なんで私が愛玩系ビーストに?!   作:随喜自在第三外法快楽天

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蒼天学園都市キヴォトス
愛の神モドキinキヴォトス


 カーマというキャラクターをご存知ですか?

 いえ、インド神話のやつじゃありません。半分はあってますけど。

 ここで言う「カーマ」というのはそれをモチーフにしたFateシリーズに登場するサーヴァントのことです。

 ビーストⅢ/Lとして章ボスを務め、プレイアブルとしては幼女、少女、大人の3つの姿があるという色んな層に美味しいキャラクターの彼女。

 その中身は色々と企むダウナーな皮肉屋、そしてちょっとポンコツでチョロい感じのやつです。

 まあ、短いですがこれくらい分かれば十分でしょうか。

 これは、そんなカーマになってしまった私に訪れる、笑いあり涙あり笑いありの青春のお話です。

 

◇◇◇

 

 冗談みたいな話です。いえ、冗談であってほしかった話です。こういうのは傍観者だから面白いのであって当事者としては大層迷惑な話ですし、そもそも夢がいざ現実になると喜びより困惑とかが勝ちますし、それに私はキャラクターを玩具にするヲタクでありたいのであって玩具にされたい訳じゃ……いえ、身体の方に思考が引っ張られてます。シャニカマしてます。なんなら口調とかそういうのも完全に身体の方に乗っ取られてます。とにかく、何を言ってるか分からないと思いますが、私にだって分かりません。ですが、分かるように言います。

 

 私はカーマに憑依して、キヴォトスに転生しました。

 

 理解不能です。全くもって意味が分かりません。言ってる私ですら頭の中はハテナでいっぱいなんですから。でも、私は今確かに「カーマ」という存在になってるんです。何せちゃんと「カーマ」としての大奥とか水着イベの記憶があるんです。ついさっきまでは受験を抱えた私文のしがない男子高校生だったはずなのに。ちなみにブルアカは何回かストーリー読んでTwitterで二次創作眺めてるくらいのエアプです。FGOはそこそこ頑張ってました。やるならブルアカキャラでサーヴァントやる方がまだマシでした。

 まあ、そんなことは置いておいて現状を整理しましょう。場所はキヴォトスのどこかです。ミレニアムもトリニティもゲヘナも市街地の背景は大体使い回されてたので景色じゃどこか分かりません。そして今の私の見た目は一臨カーマ、そうですね、ロリカーマと呼びましょうか。ロリカーマの私の現在の所持品は現実の方でも使ってたマジックテープの財布(所持金7330円)と去年機種変したスマートフォン一台、それとカーマが宝具で使ってる「サンモーハナ」とかいう名前の小さめの弓矢。ちなみに頭に浮いてるヘイローも宝具の時に出てくるアレ。なんで女子高生が銃を撃ち合う世界で弓矢なのかというツッコミは当然で至極真っ当なものだとは思いますが、こちらとしてはそんなものにツッコんでいる暇はありません。初期装備自体はこういう転生モノでもそこそこ優しいかと思いますが、ツッコミどころが多すぎるのです。

 そもそも二臨だったらだいたい黒桜なんですから年齢的にもピッタリ女子高生なのになんでロリカーマをチョイスしたのか、なんでカーマに私の精神が混ざってるのか、そもそもなんでキヴォトスなのか。神がいるなら悪趣味と罵ってやりたいところですがあいにく私の身体は愛の神のそれですし、神そのものではないにしろそこら中に神のエッセンスが入った奴らはウロチョロしてます。あまり大っぴらに文句を言えるものではありません。

 

 というわけで少し問題を後回し……いえ、頭をリセットしてどうにか生き延びる術を考えていきましょう。まずここはキヴォトスですから、スマートフォンのSIMなんてものは使い物になりません。圏外です。となればまず探すべきはFREE Wi-Fiのあるカフェとかでしょうか。調べ物できないと話になりませんから。幸いにも自販機とか見る限り通貨はそのまんま行けるみたいですし、その辺歩いてみましょう。ところで、キヴォトスにも野口英世がいたんでしょうか。

 

◇◇◇

 

「あ、アップルティー1つ。砂糖多めで」

「かしこまりました」

 

 確定しました、ここトリニティです。じゃないと紅茶だけでメニュー表が16ページもあるはずありません。なんで同じ商品が産地別で分かれてるんですか。しかもちょっと高いですし。とまあそんな物価高のブルジョワ経済への文句はさておいて一杯880円(税込み)のアップルティーを啜りながらキヴォトス生き残り大作戦の続きといきましょう。

