この世界でも勇者になります。   作:shch

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3.バギ

状況を整理しよう

 

俺はいつも通りの日常を過ごしていたはずだ。

 

しかし今朝、突然轟焦凍が我が家を訪れた。

 

さらに一緒に登校し、なんなら轟の家にも誘われた

 

家に行くことは全然良いのだが、その後の

 

「昨日のお前は凄かった」

 

「親に紹介したい」

 

この言葉が引っかかる

 

ちなみに心当たりは全くない

 

俺の日々の挨拶が彼の凍り付いた心を溶かしたのだろうか(違う)

 

しかしまずはこの状況をどうにかしよう

 

こんなに他の生徒がたくさん集まっていては落ち着いて話ができない

 

「詳しい話はあとでしよう、今はとりあえず学校へ行こう」

 

と俺何かやってしまったか?みたいな顔をしていると轟に耳打ちした

 

「わかった」

 

轟からの了承を得たため、とりあえず学校へと2人で足を進めた

 

あの轟が他の誰かと一緒に登校してきたという噂が流れ、ひと悶着あったが

 

昼休みになる頃には騒がしさも減っていた

 

昼休みが始まってすぐ、轟のもとへ向かい

 

「今大丈夫か??少し話そう、ついてきてくれ」

 

と伝えた、轟はコクリとうなずき同行を許可してくれた

 

屋上へ向かう階段、屋上への扉は空いていないが

 

その手前の踊り場なら人も来ないしゆっくりと話せる

 

そこに轟を連れてきて、話を聞くことにした

 

「なんで俺を急に家に誘ったんだ??心当たりが全くないんだが」

 

そう聞くと轟は表情を変えず淡々と話し始めた

 

「昨日お前の訓練を見た」

 

あーね、見てたんだ、へー

 

いやどこから??

 

急に怖くなってきた、いつだれがどこで見ているかはわからないものだな…

 

「そのことを親父に話した」

 

あまり覚えてないが

 

轟の親がヒーローをやっているというのは漫画で見た気がするためもともと知っている

 

しかし轟の親であるそのヒーローの具体的な情報を知ったのは最近である

 

クラスメイトからの情報によるとあのNo2ヒーロー『エンデヴァー』が轟の親らしい

 

初めてその話を聞いた時には驚いたが個性が少し似ていたりしていたためすぐに納得した。

 

 

…てか俺補導されるくないですか??

 

個性の無断使用が思いっきりNo2ヒーローにばれたんだが

 

もしかしてあれか?説教か?説教するために俺を家に呼んだんか??

 

かなり不安になりながらも恐る恐る轟の話を聞く

 

「そしたら親父がお前のことを連れて来いって言ったんだ」

 

やっぱりだよ

 

怒られるやつやんこれ、てか学生の補導を自宅で行うとか暇かよNo2さん

 

しかし、無視でもするとさらに面倒そうだ、行くしかないだろう

 

「わかった、今日の放課後だな?」

 

「ああ、後多分だが動きやすい格好のほうがいい」

 

いやなんで??罰走でもさせられるのか?

 

いつもなら理由を聞くところだったが、今は少し他に聞きたいことがあった

 

「轟、お前なんだか親の話をするとき辛そうじゃないか??」

 

これである、というのも先ほど轟が「親父に話した」や「親父が連れてこいって」と口にしたとき

 

明らかに顔が歪んでいるように見えたからだ、もしかしたらいつも何かを憎んでいる顔をしているのに関係があるかもしれない

 

「…勇間には関係ない」

 

轟は突き放して答えた。

 

何か言い淀んでいた、やはり家族関係に問題があるのだろう

 

「轟、話してくれないか??」

 

詮索するのもあまりよくないと思うが、先ほどの発言の際の表情がいつもたまにするさみしそうな表情と重なり聞かずにはいられなかった。

 

「…関係ないって言っているだろ」

 

少し語気が強くなる

 

しかしここでひるんではいけないと感じた

 

俺は口を開く

 

「ふーん、じゃあ話してくれないなら今日は轟の家に行かない」

 

よく考えればあの轟がここまで積極的なのだ

 

エンデヴァーが俺を連れてこいといった以外で俺に接触してきた理由があるはずだと考えた

 

「…」

 

轟は少し考え、悩む様子を見せていた

 

