暗黒錬金術師伝説7 暗黒!フィリスのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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2、花と岩

フルスハイム東側の、最後の熱フィールド発生装置を展開。

 

見に来ていたフルスハイム東の自警団員達が、おおと喚声を挙げた。もう見える所まで戦略事業の土木工事が来ていたのだ。

 

これまでも、吹雪が収まっているタイミングや、それに定期便でフロッケに来ている人は知っていただろうが。

 

目に見える形で雪がみるみる溶けていく様子は。

 

それは衝撃的だろう。

 

フルスハイム東に来ていたオリヴィエさんが、自警団員に指示を出して、獣の襲撃を警戒させる。

 

人が集まっているのだ。

 

不意を襲おうとする獣はいてもおかしくない。

 

見た感じ不慣れな戦士が目立つが。

 

多分実戦経験が少ない、戦士になったばかりの者なのだろう。

 

土木作業を開始。

 

既に泥土は、わざわざフロッケに運ばず、フルスハイム側の荒野に押し出せば良い。いずれ再利用するのだし、なにしろ荒野だ。泥土を置いても、特に問題など発生しないだろう。

 

せっせか泥土を掘り出すわたしをみて、オリヴィエさんは手伝いを申し出るのではなく、獣を遠ざける作業に終始してくれている。

 

この辺りは手慣れていて有り難い。

 

わたしがこの手の作業では十人分、いや二十人分の働きをすることを理解しているし。

 

何より、此処で危険なのは、働いている者が獣に襲われることだと、一番良く理解しているからだ。

 

そのまま作業を続けていると。

 

オスカーさんが来る。

 

橋の辺りで、問題が起きたらしい。

 

かなり気むずかしい植物だと聞いていたし、別に驚くことは無い。頷くと、一段落したら行くと告げて、必要量だけ泥土を掘り出し、空飛ぶ荷車に積んで荒野に押し出した。

 

この麓の辺りまで雪が積もっているのだが、ある一点を超えると不意に雪が消える。

 

そういう奇妙な場所なのだ。フロッケがある山は。

 

故に、フルスハイム東からも、見物人が来た訳で。

 

街道は一応此処まで延びているとは言え。

 

わらわら人が集まって、獣におそわれでもしたら面倒な事になる。

 

オリヴィエさんの懸念も当然だと言えた。

 

一段落するまで四半刻、無心に鉱物が言う通り泥土を崩し続け、泥だらけになりながら作業をする。

 

「下がってください!」

 

「おう! みな、下がれ!」

 

急いで下がるグラシャラボラスさん。

 

わたしはちょっとだけつるはしで泥土を崩すと、すぐに全力で飛び下がった。

 

土に隠れていて。

 

今まで危ういバランスで残っていた大岩が、一気に転がり出てきたのだ。

 

泥で足が取られるが。

 

これくらいのはハンデにもならない。

 

そのままわたしはフルスイングして、ハルモニウムでコーティングされているつるはしの破壊力を岩に見舞う。

 

ましてや岩も、何処をつつけば崩れるかは、教えてくれるのだ。

 

ドラゴン戦で致命打を与えたわたしのつるはし捌き。

 

こんなスローな岩程度に外すものか。

 

そのまま岩を木っ端みじんに粉砕。

 

泥と岩の欠片は派手に喰らうが、別にそれは良い。

 

それよりもだ。

 

興味深いものが、岩からたくさん出てきた。

 

完全に氷のようだが。

 

冷たいだけで、溶ける様子は無い。

 

気になったので、コンテナに詰め込んでおく。後で調べれば良い。

 

流石にお姉ちゃんが来て、顔の汚れを拭きなさいと怒られたので、言われたまま泥土から上がる。

 

後はならし作業。

 

獣を警戒しつつ。

 

土を入れて、硬化剤を入れて。城壁を作って。それで街道は完成だ。少なくともこちら側は。

 

問題はライゼンベルグ側。

 

彼方は、まだ少し掛かる。何より、山の上の方にドラゴンがいるのが非常に厄介だ。一応ドラゴンの視界には入らないように、ブレスのアウトレンジ攻撃を食らわないように街道を作るが。

 

それでも、ドラゴンというのは桁外れの生物。

 

