【重要】魔物合成術師には絶対なるな! 作:よわよわアナコンダ
思いの外勢い良く投げてしまったのか。それとも俺の眠られしパワーが解き放たれたのかは知らないが。魔王の腕は壁を超え、隣の部屋まで突き抜けた。
『いてえ……酷すぎないか。いくら我が魔王だとしても人権を主張する事は可能だと思うんだが!?』
なんか言ってるが俺は知らない。都合の悪い事は聞こえない。
まぁ、いつまでも放置しておく訳にも行かないし回収しようかと、何も考えず隣のフロアへ向かった。そこに居たのは巨大な身体、全身を覆う鱗、そして鋭く磨かれた爪に牙。
『「ドラゴンじゃん」』
間違いの無い程、完璧なドラゴンだった。しかも、完全に目が合ってしまった。眠そうな目から一転、獲物を見つけたと言わんばかりにギラついた目でコチラを見てくる。
これは……。
「そこの腕、食べれるなら食べて下さい!遠慮せず、健康を気にしてゆっくり噛んで食べて下さいねー」
屑?ゴミ?煩い。あぁ、確かにアレが幼子だったら世間の批判を買うだろうよ。だけど、自称魔王の腕だぞ?多分何とかなるだろ。元々弱いのにTSして更にパワーダウンしたよわよわの俺より数百倍望みがある。
『……ったく、ちょっとデカい図体だからってボス面しやがって。こちとら、ラスボスだぞ?痛い目見て貰おうか』
魔王の腕はゆらゆらと怪しげに揺れながらそう言っている。これは倒してくれそうだ。
『無理だわ、かむばーっく!えっと、名前知らんっ!あの、戻ってこーい!!』
数秒の膠着の後、言葉とは裏腹に自ら近づいてきた腕によって戦いは中断された。いやまだドラゴンは追いかけて来てるし、何一つ解決していない。終わった事にしたかっただけだ。
「何とかならないんですか、魔王様」
『うーん、無理だなぁ。アイツ倒すには最低でも後2パーツは必要だ。今の我じゃあ時間稼ぎにもならないな』
そう言うお前はなんか無いか?と振られたが、なんかあればとっくにやってると言うのがこっちの答えだ。こちとら貧乏TS新人魔物合成術師だぞ。荷物だってほぼ手ぶらだし……あくまで今日は様子見のつもりだったからな。
あー、色々考えると頭が痛くなる。風呂入りてえな。長くなってまとわりつく髪の毛が今になって鬱陶しくなる。髪の毛を掻きむしっていると、やがて何かがポロポロと落ちた。
シラミかな?多分。いや、そんな事よりも逃げ……。
シラミ?
シラミって、害虫?だよな。害虫って言い換えればモンスターか?魔王もモンスター。なら、シラミと魔王(腕)を合成させれば更なるモンスターが産まれるのでは?
『ちょ、急に止まってどうした!おい、ドラゴン来てるって!おい‼︎』
教わった通りやれば、大丈夫な筈だ。よし!
「
『うわ、何!何だ?我の体が……』
此処まで書いといて、アレだが具体的な表現をするのは避けようと思う。ドラゴンにシラミアームを押し付けて、痒さで悶絶している隙に何とかダンジョンを脱出出来た。因みに帰ったら魔王からのお説教が待ってるらしい。
『初めての合体で我の身体を汚しおって、責任取れよ!』って言う完全にアウトなセリフだが、可愛らしさの欠片も無い片腕に言われたからこれはギリセーフだろうか?羨ましいなら変わるぞ。