暗黒錬金術師伝説7 暗黒!フィリスのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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1、禁忌の森へ

フルスハイムの湖から竜巻が消えて。

 

わたし達は一旦解散。

 

湖の状況も良くなり。

 

わたしは一旦エルトナへと戻った。

 

エルトナで、戦いの傷を癒やし。

 

更に高い品質で作れるようになったハルモニウムを造り。

 

それを使って、更に身の回りの装備品を作っていく。

 

荷車も作り直した。

 

ハルモニウムはやっぱり声が聞こえるようになっても作成難易度が段違いで。

 

簡単に量産する訳にはいかないし。

 

加工も極めて難しいが。

 

それでも作る意味は充分にある。

 

数日、休養を交えてエルトナでハルモニウムを鍛造しながら、今後の都市計画について考えて行く。

 

メッヘンとは連携が上手く行くようになり。

 

フルスハイムからも、馬車で鉱物の買い付けに来るようになった。

 

鉱物はわたしがコンテナの中に抑えているので。

 

重役達の懐に金が入るわけではない。

 

重役だから儲かる。

 

そういう仕組みを排除してしまったわたしは。

 

どれだけ街を快適にしていっても。

 

やはり重役達からは恨まれているのがよく分かった。

 

会議をすれば、必ず文句を言い出す重役もいる。

 

だが、彼らは多くの場合年老いてもいる。

 

わたしが機嫌を損ねたら、薬を作らなくなるかも知れない。

 

場合によっては、エルトナを出ていくかも知れない。

 

それを理解しているからか。

 

露骨に機嫌が悪くなったとみるや、話題を変えたりと、嫌がらせに特化した行動をしてくる。

 

わたしとしてもそれらの行動は腹立たしいが。

 

エルトナの素朴だと思っていた人達が。

 

日の下に出た瞬間、こんな俗物に化身した事の方が、もっと腹立たしかった。

 

外に出ると。

 

昔エルトナがあった山を、軽く崩し始める。

 

わたしの振るうつるはしはハルモニウム。この間は、ドラゴンにさえとどめの一撃を与えた。

 

ましてやこの山は鉱物の塊そのもの。

 

どうすれば崩れるか。

 

簡単に教えてくれる。

 

頂上付近から削り取るようにして崩していく。

 

何度か周囲に声を掛け。

 

崩れる事を警告。

 

小規模な崩落をわざと起こして。山をどんどん削り取って行く。元々完全なはげ山なのである。

 

崩す事で、困る植物は存在しないし。

 

放置しても、獣が湧くくらいだ。

 

無心のまま、三刻ほど山を削り。

 

ある程度安定したところで作業を中断。

 

相当量のエルトナ水晶とソウルストンが採掘できた。

 

だが、街の周囲には、巨大な水晶の結晶体や、ソウルストンが塊になったりしている。

 

それらには、わたしがカルドさんと組んだ結界を張って、盗掘出来ないように処置しているのだが。

 

それについても、重役達は文句を言うことが何度かあった。

 

都市計画というものの意義について説明しても中々納得しない。

 

というか理解出来ない。

 

わたしがこの街の心臓部を握っている。

 

それが余程気に入らないらしかった。

 

お姉ちゃんも、長老達に何とか取りなして欲しいと、散々泣きつかれるらしく。

 

わたしに珍しく愚痴を言ったりする。

 

ツヴァイちゃんを手なづけようとまでしている様子で。

 

なりふり構わぬ大人の汚さを、わたしは何処までも際限なく見せつけられ続ける事になっていた。

 

心が苦しい。

 

今でさえも、だ。

 

ソフィー先生の手で深淵を覗き込まされ。

 

そして邪竜を間近で見て、ドラゴンという存在が如何に人間と相容れないかを知ってしまい。

 

エルトナの人達の豹変ぶりを見て。

 

それでもなお、わたしは心が傷つくのを感じる。

 

ソフィー先生は知っていたのだ。

 

そのまま何もしなければ、わたしが壊れてしまう事を。だから、ああいう荒療治に出たのだろう。

 

嘆息しながら、アングリフさんの剣を打ち直す。

 