「轟、別にお前の家の家庭事情にとやかく言うつもりはないし、言いふらすつもりもない、人に打ち明けることで少し楽になるかもしれないぜ??」

 

俺がそう言うと

 

轟は何かを決心したかのように俺に話し始めた

 

自分が個性婚によって生まれたことや

 

エンデヴァーが自分に何をしたのか

 

そのせいで自分の母がどうなってしまったか

 

様々なことが轟の口から吐き出された

 

「だから俺はアイツが憎いんだ」

 

轟は口を閉じた

 

「ありがとうな話してくれて」

 

想像の5倍ほど重い話で正直言葉が出ないが一つだけ決めたことがある

 

 

 

エンデヴァー絶対許しません!!!

 

 

・・・・

 

 

放課後

 

 

「じゃあ行くか!」

 

いつものジャージに着替え木刀も持つ

 

準備は満タンだ

 

もしかしたら自分が補導されるかもしれないが、逆にエンデヴァーに一言でも言ってやろう!!という意気込みだった

 

轟家に向かう道中

 

「勇間、お前の個性なんだが」

 

轟が聞いてきた、昼休みに話をして慣れてきたのか

 

少し轟が積極的に話してくれるようになった気がする

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「勇間、居眠りはよくねぇぞ」

 

「え?あ、はい。すいません」

 

5限終わりに5限を爆睡してしまったことを注意される勇間の図

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

嬉しいのだが、もっと楽しい話がしたいものだ(寝てるほうが悪い)

 

「俺の個性がどうしたんだ??」

 

と轟の言葉に返す

 

「レベルアップと聞いていたが、昨日の勇間は炎や氷を操っているように見えた、俺みたいな個性2つ持ちとかなのか??」

 

と聞いてきた、確かに自分と同じような能力だし気になるか

 

「いや、個性は一つなんだけど、レベルアップするたびに力とかの身体能力だけではなくそういった魔法みたいなものも習得できたりするんだ」

 

と簡単に答えた

 

「ゲームみたいだな」

 

と轟は答える

 

「轟はゲームとかやんの??」

 

すかさず俺は聞いた、もしRPGのゲームをやろうものなら、語り合おうかと考えたのだが

 

「いや、そんなことしてる暇はない」

 

「ゲームについては、…席の近くの同級生が喋っているのを聞いたんだ」

 

と言う轟の顔はやはり寂しそうに見えた

 

「また今度おすすめのゲーム教えてやるよ、機械も貸してやるぜ!」

 

と俺は誘う

 

「いやだから、そんな暇は…」

 

「まあまあまあ、そんなこと言わずにさ」

 

そんな風に会話をしているといつのまにか轟家に到着していた

 

大きなTHE日本家屋といった風の家というか屋敷のような感じだった

 

今更だが少し緊張する。

 

しかしエンデヴァーに一言いうと決めたのだ!

 

意を決し先を歩く轟の後に続く

 

「ここだ」

 

と連れてこられたのは道場のような広い平屋だ、敷地広すぎないか??

 

中に入るとエンデヴァーがすでに部屋の中央におり

 

「よく来たな」

 

と俺に言った

 

仮にもNo2ヒーローである。TVで何回も見たことがある

 

そんな人物と実際に会うのはなんだか不思議な感じだ

 

がっしりとした体格に煌々と燃える炎を纏い、鋭い眼光で前を見つめ、仁王立ちしている姿は威厳があり、不覚にもかっこいいと感じてしまった。

 

「どうも初めまして、轟のクラスメイトの勇間 勇と言います」

 

緊張を振り払い自己紹介をする

 

「ああ、焦凍の父の轟炎司だ、知っていると思うがエンデヴァーという名でヒーロー活動を行っている」

 

律儀に自己紹介を返してくれた。中学生相手に上から目線というわけではなく対等に自分に接してくれているというのが伝わる。

 

あれ?この人いい人なんじゃないのか??

