この世界でも勇者になります。   作:shch

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お久しぶりです。

暑くなってきましたね。

今回も長めですが読んでいただけると嬉しいです。


22.ラリホー

 

 

『MP』

 

所謂、マジックポイントってやつだ。

 

俺的には体中に流れる魔力の総量のこと、ダイの大冒険的に言えば魔法力とか言うのだろうか?

 

そして俺はいつもその時々に体内に残っている魔力量をわかりやすくMPとして数値化する。

 

この数値化ってのは頭の中に数字が浮かんでいるとかじゃなくて、長年の訓練の末に染み付いた体内の魔力量を管理するための『感覚』だ。

 

『MP』は、俺が呪文を唱える度に消費されてく、そしてゼロになったなら体中の魔力が流れが完全にストップし強制的に眠ってしまう。

 

そしてこの『MP』のゼロはもう本当にゼロだ。

 

それ以上でも以下でもない、ゲームみたいに「いのりのゆびわ」とか「まほうのせいすい」みたいな回復アイテムも無い、レベルアップで全回復とかいう便利機能ももちろん無い。

 

そんで気合や根性でどうにかなるものでも無い、限界を超えるとか、Plus ultraとか、そんなことを言ってもMPばかりは回復することはない。

 

ゼロはゼロ、まあ要するに『MP』の回復手段は睡眠以外に無いのだ。

 

この世界の『MP』ってのはそういうもんだ。

 

…え?何を急に語ってんだって?

 

まあ俺が何が言いたいのかっていうと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しんくうぎり!!!」

 

ザンッッ!!

 

『グオォォォ…!!』

 

勇間が勢いよくつるぎを振り下ろすと目の前で風の斬撃を受けた土魔獣が断末魔を上げながら崩れ去ってゆく。

 

「はあ…はあ…はあ…」

 

崩れ去る土魔獣の様子を肩で息をしながら確認する勇間、しかし随分疲労がたまっているのかその体がふらりと揺れる。

 

「ぐっ…」

 

勇間はなんとか、力なく倒れようとする自身の体を剣を杖代わりにして支えてその場に踏みとどまる。

 

「はあ…はあ…あぶね…」

 

そして辺りを見渡した。

 

周囲には自分が蹴散らした土魔獣の残骸たちの姿。

 

その時、脳内にテレパスがはいる。

 

『すごいじゃん勇間くん!!一回倒れた時は心配したけど…結局全部倒しちゃった!限界を超えたね!「Plus Ultra」ってやつ!?』

 

「…はあ…はあ…どうも…」

 

『今日の訓練はこれで終了!!ちょっと休憩したら合宿所の前に集合ね!』

 

「…ふぅ…了解です…」

 

乱れた呼吸を整えながら、なんとかマンダレイからのテレパスに答えた勇間。

 

「…ああ…終わったあ…」

 

一人でそう呟きながら、訓練が終了したということで大きく開けた訓練場のど真ん中に勇間は力なく倒れこむ…辺りには勇間の倒してきた土魔獣の残骸の山々…

 

そこから、ゴロンと体の向きを変えて仰向けになった勇間は夕焼け色に染まった綺麗な空を見上げながら、思う…

 

 

 

 

(…何が言いたいかっていうと)

 

 

 

「…なんで俺ってば…MPがゼロになったのに動けてたんだ…??」

 

 

 

…って話だ。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

MPがゼロになっても動けた…俺の『感覚』が狂っていたとは考えにくい…それにあのいつもと違うところからMPが湧き出る感覚…今回が初めてじゃなかった…

 

『いくぞ…焦凍…!』

 

『こい……勇!』

 

あの時…体育祭での焦凍との決勝戦、今思えばあの時もそうだった、あの時も確か俺が緑谷の治療と度重なる連戦で最後にはMPがゼロになってたのにもかかわらず、今回のように突然魔力が溢れ出して、最終的には焦凍を倒した。

 

今回の感覚はその時と一緒だ、一度は土魔獣との戦い続きでMPがゼロになったものの、同じように魔力が溢れ出し、そこから再び立ち上がり、なんとか最後まで戦い抜いた。

 

不思議な感覚だ…普段使う魔力と湧き出る魔力ではまるで感覚が違う…魔力をどこかから借りてきているような感覚…例えるなら某忍者漫画の主人公みたいに、自分のチャクラとは別で九尾のチャクラを使うことができる…そんな感覚に近い。

 

「…勇間」

 

でもMPがゼロになったからといって確実にその魔力が湧き出るわけではないのは確かだ、だってこれまでMP不足で何回倒れたと思ってる?あの状態になる条件は何だ??

 

「…勇間?…聞いてんのか?」

 

それであの魔力が出てきた時はその魔力だけが体に巡る…

 

まぁ要するに普段使っている魔力は完全に巡らなくなって体内には湧き出てきた別の魔力だけで満たされるという感じ。

 

「おーい?勇間ぁ?」

 

そしてその状態になった時、魔力効率がグンと跳ね上がる、簡単に言えば後から湧き出た方の魔力の方がどういうわけか使いやすいのだ、何となく体に馴染む、先ほど『借り物の魔力』と表現したが、まるで普段使っている魔力が本当は借り物で、後から出てくる方の魔力が俺の本来の魔力なn「おい!勇間って!!」

 

俺の思考を遮るような声が聞こえてくる、その声によって俺は現実に引き戻される。

 

「…え、あ、ああ、ごめん…どうした?」

 

俺はその声に驚きながら声の方に振り向く。

 

「どうしたもこうしたもねぇよ勇間、急に動かなくなるからびっくりしたぜ…ほら玉ねぎの皮剥けたなら渡せよ、切るからよ」

 

そう言って俺に向けて手を伸ばしたのは切島だった。

 

ああそうだった…訓練の後にみんなでカレーを作ることになって…なんか色々あって玉ねぎの皮剥き役とかいう超重要な大役に俺が大抜擢されたんだった…

 

俺はそんなことを考えながら傍にある玉ねぎの入ったカゴの方に目をやる。

 

「…ふむ」

 

…アレ?全然剥けて無くない??考え事しすぎて手が止まっちゃってた?

