォー・オールはこの2人の秘密事だったハズだ。
そりゃクラスメイトがいるところで名前を出されたら驚くに決まってる。
俺はこの世界ではまだ緑谷とオールマイトの関係やワン・フォー・オールについて全く知らないということになっている。
「ワン・フォー・オール??それに緑谷もなんでそんな驚いてんだ?」
俺がそう言う。
「ああ、そこからだったね、君には話しておかなければならない。私と緑谷少年の関係とワン・フォー・オールについてを…」
なぜ急に俺に話し始めたのかは分からない、ただタイミング的にさっきの『メガンテ』発言がきっかけなのは確かだろう。
オールマイトは語り始める。
緑谷に個性を渡した事。その個性が聖火のごとく受け継がれてきたものだということ。
知ってはいた、知ってはいたけども実際にオールマイトからその説明を聞くとなんだか感動する。
「す、すげぇ…」
思わず、俺は声を漏らしてしまう。
ふと、隣から視線を感じたため隣を見る。
すると複雑そうな表情の緑谷と目が合った。
「おいおい、それどういう顔だよ?」
俺はいつもと同じトーンで緑谷に話す。
すると緑谷も話し出す。
「いやッ…僕の事、卑怯だなって思わないの??無個性だった、何の力も持ってなかった僕が急にオールマイトの個性をもらってここに立ってる…!最初から個性を持っていてここまで必死で努力してきた勇間くん達とは違うんだ…!」
「み、緑谷少年…」
うーん…なに言ってんだコイツ
「いや、何言ってんだよ緑谷。さっきの俺の「すげぇ」って感想は緑谷に対しての感想だぞ?」
「え?」
俺の言葉にポカンとした表情を浮かべる緑谷。
「だって実際すごいぞ、俺は鮮明に覚えてる…小さい頃、無個性だったお前が男の子を守るために個性を持った3人相手に立ち向かったこと…それからヘドロの敵から爆豪を助けるために立ち向かったこと。多分俺が同じ状況にいても簡単にはそんなことできなかった。それにワン・フォー・オールだってお前のその勇敢な行動がオールマイトの心を動かしたから緑谷の元へ渡ったんだ。つまりは俺たちみたいにただ授かっただけの個性じゃない…お前自身が勝ち取った個性だ。ほらみろ卑怯どころか俺たちの誰よりもお前はすごいよ」
俺は続ける
「いいか、緑谷…前も言ったけど、緑谷を初めて見たあの日から、緑谷を見ると自分のなりたい『ヒーロー』を思い出せる。俺にとってお前は既に最高の『ヒーロー』なんだよ」
俺の話に顔を歪める緑谷
「っておい…なに泣きそうな顔してんだよ緑谷」
なぜか泣きそうな顔の緑谷に俺は声を掛ける
「…ッ!…な、泣いてないよ…!!」
ゴシゴシと目元をぬぐいながらそう言う緑谷
そんな俺たちを温かい目で見守るオールマイト。
そしてパンパンと手を叩く
「ハイハイ!お涙頂戴はここまでということで本題はここからだ!準備は良いか?2人とも!」
「「アッ、ハイ」」
俺たちは改めて椅子に座りなおして聞く姿勢を取り直す。
オールマイトが語り始める
「ワン・フォー・オールは元々ある一つの個性から派生したものだ」
ここからは俺が全く知らない話だ
「"オールフォーワン"他者から力を『奪い』己がものとし…それを他人に『与える』ことのできる”個性”だ」
オールフォーワン?ワン・フォー・オールの対義語か?
てかとんでもない個性だな…
オールマイトは話す。
かつてあった個性黎明期、社会がまだ個性に対応しきれていない。なんでもありの混沌の時代。
そんな時代にいち早く人々をまとめ上げた人物がいた。
それが"オールフォーワン"
人々から個性を奪い、圧倒的な力によって瞬く間に"悪"の支配者として日本に君臨した。
オールマイトから語られるそんな話。
ただ俺はこの話がどうワン・フォー・オールにつながるのかよくわからなかった。
「…その話がワン・フォー・オールにどうつながってくるんですか?」
うん、緑谷が聞きたかったことそのまま聞いてくれた。
オールマイトがそれに答える。
オールフォーワンは「与える」個性、だからオールフォーワンは個性を与えることで人々に信頼、あるいは屈服させていったらしい。
しかし、そんな与えられた人の中には負荷に耐えられずに物言わぬ人形のようになってしまう場合もあるらしい。
まさに『脳無』のように…
その時俺の頭によぎったのはあの赤毛の脳無…アイツと戦った時のアイツの悲しそうな顔が頭から離れない。
そしてその一方、個性を与えられることで個性が変異し混ざりあうケースがあったそうだ。
オールフォーワンには無個性の弟がいた。
その弟は体が弱かったものの正義感の強い男で兄の所業に心を痛めており、それに抗い続ける男でもあったようだ。
そんな弟にオールフォーワンは『力をストックする』という個性を無理やり与えた。
しかし、弟には本当は個性が宿っていた。『個性を与える』だけという自身も周りも気づきようがない意味のない個性が。
オールマイトが言う
「力をストックする個性と与える個性が混ざりあった!!これがワン・フォー・オールのオリジンさ」
はぇー、すげー
なんかスケールがデカいのと昔の話すぎてそんな感想しか出てこない。
「そんな大昔の悪人の話…なんで今それが…」
うん、また緑谷が聞いてくれた。
再びオールマイトが話す。
個性を奪える。これはいわば何でもあり、成長を止める個性…などの個性を奪えばオールフォーワンは半永久的に生き続けられるようだ。
それに敗北を喫した弟は後世に託したらしい。今は敵わないかもしれないが少しずつその力を培い、いつかオールフォーワンが倒せるようにと…
そして遂にオールマイトの代で討ち取った!
