暗黒錬金術師伝説7 暗黒!フィリスのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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4、黒き縁にて

二度目に訪れた時も、神殿は静かなものだった。

 

獣の姿は無し。

 

トラップも無し。

 

それを確認した後、ツーマンセルで調査に入る。宝などがあるかも知れないし。場合によっては破壊しておいた方が良いからだ。

 

あれから試してみたが。

 

やはりハルモニウムの声が聞こえるようになっている。

 

具体的には、ドラゴンの鱗の声が聞こえるようになって来ている。

 

それは確認した。

 

まだ微弱だが。

 

その声は他と同じく確実で。

 

事実、今までとは品質が桁外れのハルモニウムを作れるようになっていた。

 

だが、ドラゴンの鱗は、そもそも生物素材の筈。

 

鉱物の声が聞こえるわたしのギフテッドと、どうして合致したのだろう。

 

それがどうにもよく分からない。

 

カルドさんが声を掛けてくるので、其方に行く。

 

眼鏡をなおしながら、カルドさんが模様をチョークで写し取っていた。

 

「見てくれ。 この模様」

 

「魔法陣ではなさそうですね」

 

「古い古い時代の文化だ。 この世界では、一度世界の文化が大変化を起こしているんだが、その前のものかも知れない」

 

「大変化?」

 

頷くカルドさん。

 

標の民の間では噂になっていたらしいのだが。

 

どうにも妙な言語や文化が、わずかながら痕跡として残っているというのである。

 

だが一時期を境として。

 

人間四種族が同じ言葉を使うようになり。

 

文化もそれにあわせて大きく変わったという。

 

近年、それに関する画期的な論文が出たとかで。

 

標の民や、歴史学者の間では騒ぎになったらしいが。

 

標の民はそもそも、噂でしかそれを確認できていなかったため。完成度の高い論文を見て、涙を呑むしか無かったという。

 

「情けない話だが、僕が派遣されたのもそういった「失われた文化」の発見のためでね」

 

「これは、その失われた文化とみて間違いなさそうですか?」

 

「いや、調べて見ないと分からない。 この神殿は、数日掛けて調査したい」

 

頷く。

 

どうせソフィー先生に指定された期日まではまだ時間もある。

 

次にどんな無理難題を言われるにしても。

 

それまで、今まで意見をまとめてくれたカルドさんのためになる事をしても、それは悪い事ではないだろう。

 

カイさんに操船してもらい。

 

船を何度か湖面に運んで空気を入れ換えながら。

 

徹底的に神殿を調査する。

 

カルドさんは偏執的なまでに、気が済むまで調査をした後。サンプルも持ち帰って、それをアルファ商会に渡し、必要分はライゼンベルグにある標の民本部へと転送していた。

 

これで満足しただろう。

 

良い論文が書けそうだと、カルドさんは喜んでいたが。

 

わたしは笑顔で応じつつも。

 

そうとは思えなかった。

 

深淵を覗き込む事は。

 

深淵に覗き返される事だ。

 

わたしは過去の世界に何があったのかは分からないが、人間四種族が同時に同じ言葉を使うようになる、なんてのがまともではない事だけは分かる。文化も大きく変わったとしたら、そこには何かとんでもないものが干渉したのだ。

 

例えばソフィー先生や、それ以上の実力者が。

 

でもソフィー先生はそこまでやっているのだろうか。となると、それ以上の実力者が実行犯の気がする。だとすると、何だろう。やはり、神々の誰か。それも神々の支配者とか、そんな存在ではあるまいか。

 

わたしはお姉ちゃんに露骨に心配されるようになってきている。

 

確かにわたしは変わった。

 

深淵をソフィー先生に無理矢理覗き込まされてから。

 

何もかもがおかしくなった。

 

その代わり力も得た。

 

力の代償はあまりにも大きかった。だが、正直、壊れなかったら、此処までの力は得られなかったとも思う。

 

同じように壊れてしまわなければ良いのだけれど。

 

だけれど、「知る事」はカルドさんの夢だ。

 

わたしに止める権利は無い。

 

一度、エルトナに戻る。

 

そうすると、手紙だけが来ていた。

 

内容は極めて簡素だった。

 

フロッケに行き、錬金術師キルシェの事業を手伝うように。

 

署名はソフィー先生のものだった。

 

そしてわたしが開封したことが告げられたのだろう。

 

強い魔力が放たれ。

 

消えた。

 

そうか、今度はフロッケか。

 

エルトナの方で少し事業を進め。

 

更に皆の装備を強化してから出向くことになるだろう。

 

その途中で、あの森についても、少し調べておきたい。森の中でならば、獣も多少大人しくなる。

 

戦闘を最初から想定しなければ、ドラゴンもいきなり仕掛けてくる事はないはず。森にダメージを与えることはドラゴンも好まないだろうからだ。

 

それにしても。

 

あの神童キルシェさんの進めている事業を手伝う、か。

 

今度もまた。

 

厳しい作業になりそうだった。

 

 

 

(続)




ついに上級ドラゴンを討ち取る事に成功したフィリス。

それはフィリス達の戦闘力が、この世界における錬金術師の中で上位に。それも同世代では並ぶ存在がいないほどの高みに到達したことを意味していました。

例え下駄を履かされた結果であっても。

現在本作は一章分の内容を二日に分けて投稿しています。このペースについて意見をお聞かせください。

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