 

しかし轟が嘘をつくとは思えない、大方家族のことになると少し性格が変わってしまうタイプの人なんだろう

 

「なんで今日、俺をここに呼んだんですか??」

 

俺は聞いた

 

「焦凍から聞いたが炎と氷をかなりの練度で使えるそうじゃないか」

 

エンデヴァーは言葉を紡いでいく

 

「そこでだ、うちの焦凍と1試合手合わせしてはくれないか??」

 

「焦凍は訓練では俺としか戦ったことがない、たまには実力の近い者と戦ったほうが良い訓練になると思ってな、お前も一人で訓練していると聞いた。戦闘経験を積んでおいて悪いことはないと思うが?」

 

確かにそうだがいきなり轟と戦うなんて

 

俺は突然同級生と戦うことに対し少し抵抗を感じていた。

 

しかし、ちらっと轟のほうを見てみると何やらストレッチのような動きをしており、口を開いた

 

「勇間、アイツの言うことを聞くのは癪だが、お前と俺どっちが強いのかは昨日からずっと気になっていた。早くやろう」

 

無駄にやる気があって怖い

 

まあでもそうだなそこまで言うのなら

 

俺は無言で鞄にしまっていた木刀を取り出し、つぶやく

 

 

 

「経験値になってもらうしかないよな」

 

初めての戦闘に少しワクワクしている自分も怖い

 

・・・・

 

 

 

 

「どちらかがこの道場の外側の枠から出る、降参する、俺がもう戦えないと判断したほうが負けだ」

 

 

エンデヴァーが道場の中心で向かい合う俺と轟に説明する

 

「…ああ」

 

「わかりました」

 

呼吸を深く吸い集中する

 

道場は静寂に包まれる

 

「それでは」

 

轟はグッと右足を前に突き出すように構え、俺は木刀を構える

 

「はじめ!!」

 

その瞬間、轟の足元から大量の氷が生成され次々と襲い掛かってくる

 

(いきなりかよ!!)

 

俺はすかさず木刀を振るう、その振るった軌道上から炎が出現し迫りくる氷を溶かす

 

氷に対しては炎と考え『かえんぎり』を繰り出す

 

しかし氷は次々と襲い掛かってくる

 

全てをかえんぎりで処理していると消費するMPがバカにならないと感じ、木刀を握る力を強め魔法は使わず

 

ちからのみで氷を砕いていくことにした

 

次々と襲い掛かる氷に対し、木刀を力強く、しかし正確に振りぬき壊していく

 

しかし魔法なしではやはり限界があり、少し押され気味だ

 

徐々に足が後ろに下がってゆく

 

(くそっ、このままじゃ押し出されるのも時間の問題だ、なんとかしなくては)

 

次々と氷を生成する様子を見ていると、轟は自分のようにMPなどがなく無尽蔵に氷を出し続けることができるのでは無いかと言う考えが浮かんでくる

 

そうだとしたらMP消費で戦う自分とは随分相性が悪いかもしれない。

 

そんなことを考えていると、焦凍の氷の勢いが少しずつ弱まっていることに気が付いた

 

(今だっ!!)

 

氷が一瞬途切れたその瞬間

 

「バギ!!」

 

という言葉とともに俺の体は空中に飛び上がった

 

地面に向かって『バギ』を放つことで体を浮かせたのだ

 

空中で轟をとらえる

 

右半身が霜のようなもので覆われ体を震わせているようだった

 

どうやら氷を出し続けると体が冷えてしまい、動きが鈍くなるようだと推測する

 

無尽蔵では無いことに安心する。

 

空中で轟に向け呪文を放つ

 

「バギ!」

 

風の刃が轟を襲う

 

命中一歩手前で何とか焦凍は氷の壁を自分の前に生成させバギを防いだ

 

俺は地面に降り立つ

 

「ハァハァ」「ハァハァ」

 

木刀を振り回したせいか、かなり疲れている

 

轟も氷を大量に生成したせいかしんどそうだ

 

「ホイミ」

 

と唱えた、俺の息切れは治りすぐに轟のもとへ走る

 

間合いさえ詰めてしまえば、さっきのような波状攻撃はこない

 

そう考え間合いを詰め木刀を振るう

 

ギンッ!ギンッ!

 

轟は氷でかろうじ木刀を防げてはいるが、明らかに生成速度が間に合っていない

 

ガッ!