ハルモニウムの品質が倍増しになったのだ。少しでも切れ味は上げておきたい。

 

鉱物の声を聞きながら慎重に作業を行い。

 

そして、剣の柄に仕込みも入れる。

 

アングリフさんの切り札。

 

この間見せてもらった、闘気を爆発させて斬り付ける技。恐らくアレに相性が良いだろうと思って。

 

剣が灼熱を帯びるようにしたのだ。

 

爆弾と同じように、まず解除コードを唱え。その後に過熱を行うと、剣が灼熱を帯びる。

 

灼熱を帯びても、流石はハルモニウム。びくともしないが。

 

長時間熱を帯びると、当然ながら柄の方まで熱が伝わってくる。

 

このため、熱を帯びる時間は短く設定する。

 

熱を発する仕組みには、ハルモニウムに直接魔法陣を刻み込み。更に錬金術で変質させた。

 

これで充分だろう。

 

この間の邪竜の戦力。

 

更にドラゴネアとの戦いの結論から言って。

 

これならば、ドラゴンにも痛打を浴びせられるはずだ。

 

他にも装備品を強化していると。

 

ツヴァイちゃんが戻ってきた。

 

手に山盛りお菓子を抱えている。そのままコンテナに直行する様子からして、また長老達にお菓子を貰ったのだろう。

 

下心が見え見えすぎて、イライラしてくる。

 

なおツヴァイちゃんは、寡黙な上にあまり心を許していない相手には殆ど喋らない。好みなど当然口にしない。

 

ミルクが大好物な一方。

 

蜂蜜まみれのお菓子は、あまり好みでは無い様子だ。

 

ミルククッキーは飛びつくほど好きなのだが。

 

だから、蜂蜜漬けの甘すぎるお菓子は、貰ってもコンテナに入れてしまう。

 

とはいっても、ミルククッキーをいつも作れるわけでは無い。

 

良い小麦は高い。

 

わたしも、自分の生活費については資産から切り離して考えていて。

 

資産はあくまで戦略事業のために用いている。

 

このため、生活そのものはそれほど豊かでは無い。

 

お姉ちゃんとレヴィさんがせっせとお料理を作ってくれるけれど。

 

それはわたしが錬金術で激しく消耗しているから。

 

食事の分は、他で色々削っているのだ。

 

コンテナから出てきたツヴァイちゃんが。

 

在庫について話してくれる。

 

わたしは、ドラゴンの血から作った中和剤で、今作ったばかりの大剣を変質させながら、話を聞く。

 

「竜の鱗の消耗が激しいのです。 ハルモニウムが強力な戦力になるのはわかるのですが、このまま使っていたら尽きてしまうのです」

 

「うん、分かってる」

 

「お姉ちゃん。 これほど激しく、貴重な竜の鱗を何故に消耗するのです」

 

「この間探索をすると決めた禁忌の森に行くためだよ」

 

剣が充分だと告げてきたので。

 

中和剤から上げて、丁寧に拭う。

 

その後は幾つかの処置をした後。

 

実際に灼熱を帯びるかを確認。

 

外で実験をするが。良い感じだ。凄まじい熱に、剣が赤熱し、周囲の空気がカゲロウのように揺らめく。

 

わたし自身の身体能力が装備品で上がっているとはいえ、取り扱いは要注意。

 

丁寧に近くの岩に降り下ろすと。

 

足下にまで、剣が食い込んだ。

 

まるで水を切るかのように。

 

岩を切るどころか、足下の地面にまで潜り込んだのである。

 

これは、凄い。

 

しかも地面が溶岩になって赤熱している。

 

放熱は既に止まったが。

 

これは細心の注意が必要だ。呼吸を整えると、剣を地面から引き抜く。まだ余熱がもの凄かった。

 

他の道具類も更改を実施。

 

更に力不足だと感じていた爆弾も、それぞれ良い素材を使って火力を上げ、小型化した。小型化したのは、束ねて敵に投げやすくするため。

 

つまり元々威力が上がっているとっておきを更に束ねて投げる事により、敵を効率よく爆殺するためだ。

 