と思ったらまだオールフォーワンは生き延びており敵連合のブレーンとして再び動き出しているらしい。
ずっと昔の話をしていたのにいつの間にか俺たちの身近な話になっている。その事実に俺は少し鳥肌が立つ。
「ワン・フォー・オールはいわばオール・フォー・ワンを倒すための力!君はいつかヤツと…巨悪と対決しなければならない…かもしれん」
そうか…緑谷が…
「頑張ります…オールマイトの頼み…何が何でも応えます!あなたがいてくれれば僕は何でもできる…できそうな感じですから!!」
緑谷がオールマイトに向けてそう言う
「…ありがとう」
オールマイトは含みのありそうな表情をするものの緑谷に対して礼を言う
…うーん…これ俺いる??一言も発してないけど…?
「あ、あのーこの話…僕いりました??」
「あ、ああもちろんさ!ここからが勇間少年が関係してくるのさ!」
コイツ今「忘れてた!」って顔してた!
ほらみろ緑谷だって「そりゃないですよ」って顔してる!!
まあそれは置いておいて…オールマイトの話を聞こう
「私がヤツを討ち取れなかったと言っても奴はかなりの重傷を負ったはずだ。だが過去にも1度私のようにギリギリまでオールフォーワンを追い詰めた男がいた。しかしこれはまだワンフォーオールができたばかりの頃の話、その男の個性の詳細や顔などは今は誰も知らない。こうやって継承者の中で語り継がれてただけだ。」
まだ俺との関係性は見いだせないが…
「ただその男は呪文による魔法と剣で戦っていたらしい…」
剣と魔法?もしかして昔にも居たのか?
「さらに、オールフォーワンを瀕死まで追い込んだ技…いや呪文もわかっている」
「その呪文が『メガンテ』だ」
だからさっきオールマイトはあんなことを言ったのか
「だから私たち以前の継承者達はその男のような強力な力を持つ者が今後現れれば、オールフォーワンを倒すの大いに役立ってくれると踏んでそのような力を持つ者を『呪文使い』として後継者に伝えるようになった。でも結局それ以降『呪文使い』は現れることがなくその伝承もどんどんと薄れていったわけだ」
…なるほど、『メガンテ』使いってことは俺と同じような転生者…なのかはわからないけど似たような人が過去にもいたってコトは確実そうだ。
「で、そこにまさに呪文使いの勇間少年とその勇間少年と同じような個性を使う脳無が現れた。」
オールマイトはそう言って3枚の写真と資料を取り出した。
「これはこの前の保須市の事件で手に入ったあの脳無から検出された遺伝子情報を解析した結果だ。勇間少年、見覚えのある顔があったりしないかい?」
この人達が…あの脳無に…
俺と緑谷は3人の写真と資料を覗き込む
一人はザ・ヤのつく自由業って雰囲気の人だ。書類を見ると軽犯罪を繰り返し。逮捕。そして釈放された直後に行方不明となっているようだ。うんこんな怖い人知らないですね。
もう一人はザ・サラリーマンって感じの人だ。商社で働いていたようだが…この顔で性犯罪で捕まっている。さっきの人と同じように釈放直後で行方不明になっているようだ。
で最後の一人。うん、ザ・イケメンって感じだ目がキリっとしてていいね。でもこの人は結構悲惨だ。
4歳の頃、個性事故で両親を亡くしている。そして施設へと入る。でもちゃんと里親が見つかったみたいで、その後はどうやら林業を営みながら普通に暮らしていたようだ。妻もいて子供もいた。しかし子供が4歳になったタイミングで一家全員が行方不明。この人だけ情報がすげぇ多いな…
個性事故か…最近は全然珍しい事件ではない、かく言う俺もあの時初めて放ったメラがもう少し威力が強ければ…カーテンに当たらずに壁に当たっていたら…などと考えるとゾッとする。
でもいずれにせよこの三人に見覚えは無い。
チラリと緑谷を見ると資料を凝視し、なにかを考えているようだった。
「全員見たこと無いですね…」
俺がそう言う。
「そうか…まぁそれは仕方ない。それより勇間少年は『メガンテ』について何か知っているようだが…」
オールマイトがそう言うと
「え!そうなの!?」
と緑谷も驚いてコチラを見る
コレは…言った方がいいのか?