 

俺の目線の先にあったのは、まだまだ皮の剥けていない大量の玉ねぎ達の姿だった。

 

…ちょっとヤバいか?…もしかしたら「遅すぎ」って怒られたりする?…嫌だよ?

 

(もうここからは本気で皮剥こう…)

 

俺がそう決心して次の玉ねぎに手を伸ばそうとしたその時…

 

「おい!馬鹿ピアス!クソ髪!玉ねぎ早く持ってきやがれ!!何トロトロやってんだ!?ああ!?」

 

聞き慣れた誰かさんの怒声が背後から聞こえた。

 

チラリと後ろを確認すると、鬼の形相でコチラに歩いてくる爆豪の姿が見える…嫌な予感…

 

爆豪は俺たちの元に近づくと、俺の横にある皮の剥けていない玉ねぎが大量に入ったカゴに目をやった。

 

「……」

 

しばらく無言でそのカゴを見つめて、爆豪は口を開く。

 

「…おいポンコツブッキー(不器用)ダサピアス野郎」

 

「それおr「てめェだ!!」

 

俺の声を遮って再び声を荒げる爆豪、うるせえ…

 

俺は口を開く。

 

「んだよ、なんか文句あんのか?(強気)」

 

「文句もクソもねぇわ!!全然玉ねぎ剥けてねェじゃねえか!!MP切れで火も出せねェし、包丁さばきも不器用すぎて見てられねェからやむ無く玉ねぎの皮剥き役とかいう誰でもできる超楽で簡単な仕事を与えてやったのに、それすらもまともにできねェのかって話だ!!このポンコツピアスが!!」

 

「…すんません(弱気)」

 

ぐうの音も出ない…俺はカスだ…

 

「あの…頑張るんで…飯抜きだけは許してください…」

 

「つべこべ言ってねェで手ェ動かしやがれ!!」

 

「はいい…」

 

俺の皮剥き地獄がここから始まるのであった…

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

翌日…

 

 

 

「…むむむむ…」

 

俺は昨日と同じように倒した土魔獣の残骸の上で次の土魔獣軍団を待ちながら考え事をしていた。

 

考えているのはもちろん、昨日出た「別の魔力」の話。

 

あの魔力は普段俺が使っている魔力とは全くの別物だ…さらに昨日からよく考えていたが、あの魔力…普段の訓練でも調子がいい時がたまにあってその時も同じような感覚がだったような気がしてきた。

 

だからこそあの魔力を完全に使いこなせるようになれば、なんか色々できるし、常に調子が良くなるんじゃ無いか?

 

そんなことを考えて、訓練中や今も自身の意思であの魔力を引き出そうとしたのだが…

 

「…むむむ………うん…ダメだ」

 

でない…どうやってもでない…多分これは俺がどう気張ってもできるもんじゃ無い気がする。

 

…まずは魔力が出る条件から考えるか…

 

これまであの魔力を使うことができたのは体育祭での焦凍戦と昨日の訓練の最後…いずれにしても俺の本来のMPが枯渇した状態で戦闘がまだ続いているという状況だ。

 

でも2回しか使えたことがないからこれが本当の発動条件なのかも怪しい…だから実践であの魔力に頼ってMPを枯渇させても大丈夫などと考えるのも危ない、もし大事なところで発動しなかったら普通にシャレにならないからな…

 

あと普段の訓練での調子いい時は完全にランダム…まあ色々と考えたが…要するに不確定要素が多すぎてまだ全然実戦では使えないのだ。

 

『『ぐおおおおおお!!』』

 

考え事をしていると、どうやら次の土魔獣達ができたらしい、前方から大量の土魔獣が俺に向かって迫ってきた。

 

 

「…ふう…来たか…」

 

俺はそれを見て立ち上がり、一つ呼吸を置いて、腰に携えたつるぎに手を伸ばす。

 

(とりあえず今はあの魔力のことは考えないで本来の俺の魔力でやれるだけやるしかない…か)

 

そんなことを考えながら俺は土魔獣の大群の中に突っ込んでいった…

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

そして数時間後…

 

 

 

「Zzz…Zzz…」

 

その日の分の土魔獣をなんとか倒し切った勇間は昨日倒れこんだ場所と同じところで思いっきり爆睡していた。

 

というのも昨日のレベルアップでMPが多少増えていたり、ちょっと途中でMPを節約しながら戦っていたことで昨日のようにMP枯渇で途中で動けなくなることもなく、最後まで戦いきることができたのだ。

 

まあその代わりに今日は最後の一体を倒したところでMP切れになって寝てしまったのだが…

 

「Zzz…Zzz…」

 

そんな気持ち良さそうに眠る勇間の元に足を運ぶ人物がいた。

 

「…はっ…気持ちよさげに眠りやがって…」

 

勇間の元に来たのは相澤だった、寝てしまった勇間を回収しに来たようだ。

 