ブリッツコアも、良い水晶を厳選して改良を重ねている。

 

準備は、整ったと見て良いだろう。

 

今回の目的は威力偵察だ。

 

ドラゴンと戦う訳では無いし、森の中では獣も大人しくなる。

 

後は毒消しの類を多数用意しておいた方が良いだろう。

 

森の中では、悪意のある植物が存在する、と聞いた。

 

他ならぬ、植物のスペシャリストであるオスカーさんにである。

 

オスカーさんがいてくれれば良いのだが、この間聞いたところによると、まだイルちゃんが復興しているライゼンベルグの宿場町の近くにいるらしい。

 

そうなると、支援は期待出来ないか。

 

フルスハイムの様子も見たいので、空飛ぶ荷車を使って、イルちゃんの所に行く。

 

その間のエルトナの事は、アングリフさんに頼む。

 

アングリフさんが睨みを利かせている間は、重役達も何もできない。

 

それに、アルファ商会が手を引いたらエルトナは終わりなのだ。

 

わたしがいない間に、勝手な事も出来ない。

 

完全にとはいかないが。

 

ほぼ安全になった道を行く。

 

途中、馬車と何度かすれ違う。

 

フルスハイムまで数刻。

 

一旦宿に様子を見に行くと、イルちゃんがなんと来ていた。

 

この間、禁忌の森を威力偵察する話はした。

 

そろそろ来る頃だろうと思って、先に来ていた、というのである。

 

それならば話も早い。

 

軽く宿で、イルちゃんの方の状況も聞く。

 

イルちゃんはアリスさんに顎をしゃくり。

 

代わりに彼女が説明をしてくれた。

 

「現時点では、既に街を守る城壁は完成。 周囲の緑化だけではなく、街の中にも緑地を作る事によって、ドラゴンの襲撃を防ぐ態勢を作っています。 街の各所には、炉を動力源にしたシールドを設置。 守りは万全です」

 

「とはいうものの、この間の邪竜との戦いで痛感したけれど、この世に絶対はないわ」

 

「そうだね。 それで、今から来られる?」

 

「そのつもりよ」

 

少し良いかなと、カルドさんが挙手。

 

せっかく来たのだから、見聞院で少し作業をしていきたいという。

 

論文を書きたいのかも知れない。

 

ならば、此方としても、街を見て回るだけだ。

 

一旦解散にして、わたしはイルちゃんと街を見て回る。

 

水路はかなり水が澄んでいたが。

 

空が青く雲が無くなった反面。

 

街全体はまだくすんでいる。

 

それはそうだ。

 

ずっと雨が降り続けていたのだから。当面は、このくすみというか、汚れは取れることがないだろう。

 

自警団は若手を抜擢するのに大忙しらしく。

 

基礎体力作りに走り込みをしているのを見かけた。

 

魔族の戦士も何人かいたが。

 

驚いたことに、ホムが一人混じっている。

 

小柄だから嫌でも目立つ。

 

一番向いていない仕事だと思うのだが。ただ、ツヴァイちゃんのように、戦う理由があるのかも知れない。

 

また、希にホムにも高い身体能力を持つ者もいるらしいので。

 

そういった例外かも知れなかった。

 

「少し臭うわね」

 

「雨が降り続いているときは気にならなかったけれど、これは……仕方が無いね」

 

「まず街を綺麗にする所からね。 レンの苦労が窺われるわ」

 

「……」

 

街を綺麗に、か。

 

そんな事を考えられる余裕があるだけ、フルスハイムはマシなはずだ。

 

わたしが住んでいたエルトナは、それどころじゃ無かった。

 

水を得るどころか。

 

肉も野菜も。

 

全て命がけで手に入れていたのだ。

 

勿論身繕いなんて最低限。

 

今になって見れば、相当衛生的な観念は厳しかったはずだ。或いはお姉ちゃんも、それが理由で外が好きだったのかも知れない。

 

カルドさんが戻ってくる。

 

どうやら、見聞院に論文を出してきたらしい。

 

エルトナにわたしが戻ってから、数日間こつこつと書きためていたらしく。

 