「一応…知っているというか、使えますけど」
「なんだって!?」
俺が答えると驚くオールマイト
「でも話を聞く限りかなり強そうな呪文だけどなんで使ってないの??」
そう聞く緑谷、まぁ言うか…
「『メガンテ』は自爆の呪文なんです。使用者の命を引き換えに物凄い爆発を起こすっていう。だから使ったことはありません」
俺のその言葉に部屋の空気がズシッと重くなるのを感じる。
「じゃあ、あの男は…」
「おそらく、自分の命を賭してオールフォーワンを倒したかったんだと思います。でも届かなかった…」
俺の言葉に黙ってしまう2人、俺は続ける
「でも安心しろ緑谷、俺だってヒーローになるんだ、もしその時がくれば全力でお前と一緒に戦う…!それで…もしこの命一つで巨悪が倒せるなら俺は…「やらせない!」
俺の言葉を遮り、そう言う緑谷。
「君がそれをする前に僕が敵を倒す!…から!」
そしてこちらをしっかりと見据える緑谷。
力強い目線が俺に向けられる。
かっこいいじゃん緑谷。
「わかったよ緑谷、頼りにしてるぜ…大丈夫!俺だってできる限り死にたくないし!」
俺は笑いながらそう言う
「それに…俺たちにはあのオールマイトだって付いてるんだぜ?負けるわけないよな??」
「そうだったね!さっきも言った通りオールマイトさえいてくれれば僕は何でもできる…感じがする!」
「いやその感じがするってなんだよ」
「感じは感じだよなんかこう…わからない??」
「わかりません」
そう言って盛り上がる2人をオールマイトは見つめる
(私はいつまで緑谷少年のそばにいられるかわからない…勇間少年…そのときは緑谷少年を頼む…)
・・・・・・・・・・・・・・
時は流れて6月最終週
期末テストまで残すところ一週間
「全く勉強してねー!!」(20位)
上鳴がそう叫んだ。
あと一週間で期末テスト。もしここで赤点を取ってしまえば補習確定で林間合宿には参加できない
「体育祭やら職場体験やらで全く勉強してねー!!」(20位)
「あっはっはっは」(19位)
「確かに」(14位)
上鳴の泣き言にもはや笑うことしかできていない芦戸と上鳴に同意する少し勉強が苦手な常闇。
「中間はまー入学したててで範囲狭いし特に苦労なかったんだけどなー行事が重なったのもあるけどやっぱ期末は中間と違って…」(12位)
「演習試験があるのが辛えところだよな」(9位)
そんなことを言う普通の砂籐と見た目によらず何故かちょっと頭がいい峰田
「あんたは同族だと思ってた!」(19位)
「お前みたいなやつは馬鹿で初めて愛嬌がでるんだろが…!どこに需要あんだよ…!」(20位)
「『世界』かな」(9位)
「芦戸さん、上鳴くん!が…頑張ろうよ!」(4位)
「やっぱ全員で林間合宿いきたいもん!ね!」(4位)
普通に頭のいい緑谷が2人に声援を送る
「うむ!」(2位)
めっちゃ頭のいい飯田がそれに同意
「普通に授業受けてりゃ赤点はでねぇだろ」(5位)
「言葉には気を付けろ!」(20位)
頭のいい轟の言葉にダメージを受ける20位
「お二人とも座学なら私お力添えができるかもしれません」(1位)
「「ヤオモモー!!」」(19)(20)
一位である八百万が助けてくれるとのことで喜びの声を上げる19位と20位
「ん?ちょっとまて…じゃああのA組が誇る2大イケメン(笑)の片割れは何位だ?」(20位)
「えー、なんだかんだ何でもできるから高そうだけど…まだでてない3位とか?」(19位)
「3位は俺だ!!」(3位)
そう声を上げる爆豪
「意外過ぎんだろ」(7位)
耳郎がそう言う。
「じゃあ、あいつは本格的に何位なんだ?」(20位)
20位の疑問の声に1人の男が答えた。
「勇はバカだぞ」(5位)
そう言った5位の指さす方向を一斉にみんなで見る
「まず例年の林間合宿の開催地とその時期についてのデータを割り出してなんやかんやしてこの計算式に当てはめてプログラムを実行する。これによって今年の林間合宿の会場が割り出される。つまり今から俺がそこに行けば。ルーラの行先登録が可能となり、補習地獄が終わってからでもルーラで会場に向かって皆と寝食を共にできるというわけだ!違うかねワトソン君!?」(21位)
そこにはメガネをかけてノートPCをカタカタと打つ勇間勇の姿。
「「「…」」」(みんな)
「あれ…俺のスペアのメガネだ…」(2位)
そんな2位の呟きもむなしくPCになにかを入力し続ける21位
「よし!これで今年の開催地が割り出せるはずだ!出ろ!」(21位)
そう言ってターン!とエンターキーを叩いた21位
「出たぞ!…あれ?……おい!ワトソン君!」(21位)
「なんだ勇?」(5位)
(((ワトソン君お前かい)))
「これは……どこだ??」(21位)
「パラオだ」(5位)
「パラオ!?」(21位)
((((……パラオ?))))
