ブルアカ短編シリーズ   作:ハクスナ

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 深い眠りから覚めるとそこはある生徒の家だった。朝日の指すその部屋には先生と生徒が二人。優しく透き通るような彼女に先生は心を奪われていく。歪んだ愛情の物語。

こんにちは!HAKUSUNAです!!
さてさてと、一カ月近く書いていたんですがあまりいい内容が思いつかなかったんですよね…それで伸びていたのもありますがともかく書き上げることは出来たので嬉しいですな。※作者(阿保)はゲーム開発部までしか進んでいません!では是非読んでいってください!


ホシノと同居する話

「おはよ~せんせ〜」

 

 そう話しかけてくる一人の少女。薄暗い部屋。朝日は照らしてくれない。唯一光を照らすのは眼の前にいる少女、ただ一人。

 

「ふわぁ――おじさん、まだ寝ていたいなぁ〜」

 

 大きくあくびをする。『おじさん』と言う独特な一人称の少女。このキヴォトスに一人しかいない。

 彼女の名前は小鳥遊ホシノ。いつもおちゃらけた雰囲気をした子だ。よくノノミに抱きついていたり、部室で昼寝をしていたりとマイペースな所もある。それ故なのか魚や海洋哺乳類への関心が高い。そんな彼女の家にお邪魔しているのが俺という訳だ。

 

「先生も一緒にねる〜?二度寝はきもちいいよぉ〜」

 

 ホシノは二度寝の誘惑する。よくあるようなピンク色のパジャマを着たホシノ。少し離れていてもいい香りがする。恐らくは鼻をピクピクと動かしているだろう。体もぎこちなく動いている。それに気づいたホシノは少し引いているように見えた。

 ふと、時計を見る。時計の針は九時をさしている。それは先生としての仕事が始まる時間。遅刻という二文字が頭の中を駆け回る。気づいた時には慌ててスーツを探していた。

 

「何してるの〜?せんせ〜」

 

「そんなに慌てちゃってさ〜」 

 

 そうだ、ここはホシノの家。どこを探してもある訳がない。今からシャーレに行くとしてもかなりの時間を要する。遅刻は免れない。無念さに肩を落とす。

 とりあえず支度だけでもしないとな。そう思い、鞄に物を詰め、出る準備をする。――すると、ホシノが言った。 

 

「行かせないよ」

 

 声のトーンが一段と低くなるホシノ。あの甘い声はどこにもなかった。ホシノがホシノじゃない――そう思えるぐらいに。

 嫌な汗が流れる。本能的な危機管理能力が警鐘を鳴らす。キヴォトスとなれば、銃撃戦は日常茶飯事。しかし、それとは段違いに異なる異質さがあった。

 

「せんせ~外は危ないよ」

 

「だから〜行っちゃだめだよ?――まあ、行かせるつもりもないけどね〜」

 

 後ろに立つホシノ。あの笑顔でこんな台詞を言っている。そう考えるだけでも前に進めなかった。行くことは出来る。このまま鍵を外して外に出ればいいだけ。しかし、体は動かなかった。ホシノが怖かったんだ。怖くて動けなかったんだ。

 死にそうな事は何度かあった。それでも今回は違う。死を感じる根源がホシノ――だからだ。

 

「先生はどっかにいかないよね...」

 

「■■先輩みたいに...」

 

 俺は後ろを見れなかった。何も応えられなかった。本当に情けない先生だ。生徒の気持ちすら汲み取って上げれずにただ、返事だけを待つ人形。人形遊びに使われるだけの話し相手。こんな人形でいいのか――そんな筈ない。

 

「いかないで先生」

 

「もう私から離れないで」

 

 詰め寄られる。そこにいるのは愛おしい教え子。ホシノは俺を後ろから抱きしめた。まるで前にある扉に触れさせないように。

 何が少しずつ変わってきていた。もういいじゃないか。大人の責任を負わずとも。もうホシノだけに守ってもらえばいい。ホシノだけを見ていればいい。ホシノだってそれを望んでいる。

「みんな――こんな先生を許して」と心の中で叫ぶだけ。悪い先生でごめんね…みんな。

 そうして足は後ずさる。扉に背を向け、ホシノに目を向ける。理想だけでいい。今はただそれだけでいいんだ。

 

「――次は絶対に失わない」

 

「だから先生…安心して」

 

 これでいいんだ。言い聞かせるように頭の中で何度も呟いた。

 

 俺は社会から逃げた。当然、この部屋からは出られない。窓も閉められて唯一の光はホシノ一人。それが何日、いや――何週間も続いた。その時には日付感覚なんてわからなかった。多分、みんな心配して探しているんだろうな。突然消えて、消息も不明な俺なんかを必死に探しているんだろう。こんな情けない先生を。