「………」

 

そんな相澤は目線を眠っている勇間から勇間の周囲にある土魔獣の残骸の山に目を向ける。

 

その量は昨日の分と合わせてとんでもない数となっている。

 

とても一人のプロヒーローでもない男が2日で倒したとは思えないその量、それを見た相澤は無言で勇間の首根っこを掴んで歩き始める。

 

その表情は心なしか神妙だ。

 

相澤は考えているのだ。

 

以前オールマイトに話した通り、学生にしては突出したその実力、確かにこれまでも勇間のように学生でもプロヒーロー並みの実力者はいただろう…

 

ただ相澤が気にかけているのはそこではなく…

 

(この成長速度だ…)

 

そう、成長速度だ、勇間は今でも十分強い、だがその強さは天井知らずに日に日に増していく、訓練すればするほど、戦えば戦うほど…勇間は際限なく強くなる。

 

その成長速度には現状誰もついてはいけない…

 

実際、勇間が入学してからまだ数ヶ月しか経っていないが、入学時と比べれば見違えるほどの成長を勇間は見せていた。

 

その成長速度はこれまで多くの生徒を見てきた相澤にとっても類まれなるものだ。

 

このまま順当に成長すれば、きっとヒーローの歴史に名を残すような強力なヒーローになるだろう…だから何も心配はすることはない…

 

しかし、相澤には何かが引っ掛かる。

 

(だからこそだ…)

 

相澤は自分に運ばれながらも気持ちよさげに眠っている勇間に目を向ける。

 

 

 

(…なんなんだ…この胸騒ぎは…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

古来より日本には、とある「ことわざ」がある。

 

 

主には、出過ぎた振る舞いをする者や、頭角を現す者は、人の憎しみを買って、往々にして制裁を受けてしまうという意味で使われる。

 

 

 

 

 

「…ふふ…『出る杭は打たれる』………ってやつだよ…『勇者』くん…」

 

そう言って…闇の中で巨悪は笑う…

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

さらに数時間後…

 

 

 

日はすっかり沈んで、あたりが暗くなってきたそのころ…ピクシーボブが口を開く。

 

「腹もふくれた皿も洗った!お次は…」

 

訓練が終了し、全員(勇間爆睡中につき除く)で作った肉じゃがも食べ終えたA組とB組の一同。

 

そんな中、ウキウキの表情の芦戸がピクシーボブの言葉に続いて口を開く。

 

「肝を試す時間だー!!!」

 

笑顔でそう言う芦戸。

 

芦戸の言う通り、3日目の訓練後にアメとムチと称してピクシーボブらが企画してくれたクラス対抗肝試しが今まさに開催されようとしていた。

 

「「「試すぜー!!」」」

 

芦戸の言葉に続いて切島、上鳴、瀬呂、砂籐も楽しげな様子でそう叫ぶ。

 

全員、苦しい訓練の中、この肝試しを相当楽しみにしていたようだ。

 

だが…

 

「その前に大変心苦しいが、補習連中はこれから俺と授業だ」

 

「嘘だろ!!!???」

 

「すまんな、日中の授業が思ったより疎かになってしまったのでこっちを削る」

 

「うわあああ堪忍してくれえ、試させてくれえ!!」

 

そんな悲痛な補習組の叫びも虚しく、無慈悲に相澤は5人を合宿所まで引きずっていく。

 

そんな悲惨な様子に目を背けながらもそれを見送るA、B組一同。

 

その時、ふと麗日が周囲をキョロキョロと見渡して口を開く。

 

「…あれ?そう言えば勇間くんは?晩御飯の時もいなかったけど…」

 

麗日がそうつぶやくと隣にいた緑谷がそれに答える。

 

「ああ、勇間くんなら日中の訓練でMP使いきっちゃったみたいでまだ合宿所で寝てるよ、さっき起こしに行ったんだけど、まだ起きそうになかったんだ…まあ本人は暗い所苦手って言ってたから勇間くん的には良かったんじゃない??」

 

軽く苦笑いしながらそう返した緑谷。

 

「そうなんだ…一緒に肝試しできなくて残念だけど、それなら仕方ないね~」

 

麗日と緑谷がそんな話をしていると、ピクシーボブが口を開く。

 

「はい、というわけで肝試しの説明するよ~」

 

そう言ってピクシーボブが肝試しのルールやコースなどの説明を始めた。

 

どうやらピクシーボブによるとA組とB組で脅かす組と驚かされる組に分かれて、2人一組で指定のコースを回り、より相手の組を驚かせた方が勝利するというルールだそうだ。

 

そして先攻はB組ということでまずはA組内で二人一組のペアを作ることとなった。

 

ペアを作るためのクジを引き終わった緑谷が何かに気が付いたように口を開く。

 

「…二人一組…あれ?21人で5人補修で1人爆睡中だから…」

 

そんなことを言う緑谷の手元には8番と書かれたクジ。

 

「一人余る…!!」

 

「くじ引きだから…必ず誰かがこうなる運命だから…」

 

15人なので一人はペアが組めない人が出てくる、運悪くその一人になってしまった緑谷に励ましの声をかける尾白。

 

そしてその尾白に声をかける人物が他にも一人。

 

「おい尻尾…代われ…!…代われねえなら今すぐにあのバカピアス起こしてこい…!!」

 

「…お、勇起こすのか?なら俺が一緒にまわりたい」

 

「ああ!?黙れや半分野郎!!」

 

