なんで私が愛玩系ビーストに?! 作:随喜自在第三外法快楽天
いざ大砂漠アビドスへ
ええ、結論から言ってあげましょう。かなりやらかしました。どこまで行ってもどこまで行っても砂に埋れたゴーストタウン。360度どうやって見渡しても青い空、白い雲、黄色い砂、灰色の廃墟。こんなんどう見積もったって衰退の三倍満、裏ドラ次第で数え役満です。土地勘なし、食料なし、飲み物なし、スマホの充電なしで放浪数日目。ああ、詰みです。忘れてました。アビドス1章はいきなり詰みポイントでした。良い感じだったのはアビドス中央駅で電車を降りたくらいまで。思えば、そこでアビドス高等学校への案内がなかった時点で色々と察するべきでした。この世界での学校は学校であると同時に役所みたいなもの。一応数少ない資料なんかから調べてみると確かに最寄り駅はアビドス中央駅って書いてあったのですが、もうそっから先の手がかりがないんだからご察しです。役所へのアクセスが不明とか行政機能が終わってる証なんですから。
そんな回想より目の前の話をしましょう。クラクラくる視界、ちょっとそろそろおぼつかなくなってきた足取り、暑さというよりも乾燥という第一印象の空気。時々吹く強風が巻き上げる砂が口に入るのも一分くらいおきの定期イベントです。今は確か、3日目の朝。なぜか砂漠気候なのに昼夜の寒暖差が全然大した事ないので、多分元の世界でいう砂漠気候とは違うタイプの砂漠なんだろうなと地理の授業を思い出しながら考えました。いえ、考えることが目的というよりも現実逃避です。死神の足音がすぐそこまで迫ってきているのが自分でもよく分かります。どれくらいヤバいかと言うと、キアラ先生が真面目に私にセラピーとかカウンセリングって呼ばれるようなことを始めるくらいです。間違った精神より正しい肉体の方が勝ってます。
そんなこんなで住民が全くいない住宅街をフラフラ彷徨っている私達。耳に入ってくるのはやたら元気な鳥のさえずる声。「これが朝チュンですか」と私は働かない頭で考えました。おそらくそろそろ走馬灯が出てくる頃合いです。あと頼れるものなんて一体何があるって言うんでしょうか。せいぜい原作への何らかの修正力、あるいは運命力とかいうものくらい?でも、私なんていう生徒がいるせいで多分先生単体だったときのブルーアーカイブとは状況が異なっている可能性も高いです。あーあ、私がいるせいで先生巻き込んで全滅かー。あーあ。
「……あれ、何してるの?」
そんな風に身体のネガティブ思考に引っ張られていた私。しかし、救いはそこにありました。洒落たスポークバイクに跨った、狼の耳をはやした銀髪の少女が私達に声を掛けたのです。ブルーアーカイブを読んだ感じではメインヒロインはミカかユウカだろうなと思っていた私ですが、こうも助けられては彼女こそがメインヒロインと認めざるを得ないでしょう。「大丈夫?」と問いかけてきた彼女に限界の近い私は「そろそろ死にますね、多分」と答えました。「見た通りだね」と彼女は頷きました。
「すいません、なんか飲むものとかありませんか?多分2日は何も飲んでないので」
「えっと……多分、隣の人もだよね。何かあったかな……」
「申し訳ありません」と一礼するキアラ先生。銀髪の彼女はガサゴソとカバンを漁ると「とりあえずあげる」と一つの缶ジュースを取り出して私の方へ差し出しました。ラムネ味の炭酸ジュース。カシュッと私はプルタブを開け、一口で飲み干しました。普段であれば「ぬるいなぁ」という感想が出てくるような温度ですが、今の私にはあらゆる液体がごちそうです。それなりの温度の乾燥空間に晒されていたからか、今までに飲んだどんな飲み物よりもキンキンに冷えてるように思えました。あー、最高。ポテチとか欲しい。
「えっと、あなたも同じ感じだよね。何かあったかな……」
そう言って彼女はまたカバンを漁りましたが、途中で何かに気が付いたらしく「あ」と小さく呟きました。
「飲みかけで良かったらライディング用のエナジードリンクがあるんだけど……飲む?」
「ええ。ありがたく」
そう言ってサッカー部が使ってるタイプの水筒に入ったエナドリに口を付けると、キアラ先生は「ぷはぁ」と少し艶っぽい感じに声を漏らし、そして彼女に礼を言いました。
「二人共、遭難者だったんだね。この辺、飲食店とかそういうところはないから。もう少し郊外に行けばあるんだけど……」
「申し訳ありません。仕事で初めて訪れたものですから、あまり土地勘が」
「そっか。良かったら案内しようか?」
「ああ、助かります。アビドス高等学校、というところへ向かっているのですが……」
「あ、ならもしかして、シャーレの先生?連邦生徒会のマークだもんね、それ」
「お客様は久しぶりだ」とスポーツバイクに跨り直して口にする彼女。至って普通の人間の身体で生死の境を彷徨うというのは久々の経験らしく、だいぶまだ疲れた感じのキアラ先生を見て「後ろ乗る?」と彼女が尋ねると、キアラ先生は控えめに頷きました。
「あなたは……」
「あ、大丈夫です。違法ローラースケートあるので」
「分かった。あと、ごめんね先生。少し汗臭いかもだけど」
「いえ、思いもしませんでしたわ」
「ありがと。……じゃ、行こっか」
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