今、提出してきたそうだ。

 

「多少は良い評価になると嬉しいのだけれどね」

 

「そういえばカルドさん、イルちゃんは平気ですか?」

 

「ああ、うん。 何とか」

 

「そうですか」

 

カルドさんは、相変わらず女性が極端に苦手だ。

 

わたしには普通に接してくれるし。イルちゃんも大丈夫なようだけれど。相変わらずお姉ちゃんやドロッセルさん、アリスさんとは距離を置いている。

 

怖い、というのだから仕方が無い。

 

こればかりは責められないだろう。

 

時間が来たので、皆で集合。

 

アトリエに入って貰い。

 

後は荷車でエルトナにまで戻る。

 

今度は予定より早く帰ってきたので、アングリフさんは呆れていた。

 

「スケジュールが定まらねえなあ」

 

「イルちゃんがフルスハイムまで来ていたんです」

 

「そうか、じゃあまあ良いか」

 

「此処がエルトナね」

 

アトリエを展開し。

 

出てきたイルちゃんがエルトナを見る。

 

実際には「新」エルトナとでも言うべき場所だが。

 

城壁で分厚く囲み。

 

周囲を隙無く緑化し。

 

その一方で、まだ発展途上である。

 

ただ都市計画はガチガチに固めながら進めているので、いずれ鉱物資源を武器に、周囲の街と交易で栄えるはずだ。

 

多くの人も安全に住めるはず。

 

後は長老や重役達が。

 

もっとしっかりしてくれれば、みんな笑顔で暮らしていけるはず。

 

だけれども、その未来は遠いかも知れない。

 

せっかくなので、両親の所にイルちゃんを案内する。親友だという話はしてあるので、二人も歓迎してくれた。

 

心のこもった暖かい料理を家族で楽しむ。

 

出立は明日。

 

重役達は、両親にも圧力を掛けているのが分かっている。

 

だけれど、二人は気にしないでわたしに接してくれている。

 

重圧なのは分かりきっているが。

 

それでも、今は。

 

耐えてもらうしかない。

 

悔しいけれど、他に方法も無い。

 

何より、わたしは今。

 

この世界のどん詰まりの未来を変えるために。場合によってはありとあらゆる全てを、捨てなければならないのだから。

 

 

 

メッヘンから東。

 

街道が曲がり、岩山に向けて進んでいる地点で一旦止まる。

 

此処から森に向かうのだが。森には多くの殺気が潜んでいる。それだけではない。森から出てきたらしいかなりの数の獣が、荒野を徘徊しているのが見えた。この間、緑化作業を一旦断念せざるを得なくなった。その時と同じ状況だ。

 

どうするかは決めている。

 

森まで突破。

 

其処で周囲の安全を確保した後、内部を確認。

 

内部で気にするのは、むしろ毒性のある植物。

 

ライゼンベルグなどで資料は買ってきてある。常に図鑑を開きながら、触ってはいけない植物に、常に気を配らなければならない。図鑑に載っていない植物には、絶対に触らない方が良いだろう。

 

最初は空飛ぶ荷車で突入することも考えたが。

 

それだと、大型のアードラが出現した場合対応出来ないことがある。

 

以前グリフォンをおやつにするようなアードラと遭遇した事があるが。

 

アレを例に出すまでも無く。

 

基本的に荒野に住まう獣は、際限なく巨大化する傾向があるのだ。死なない限り幾らでも巨大化する。

 

どの生物もそれについては同じらしい。

 

鉱物の声を聞き、周辺の地面下に獣がいない事は確認。

 

頷くと。

 

アングリフさんが声を張り上げた。

 

「突撃!」

 

今回の威力偵察。

 

一番危険なのは、森に入るまでと。森から出るときだ。

 

迎撃を受けるのと。

 

追撃を受けるからである。

 

アングリフさんとドロッセルさんを先頭に、全員が出る。ツヴァイちゃんには荷車を任せる。

 

引かなくても追従の指示を出せば、そのままついてきてくれるので、それで充分なのである。

 

「来るぞ!」

 

早速、キメラビーストが森から飛び出してくる。凄まじい勢いで、まるで他の何も見えていないように、まっすぐに襲いかかってくる。

 