そう言いながらペアになってしまった轟と口論を始めたのは爆豪、轟とのペアがよほど嫌なのだろう、当の轟は何とも思ってなさそうな表情ではあるが。

 

話しかけられたのに、すぐに自分が蚊帳の外になって何とも言えない表情になった尾白。

 

「青山、オイラと代わってくれよ」

 

そしてその傍らでは、尾白とペアであるはずの峰田が八百万とペアになった青山に交渉をしていた。

 

「俺は何なの…」

 

他の人に自分が代われと言われたり、ペアが他の人に交渉していたりと周囲が騒がしい尾白はボソッとそうつぶやいた。

 

 

 

 

…まあそんなこんなで色々とあったが、皆が楽しめる肝試し大会が始まる…

 

 

ハズだった…

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

ザッ…ザッ…ザッ…

 

 

 

「はあ…はあ…もう…すぐそこだ…!」

 

息を乱しながら森の中を駆けるのは緑谷だった、背中にはマンダレイの従甥の洸汰の姿、そして緑谷自身は全身に傷を負い、両腕に至ってはボロボロに腫れ上がってしまっている。

 

そんな緑谷が森の中を駆ける。

 

先ほどまで楽しく肝試しをしていたはずなのにどうしてこんな状況になってしまったのか…

 

答えは簡単だ、敵が攻めてきたのだ。

 

楽しかったハズの肝試しの森は一気に地獄と化した。

 

この前のUSJ襲撃事件を受け、万全の敵対策を期したハズだったのにもかかわらず、どこからか合宿所の場所が漏れたのか、数名の敵が肝試し中だったA、B組の生徒たち、そしてそれに同行していたプッシーキャッツのメンバーを襲ったのだ。

 

だが腐っても全員プロヒーローかその卵たち、自衛の術は持ってはいる、しかし一人だけ自衛の術を持たない子供がこの合宿所にいた。

 

それが洸汰だ。

 

そしてその洸汰を保護するべく、たまたま洸汰の秘密基地を知っていた緑谷が一人集団から外れ、洸汰の元へ向かったのだ。

 

そこで緑谷は『マスキュラー』と名乗る敵と交戦、激闘の末になんとか勝利をもぎ取り、今はその洸汰を安全な場所に避難させるために走っていた。

 

さらに緑谷はマスキュラーと交戦中の会話で敵の狙いが緑谷たち生徒かもしれないということ、マスキュラーレベルの敵が複数この合宿所に来ているかもしれないという情報を手に入れていた。

 

この情報も相澤やプッシーキャッツに伝えなければいけない。

 

緑谷がしばらく走っていると、緑谷に背負われていた洸汰が何かに気が付いて口を開く。

 

「おい!あれ!」

 

その言葉に洸汰が向いている方に目線を向ける緑谷。

 

「先生!!」

 

そこには走っている相澤の姿があった。

 

そして相澤も緑谷の声に気が付いたのか足を止めて声のした方に目を向ける。

 

「緑…」

 

緑谷の姿を見た相澤の言葉が途中で止まる。

 

原因は緑谷のその痛々しい姿だ。

 

「先生!良かった!」

 

緑谷はそんな相澤を気にせずにそう言いながら相澤に近づく。

 

「大変なんです…!伝えなきゃいけないことがたくさんあるんです…!けど…まずはマンダレイに伝えないといけないことが…」

 

「おい」

 

相澤は口が止まらない緑谷に軽く声をかけるが緑谷の口は閉じない。

 

「洸汰くんをお願いします。水の『個性』です絶対に守ってください!」

 

緑谷はそう言うと洸汰を相澤に渡す。

 

「おいって」

 

相澤はそう言うも緑谷はやはり聞かない。

 

「お願いします!!」

 

緑谷は相澤に構わず、マンダレイに洸汰の無事を一刻も早く知らせるために走り出す…

 

「待て緑谷!!」

 

…が、その背中に相澤のひときわ大きい声がかけられた。

 

その声には流石の緑谷も思わず足を止めて相澤の方に居直る。

 

そんな緑谷に相澤は言う。

 

「はあ…そのケガ…またやりやがったな」

 

ため息をつきながら緑谷にそう言う相澤。

 

基本的に訓練以外での個性を使用した戦闘は仮免を持たない緑谷たちは原則禁止、それを破り戦った上にさらには重傷を負った緑谷に相澤が何も言わない訳がなかった。

 

しかし、そうしなければ、洸汰が…そして緑谷自身がどうなっていたのかは相澤は考えるまでもなく分かってはいた。

 

「あ…いやでも…「だから」

 

歯切れが悪くも言い訳をしようとする緑谷、そんな緑谷を遮るように相澤は再び口を開く。

 

 

 

 

「彼女にこう伝えろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーんもう近い!アイテム拾わせて!!」

 

(此奴…我のキャットコンバットを読んだ動きを…!!)

