暗黒錬金術師伝説7 暗黒!フィリスのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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3、山の間を

洞窟を見つける。

 

どうやらこの辺りが、お姉ちゃんの普段行動する範囲の一番外側らしい。この洞窟にも、入った事があるようだった。

 

中の事も聞く。

 

内部には、大型の蝙蝠が住み着いているほか。

 

幽霊がいると言う。

 

幽霊と言っても、その正体はよく分かっておらず。

 

本当に霊なのかは。

 

議論が分かれるそうだ。

 

いずれにしても、殆ど物理的な攻撃が通用せず、魔術で戦うしかないこと。地方にも寄るが、人間に敵対的な性格を持っていることが多いことが特徴で。殆ど共通して、人間のような姿をしておらず。

 

大体は球体で現れるそうだ。

 

魔力の塊が意思を持っている。

 

そういう存在であるためか。

 

人間が近づいてくれば攻撃するが。

 

一方、人間の集落を襲撃しに来る事は殆ど無いそうである。

 

そういえばエルトナにも墓場はあるが。

 

其処で霊が出た、という話は聞いたことがない。

 

カンテラは、実は使った事がない。

 

というのも、エルトナは薄暗いとは言え、灯りが要所にあったからだ。

 

それにわたしは夜目も利く。

 

ある程度は、闇を見渡すことも出来る。

 

これはお姉ちゃんも同じだ。

 

洞窟に入る。

 

「大きめの洞窟だと、入り口は蝙蝠の糞がうずたかく積もっていて、蛆虫が大量に湧いているそうよ」

 

「うわ、ばっちいね」

 

「この糞が肥料として役立つらしくてね。 集める専門の業者もいるらしいわ」

 

「肥料?」

 

聞いた事はあるがぴんと来ない。

 

洞窟の入り口で、前後を確認しながら、お姉ちゃんは口を閉じるように指示。

 

頷くと、わたしはお母さんから譲り受けた杖を構えた。

 

これでも魔術は得意だし。

 

何より鉱物達が周囲にいる。

 

何か獣が現れれば。

 

鉱物達が教えてくれる。

 

カンテラに火を入れると。

 

腰にくくりつけて。

 

そのまま歩く。

 

確かに、それほど広い洞窟ではないようだが。

 

だが、奥からはそれなりに鉱物の声が聞こえてくる。獣がいるとも警告してくる。

 

お姉ちゃんが、ぐっと手を横に出した。

 

事前にハンドサインは確認しているので、わたしも足を止めて、岩陰に隠れる。カンテラの明かりは抑えているけれど。向こうには見えているだろう。

 

当然戦意があったら仕掛けてくるはずだ。

 

見ると、蝙蝠だ。

 

蝙蝠自体は知っていたが。

 

何だあれ。

 

大きさにしても、この間のウサギと殆ど変わらない。

 

それが天井につり下がって、此方を見ている。

 

数は3。

 

出来れば戦いたくない相手だ。

 

「交戦回避」

 

「了解」

 

ハンドサインで会話すると。

 

カンテラの明かりを極限まで抑え、距離を取ったまま相手を迂回して、洞窟の奥へ。

 

大きめの鉱石の塊があったので、声を聞く。

 

中に結構良い水晶がある。

 

つるはしを振るって掘り出す。

 

この時、鉱石が優しく教えてくれるので。

 

どう壊せば良いかすぐに分かる。

 

それでも、わたしには相応の重労働だけれども。

 

楽である事は楽だ。

 

実際筋肉もりもりの男衆が、大汗を掻いて仕事をしているのを見ているのだ。わたしだけどれだけ楽をしていたかは、分かっているつもりだ。

 

掘り出した水晶は美しくて。

 

エルトナの名産である水晶は、この辺りの山一帯に埋もれている事がよく分かる。

 

籠に入れるけれど。

 

この作業が思った以上に大変だ。

 

荷車を造るべきかも知れない。

 

荷車一つを作るだけで全然違うはず。

 

この辺りは、ノウハウを自分で覚えろというソフィー先生の意図を感じる。教えてくれなかったからである。

 

ソフィー先生は、わたしに基礎を教えてくれるときに言った。

 

わたしの場合、側についていて何でも教えるよりも、多分自分でやった方が伸びると。

 

良く分からないけれど、わたしはギフテッドと呼ばれる人種らしく。

 

特定の才能に特化しているらしい。

 

そういう人間は、基礎だけを学んだら、後は自力で考えて行った方が伸びていくらしく。むしろ普通の人と一緒にあわせるようにやっていくと、伸びないし、色々と弊害があるらしい。

 

そういう意味では、この辺りを考えるのも。

 

わたしの旅の意味の一つなのだろう。

 

めぼしい鉱石。美しい水晶もある。わたしに優しい声をみんな掛けてくれる。

 