 

「せんせ~どうかした?」

 

 ホシノは俺を優しく包み込むようにしてくれる。もうこの世界にはホシノしかいない。もうホシノがいないと自分が個であり続けられない。

 顔をホシノのお腹に疼くめる。まるで小学生が母親にでも甘えたくなる現象と言うのだろうか。目を瞑って体いっぱいにホシノを堪能する。甘い香り、溶けてしまいそうな肌、絹のように美しいピンクの髪。どれを取っても見劣りしない。世界が薔薇色に染まっていく。

 

「まったく〜せんせーは寂しがり屋さんなんだから〜」

 

 そうだ、寂しがり屋だ。言われなくてもわかっている。誰も本当の自分を見てくれなかった。上辺だけで物事を判断して見てはくれない。頑張っても、どんだけ頑張っていても評価すらされない。こんな社会なんかに嫌気が差していたんだろう。自我を保つためにパソコンのモニターを閉じたんだ。

 

「辛いよね、先生」

 

「でも――これからはおじさんがついてるから安心して」

 

()()()()()はもう二度とさせないから」

 

「ね?先生」

 

 ホシノは見てくれる。ホシノだけは自分を見てくれている。道端に落ちている石ころの俺を見てくれる――。

 

「だから先生もおじさんだけを見て」

 

「おじさんから目を離さないで」

 

「絶対に」

 

 相槌を打つように大きな(いかづち)が響く。すると同時にビクリと体が跳ね上がるホシノ。少しの間、余韻は残り続け、小刻みに震えている。その震えは雷鳴と言うよりかは、また別の恐怖に駆られていると言った方が正しい。

 

「うへ~…びっくりしちゃった〜」

 

 表向きには笑顔を見せてくれるホシノ。しかし、その目は酷く淀み、泥のようだ。それでもホシノは俺を包み込んでくれる。抱擁感に圧倒され、次第に眠気が襲う。目は閉じたり開いたりを繰り返している。

 

「やめて――もう私から何も奪わないで……」

 

 意識が途切れる前、ホシノがそんな事を言ってるような気がした。雷鳴が轟いているのになんでこんなにも眠くなるんだろう。

 そんな事も知れるまま、眠りに着いた。

 

 大きいだけの子供。わがままで自分勝手な子供。事あることに好奇心に突き進む。同情して勝手に理解しようとする。それがこの生涯だった。

 色づいた道は次第に鉄臭く、どす黒い汚れに覆われる。成長が感じれず、罵られ、笑われ続ける毎日。だから逃げ出した。我武者羅に走り出した。何も考えずにひたすら走った。そして何万歩走った頃だろうか。足は赤色に染まり、目は血走っていた。行く宛も見つからずに消えかかる外灯の下に突っ伏した。ふと、今まで来た道を振り返る。既に道は跡形もなく消えていた。

 

「消えたんじゃない、自分で消したんだ」

 

「わかっているんだろ?」

 

 頭の中に直接入り込む声。それが異様に腹立たしく、暑苦しい。

 

「クジラに飲み込まれた小魚よ」

 

「いつまで()()にいる」

 

 わかっている。わかっているんだよ。頭の中に語り込んでくる奴は責め立てるように言い連ねる。所詮、俺は小さな小魚だ。クジラに勝てっこない。そんなことは誰でも知っている。今更言われても――

 

「だからそうやってまた逃げるのか?」

 

「大人の責任から」

 

 違う、逃げたいわけじゃない。顔を横に振り否定する。しかし、奴は嘲笑いながら語り始めた。

 

「極楽な考え方をしている小魚目が」

 

「お前さんはそこまで偉くなったのか?」

 

 暗く、深い闇の中。押し潰されそうな気持ち。深い深い深海へと誘われていく感覚。心臓はバクバクと鼓動し、飛び出そうなくらいだ。

 

「小魚が深海に潜った所で圧死するだけ」

 

「しかし、小魚とクジラは違う」

 

「小魚のお前とは違い力がある」

 

 力――。またそうやって追い込んでくる。力さえあれば何にでもなれた。なのに…どうして力がないのだろうか。悔しい、憎い、見返してやりたい。

 

「クジラの腹の中から出ろ」

 

「小魚なら小魚なりに生きて抗え――必死に」

 

 奴がそう言うと次第に闇が晴れていく感覚が伝わる。どす黒い色が段々と青い色へと変わっていく。押し潰されていた気持ちが蘇ってくる。「大人の責任」。その言葉が重く伸し掛かってくる。それでも俺は忘れたりしない。生きてきた証がある。生きてきた意味がこれからも見つかる。ここで止まってなんかいられない。絶対に抜け出してやるんだ。手を握り、固く心に誓った。