当然特殊能力持ち。

 

走りながら、後方に生えている蛇の尻尾が、火球を乱打。

 

アリスさんが前に出ると、その火球を全て弾き返す。

 

後ろ。

 

いきなり、キメラビーストが移動していた。

 

高速移動ではない。

 

多分空間を跳んだのだ。

 

前足を、カルドさんに降り下ろそうとするが。

 

お姉ちゃんが一瞬早い。

 

至近から、キメラビーストの側頭部に矢を叩き込む。

 

頭に突き刺さった矢が、キメラビーストを大きく揺らがせるが、一瞬だけ動きが止まっただけで、また姿を消し、今度は上空。

 

其処から、多数の蛇が隕石群のごとく火球を乱射してきた。

 

だが、今度はわたしの番だ。

 

氷のブリッツコアを掲げ、発動。

 

空に向けて、強烈な冷気の波が襲いかかり。

 

空気さえ凍らせながら、キメラビーストを蹂躙する。

 

そのまま走り抜ける後方に。

 

ずたずたに傷ついたキメラビーストが墜落。

 

更に、一閃。

 

レヴィさんが黒一色の剣でとどめを刺した。

 

消耗はほぼないが。

 

いきなり空間転移を使う獣がお出迎えか。

 

これは、油断したら一瞬で誰かが死ぬ。

 

ドロッセルさんが、キメラビーストの死骸に斧を突き刺すと、そのまま引きずって走る。

 

森からの迎撃二匹目。

 

今度はアードラの中でも、翠色に輝く品種だ。

 

かなり大柄で、口を開けると同時に、音波攻撃を仕掛けてくる。

 

地面にひびが入る程の凄まじさだが。

 

前に飛び出たイルちゃんがシールドを展開。

 

弾き返す。地面に、横一線の亀裂が走る。それも、恐らくわたしの数百歩分は。

 

だが、アードラは直上に跳ぶと。

 

今度は一点に収束し、音波を放ってきた。

 

カルドさんの狙撃が間に合い、ほんのわずかに狙いが逸れる。だが地面を切り裂いた音波の一撃が、荷車とツヴァイちゃんを掠める。

 

ぞっとした。喰らったら、ひとたまりも無かった。

 

更に、鳥とはとても思えない動きで、空中でホバリングしつつ、次の音波攻撃を仕掛けに掛かるが。

 

お姉ちゃんが矢を三本同時に放つ。

 

衝撃波がアードラを掠め。

 

それを避けたにもかかわらず、アードラの翼がごっそり抉られ。

 

流石に翼を失った事にはどうにも出来ず、森の中に墜落していった。

 

「走れ!」

 

アングリフさんが叫び、此方に走り寄ってきた巨大な四つ足の、頭に角が生えている獣を斬り倒す。

 

草食獣のようだが。

 

人間には見境無く襲いかかるものだ。

 

獣とは、そういうものである。

 

ドロッセルさんが、空いている右手で、斬り倒した巨大獣を引きずり、走る中。

 

森の中に、全員が飛び込む。

 

急いで地面の声を聞き。

 

地下に何か潜んでいないか確認。

 

一応大丈夫だ。

 

いるにはいるが、殺意は無い。やはり、森の中で戦闘を行うのは、獣は好まないのである。それだけ森が大事なのだ。

 

アングリフさんが先行して、叩き落としたアードラを回収してくる。

 

ちょっと森に入っただけでこれだ。此処が禁忌の森呼ばわりされるのも納得である。普通の森でも内部では獣は大人しくなるが。出た瞬間此処まで凶暴化はしない。そうするようなら、街の周囲を森で守れない。

 

これは、森から出るときも、凄まじい追撃が待っている事は想像に難くない。それも撤退戦の方が遙かに難しいのだ。

 

さっきの音波攻撃に至っては。

 

誰かに直撃していたら、即死していただろう。

 

今でも冷や汗が出る。

 

此処は本当に禁忌の森なのだと。

 

入る前から。

 

そして入った後も。

 

わたしは思い知らされていた。

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