 

「しつこっ…」

 

「い…のはお前だニセ者!とっととシュクセーされちまっ…」

 

場所は変わってプッシーキャッツのマンダレイと虎が2人が敵連合の敵『スピナー』と『マグ姉』と交戦している場面に代わる。

 

そしてスピナーがマンダレイに向かってその大剣を振り下ろす…その時。

 

「SMASH!!!」

 

相澤からの伝言を授かった緑谷が草むらから飛び出し、その蹴りでスピナーの大剣を破壊しマンダレイを守った。

 

そして緑谷はマンダレイに言う。

 

「マンダレイ!!洸汰くん!無事です!」

 

「君…」

 

緑谷の言葉を聞いたマンダレイは一瞬だけ安心したような表情を浮かべる。

 

そしてそんなマンダレイに緑谷は言葉をつづける。

 

「そんで相澤先生からの伝言です!!テレパスで伝えて!!」

 

緑谷からの情報によれば、完全に敵連合の狙いは生徒達…そしてその生徒達の生存確率が上がる一番の方法…合理的な相澤が出した結論は…

 

緑谷が叫ぶ…

 

「A組B組総員!!プロヒーローイレイザーヘッドの名に於いて…戦闘を許可する!!」

 

(…いいんだね?イレイザー…)

 

そしてさらに緑谷は言う。

 

「敵の狙い少なくともその一つ…かっちゃんが狙われている!テレパスお願いします!」

 

これも先ほどのマスキュラーとの戦いで手に入れた情報だ。

 

そんな緑谷の発言をしっかりと聞き取ったマンダレイは緑谷に向けて口を開く。

 

「伝達ありがと!!でもすぐ戻りな!その怪我尋常じゃない!!」

 

マンダレイはそう言いながらスピナーを蹴り飛ばし、森の中に散らばる生徒達全員に先ほどの緑谷の言葉をテレパスで通達をする…

 

 

 

『A組B組総員…戦闘を許可する!!…それから敵の狙いの一つが判明!!生徒の「かっちゃん」!!』

 

「誰だよ!」「爆豪…!?」

 

合宿所に残っている補習組達に…

 

「バクゴーくん…!?」

 

敵連合の一人『トガヒミコ』と相対する麗日と蛙吹に…

 

「聞いたか拳藤!?ブン殴り許可が出た!!」

 

「待てって鉄哲!お前分かってんの!?このガス…」

 

敵の出した謎の有毒ガスの中を走る鉄哲と拳藤に…

 

『わかった!?「かっちゃん」!!「かっちゃん」はなるべく戦闘を避けて!!単独では動かないこと!!』

 

「聞いてたか!?お前狙われてるってよ」

 

「かっちゃかっちゃうるっせえんだよ頭ン中でえ…クソデクがなんかしたなオイ…戦えっつたり戦うなっつたりよお…ああ!?」

 

敵連合の死刑囚『ムーンフィッシュ』と相対する爆豪と轟に…

 

 

 

 

 

そして…

 

 

 

 

「…んん…ああ…良く寝た…てか今…なんか頭の中で声がしたような?…戦闘許可?かっちゃん?…よくわからんけどまあなんか外騒がしいからとりあえず出てみるかあ…」

 

こんだけ大変なことになってるのに呑気にも今やっと目覚めた我らが主人公…勇間勇に…

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

数十分後…

 

 

 

 

「このメンツなら正直…オールマイトだって怖くないんじゃないかな…!」

 

障子に背負われた緑谷がそう発言した。

 

発言した緑谷を背負う障子の隣には轟、後方には常闇、そしてその4人の中央には爆豪といったフォーメーションが暗い森の中で展開されていた。

 

「何だこいつら!!」

 

自分を取り囲むクラスメイト達が鬱陶しいのかフォーメーションの中心で爆豪が叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先ほどマンダレイに相澤からの伝言を伝えた緑谷は敵連合から狙われている爆豪を救うために森の中を走り爆豪を探していた。

 

そしてその途中、暗闇で暴走するダークシャドウとそれを必死で押さえつける常闇、暴走中のダークシャドウから逃げる障子達に出会ったのだ。

 

暴走したダークシャドウの力は凄まじく、とても怪我をしている緑谷と障子の手に負えるものではなかった。

 

そこで緑谷は暴走するダークシャドウを前に「引き続き爆豪を助けに行く」か「暴走する常闇を抑えるために常闇を火事か施設などの光のある所に誘導する」かの二択を迫られることとなった。

 

二者択一…どちらかを選べば、どちらかを見放すこととなる…そんなこの二択…緑谷が選んだのは「暴走する常闇を爆豪、轟の元に誘導して爆発と炎の光で常闇を沈静化する」というどちらも見放さないヒーローらしい選択だった。

 

そしてその選択は結果的に大正解となる。

 

なんとか無事、暴走する常闇を爆豪と轟の元に誘導した緑谷と障子は、爆豪達が苦戦を強いられていた『ムーンフィッシュ』をダークシャドウに倒させてから爆豪と轟の個性でダークシャドウの沈静化を果たした。

 

暴走する常闇と狙われている爆豪の保護の両方を同時に達成したのである。

 

そして現在、その保護対象である爆豪を相澤などのプロヒーローがいる安全な合宿所まで無事に届けるため、爆豪を全員で守るようなフォーメーションを組んで施設に向かっている最中……。

 

 

…という風な状況だ。

 

 

 

 

 

 

 

「…お茶子ちゃん!!」

 

 

轟、緑谷、障子、爆豪の緑谷曰く「オールマイトでも怖くないんじゃないかフォーメーション」で森の中を突き進んでいると、前方から誰かの声が聞こえてきた。

 

緑谷にはその声に聞き覚えがあった。

 

すぐさま緑谷と障子、轟はその声の方に駆け出した。

 

ガサッ…

 

そして木々の間を抜けて少し開けたところに出ると、真っ先に目に入ってきたのは…

 

「…ちうちう…ちうちう…」

 

そんな声とともに麗日の太ももに注射器のようなものを差し込むセーラー服の少女とそれを押さえつける麗日、その横にたたずむ蛙吹の姿だった。

 

「麗日!?」

 

その様子を見た障子は思わず声を漏らす。

 

そして、その声に反応したのは蛙吹だった。

 

「障子ちゃん!?みんな!?」

 

蛙吹がそう叫んだ瞬間…

 

ドッ!