 

 ゴロゴロと鳴り響く雷。部屋の中にいてもわかる程の雨音。優しい感触が伝わる。そのままホシノの太ももで寝てしまったようだ。にしてもやけにリアルな夢だった。未だにあの夢が鮮明に思い出せる。あの暗い闇には恐怖心すら覚える程に怖いものだ。

 耳を澄ます。雷と雨音が聞こえる。しかし、その中で一際異様な音に気づく。それは何かを叩くような音。ドンドンという音が微かに聞こえてくる。その音に導かれるように寝ていた体を立たせる。

 そして数歩すると扉が現れる。それがなんとも大きくて恐ろしく見えた。怯まずにドアノブに触れる。鉄の冷たい感触が肌を伝う。何故か途轍もない恐怖に駆られる。鉄の冷たさによるものなのか、それとも別の何かか。わからずにドアノブを回そうとした。

 

「どこに行くの?」

 

 後から聞こえる声。それはここ毎日聞いていた声。でも少し違う。怒りからなのか、恐怖からなのか、それともその両方だろうか。聞こえる声はあの時のように低い声をしていた。

 

「ねぇ先生――どこに行くの?」

 

 彼女はもう一度聞いてくる。だが、何も言えない。いや言えない訳ではなく動けない方が正しい。まるで狼から睨まれて動けなくなる鹿のようだ。もし間違った行動をすれば命がなくなる。そんな気をさせる空間を作り出していた。

 

「一生見ていてくれるんじゃなかったの?」

 

「ねぇ?どうして先生?」

 

 扉はドンドンと叩かれている。扉の先にいるのは誰なのか。インターホンがあった場所に視点を向ける。しかし、インターホンの画面はぐちゃぐちゃに潰されていた。

 

「あっもしかして来客〜?」

 

「おじさん逃げられるのかと思ってびっくりしちゃったよ」

 

 ホシノは何時もの明るい雰囲気に戻る。もうそこにいるのがホシノの皮を被った悪魔に見えてきた。

 

「ごめん〜おじさんが出るから先生はここにいて〜」

 

 ホシノはそう言うと軽々と扉を開ける。

 

「あ〜あとね」

 

「何も喋っちゃ駄目だよ?せんせ~」

 

 教え子がただ、悪魔にしか見えなかった。あの甘かった日々ですら茶番だったんじゃないかと思うぐらいに。

 ホシノが部屋から出るとカチッという音がする。ドアに鍵を掛けられた。暗い部屋の中取り残された一人。それよりも恐ろしいのは今までこの部屋にいたことだ。部屋は荒れに荒れ、ゴミがそこら中に散乱していた。何故気付けなかったのか後悔する。

 そんな事を考えていると玄関の扉が開く音がした。俺は鍵を閉められたドアに耳を当てる。

 

「あれ、シロコちゃん…?」

 

「そんなにずぶ濡れになってどうしたの?」

 

「ちょっと待っててねシロコちゃん」

 

 ホシノは慌てているのか床に振動が伝わってくる。そして扉の前にいたのはシロコだった。

 

「これで体拭いて、後服も洗わないとね」

 

「ありがとう…ホシノ先輩」

 

「ささ、上がって〜上がって〜」

 

 玄関に通ずる渡り廊下に明かりが付く。オレンジ色をした綺麗な光だった。

 

「ホシノ先輩――あの部屋は?」

 

「あ~物置だよ、物置」

 

「…」

 

「ココアでいい〜?」

 

 ポタポタと落ちる雫。それが隣の部屋に入って行くのがわかった。ホシノとシロコが部屋に入っていくと扉が閉められ声が聞こえなくなる。どうにか隣の部屋の声が聞こえないかと壁に耳を当てる。しかし、聞こえてくるのは雨と雷だけであった。

 その後も聞こえないかと四苦八苦していた。その時だった。床に揺れる重く鈍い振動。それと同時にコップが割れる音がする。その音と振動が体中を駆け回る。心拍数は更に増す。

 カチッと音が鳴る。扉が開かれる。そこに立っていたのは……

 

「ごめんね、先生びっくりしちゃったかな?」

 

「大丈夫だよ〜殺してないから」

 

 ニコリと笑うホシノがいた。出てくる感情は恐怖と狂気。

 

「なんでそんなに怖がってるのさ〜せんせ~」

 

「これもぜーんぶせんせ~のためなんだよぉ〜」

 

 違う、そんなはずなんかない。人を傷つけてまで助けてなんて言っていない。そんな事をすれば――

 

「この社会の大人が嫌い」

 

「汚くて気持ち悪くて醜い」

 

「嘘をついては嘘をつく」

 

「全員がきらいだったんだよ」

 