油断は出来ないと判断して良いだろう。

 

緑化をしっかり仕上げるまでは、絶対に油断する訳にはいかない。

 

アトリエに戻る前に、橋の方へ。

 

オスカーさんが、泥だらけだなと笑うが。土いじりのプロであるオスカーさんも、自身泥だらけだ。

 

「ちょっとこの土、酸味が足りないんだ」

 

「酸味、ですか?」

 

「そういうことだ。 植えた植物たちがちょっと酸味が欲しいって言っててな。 でも多すぎると駄目だぜ」

 

「……分かりました、考えて見ます」

 

ぺこりと一礼。

 

酸味か。

 

酸っぱい果物でも腐らせて植えてみるか。植物にとってはごちそうになる筈だ。でも、ただ腐らせるだけでは駄目で、むしろ錬金釜で発酵するように変質させるべきだろう。ちょっと普段とは毛色が違う作業だが。それもそれでかまわない。

 

後はアトリエで体を綺麗にすると。

 

フロッケに戻る。

 

キルシェさんは流石に作業が早く、もうアトリエに戻ってきていた。

 

「フィリス、ちょっと問題が起きた。 急いで戻った」

 

「此方もですか」

 

「此方も」

 

大まじめにキルシェさんは頷く。

 

話によると、ライゼンベルグから役人が来るらしい。つまり国家としてのラスティンの、正式な役人と言う事だ。

 

この役人が、前の長老とコネがあるらしく。

 

前の長老が出した手紙を読んで、此方に来るつもりらしい。

 

わたしはさっと取り出す。

 

公認錬金術師になったときに、貰った資料だ。

 

やってはいけないことなどが緻密に記載されている。

 

現在キルシェさんとわたしがやっているのは、文字通りの国家レベルのインフラ整備作業である。

 

公認錬金術師の鏡とでも言うべき作業であって。

 

これに関して、役人に文句を言われる筋合いはない。

 

そもそも公認錬金術師が不正を犯した場合は、ライゼンベルグでも上位にいる錬金術師が視察に来るらしく。

 

役人が来るというのは不自然だ。

 

なるほど、あの長老の最後の反撃、と言うわけだ。

 

多分嫌がらせのためだけに、己が作ったコネを活用するつもりなのだろう。

 

「それならむしろ、ぎゃふんと言わせてやりましょう」

 

「ぎゃふん?」

 

「ぐうの音も出ない、って事です。 役人が来るのは何日後ですか?」

 

「フルスハイム東でアルファ商会と話をしたときには、手紙を送った日時から計算して、後四日以内には来る筈」

 

四日か。

 

それだったら、緑化は兎も角、城壁までは仕上げられる。

 

Y字路については別に良いだろう。

 

途中の緑化も八割方終わっていて、既に安全地帯がかなりの広範囲にわたって形成されている。

 

勿論歩く分には何の問題も無い。

 

ただ獣が出る可能性があるので、護衛は必要だ。ライゼンベルグからどんな人が護衛についてくるかは分からないが。一応フロッケからも腕利きを出した方が良いだろう。

 

「グラシャラボラスさん、頼めますか?」

 

「おう、任せてくれ」

 

「後はアングリフさんもお願いします。 レヴィさん、リア姉も頼める?」

 

「ああ、良いだろう」

 

見るからに強そうな魔族。

 

更に歴戦の傭兵。

 

実際にシールドの術を使える上に、相当な腕前の剣術を誇るレヴィさん。

 

最高のスナイパーであるお姉ちゃん。

 

これだけ周囲を固めれば、ちょっとやそっとの獣に襲われた程度では、文字通りびくともする事はない。

 

問題はドラゴンだが、その監視はカルドさんにやって貰う。

 

後は、わたしが最後の熱フィールドの部分の工事を、しっかり仕上げればそれでかまわない。

 

お姉ちゃんが咳払い。

 

「キルシェさん。 温泉の方はどうなっているの?」

 

「温泉は特に問題ない。 枯れ木は普通にあるし、何時でも入れる」

 

「分かったわ。 後で此方で湯加減を確認してみるわね」

 

なるほど、接待用に準備もしておくというわけだ。

 

そして温泉にトラブルが起きると問題があるから、先に入って様子見と。

 