「うーん…」(21位)
((((諦めて勉強してくれ……))))
「よし!!行こう!!パラオ!!」(21位)
「「「「「お前!色々と大丈夫か!!!????」」」」」」(みんな)
波乱の期末試験開幕!林間合宿がかかっているプレッシャーで勇間は壊れてしまう…果たして無事全員で林間合宿へと行けるのか!?
おまけ 勇間くん下僕生活
「勇間ーちょっとパン買ってきてー」
「響香様。買ってきました」
「んー、ありがとう」
「ありがたきお言葉」
…
「勇間ーノート見せてー」
「響香様どうぞご覧ください」
「いやノート綺麗すぎない!?いつもこんな感じ?」
「響香様のためにがんばって書きました。褒めてください」
「…え、えらいぞ…」
「ありがたきお言葉」
…
「勇間ーちょっと駅まで1人だから送ってー」
「響香様お供します」
「なんか雨降ってきたねー」
「傘買ってきましょうか?」
「うん、お願い」
「一個でいいですか?」
「は、はぁ?相合傘でもするつもり!?…ま、まぁ別にいいけど」
「いや、俺折り畳み傘持ってるんで…」
「じゃあ個数きくな!」
…
「勇間ー日直の書類重いから半分持ってー」
「響香様お任せください」
「まかせた」ドサッ
「…」テクテク
「…」テクテク
「なぁ耳郎、これくらいなら別にいつでも手伝うぞ」
「様つけろ変態下僕が………じ、じゃあお願いしようかな」
「まかされた」
…
「勇間ーちょっと移動だるいから運んでー」
「響香様任せてください」
「えっ?ちょいマジ?お姫様抱っこ?」
「いや、コレが一番持ちやすいんで」
「流石にコレは恥ずいというか…」
「誰も見てないんで、ホラ早く首に手を回して」
「こ、こう?」
「そうそ…」
「ん?勇間どうした?急に固まって…」
「いや。思ったより顔が近すぎて…ちょっと動けない…」
「なになに照れちゃってんの?そうそう今後もウチの事もちゃんと女の子として見ろよ勇間」
「いや別にいつも見てないことはないんだけど…」
「…え?」パチリ
「ん?あれ?ここベット?っ!!なんつー夢見てんだウチは…!」
(ウチが女の子として見られることなんかあるはずないのに…)
…
「お、きょ…耳郎おはよう、やっと下僕期間終わって清々してたところだ。ちなみに俺の変態疑惑はちゃんと晴れた?」
「……勇間、ちょっと移動だるいから運んで」
「は?もうその期間は終わったろ?それに運ぶって言ったってどうやって運ぶんだよ?台車でも持って来いってのか?」
「…お姫様抱っこ」
「え?は?ん?今なんて言った?お姫様抱っこ?はぁ…俺を何だと思ってるのか知らないが自分が女の子だって言う自覚をもっとちゃんと持ってくれ…そういうのは好きでもない男に言っていいことじゃないぞ」
「……冗談に決まってるでしょ、何本気にしてんの?」
「な!いたいけな少年の純情をもて遊ぼうとしたな!この魔性の女め!もう知らん!」トコトコ
「…ちゃんと女の子として見てんじゃん」
この後「響香様」呼びがなかなか抜けずに、呼び方の矯正に苦労する勇間くんであった。
ここにきて色々な設定をぶち込みました。
なんとか受け止めていただければ幸いです。
いつも感想、ご意見ありがとうござます。大変活動の励みになっているので今後もたくさん書き込んでいただけると助かります。
また誤字脱字の報告もよろしくお願いします。
別にコレでヒロインを1人に決めようってわけではないのですが、興味本位でアンケート置いてみました。もし答えていただけると私が喜びます。是非普段アンケート答えない人とかも答えてみてください。お願いします。
誰が好きですか?
-
蛙吹さん
-
芦戸さん
-
爆豪くん
-
麗日さん
-
耳郎さん
-
その他