更にキノコ。

 

奥の方に湧き水もあったので、ちょっと見ていく。少しお魚がいたので、捕まえる。この程度なら、釣り竿もいらない。

 

後で捌いて乾かして。

 

干し魚にすれば長持ちするし。

 

或いはお肉を錬金術に使えるかも知れない。

 

蝙蝠はまだいた。

 

いずれにしても、わたし達には気付いているし。

 

お姉ちゃんも相手の間合いを見きっていた。

 

ずっと無言で、ハンドサインでやりとりをしながら洞窟の中を周る。

 

転びそうにならない事だけは嬉しい。

 

鉱石が教えてくれる。

 

わたしの周りには。

 

優しい鉱石達がたくさんいる。

 

これだけは、エルトナの中にいても、良かったと思える事だったし。

 

そして或いは、これこそがギフテッドの正体なのかも知れなかった。

 

洞窟を出る。

 

思わず息を吐いていた。

 

凄く緊張した。

 

アトリエに入ると。

 

肩で息をつく。

 

コンテナに素材を収めた後お姉ちゃんに言う。

 

「これは駄目だ。 リア姉、荷車を作ろう」

 

「フィリスちゃん、大丈夫? 結構大変よ。 本格的なものは、エルトナにも数台しかなかったでしょう。 見た目以上に複雑な構造なのよ」

 

「大丈夫、構造は分かるから」

 

「……そうね。 買うのは厳しいかもしれないわね」

 

そう。

 

エルトナにも、荷車はそう多くは無かった。

 

此処で言う荷車とは、大荷物と大重量に耐えられるもの。しかも場合によっては、戦闘時に敵の追撃を受けながら、悪路を走って平気なものを指す。車輪がついているだけの箱の事では無い。

 

エルトナで使われていた荷車も。

 

大容量の鉱石を運ぶことを前提としていたものだったし。

 

最低でも、それと同レベルの頑強さがあり。

 

そして、アトリエの入り口を見る。

 

彼処を通れるようでなければならない。

 

ソフィー先生が作ったような、全自動で動いてくれるものが最終目標だろうけれど。あれは流石に難易度が勝ちすぎる。

 

今は、頑丈で、運びやすい。

 

それだけを想定したものを作るのが最初だ。

 

それとランタン。

 

今回油式のものを用いたけれど。

 

今後は腰にくくりつけなくても良くて。

 

なおかつ即座に光量を操作できるものが欲しい。

 

戦闘になった場合、対応出来ないからだ。

 

もしあの蝙蝠達に襲われていたらと思ったら、ぞっとする。今回は蝙蝠達の機嫌が良かったから助かっただけで。

 

あの子達だって、ウサギと同じように、襲いかかってきた可能性はあるし。

 

そうなった場合、とてもランタンは無事ではいられなかっただろう。

 

バックパックや服に引火でもしたら、それこそ目も当てられない事態になる所だった。

 

この二つが、当座の目的だ。

 

まず荷車だ。

 

夜間での戦闘を想定したランタンは、後回し。そもそもわたしも、常に夜間移動する事は考えていない。

 

更に、アトリエから外を確認する限り。

 

獣がアトリエに興味を持っても。

 

アトリエに何かをしてくる様子は無い。

 

多分これは、ソフィー先生がアトリエに何か工夫を施している、と言う事なのだろう。

 

つまるところ、無理に夜移動する必要は、現時点ではない。

 

優先度は、荷車が先になる。

 

出来れば手数も増やしたいのだけれど、それは簡単にはいかないだろう。何しろ、人を雇うにしてもお金がない、のだから。

 

「まずは素材だね。 板材と車輪、車軸がいる。 車軸は二本、車輪は四つがのぞましいかな。 後引くための取っ手」

 

「車輪を四つにするの?」

 

「うん。 最終的には、ソフィー先生が作ったあの車みたいに、自動走行式にしたいし、装甲も施したいから、安定したのがいい」

 

「フィリスちゃん、考えているわね」

 

お姉ちゃんに褒めて貰ったので、少し嬉しい。

 

ただ問題は。

 

板材だ。

 

ちょっとやそっとの強度では、鉱石なんかをボトボト突っ込んだら、あっという間に壊れてしまう。

 

ゼッテルを見る。

 

これに魔法陣を書き込んで。

 

強化魔術を施す。

 

更に出来れば内側も外側も鋼版で補強する必要がある。

 

後、素材を傷つけないように。

 

一番内側は柔らかい布か何かで作るべきか。

 

それに関しては、あのウサギの毛皮を使えそうだ。

 

お洋服にするのではなく。

 

今後のもっとも大事な生命線にする。

 

錬金術で、多くの人達の生活や、この世界そのものを良くする。

 

そのためには、無駄は許されない。

 

