【重要】魔物合成術師には絶対なるな! 作:よわよわアナコンダ
『おい、起きろ!』
ぺしぺしと何かが当たる音がする。不快感と共に身体を起こした。って、此処何処だ。まさかダンジョン?
ゴツゴツとしていて寝心地は最悪だったのに、何故か身体はいつもより軽い。何だろう、何か大事な物を失った様な気がする。
『やっと起きたか……。ったく、何百年と待たされた挙句。餓鬼を起こすとか、一体我を何だと思っているんだ』
「あ、なんかすみませんでした」
お怒りになっているので謝罪した。例え、俺が悪くなかろうと謝らなきゃいけないのは前世も異世界も変わらない所だ。
『はぁ、軽い。軽すぎるな、良いか?もっと敬え。有り難く思え。何せ我は……』
『魔王だからな!』
魔王?もしかして昔話や絵本の?いやいやいや、どう考えても信じられない。目の前の存在が魔王?
俺がそう思うのも、無理はないと思う。何故なら目の前の魔王を語る物体は片腕しか無いのだから。空飛ぶ片腕が、魔王を自称してるこの状況はいくら何でもそう簡単に飲み込めない。
『ふむ、信じて無さそうだな。だが、貴様は光栄だ。すぐに我の完全体に出会う事が出来るんだから』
……どう言う事だ?意味深に語る魔王の腕は。事の経緯を事細かく教えてくれた。
昔、ヤンチャしていたら異世界から来た勇者に見つかり。あまりの強さに身体をバラバラにされ、封印された事。
それを俺に手伝って欲しい事。(手伝わなきゃ女のままだぞって脅された)
そこで、俺は初めて自分が女になっている事に気付いた。と言うか、自称魔王が俺を女に変えたのか?
『うーん、い、いや恐らく勇者の奴がなんか仕掛けたんだと思う。だ、だが安心しろ!我がフルパワーになれば、そんなのパパッと治せる筈だ。だから、我の身体を探してくれ』
此処で俺が、魔王を助けたら国家反逆罪とかになって色々大変になりそうだ。どん底のどん底にまで落ちるのは嫌だな。それに比べたら女でも良いかな?別に片腕だけじゃ無いし、逆に片腕だけなのに元気な人?見れば五体満足で生きてるだけでラッキーだと思えるもんな。
「すいません、今回は縁が無かったと言う事で。今後のご活躍にご期待しています」
俺はそう言って、黒い宝箱の中に腕を戻そうとした。と言うかこの腕。黒いモヤの様な物が常に出ている。確か、この黒いモヤに巻き付かれて意識を失ったんだよな。なら……。
抵抗されながら必死に腕を掴んでいると、頭の中に声が響いた。
《な、何だ?こっちを見て。ま、まさかバレたのか?いや。な訳が無い。そんな訳が無い》
魔王の手が震えている。可哀想に……。と言うか。
「何がバレたんだ?」
敬語は面倒臭いし良いや。タメで。
『い、いや?何でも無いし、な、何も言って無いが?』
《バレてんじゃんんんんんん!!!!何で??何処だ?何処から??》
此処からだよ。現在進行形で筒抜けだよ。まぁ、良いや。それっぽく言って本人に言わせよう。
「そっか、気のせいか。ごめん、気の所為だったわ。ごめん!」
『あ、ああ!別に間違いはあるからな?我は別に構わないぞ?』
《あっぶねぇ……。危うく、突然起こされて乙女の危険を感じたから適当に攻撃魔法打ったらそれが
「あー。成程ねぇ」
自然と腕に入る力が強くなる。成程、そう言う事ね?だから間違いは誰でもあるって?そうだね!
俺は思いっきりダンジョンの壁に向けて腕を叩き付けた。
『ああああああああ!!??』
「ア、テガスベッター」
何処から出ているのか分からない悲鳴を聞きながら、俺は少し心を落ち着かせた。