 

と音を立てて、麗日に抑え込まれていた少女が麗日を突き飛ばした。

 

「あっ…しまっ…」

 

突然のその行動に麗日はそんな声を漏らして少女の拘束を解いてしまう。

 

「人増えたので殺されるのは嫌だから…バイバイ」

 

そしてその隙に少女は捨て台詞を残して森の中に消えて行ってしまった。

 

「待っ…!」

 

そんな少女を追うべく、麗日は刺された太ももを抑えながらも森の中に足を進めようとする。

 

「危ないわ、どんな個性を持っているかもわからないわ!!」

 

しかし、こんな場面でも冷静な蛙吹がそんな麗日を制した。

 

そしてそんな二人の下に轟と緑谷、障子が駆けつけ、轟が蛙吹に尋ねた。

 

「何だ今の女…?」

 

すると蛙吹も答える。

 

「敵よ、クレイジーよ」

 

そう言った蛙吹の後ろで注射器で刺された太ももを抑える麗日の姿が緑谷の目に入る。

 

「麗日さん…ケガを…」

 

「いや全然大丈夫…ていうかデク君のほうも…」

 

「立ち止まっている場合か!早く行こう!」

 

麗日と緑谷のやり取りを障子が途中で制してそう言った。

 

障子の言う通り、今の最優先事項は爆豪を安全な合宿所まで無事に届けることだ、今は立ち止まっている場合では無い。

 

緑谷は現在の状況を麗日と蛙吹に伝えるべく口を開く。

 

「とりあえず無事でよかった…そうだ一緒に来て!僕ら今かっちゃんの護衛をしつつ合宿所に向かっているんだ!」

 

緑谷が二人にそう伝える…が…

 

「………ん?」

 

「爆豪ちゃんを護衛?」

 

伝えられた二人はきょとんとした様子でそう言った。

 

「…え」

 

異様な雰囲気があたりに漂う。

 

そんな中、蛙吹がゆっくりと口を開く。

 

 

 

「その爆豪ちゃんはどこにいるの?」

 

 

 

その言葉を聞いた緑谷は困惑しながらも恐る恐る爆豪がいるはずの後ろを振り返る。

 

「何…言ってるんだ、かっちゃんなら後ろに…」

 

緑谷の言葉が止まる…

 

それもそのハズ…緑谷が振り向いた先には…

 

 

 

誰も…いなかった。

 

 

 

ずっと後ろをついてきていると思っていた爆豪の姿が後ろにいない、爆豪どころか後ろの護衛をしていたはずの常闇の姿も見えない。

 

爆豪の護衛をしていた三人の顔からサァ…と血の気が引いてゆく。

 

そしてその時、後方の木々の上から声が聞こえた。

 

「彼なら…」

 

緑谷たちが一斉に振り向くと、そこには木の枝に乗ってこちらを見下ろす仮面をかぶった男の姿があった。

 

その男は敵連合の一人『Mr.コンプレス』だ。

 

コンプレスは言葉を続ける。

 

「俺のマジックで()()()()()()()

 

そう言いながら掌にある二つの小さな球を緑谷たちに見せびらかす。

 

「こいつぁヒーロー側(そっち)にいるべき人材じゃねえ、もっと輝ける舞台へ俺たちが連れてくよ」

 

コンプレスが続けてそう言うと、それに対して緑谷が焦るように口を開く。

 

「…!?っ返せ!!!」

 

そう声を荒げる緑谷に対して、コンプレスは対照的に冷静に言葉を返す。

 

「返せ?妙な話だぜ、爆豪くんは誰のものでもねぇ、彼は彼自身のものだぞ!エゴイストめ!」

 

「返せよ!!」

 

再び緑谷は声を荒げる、どうやら緑谷は爆豪を取られたことで焦り、冷静さを欠いている様子だ。

 

「くっ…どけっ!」

 

轟はそんな緑谷を押しのけ、コンプレスに対して左足を突き出し、氷結を放った。

 

パキパキパキ…!!

 

と音を立てて氷結がコンプレスの立っていた木々に向けて伸びる…が。

 

フワッ…とコンプレスは軽やかにその木から飛び上がりそれを避ける。

 

そして空中でも口を開く。

 

「我々はただ凝り固まってしまった価値観に対して「それだけじゃないよ」と道を示したいだけだ、今の子は価値観に道を選ばされている」

 

コンプレスがそう言ったその時。

 

「…!爆豪だけじゃない!常闇もいないぞ!」

 

障子が常闇もいなくなっていることに気が付く。

 

(後ろ二人を音もなくさらったってのか??どういう『個性』だ…!!?)

 

轟は頭を回しながら口を開く。

 

「…ちっ…わざわざ話しかけてくるたァ…舐めてんな」

 

轟がそう言うと、背負っていたB組の生徒を麗日に預けて、再び左足を前に突き出して、氷結を放つ。

 

ズオオオ…!!