 

ついに腹部に木刀が当たる、よろめいた轟に対し

 

「バギ!」

 

と呪文を放つ、もろに受け吹っ飛んだ轟は場外ギリギリだ

 

もう一度『バギ』を放てば俺の勝ちなのだが、これで勝ってもどうも腑に落ちない

 

なぜなら轟は『炎を使っていない』からだ

 

轟の性格上負けず嫌いなタイプだと思っていたがどうしてだろうか

 

そんなことを考えてしまい、『バギ』を放つ手が一瞬止まってしまった

 

その時だった

 

「何をやっているんだ焦凍ぉぉ!!」

 

とんでもない怒鳴り声がエンデヴァーから発せられる

 

「なぜ炎を使わない!はやく炎を使いその霜を溶かせ、早く体勢を立て直せ!!」

 

なるほど炎で体を温めれば、体の霜も取れて本来の氷の生成速度をずっと保てるわけか

 

結局無尽蔵やん

 

でもそれならなおさらなぜ炎を使わないのかなおさら疑問だ

 

「勝て!!勝つんだ焦凍ぉぉ!俺の最高傑作がこんなところで負けていいはずがないだろう!!」

 

 

()の力を使って勝て!焦凍ぉ!」

 

 

 

その言葉を聞きやっと理解した

 

なぜ轟が炎を使わないのか

 

「下らんこだわりなど捨ててしまえ!!!」

 

下らないこだわり??

 

そんなことはない、エンデヴァー全部あんたがやったことだ

 

俺は木刀を下ろし、無言で轟に近づく

 

膝をついている轟のもとへ行き声をかけた

 

「わかったぞ、なんでお前が炎を使わないのか」

 

俺は続ける

 

「でもな、それじゃあ俺は倒せない、俺どころか他の同年代のヒーローにだって劣るだろう」

 

「…っ」

 

轟は悔しそうな顔でこちらを見つめてくる

 

「だって()()の力の半分だぜ、俺だって、他のヒーロー達だって全力でやってる。そんな中半分の力で勝つ??」

 

「笑わせんな」

 

「お前は強い、多分今の俺よりも、他のやつらよりも、でもそれはお前が全力を出したときの話だ」

 

「だからさ、こいよ全力で、お前の母さんの力でもエンデヴァーの力でもない

 

 

 

()()の力で…!」

 

 

「…」

 

轟は黙ったままうつむいている

 

俺は手を差し伸べ、轟を立ち上がらせる

 

「ホイミ」

 

そして轟にホイミをかけた

 

「ほい、仕切りなおそうぜ」

 

と笑いかけ、道場の中央に戻る

 

なかなかその場から動かない轟に

 

「はよ来いよ、来ないとまたこの伝説の勇者の剣でぶったたくぜ~」

 

と自慢げに木刀を掲げている

 

「…馬鹿なやつ」

 

ボソりと轟はつぶやく、その口元はわずかに笑っているように見えた

 

ボワッ!

 

轟の体から炎が噴き出す

 

ホイミをかけても霜は取れていなかったが炎のおかげで霜は解け行く

 

そしてゆっくりと轟も道場の中心に移動してくる

 

そして正面同士で顔を突き合わせる。

 

「ありがとな、勇間のおかげで目が覚めた、俺は()の全力でオールマイトのようなNo1ヒーローになってやる!!」

 

轟はそう言って構える今度は右足を目に出す構えではない

 

「ああ、まけないぜ!」

 

俺もそう言って木刀を構える

 

第2ラウンドが始まる

 

「・・・・」

 

「・・・・」

 

 

あれ?

 

肝心の審判の「はじめ!」の掛け声がない

 

せっかくいい流れなのにと考えつつこれでは始められないため、1度構えを解き、一応審判であるエンデヴァーのほうを見てみた

 

「しょうとぉぉぉぉ!!やっとわかってくれたかしょうとぉぉぉぉ!!しょうとぉぉぉぉ!!sh

 

TVでエンデヴァーはよく見てきたがこんなにテンションの高いエンデヴァーは初めてだ

 

体中の炎を大きく揺らし、『しょうとぉぉぉぉ!!』botと化した親をみて轟はため息をついた

 

「すまんな、勇間」

 

「あ、うん、大丈夫」

 

さっきまであんなに激熱な会話を繰り広げていたとは思えない、温度差で体調不良になりそうだ…

 

それにbotさんの周囲は温度が高すぎて近寄れそうにない

 

…勘弁してくれよ

 




ロトの剣を燃やせませんでした。

次こそ燃えます。

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