2025/03/05 大部分を改定しました。ご了承ください。
「ねぇ、君も魔法少女にならない?」
私、清水紫苑は最近高校に入学したばかりの現役JKだ。そう、ピチピチの現役JK。好きな恋愛小説を読み、妄想に耽り、日々の学業を怠惰に受け、友達と青春を楽しみ、甘酸っぱい人生を謳歌している只の一般女子学生。それが今の自分だ。
そして自分がいる世界には喋る動物、しかも流暢な日本語喋る動物など居ないはずだった。
だが、目の前の動物はどうだ?白くフワフワとした羽毛に黒くて丸い庇護欲がでそうな可愛い目に丸い顔を持つ梟なんかに声をだす声帯なんぞあるわけがない。いや、鳴き声を出す声帯はあるかもしれないが目の前の白蛇は流暢な日本語で「魔法少女にならないか?」と質問を投げかけてきたではないか!
「・・・・・・・・・はい?」
もしも私が小説の主人公orモブであったら何かしらの言葉を返し対話を試みるだろう。だが、生憎そんな度胸なんぞ只の女子高生が持っている訳がない。故に、目の前の光景を只の不思議な夢だと思うしかなかった。
だって「窓にいた梟が日本語を喋った。」なんて話を誰が信じる?大抵は相手を妄想癖持ちのゆるふわ夢女子と勘違いするか今時珍しい厨二病持ちの痛いJKだと察するか、とにかく誰も信じてはくれないだろう。
私はそんな不思議状況を信じれず無言で部屋の扉に手をかけ、静かに廊下へと出た。静まりかえった暗い廊下は日が当たらず凍るような冷たさが足下を襲う。そんな環境下で頭を冷やす。
1秒、2秒、3秒。
眠たかった脳内が覚醒、はっきりと透明になった思考を持ち、今度は蹴飛ばすような勢いをつけ扉を開けた。バンッ!と効果音がつきそうな程の勢いで開けた扉の先には何時もの自室が静かに存在している。
シンプルなベット、使い込まれた学習用の机と椅子、思いでの写真を目一杯貼った壁に掛けてあるコルクボード、普段着をしまっている衣装棚に母からのお下がりで使った化粧台、好きな本ばかりが詰め込まれた本棚。何時もの何も変わらない自室だ。
それに先ほどいた、珍妙で幻覚のような喋る梟もいない。
あぁ、さっきのは夢か。
私はそう安心すると同時に、自分が疲れているからあの幻覚を見たのだろうと因縁づけ忘れるように努めた。そして疲れているのなら早く寝なければ、と考えベットに入り寝る準備をする。電気毛布をつけた布団は温かく体から力が抜けるほど心地よい。が、そんな環境下でふと足に何か当たる感触がした。
何か、フワフワとしてほんのり温かい綿みたいな物。これから寝るのにこんな物あったら快眠なんてできない、と思いたった私は取り出そうと手を突っ込んだ。長く、ざらざらとした物を布団からポンッと抜く。明るい照明で照らされたそれはなんと、先ほどの喋っていた白い梟だった。
鼻先に小さな嘴がつくまで近づいた顔を除いてしまい、体がメドゥーサに睨まれて石化したように硬直した。
「ゴメンね、ちょっと寒くて布団を借りてた。」
この日、一人の女子高生の声なき悲鳴が夜のとばりが降りた冬の住宅街に響き渡ったことを誰も知らない。
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「・・・つまり貴方は、別次元の妖精界から来た妖精で?この世界を侵略しようと企む悪の怪物達がいて?それを止めるために魔法少女が必要で?もしこの世界が侵略されてしまったら妖精界が消されて?私にはその素質があった?と・・・。」
何これ?○リキュア?
