暗黒錬金術師伝説7 暗黒!フィリスのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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4、最果て

何度かヴェルベティスの素材になる糸にまでは金の絹糸を加工して。それで、額の汗を拭っていると。

 

アトリエの戸を誰かが叩く。

 

見るとイルちゃんだ。

 

知らない人を二人連れている。

 

いや、知らない子供と言うべきか。

 

虫のようなかぶり物をした二人組で。男の子と女の子だ。だが、何だろう。何というか、浮き世離れというか。

 

あまりにも異様な雰囲気を感じる。

 

雰囲気からして、イルちゃんはこの二人を知っている様子だが。多分良い意味で、ではないのだろう。

 

それで思い当たる。

 

多分この二人が。

 

ソフィー先生が言っていた、浮島に同行し、調査する要員だ。

 

「フィリス、いいかしら」

 

「うん、上がって」

 

「じゃあお邪魔するよ」

 

「お邪魔するわ」

 

不可思議な二人の子供は。

 

くつくつと笑いながらアトリエに入る。まるでずっと昔から、この場所を知っているかのように。アトリエの仕組みを知っても驚きさえしない。やはり錬金術師か、それに対する知識を大量に持っているか。

 

もしくは、ソフィー先生の知人か。

 

その全てかも知れない。

 

お姉ちゃんが来客と言う事でお茶を出す。

 

ここのところ、暗い話ばかりだったと、お姉ちゃんが苦笑い混じりに言うが。わたしの顔を見て、すぐに口をつぐむ。

 

明るい話では無い。

 

それを悟ったのだろう。

 

パイモンさんも来る。

 

三人がテーブルを囲むと。

 

男の子の方。

 

メクレットと名乗った子が、言う。

 

「もうソフィーから話が行っているだろうから、わざわざ詳細は説明しないよ。 浮遊島に調査に行く準備は、後どれくらいでできそうだい?」

 

「あまり待たされるのは好みじゃ無いのよねえ」

 

アトミナという女の子が焼き菓子をつまみ。

 

おいしいと満足げに、悪い笑みを浮かべる。

 

わたしは頷くと。

 

まだ少し掛かると返答した。

 

船そのものは動かせる。

 

だがヴェルベティスがまだ満足行く出来に仕上がっていない。

 

充分な出来のものを作れたら。

 

全員分の戦闘衣を造り。

 

更に、皆が身につける道具。

 

爆弾類なども更に吟味して、それから出立だ。

 

相手は邪神。

 

その実力は、この間文字通り体に、徹底的に叩き込まれた。あれ以上の実力、と言う事はないだろうが。

 

それでも、準備は徹底的にするべきだ。

 

イルちゃんもパイモンさんも、準備は丁寧にしているようで。

 

今、戦いに向けて最後の調整をしている。

 

それと、心の傷を癒やす事も必要だ。ツヴァイちゃんはまだ完全には立ち直りきれていないし。

 

少し皆には時間が必要かも知れない。

 

わたしも、正直な話、パルミラと今すぐもう一度戦えと言われたら、首を横に振る。

 

あんな存在と、もう二度とやり合いたくなどないからだ。

 

「ヴェルベティスを見せてくれる?」

 

「今は糸の段階ですが」

 

「良いわよそれで」

 

アトミナが言うので、無言でコーティングした糸を持ってくる。変質させると、最終的には美しい上品な紫になるのだが。これもまた、錬金術の神秘という奴だ。

 

ふむと、アトミナとメクレットは鼻を鳴らす。

 

そして、しばしひそひそと何かを話していたが。

 

やがて、わたしに向き直った。

 

「じゃあ、一月後に来るよ。 それまでに準備は整えておいてね」

 

「分かりました」

 

ふと気付くと。

 

二人の姿はもうなかった。

 

イルちゃんが首を横に振る。

 

「いつもああなのよ。 気にしないで」

 

「そう、だろうね」

 

「物の怪の類か、あの子供ら」

 

「多分もっとタチが悪いわ」

 

パイモンさんが呻く。イルちゃんは、ずっと前から、あの二人と関係があったらしい。人生の分岐点になるような時に現れて、色々と話をしていくそうで。あまり良い印象が無いそうである。

 

気持ちは分かる。

 

わたしも最初はソフィー先生を崇拝までしていたが。今は恐怖の対象ですらある。

 

それに関しては、仕方が無いだろう。

 

人というのは、内面まで踏み込んでみないと、その本質が分からないものだ。

 

ひたすらに綺麗な人もいるかも知れないが。

 

そんなのは例外中の例外。

 

わたしだってすっかり心は濁ってきているし。

 

イルちゃんだって、それは同じの筈だ。

 

錬金術師は。

 

いや、錬金術に深く触れれば触れるほど、知識の深奥に達することになるし。知識を覗くと言う事は。

 

知識が存在する深淵に触れると言う事だ。

 

わたしは、それで壊れてしまったとしても。

 

責めることはできない。

 

「ともあれ、一月という猶予を提示されたな。 準備をするしかあるまい」

 

「……はい」

 

「今度は前のようにはいかないわ」

 

イルちゃんが強がりを言うが。

 

分かる。

 

まだイルちゃんも、あの戦いの心の傷が癒えていない。

 

恐らく、最悪のコンディションでの戦いになる。

 

それでも負ける訳にはいかない。

 

邪神を放置する訳にはいかないし。

 

その存在が、あの禁忌の森につながっているとすれば、なおさらだ。今後何が起きるか知れたものではない。

 

見聞院に出向くと。

 

資料を徹底的に集める。

 

負けられない戦いだ。

 

準備は、あらゆる方面から、徹底的に行わなければならなかった。

 

 

 

(続)




藪をつついて蛇を出す。

とんでもない存在と遭遇しつつも、フィリスは生還。
そしてついに装甲船のアップデートに取りかかる事となります。

空を飛ぶ船へと。

神の領域は間近に迫っています。

現在本作は一章分の内容を二日に分けて投稿しています。このペースについて意見をお聞かせください。

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