 といってもここから先はとっても簡単なお話です。何せやることはただ1つ。シャーレに向かえば良いんです。さっきから理解が追いつかないような話ばかりですが、とりあえずここがソシャゲの世界というのであれば主人公と接触するのが一番なんですから。ましてブルアカの「先生」となればFGOのマスターさんと同じくらいのお人好しで、生徒を見捨てるなんてことはまずありません。ならシャーレに転がり込んで適当に先生のお手伝いでもしてれば十分キヴォトスで生きてけます。ついでに無性に誰かを堕落させたいという愛の神故の欲求も先生で満たしちゃえば一石二鳥です。どうせソシャゲ主人公なんてすぐ堕ちますしね。

 というわけで善は急げ、といきたいところですが流石880円(税込み)のアップルティー。中々ぐいっと飲み干すには惜しいくらいの味です。もう少しちゃんとお茶してからの出発でも問題ないでしょう。どうせお金もシャーレへの片道料金さえ払えれば問題ないわけです。そんなわけで私は手を挙げて、店員さんにアップルティーのお代わりとハニートーストを注文しました。

 

◇◇◇

 

 トリニティからグリーン車で3時間とちょっと。D.U.郊外のシャーレの最寄り駅に到着したのは午後5時を回ったくらいでした。ちょうどさっき買ったファンタみたいな炭酸ジュースでお財布は空っぽになってしまいましたが、この計画性の無さの責任は身体の方へ押し付けておくことにします。悪いのはカーマであって私じゃありません。身体のせいです身体の。

 とまあそんな言い訳をしながら辿り着いたシャーレの本部。道順はさっきのカフェで調べた時にスクショしておいたのでWi-Fiがつながっていなくても安心です。この用意周到さは間違いなく私でしょう。カーマじゃありません。

 そんなことを考えながら私は一階に入っているコンビニの横を通り過ぎ、シャーレのオフィスに繋がるエレベーターの前までやってきました。エレベーターのスイッチ横の案内を見ると「25階 シャーレオフィス」という文字。D.U.の中心、サンクトゥムタワーからは30Kmくらいとはいえシャーレ周辺も都会度合いで言えば横浜くらいはあります。そんなところの綺麗なビルの25階ともなれば中々豪勢な労働環境でしょう。というか横浜に25階建てビルなんてなれば結構な額が掛かるはずです。家賃だけで一生食べれるんじゃないでしょうか。

 野暮なことを考えながらもエレベーターに乗り込む私。最新鋭のエレベーター特有のスーッとした感じで上がっていく2m×2m×2mの箱。まあ最新鋭の基準がすでに10年以上経っている気がする東京スカイツリーなのでそこは甘く見てください。階を示すウィンドウが10階、15階、20階と5階飛ばしで変わっていくのがそのスピードを表しているんでしょう。あっという間にシャーレのオフィスが位置する25階に到着してしまいました。

 そして最後の関門、インターホンです。ここでどんなのが出るかという運ゲー、RTAなら多分リセットポイント。しかしこれは残念ながら現実らしいことが徐々に身に沁みてきちゃってるので挑むしかありません。136cmの私と同じ目線のインターホンのボタンを、この期に及んでやってきたちょっとした緊張とともに押しました。

 

「ふふっ、どうぞ」

 

 インターホン越しの返答一つで、ゾクッと、私は背筋が凍るように錯覚しました。いえ、私じゃありません。私の身体のものです。とはいえ、私にもガッツリ心当たりが。何せインターホンから聞こえてきたのは聞き覚えしかない田中理恵ボイス。カーマがこうなってしまうCV田中理恵なんてただ一人。分かっていても、身体が立ち竦みます。恐怖、というよりは衝撃、あるいは拒絶反応で身体が動くのをためらっちゃってます。そして私の方に近づいてくる、カチカチ鳴る時計のような規則的な足音。私の身体がごくりと唾を呑み下ろすと同時、ウィーンと無慈悲に自動ドアが開けられました。

 

「まあ。突然こちらに呼ばれたと思ったら、思わぬ再会になりましたね」

「……!なんで、ここにいるんですか……?!」

 

 その姿を目にして、戦慄が迸りました。見た目、声、仕草、雰囲気、その全てが私にも、身体にも余りにも覚えがあるものだったからです。その豊かな胸元に掛かっている、彼女がシャーレの「先生」であることを示す名札は目に入りましたが、そんなものに思考を回している暇はありません。目の前に精一杯で手一杯。ですがなんとか、私は目の前の彼女に対して、口を開きました。

 

「……殺生院、キアラ……!」

「いえ、今はキアラ「先生」と呼んでくださいな」

 

 そう言って彼女は、殺生院キアラは聖母のごとく微笑みました。




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