今、私はかの意味分からない不思議な梟――否、妖精擬きと勉強机を挟んで会話をしていた。先ほどは悲鳴を上げて気絶してしまったのだが目が覚めてもこの喋る梟が存在し、大丈夫?と声かけをしている非現実的な光景を見てしまったら受け入れるしかあるまい。と腹をくくり何故、魔法少女にならないかい?と質問をしたのかその理由を聞き入っている。
しかもその内容がやれ侵略やれ妖精界のピンチと、妄想じみた幻覚擬きの物ばかりで頭が追いつかず未だに此は夢なんだろうな―っとぼけているもう一人の自分がいる。
「そうなんだよ・・・魔法少女は増えているけど敵の量は多いし、敵側の戦力も強くなっているしでこっち側が押され気味で大変で・・・。」
目の前の梟は、私が出した熱々の煎茶を器用に羽を使って持ち啜っている。その光景を見て、梟って熱々のお茶飲めるのか?と疑問に思うが目の前の梟は妖精だったのでまぁ飲めるのだろうと関係の無いことを考えていた。
「だからー・・・魔法少女になってみない?」
梟型の妖精はやや上目使いで言ってきた。
魔法少女になるかならないか。もしもまだ私が純粋無垢で○リキュア大好きだったあの頃だったら即断でなる、と答えるだろう。簡単に悪を倒す=正義の味方と単純に考えていたあの頃は。
だが、今の私は派閥やら女子同士の醜い争いを体験し油汚れがこびりついた汚い換気扇のコードのように汚れきっている上、現実を見なくてはならない大人に近い年齢になっている故に、なるかならないかで言えばならないと答えるだろう。
だってこちらにメリットがないのに何故命を無駄にする行為をしなければならないのか理解出来ないからだ。
そしてそんな中、魔法少女になるならない以前にふと、疑問がぷかりと浮いてきた。
”どうせ目の前に魔法少女の相棒枠にいそうな妖精がいるのだから次いでに質問してみよう。”と、もののついでにこの疑問を投げかけてみることにした。
もし、この疑問が自分にとって良い答えだとしたら、魔法少女になってみるのも一興だと打算的な考えを心中に思い。
「・・・魔法少女になることでこちらにあるメリットは何があるの?」
私は魔法少女になるとしたらどのようなメリットがあるのかなと興味本位の質問を目の前の白蛇に問いかけた。特に何か隠していることもない純粋な質問を投げかけられた梟型の妖精は・・・
「えっ、えっと・・・メリット?」
梟の顔で人の顔でもないのに分かるほど動揺しており私はこの時点で、”魔法少女にはならんとこ・・・”と思った。多分だがメリットの意味が分からないか、そもそも魔法少女になるメリットが無いことを知っているかの二択だと思うが恐らくは後者であると推測する。
そしてこの時点で、”魔法少女ってただで命を賭ける崇高な人の集まりなのかな?だとしたら私には向いていないな。”と、魔法少女になる気は失せていた。
「えっと魔法少女になるメリット・・・だよね?うんあるよ!ほら、アイドルみたいにちやほやされる・・・とか。」
梟型の妖精は尻すぼみになりながらも必死にメリットを提供してきた。が、こちらにとってメリットにもならないうえにむしろマイナスなことであるため、余計に魔法少女になる気が失せている。私は考える振りをした後に面と向かって口を開く。
「そう・・・なら魔法少女にならない。ていうか裏にこちらを利用して使い潰す意図がある気がして余計になりたくなくなった。」
素直に自分の心の声を言った。それで梟型の妖精が帰ってくれたらなと期待の意味も込めて言ったのだが、梟型の妖精はもう後がないのか必死になってメリットを考えているようだった。
「じゃ、じゃあお金とかはどう?一生遊んで暮らせるお金?」
自信満々に白蛇型の妖精は新たに考えたメリットを掲示する。だが、甘い。お金といえどこの世には様々な種類がある上に価値観もからっきし違う。もしこれでジンバブエドルを渡されたらたまったもんじゃない。それに金なんぞ今は欲しくない。
「甘いね。私は金に興味なんか無い。」
すっぱりと開示したメリットを両断した私は目の前の白蛇型妖精に目を向けた。鋭く、ガラスのように映す黒水晶の瞳は焦っててんぱる妖精を映し何処までも冷たく俯瞰している。
「宝石!」
「いらない。」
「豪邸!」
「いらない。」
「イケメンな彼氏!」
「いらん。・・・もう、鬱陶しいな。窓から突き落としてやろうか?」
怒濤の勢いで、即席のメリットを喋る目の前の白蛇型妖精に殺意が芽生えてきた。こちらは只でさえ眠いのに明日学校なことが合わさり、こいつをさっさと追い出して寝た方がまし。と思い立った私は少し前から粉雪が降り始めた外に、この五月蠅い喋る畜生を放り出そうとつまみ、窓の方へと持って行く。
「御願い!もう僕には後がないんだよぉ・・・御願いだから魔法少女になってよー・・・。」
「・・・はぁ・・・そもそもの話、何か命を賭けるようなメリットがあるならまだしも、ただで命を賭けた敵の殺し合いをしろと言うことに理解が出来ないのに、魔法少女になれって話が根本から破綻していることにお気づきではないの?こんな所でだだこねるぐらいならさっさと別の候補者とやらを探し出して契約してきなさい。」