 

今度は先ほどとは違い最大火力、轟は一刻も早くコンプレスから二人を取り戻さなければいけないと判断したのだ。

 

しかし…

 

「よっと…」

 

コンプレスは軽い身のこなしで高く飛び上がり、またしてもそれを回避した。

 

そして空中で手で2つの球を弄びながら緑谷達を煽るように口を開く。

 

「元々はエンターテイナーでね、悪い癖さ、常闇くんはアドリブでもらっちゃったよ」

 

「この野郎!!貰うなよ!!」

 

「緑谷、落ち着け」

 

挑発的なコンプレスの態度に再び緑谷が声を荒げて、それを障子がなだめる。

 

しかし、緑谷が声を荒げるのも無理はない、今この場には轟と緑谷、障子に麗日、蛙吹などのメンバーしかいない、つまり機動力があり、空中の敵にも対処できる爆豪や勇間のような個性を持った者がいないのだ。

 

そのため現在、軽い身のこなしで氷結を避けながら逃げるコンプレスには何もできないのだ。

 

そうこうしているうちにもコンプレスはペチャクチャと喋りながらもその身のこなしで緑谷たちとの距離を開けていく。

 

「ムーンフィッシュ…アレでも死刑判決控訴起訴されるような生粋の殺人鬼だ…」

 

まだコンプレスは手元で2個の球を弄びながら喋り続ける。

 

そんな余裕な様子のコンプレスを睨みながら緑谷は心の中で苦言を呈す。

 

(…くそっ…勇間くんがいれば…あんな奴…)

 

しかし、彼は確か肝試しには参加せずに合宿所で寝ていたはずだ、わざわざ安全な合宿所から飛び出て、こんなところに来るわけがない。

 

だが、まあもし仮に彼が目覚めていて、外に出ていれば先ほどの轟の最大火力によって作られた氷壁を見て、こっちに向かってきている可能性はあるかもしれない。

 

まああくまで可能性の話だが…

 

「そんなムーンフィッシュを一方的に蹂躙するあの暴力性、彼も中々…」

 

緑谷たちに構わずコンプレスは言葉を続けていた…

 

空中を飛んで背後から静かに迫りくるある男に気づかずに…

 

「彼も中々素質があると判断した、だからいっs「誰この怪しい人?」

 

自身の言葉を遮る声が背後から聞こえてきたことにコンプレスは驚き、思わず背後を振り返ろうとした…その瞬間。

 

ゴンッ!!!

 

「アガッッッ………!!!」

 

強い衝撃がコンプレスの背中を襲った。

 

そして空中に飛び上がっていたコンプレスはその衝撃によって空中から一気に地面に叩き落される。

 

ドスン!!

 

と大きな音を立てて、緑谷たちの目の前の地面に叩きつけられたコンプレス。

 

緑谷たちはそれを見て、何が起こったのかと空を見上げた。

 

そこにいたのは…

 

「…い、勇間くん!!」「勇!!」「勇間ちゃん!」

 

トベルーラによって空中で止まり、剣を担いでいる勇間の姿があった。

 

勇間の姿を見た轟と緑谷、蛙吹が喜びの声をあげる。

 

「…」

 

…が、一方そんな勇間は無表情で自分が地面に叩きつけた男をじっと見つめていた。

 

「…うっ…ぐぐ…はぁ…はぁ」

 

呻き声を上げながらヨロヨロと起き上がる仮面の男、気を失ってはいないもののどうやら今ので随分とダメージを受けてしまったようだ。

 

その仮面の男の苦しそうな様子を勇間は無表情で見ながら、額に一筋の冷や汗を垂らす。

 

「…」

 

勇間の神妙なその表情、何かまずいことでもあったのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……なんか怪しい感じしたからノリで殴っちゃったけど…アイツちゃんと敵だよね??…肝試しで仮装したB組のヤツとかじゃないよね??…俺怖いよ梅雨ちゃん!!)

 

 

 

 

ただの無駄な焦りだった。

 

「…怖いよ梅雨ちゃん!」

 

ああ、我慢できずに口にも出しちゃった。

 

「大丈夫よ勇間ちゃん、ちゃんと敵よ」

 

声に出したわけじゃ無いのに勇間の無駄な焦りの内容をなぜか読み取っていた蛙吹がそう言った。

 

「ふぅ…ならよかった」

 

そんな梅雨ちゃんの言葉を聞いた勇間は安堵の声をあげて、ヨロヨロと立ち上がろうとするコンプレスの目の前にスタッと降り立つ。

 

「ぐぅ…」

 

そして勇間は苦しそうなその様子のコンプレスにむけて右手をかざし、口を開く。

 

「ラリホー」

 

勇間がそう言うと右の掌から青白い波紋が生まれ、それがコンプレスの体を通過する。

 

すると…

 

パタリ…とコンプレスは静かに地に伏した。

 

「…すぅ…すぅ」

 

どうやら眠ったようだ。

 

『ラリホー』は皆さんご存知、睡眠の魔法だ、これを受けた相手は強制的に眠ってしまう…のだが、勇間が実際に色々実験した結果相手がそこそこなダメージを受けていないと中々効きにくいと言うことが分かった。

 

今回のように相手が手負いの場合は効きやすいが元気もりもりな相手には中々効きにくいのだ、どれほど効きにくいかというと具体的にはウ◯娘のサポカのガチャでピックアップを引くくらいの確率だ。

 

だか今のような状況では、拘束にはもってこいの便利な呪文だ。

 

コンプレスの体から力が抜けていき、コンプレスが握っていた掌が開かれると、そこから2つの球がコロリと転がる。

 

そして…

 

ボン!