それについては、ツヴァイちゃんが言う。

 

「入ってみた感触だと、ヒト族には少し熱いのです」

 

「あ、もう入っていたの?」

 

「暖かくすると数字管理がはかどるので、湯は好きなのです」

 

そうか。まだ確か本格稼働はしていなかった、という話だが。

 

ただ、熱いというのなら好都合だ。

 

温い場合は調整が大変だが。

 

熱い場合は、雪でも放り込めばすぐに温く出来る。好み次第で調整が出来るだろう。

 

そう思ったのだが。

 

キルシェさんが、咳払いした。

 

「素材が余ってるから、湯温の調整を出来るように、此方で道具を作る」

 

「あれ、良いんですか?」

 

「かまわない。 これ以上、色々皆に迷惑は掛けられない。 そもそもフィリスが来てくれて、土木作業が想像以上にはかどっている。 フロッケの作業は、私がどうにかする」

 

そう言うのなら、任せるべきか。

 

流石にキルシェさんがしくじるとは思えないし。

 

ともあれ、話し合いは終わったので、わたしはお姉ちゃんと一緒に傘を差して、壁を見に行く。

 

状況は問題なし。

 

ドラゴンが此方を見ている気配はあるが。

 

今の時点で仕掛けてくる様子は無い。

 

それならば、気にしすぎることもないだろう。

 

嫌な予感がするのは。

 

役人の方だ。

 

何かとんでも無いトラップでも仕込んでいるのでは無いのか、不安が募ってならない。

 

さて、此処からどうするか。

 

一通り見終わった後。

 

アトリエに戻り、何かあったら呼ぶように自警団の人に声を掛けてから、軽く眠る事にする。

 

明日は強行軍になる。

 

一気にある程度の形にはしたい。

 

少しでも力を蓄えるためにも、今日はむしろ早めに眠った方が良いと、わたしは判断した。

 

 

 

早朝から、土木工事を急ぐ。

 

荒野に放置した泥土は、良い感触で乾いていたので、これを戻していく。その過程で硬化剤を用い。更に土台とする石材も埋め込む。

 

道はこれで問題なし。

 

後は緑化作業だが、これに関してはオスカーさんがさっさと草の種を植えてくれる。残りの日数を考えると厄介だ。栄養剤は少し強めにしようかと悩んだが、まあ其処までする必要もないだろう。

 

むしろ、普段と違う事をすると。

 

失敗する事が多い。

 

わたしはあまり器用な方ではないから、何度も練習して上手くなっていく事を心がける。そして上手くいったパターンは繰り返して使う。

 

勿論応用も用いるが。

 

それは応用の理論をきちんと理解した上で、試して使う。

 

わたしは鉱物関連に関してはギフテッド持ちかも知れないけれど。

 

例えばソフィー先生のような規格外では無い。

 

鉱物が教えてくれる以外の事は、この手のインフラ工事では絶対にやらない。

 

ましてや鉱物が、昔よりも更にはっきり教えてくれているのだ。

 

それに逆らうのは愚行だ。

 

土の状態を確認した後。

 

問題ないと判断。

 

後は城壁についてだけれども、積み上げた石材がちょっと脆い。鉱物の声を丁寧に聞きながら、細かく直していく。

 

プラティーンで補強し。

 

硬化剤を組み込む。

 

念のため、魔術での防御も掛けておくか。石材に教えて貰うまま、この辺りが良いよ、という場所に強化魔術を掛ける魔法陣を組み込み。それを複数連結させて、城壁を文字通り鉄壁にする。

 

これで多少の獣のブレスくらいはどうとでもなる。

 

少なくとも雪崩は防ぎきれる。

 

見栄えに関しては完璧とは言えないが、だが構造に関しては筋金入りだ。ドロッセルさんに実演でもして貰うか。

 

雨が降っている。

 

午後になった、と言う事だ。

 

今日からは突貫工事をすると告げてあるので、そのまま作業をする。風邪を引かないように気を付けながら、だが。

 

泥土の状態を確認しつつ。

 

今まで作った街道についてしっかり見ていく。

 

それと、Y字路の方も着手するべきだろう。視察に来た役人には、報告書は出すのだから、問題は無い。

 

