なんで私が愛玩系ビーストに?!   作:随喜自在第三外法快楽天

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快楽天ビーストinシャーレ

 殺生院キアラ。またの名をヘブンズホール。またの名を随喜自在第三外法快楽天。またの名をビーストⅢ/R。すなわちFate/EXTRA CCCのラスボスであり、Fate/GrandOrderでは人類悪としてカーマの対になる破戒僧。その実態はエロの擬人化、スケベの権化、歩くR-18。簡単に言えば、自分一人が最高に気持ちよくなるために自分以外の全てを使い潰そうとした女。どこまで行っても極限的な自己中。とても他人を正しく導けるような、「先生」をやれるような人間じゃありません。なのに、それは理想的な「先生」であるはずのシャーレの先生として、私の目の前に現れました。

 

「……なんで、ここに?」

「「何故か」、そう問われても私には「喚ばれてしまったから」以上のことは申し上げられません。私もそれ以上は存じ上げないのですから。それとも、貴女は自分がここにいる理由を答えられるのですか?」

 

 少し意地悪に尋ね返した彼女に、私は引き下がることしか出来ませんでした。それにしても、どれだけ人を堕落させることに特化した生命体なんでしょうか。燃え盛る誘蛾灯、猛毒の蜜香。誘った全てを破滅させる魔性の聖女。何せ曲がりなりにも同じビーストであるカーマの身体に入っている私でさえクラっときてしまうほど。いえ、おそらくカーマであれば太刀打ちする術もあるんでしょうが、あいにくにも中に入っているのはしがない男子高校生。とても人類悪に及ぶほどの器ではありません。とはいえ、ここで彼女を野放しにしてしまったらキヴォトスが食い物にされてしまうというのもまた事実に違いありません。進むことも引くことも出来ずに固まる私の身体。そんな中で、突如彼女の、漂うだけで人を喰らうような雰囲気がスッと引きました。自分でも分かるくらい、私はにわかに目を見開きました。

 

「ひとまず上がって下さい。お茶でも入れましょう」

「……え?」

 

 別の意味で身体が動かない私を置いて、殺生院キアラは部屋の奥へ戻っていきました。

 

◇◇◇

 

「どういう風の吹き回しですか」

「どうも何も、先生が生徒をもてなしてはいけないのですか?」

「もう生徒扱いですか……」

「それが目的なのでしょう?」

 

 「違いますか?」とまるでこっちの思惑はお見通しだと言わんばかりに微笑むキアラ。けれどさっきみたいな一挙手一投足のどこかを起点にして食い物にされそうな雰囲気はありません。そして目の前に出されたのは湯気が昇る緑茶とまんまるなおはぎ。キアラは「大層美味でした。私が保証致します」と微笑んでます。今の私はロリカーマの身体です。甘い物の魅力には勝てません。少し警戒した後、私は「えいや」と一口で頬張りました。ふわぁっと口の中に広がる甘いこしあんの風味。ほんのりとまだ温かい、もちもちとしたもち米。食べてから一口で食べてしまったことを後悔するくらい。現世では甘いものとかあんまり食べなかったのですが、身体のせいでしょうか、無性に身体に染み渡ります。そんな冷静に考えれば子供っぽい、良くも悪くもロリカーマの身体に相応しい振る舞いにキアラはクスッと笑いました。

 

「……何がおかしいんですか?」

「いえ、先ほどから思ってはいたのですが、()()()()()()()()()()()()()()()()、と」

「……っ?!」

「勘違いかもしれませんが、私の知るカーマさんはもっと面倒で偏屈な方です。そうですね、もう2度か3度の問答を挟み、その上でこちらが下げようとしてようやく「仕方なく」といったスタンスで口をつける、そんな感じです。少なくとも、これほど素直に出されたものに口を付ける方ではないかと」

「……」

「ですから、お尋ねいたします。あなたは、どこのどなたですか?」

 

 「隠せない」、そう直感しました。これはおそらく、彼女がビーストであるが故に持つ千里眼などではありません。強いて言えば「先生」としての力。ブルーアーカイブの主人公補正のようなものが働いてます。間違っても、私がチョロいわけじゃなくて。万が一私がチョロかったとしてもそれは身体のせい、カーマのせいであって私のせいじゃないということだけ強く主張しておきます。