だだをこねる子供をあやす母親のように静かに、されど相手を怒らせて面倒くさいことにならないように私は用件を伝え、窓から放り投げようとした。外は肉が切れるような寒さであるのでいくら妖精といえどこの寒さには耐えれないだろう。さっきから私の睡眠時間を削る馬鹿はこれで苦しめ。
そしていざ、外に放り投げようと振りかぶった瞬間白蛇型妖精は力を振り絞り先ほどとは違う大きさの声でこう言った。
「じゃあ死んだ人を一人生き返らしてあげる!」
私は思わず振り上げた手を止めてしまった。今、この白蛇型の妖精はなんて言った?死んだ人を蘇えさせる?・・・いやバカバカしい。さっきとおなじように口から出任せの言葉に過ぎないか。だが、もし、もしも死んだ人を生き返らすことが出来るのなら、私は――
窓の外に放り投げようとした白蛇型妖精をひとまず室内に戻し、また学習用の机に置き直した。だが今回は歓待用のお茶なんぞ出さずに只静かに、圧を込めた態度で問いただす。
「それは本当に出来るの?」
もしもこの場に私の友人がいれば戦々恐々と感じるだろう。殺気を仄かに纏い、マフィア顔負けの目つきで相手を睨み、声は鉛のように重くナイフのように鋭いワントーン落ちた声色。そこら辺のJKがだせる雰囲気ではない。
だが、このメリットはまるで食べ物をほしがる餓えに餓えきった餓鬼のように喉から手が出るほど欲しかった、いや願っていたことだからだ。
だが、人を生き返らすと言うことは普通はあり得ないことだ。イエスキリストが墓所から神の奇跡で生き返ったようなことが現実ではあり得ない、否起こりえないと言うことは社会にへばりついた常識である。
それでも、それでも尚、神の奇跡によって死んだ人がよみがえらせてくれるのなら、私は心臓を捧げて良いほど欲しい。そのメリットを。
そして急変した私に恐怖を感じたのか若干引きながら白蛇型妖精は言の葉を、甘言を紡ぐ。
「す、直ぐには生き返らすことは出来ない・・・け、けど、もし、オミネスを1万体倒したら、女王様に嘆願して生き返らすことを約束する!」
オミネス・・・ようは先ほど言っていた悪の怪物達のことだろう。そしてそれらを1万体、正直に吐露すると厳しい条件。だが、本当に生き返らしてくれるの約束するのなら、命を賭ける価値は大あり。・・・・・・・・・よし。
「いいよ、魔法少女になる。」
「・・・・・・ほ、本当に!?」
魔法少女にならないと言っていた私が一変、魔法少女になると言ったことに驚いた白蛇型妖精は、自分の勧誘が成功したことに喜び、早速契約しようとある物を虚空からゴトリと出した。
白と赤色が混じったガラス玉と青色の錆がついたネックレスに銀色で何かラテン語かルーン文字のような文字列が緻密に彫られた十字架が一つ飾られている。少々厨二臭い、ロザリオみたいな物だった。
「じゃあ、早速契約するからちょびっとだけ血を貰うね。」
白蛇型妖精はそう言うと人差し指にカプリと噛みつく。チクリと注射器に刺された痛みが指先からすると、噛みつかれた傷口から雀の涙程の血がタラリと流れ、ロザリオに垂れた。
ロザリオに垂れた血は苔が水を吸うようにスーッと染み込んでいき、紅く光り始めた。アニメで魔法使いが魔方陣を展開したときに見るような紅くて淡い光だ。
その光は数秒ほど続くと急に何事もなかったかのように収束し、その場には銀色の十字架に蛇が巻き付いた意匠に変化したロザリオが残っているだけだった。
「よし。これで契約完了だよ。」
私は契約=紙に書くと言うイメージがあったのであっけなく終った契約にあっけらかんとしていた。
「え?これだけ?何か紙に書くとかしないの?もしくは祝詞を紡ぐとか?」
そしてこの契約に不安も感じていた。Fateに出てくるセルフギアスクロールのように互いに強制力があるのではなく、妖精側だけにはこの契約を反故出来るのではないのか?とかのどうでもいい不安だ。だがそんな心を読んだのか、白蛇型妖精はしゃべり始めた。
「大丈夫だよ。この契約は僕たちが反故した瞬間妖精であることを剥奪されて死んでしまうから破ることは出来ないものだから。それに約束したことを破るようなことは妖精の誇りに賭けて絶対しないから。」
なるほど。と、私は納得しほっとするのと同時に妖精側の方だけ契約の重みが違うことに内心驚いていた。
「じゃあ、改めて僕の名前はザメニス。君のパートナーにして世界を救う英雄の友になる予定の妖精さ。」
この日、一人の魔法少女が誕生した。その魔法少女はオミネスを淡々と処理していく異端にして、処刑人としてこの魔法少女界隈に産声を上げ、敵からはイグゼクターと呼ばれる悪夢の象徴としてこの世から恐れられる運命を受け入れた最も恐ろしく冷酷な魔法少女として。
そして過酷な運命を辿る一人の少女として葛藤するだろう。
だからこそ祝福しようじゃないか一人の魔法少女の誕生を。
汝に幸あれ、汝に祝福あれ!