ざっと見てみるが、やはり吹雪いている中出るのは危険だ。熱フィールドの発生装置を仕掛けるだけにしておこうかと思ったが、それも止める。此処で危険を冒す意味はない。徹底的にメンテナンスをする。それでかまわないだろう。

 

オスカーさんが移した植物は大体良く育っているし。後は「もうちょっと酸っぱくして欲しい」を実施するべきか。

 

アトリエに戻り、参考資料を見る。

 

栄養剤の項目を確認するが、あまり参考になりそうなものはない。

 

酸っぱいという現象について調べて見るが。

 

それについては、錬金術よりも、むしろ機械技術の方に記載があった。

 

酸とアルカリというものがあって。

 

どうやらそれぞれが、激しくものに反応するらしい。

 

何となく有害な酸だけを考えていたが。どうやら人体には、むしろアルカリの方が危険のようだ。

 

参考資料を見ながら。

 

幾つか、栄養がありそうな実を中和剤で変質させ。

 

発酵させてみる。

 

腐らせるだけだと駄目なケースが多いが。

 

発酵は有益な効果をもたらす。

 

錬金術ではそれを加速促進も出来る。

 

試作品を幾つか作って見たが。あまり良い匂いはしなかった。ただ、植物にとってのごちそうと、人間にとってのごちそうは違う。

 

ギフテッド持ちのオスカーさんに、幾つか出来たものを見せに行き。

 

オスカーさんは、すぐに現場に行く。

 

植物に呼びかけながら、早速試してみるオスカーさんだが。

 

流石はギフテッド持ち。

 

一発で正解を引き当てたようだった。

 

「これが良いみたいだな。 みんな美味しいって言って満足してる」

 

「良かった。 一つでも正解があって」

 

「他のもおいらが引き取るよ。 別の植物たちには、それはそれで違う好みがあるからな」

 

「ありがとうございます」

 

結構な金額のお駄賃をくれたので驚くが。

 

考えて見ればオスカーさんは、各地で驚きの緑化作業をしている上、自衛力まで持っている。

 

生半可な錬金術師より稼いでいる、と考えるのが自然だ。

 

後は、さっきオスカーさんに言われた肥料を増やして、今日はここまでだ。

 

アトリエに戻った後は、ゆっくり休む事にする。

 

その間。

 

役人をどう「迎え撃つ」かをずっと考えていたが。

 

結局の所、この辺りはわたしがどうこうするよりも、キルシェさんの采配次第。そして本来なら。

 

フロッケの人達が、どうするかを考えなければならないのが実情だろう。

 

元長老は面の皮が厚いというか。

 

どういう生き方をしたら、彼処まで好き勝手に。

 

いや、年老いれば衰えるのか。

 

ベッドで寝返りをうつ。

 

オレリーさんのように、年を重ねても長老として現役、しかも辣腕というケースもあるけれど。

 

此処の元長老は、特に目立った才覚も無く。

 

長老だから利益が欲しいとだだをこね。

 

挙げ句の果てにフロッケの民がどうなろうと自分だけは良ければいいと考えるにまで至った。

 

溜息が零れる。

 

わたしに出来る事は、やはり少ない。

 

こういうことは、出来る人を側に置いて。

 

意見を聞くしか無いのかも知れない。

 

中々寝付けなかったが。無理矢理にでも眠る。明日からも、まだまだやる事は幾らでもあるのだから。

 

そして案の定。

 

色々考えていたからか、寝起きは最悪である。

 

あくびをしながらベッドを出て。歯を磨いて顔を洗って朝食を取る。そういえばこういった衛生観念も、むしろエルトナの外に出てから整えるようになったのだったか。昔はもっと雑だったが、お姉ちゃんに丁寧に指導を受けたんだった。エルトナで生活する分にはかまわないが、外ではこぎれいにした方が良いと。

 

更に言うと、エルトナでは甘いお菓子なんて滅多に食べられなかったし。

 

こうやって歯を磨かないと、大変な事になるとも脅されたのだった。

 

錬金術のお薬が如何に高価か。

 

それを考えれば、甘いものをいつも食べられるという環境は。

 

案外罠なのかも知れない。

 