 

と音を立てて、その球からそれぞれ爆豪と常闇の姿が現れた。

 

おそらくコンプレスの意識がなくなって個性が解けたのだろう。

 

「なっ!爆豪に常闇!?何がどうなって球から2人が!?」

 

急に小さい球から爆豪と常闇が現れたことに驚きの声を上げる。

 

「…」「…」

 

「しかも寝てるし!」

 

勇間の言う通り、2人ともどうやら眠っているようだ。

 

どうやらさっき唱えたラリホーが2人にも当たった判定になっていたようだ。

 

戸惑う勇間の下に緑谷たちが駆けつけると、緑谷が口を開く。

 

「多分これ…その敵の個性だよ勇間くん」

 

障子に背負われた緑谷が勇間にそう言うと、勇間は顎に手を当てて考える仕草をしながら口を開く。

 

「なるほど、厄介な個性だな……てかごめん、これどう言う状況?…俺はとりあえず起きてから外出て焦凍の氷壁見つけて、飛んできてみたんだけど…ごめんなんか寝起きで頭が…」

 

勇間はそう言いながら緑谷達に目を向ける。

 

そんな勇間に状況を説明すべく、緑谷が口を開いた。

 

「ああそれはね…」

 

 

 

 

 

 

「…って感じかな今の状況は」

 

緑谷はこれまで起こったことを一通り勇間に説明し終えた。

 

敵が攻めてきたこと、敵の狙いが爆豪であること、自分たちがもうすでに何人かの敵と戦闘していることなど、ほとんど全てを勇間に伝えた。

 

それを聞いた勇間は絶句する。

 

「…俺が寝ている間にそんなやべぇことに……って!それなら今こんなことしてる場合じゃないじゃないか!!」

 

勇間はそう声を荒げると、急いで地面に寝ている爆豪を担いで言葉をつづける。

 

「こんなとこで話してる場合じゃない、とりあえず爆豪と常闇を連れてみんなで相澤先生のいる合宿所に戻ろう、俺のルーラなら全員で一発だ…麗日さんか梅雨ちゃん常闇のこと担げる?」

 

勇間がそう言うと、麗日が常闇の肩を持って担ぐ。

 

「大丈夫、常闇くん小柄やから全然担げる」

 

常闇を担ぎながらそう言う麗日、それを見た勇間はこくりと無言で頷いて、左手をみんなに突き出して言う。

 

「よし、じゃあみんな俺の手を、ルーラで一気に移動する、緑谷も合宿所に着いたらすぐにその怪我、治してやるからな」

 

「うん、ありがとう勇間くん」

 

緑谷がそう返すと、轟、障子、蛙吹、麗日がそれぞれ勇間の左手に手を重ねる。

 

「じゃあ行くぞ…ルーr」

 

勇間がそう『ルーラ』を唱えかけたその瞬間だった…

 

 

 

 

ズドン!!!!

 

 

 

何かが空から降ってきたかのような大きな音が勇間の背後から聞こえた。

 

「何だ!!」

 

勇間はそれにすぐに反応し、反射的に後ろを振り返った。

 

そこには土煙が舞っていて、何が落ちてきたのかは目視できない…が…しかし。

 

(こ、この威圧感は…)

 

勇間が何かを感じ取ったその瞬間。

 

ダッ…!

 

土煙の向こうから地面を蹴りつけたような音が聞こえ、土煙の中から何やら黒い大きな塊が弾丸のようなスピードで飛び出してきた。

 

勇間はそれに瞬時に反応する。

 

「危ねえ!!」

 

勇間はそう叫ぶと、皆と重ねていた左手を振り払い、腰に掛けていた剣を片手で引き抜き、咄嗟に構える。

 

ギィィン!!!

 

激しい金属音と火花が暗い森の中に浮かぶ。

 

ギィィィ!!!

 

「ぐっ…!!」

 

なんとかその黒い弾丸を爆豪を背負いながらも片手で受けきった勇間だったが、押し合いとなればかなり不利、その様子は苦しそうだ。

 

「勇!」「勇間くん!!」「勇間ちゃん!」「勇間!!」

 

そんな勇間を心配するように背後から勇間を呼ぶ声が上がる。

 

「…み、みんな…はは…なんとか大丈夫だ…と、いうか…」

 

勇間がそう呟くとゆっくりと月明かりが暗い森の中に差し込みはじめ、勇間と相対しているその黒い塊が姿を現す。

 

それは…

 

黒い体にむき出しの脳、長く伸びた赤毛とその駄々洩れの威圧感…間違いない…

 

 

 

「…はあ…またオマエかよ…!!」

 

 

 

()()脳無だ。

 





今回も読んでいただいてありがとうございます。

これまで散々原作の流れをカットやダイジェストでやってきてなんですが、ここまで読んでる方でヒロアカの原作未読の方とか、ドラクエ未プレイの方などいるのでしょうか。

もしいるのなら、原作と被るところももっと詳しく書きたいと思いますし、ドラクエについても知らない人がいるなら呪文の解説とかもっとしっかりとやりたいと思いますので、ちょっとアンケートを置かせていただきます。

付け足すと、ドラクエ履修のラインはどれかのナンバリングを一つでもクリアまでやったことあるか的な感じなんですかね?

適当で良いのでよければ答えてくれると嬉しいです。

あと何か思う事があれば何でも感想ください。感想があるから私は頑張れます。嘘じゃ無いです。

長々後書きすいません、誤字脱字ありましたらご報告いただけたら嬉しいです。

原作についての調査

  • ヒロアカ、ドラクエどちらも履修済み
  • ヒロアカのみ履修済み
  • ドラクエのみ履修済み
  • どっちも未履修
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