 そういうことで、私は洗いざらいを話しました。どうせ彼女のペースに持ってかれたんです、後はどうやったって終わり。なら観念しようという感じのテンションでした。私はカーマの身体に入ってるだけであなたの知るカーマじゃないこと、自分はあなたと関わりのない世界の人間だけれど、あなたのこと、カーマのこと、この世界のことは少し知っていること、今私はカーマじゃないけどカーマの記憶、考え方などを引き継いでいるということ。それらを打ち明けると、彼女は少し神妙な顔つきになって考えました。

 

「要は、貴女はカーマさんの身体と記憶を引き継いでしまったカーマさんとは違う誰か、ということですか?」

「多分、そういうことです。……信じてもらえるかは、分かりませんが」

「いえ、この世界が摩訶不思議に満ちているのは理解できます。そのようなこともございましょう。そのスマートフォンも財布も、カーマさんは選ばないだろうなというのは容易に想像できます。何より、()()()()()()()()()()

「っ?!え、何でですか、どう見たって、どう聞いたって、あなたは殺生院キアラで……」

「はい。それは間違いありません。ただ、私は今、異なる私を乗っ取っています故」

「異なる……?」

 

 首を傾げると、キアラは「ええ」と静かに頷きました。

 

「貴女にも明かしていただいたのです。こちらからもお話いたしましょう。ええ、あれは少し物憂げで曖昧模糊な夢の中でした。「まだ誰かを救っていたい、誰かを助けたい、誰かのためになりたい」、そんな人の身に余る断末魔に、私は酷く惹かれました。ほら、「人は自らが持っていないものに惹かれる」とも言うでしょう?まさしくその通りに」

「……」

「そして惹かれ、寄ってみて初めて気が付いたのです。それが、かつての殺生院キアラ()のものであるということに。無垢であり、正しく、そして本来の私の叫び。それに気が付いた瞬間、私の身体は泡沫のように弾けました。そして気が付いた頃には私は「正しい私」の肉体に入り込み、この世界に落とされてしまったということです」

 

 話を聞いて、少し納得がいきました。キアラが纏っている人を食うような空気が引っ込んだ理由です。それが身体に由来するものであれば出し入れなんて出来るはずもありませんが、それが精神由来というのであれば話は別です。正しい私、記憶が正しければ殺生院キアラという女には真っ当にセラピストとして人を救うというルートが存在していたはずです。おそらく、そのことを言っているのでしょう。そしてもし、キアラも私のように身体に精神が引っ張られているのであれば、もしかすればまだ終わらないんじゃないか、そう思って私はすうっと深く息を吸い込んで、口を開きました。

 

「キヴォトス、滅ぼすつもりですか?」

「ふふっ、良い質問です。確かに、私はこの世界に降りたその瞬間、絶頂に至るための最上のリソースを得た、そう確信し、全てを使い潰そうといたしました。ですが、その直後。全く未知な感情が私を襲ったのです。信頼、道徳、良識、他愛、奉仕……私が不要と掃いて捨てた、心底理解出来ない、吐き気のするような感情がどうも酷く甘美なものであると思えました。ある意味では、今までの私の人生の一切を否定する感情。それが、恐ろしく美しく思えてしまったのです」

「……え?」

「そこで話を伺ってみれば、何やらこのキヴォトスは問題が山積みで、私にはそれを解決するために「先生」を務めてほしいと。ふと、昔読んだ書物の文言を思い出しました。「他者への奉仕は究極の自己満足である」、と。そして、私は決意したのです。私は正しく、遍くを救うことで、このキヴォトスで絶頂へ至る、と」

 

 「ああ、想像だけで果ててしまいそう……」と蕩けるような顔でほざくキアラ。なるほど、ほんのちょっとでも途中で期待した私が恐ろしく愚かだったようです。私は頭を抱えました。

 単刀直入に言いましょう。この女、「自分が気持ちよくなるためだけにキヴォトスの生徒達を救う」、そう断言しました。




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