「でもね、先生がいたから大人でも信用しよう思ったんだ」

 

 ホシノはニコリとした表情から真剣な面持ちに変わる。狂気によって犯されたホシノはもうホシノではなくなっていた。

 

「あの時の感情は■■先輩と同じ」

 

「もう失いたくない」

 

「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だなんてずっーと考えていてさ」

 

「それからなのかな?先生は私のものでいて欲しいって思ったのは」

 

 ホシノが語りだす。一つ一つが重く伸し掛かってきた。頭が潰れそうな程に伸し掛かる。そしてホシノはニコリと笑う。独り笑っている。

 

「もうこの場所はバレちゃったからもっと遠くの場所にいこ?先生」

 

「キヴォトスじゃないもっと遠くの場所に」

 

 生きて抗え。耳に残る残響が言っている。わかっているさ、小魚なりに我武者羅に生きてやる。ホシノは思いは伝わった。なら先生として、大人として伝える。

 こんなことは間違っている。ホシノに伝えた。

 

「……先生」

 

「もう先生が消えるのは見たくない」

 

「また失うなんて考えたくない」

 

「先生もアドビスのみんなも先に死んじゃう」

 

 小さな体が震えだす。徐々に震えだしていた体から嗚咽がまじり始める。そこには狂気ではなく、単なる恐怖と疑心。ホシノも同じだったんだ。根源が違っていても恐れるものは同じ。忘れたくない、忘れられないもの。

 自然にホシノに近づいていた。一直線に近づいた。そして抱きしめる。固く強く抱きしめる。大切な教え子を守りたい。その思いは変わらない。大人としての責任。紡ぐ未来のために必死に生きる。

 

「先生はあたたかいなぁ」

 

「ありがとう」

 

 虚栄に張った顔は崩れさる。今のままのホシノが一番いい。自然体のホシノが一番いいんだ。喉に張り詰めていた何がスッキリした。ホシノは大丈夫。きっといい大人になれる。今なら確信が持てる。

 

「ごめんね……先生」

 

「監禁まがいの生活をさせちゃって」

 

 全てを許す。それでホシノが楽になるのなら本望だ。ホシノの手を握り顔を横に振る。

 

「そう言えばシロコちゃん寝かしたままだった…」

 

「先生…手伝ってくれないかな?あはは…」

 

 仕方ない生徒だ。生徒の尻抜いも先生の役目。任されよう。

 

 …………

 

 閉じていた目は開かれる。照明の明るさが眩しいのか目を細めている。

 

「ん……ここは?」

 

「あっ、先生!」

 

 俺に気づくと一目散に寝ていた体を持ち上げるシロコ。その顔には安堵の表情が伺える。

 

「よかった…先生」

 

 目から大粒の涙を零すシロコ。これは相当心配させた所じゃ済まないだろう。

 

「ごめんね…シロコちゃん」

 

「大丈夫、よく寝れたから」

 

 シロコは自分の様子に気づき始まる。ずぶ濡れになった服は窓越しに乾かさられており、今着ているものが下着と薄いローブ一枚なことに。

 

「先生ってもしかして同性愛者?」

 

 予想斜めな答えが返ってくる。いや、勿論俺は同性愛者じゃないし、普通の女性がタイプだ。何故そんな質問をしたのかと聞く。

 

「だって下着にローブ一枚の美少女がいるのに襲わないのはおかしい」

 

「もっと強引に行くべき」

 

 シロコは一体何を言っているんだ…

 

「シロコちゃん…」

 

 流石にホシノも引き気味な感じがわかる。だが、シロコは何もおかしいことは言っていないとでも言っているようだ。

 

「あっ二人とも窓見て!」

 

 ホシノが窓ある方向に指を差す。そこにあったのは雲から見え始めている太陽だった。雲からは天使の梯子が降り始めている。それはなんとも幻想的でこの先の道を照らしているようだった。

 

「きれい」

 

「そうだねぇ〜」

 

「服が乾いたら外に出よっか?」

 

「うん」

 

 さぁ、この後は色々たくさんあるけど大丈夫。もう逃げたりなんかしない。クジラの塩吹きから始まる新たな一日。小魚がクジラに立ち向かう方法。そんなものなくていい。今は今を生きるだけでいい。

 

 先生は大人として、先生として立派に生きていきます。 




 どうでしたでしょうか?ホシノを調べていると曇らせ描写が多くて悲しいですね…
今回の話はセリナに続いてヤンデレ系でいきましたがどうでしょうか?もしデジャブを感じてたら「感の良いガキは嫌いだよ」って言って主は埋もれます、はい。ホシノのヤンデレ系って多いのかはわからないけど需要あるといいですね。(´・ω・`)
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