歯に関しても、病気が進行しすぎると、取り返しがつかない事になることもある。

 

顔を洗っても、どうしても釈然としない。

 

だが、アトリエを出るときには。

 

雑念を取り払っていた。

 

精神論の問題ではなく。

 

わたしがミスをすれば死人が出る。

 

戦略事業というのはそういうものだ。

 

補助してくれる人もいるが。

 

それに頼り切るようでは本末転倒。わたしが自力で何とかしなければならないのである。

 

まずは、フルスハイム東との接合点の作業を実施。

 

鉱物に声を聞きながら、土の状態。更には、雑草の状態を確認。

 

壁も問題が無いかを確認し。

 

細かい問題点を、丁寧に修正していく。

 

石材を削って埋め込んだり。

 

プラティーンで補強して。最終的に、何が起きても問題ないように仕上げる。

 

この辺りになると、雪崩が起きたとしても、勢いはかなり殺されている。実際雪崩が起きていても、山裾まで雪が来る事は滅多にないのを、何度か見ている。

 

城壁の高さに関しては均一にしているが。

 

此処は正直な所、其処まで神経質にならなくても良いかも知れない。

 

お姉ちゃんに声を掛けられて、壁の外側を見に行く。

 

この壁は獣を防ぐ用途もあるけれど。

 

本来は雪崩を受け止めるためのものなので。

 

内側に階段が作られていて、城壁に上がれるように設計されている。城壁の上の幅は、丁度一歩分くらいだ。

 

滑り止めもつけているので、雨がずっと降っている状態でも、転んで落ちると言う事は置きにくくなっている。

 

お姉ちゃんに言われて城壁の上に。

 

そして外側に同じように降りてみて、ああなるほどと納得。

 

一箇所、妙に土がぐずついている場所がある。

 

多分だが、吹雪になった時の雨の水が、妙に此処へ集まるようになってしまっているのだろう。

 

これだと、雑草も生えてこないかも知れない。

 

「フィリスちゃん、どうするの?」

 

「リア姉、周囲の警戒をお願い。 ちょっと地形を工夫してみる」

 

「分かったわ。 皆、聞いての通り、獣に警戒!」

 

「おう!」

 

自警団の人達が、さっと展開し。

 

お姉ちゃんが城壁の上にひょいと飛び乗ると、矢を構え。カルドさんが、側で長身銃を構えた。

 

他の場所で見張りをしているアングリフさんも気付いたようで、此方に補助要員を何人か回してくれる。

 

わたしは心強いと思いながら。

 

周囲の地面を確認。

 

鉱物と相談しながら。

 

アトリエから石材を出し。

 

何カ所かの地面に埋め込んで、水が熱フィールドの外に流れるように、導線を作った。

 

その後熱の魔術を使える魔術師を呼んで、地面に少し熱を入れて貰い。

 

水はけを確認した後、オスカーさんを呼んで、また雑草の種を植え直して貰う。

 

オスカーさんはあまりいい顔をしなかった。

 

「フィリス、これはお前のミスだな」

 

「ごめんなさい」

 

「「雑草」もみんな必死に生きているんだよ。 此処で燃やされるのも分かってる。 その代わり、彼方此方に種を運んだり、或いは子孫を残せると分かっているからおいら達に協力してくれているんだ。 その思いを無駄にしないでやってくれよな」

 

平謝りするしかない。

 

植物のことになるとオスカーさんの目の色が変わることは皆が知っているから、誰もそれに対して反論もしない。

 

勿論オスカーさんの武勇も誰もが知っているから、おちょくるような真似もしない。

 

雑草も、既に芽が出始めている場所もある。

 

それを丁寧に避けながら、オスカーさんはきちんと地面を手入れして。

 

これでよしと、満足そうに頷いた。

 

「二日後、役人がくるんだっけ? その頃にはヤキを入れて、本命の木を植えられるぞ」

 

「すみません。 重ね重ね迷惑を掛けて」

 

「誰だってミスはする。 おいらだって、悪意のある植物に、騙されそうになった事があるからな」

 

そうか。

 

そういうものなのだろう。

 

本人が直に言うと、それは強い説得力がある。

 

わたしはもう一度頭を下げると。

 

残りの作業について、進める算段を整えるのだった。

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