わたしも外に出て実感した。

 

この世界は色々と厳しすぎる。

 

ソフィー先生は、目に深淵を宿していたが。あれはきっと、この世界の過酷な現実と、戦い続けてきたからだと思う。

 

獣どころか、ドラゴンや邪神とも戦い続けていたという話だし。

 

それに戦いがきれい事ではすまされないことは、私も身を以て実感している。

 

まずは、レシピをまとめる所からだ。

 

板材は現時点で手持ちにないが。

 

枯れ木を見つければ、どうにか出来るかもしれない。

 

鉱石の扱いについては。

 

どうにでもなる。

 

それに、ソフィー先生が残してくれた基礎的なレシピの中には、金属加工のヒントもあった。

 

インゴットと呼ばれる状態に鉱石を加工しておけば。

 

其処から更に加工を施すことで。

 

車軸や車輪は作れるだろう。

 

細かい部分の調整についても、鉱石と話をしながらやればいい。

 

それだけだ。

 

お姉ちゃんとも話し合いながら。

 

半日がかりでレシピをまとめる。

 

結果として。

 

相応の物資が必要なことも分かったが。

 

今わたしは。

 

出来る事から順番にやっていかなければならない。

 

今後も旅が過酷になる一方である事は分かりきっているのだから。

 

これくらい突破出来なければ。

 

生き抜くことなど到底無理だろう。

 

レシピを仕上げた後。

 

軽く眠る。

 

枯れ木については、お姉ちゃんが心当たりがある、と言う事だった。

 

アトリエについては、不審者が押し入れるような構造にはなっていない。

 

安心して眠れる事だけは。

 

救いかも知れなかった。

 

 

 

翌朝。

 

陽が昇ると同時に起きだすが。

 

どうも外が暗い。

 

お姉ちゃんに言われたまま起きだして、外に出ると。

 

水が降って来ていた。

 

わあ、と声が出る。

 

現象としては知っていた。

 

これが雨か。

 

「リア姉、これが雨!?」

 

「そうよ」

 

「わあ、雨だ!」

 

感情の制御が上手く行かない。

 

思わず歓喜に体が飛び出しそうになる。

 

濡れたら風邪を引くと言われ、そのままアトリエに引き戻される。そうか、雨に備えるための道具も、いずれ作らなければならないか。

 

しばらく楽しく雨を見ていたが。

 

体も冷えてくる。

 

ただ、それも長くは続かない。

 

やがて雨は止んだ。

 

雨が止んだ後、周囲を見回すと。

 

地面に溜まった水は。

 

彼方此方、おぞましい色に濁っていた。

 

何というか、目に悪い色で明るいのだ。極彩色、というのだろうか。

 

こういう色は、お外の事を書いている本で、とても鮮やか、という印象があったのだけれど。

 

毒々しいという感想が、そのまま沸いてくる。

 

わたしの感想は正しいはずだ。

 

鉱物達も、警告を発している。

 

そもそも鉱物達も、わたしに教えてくれることがある。

 

そのままだと危ないよ。

 

直に触っちゃ駄目。毒があるからね。

 

火の気を近づけたら駄目だからね。爆発してしまうよ。

 

布を介して触って。冷たくて手が凍り付いてしまうから。

 

そんな風に教えてくれる鉱石も珍しくない。

 

今、彼方此方に出来ている水たまりも。

 

そうわたしに、教えてくれていた。

 

「リア姉、こんな風に、雨が降るとなるの?」

 

「場所にもよるわ。 この辺りは、色々な鉱石があるから、雨が降ると毒物が露出してしまうのね」

 

「そっかあ。 危ないんだね……」

 

「飲料水は幸いたくさんあるし、気にしなくても大丈夫よ。 ただ今後の事を考えて、雨が降り出したら、水分として補給しておいても良いかもしれないわね」

 

頷く。

 

勿論雨そのものを飲むのは駄目だ。

 

生水を飲んではいけないのと同じ理由である。

 

わたしはお姉ちゃんに導かれるまま。

 

極彩色にそまった水たまりを横目に移動する。

 

もう少し東に行くと、この山だらけの地帯を抜けるらしいのだけれど。

 

まだ数日はかかる。

 

その間に。

 

板を入手したい。

 

お姉ちゃんが案内してくれたのは。

 

ちょっと狭苦しい谷のような場所。

 

水が少し豊富にあるせいか。

 

少しだけ緑があった。

 

或いは、あの緑がある地点に住んでいる邪神が。

 

前はここに住んでいたのか。それとも気まぐれで錬金術師が地面を弄ったのかもしれない。

 

ただし緑は限定的で。

 

その周辺は、茶色かった。

 

お姉ちゃんが促したので、行ってみると。

 

確かに葉っぱのない木が幾つかある。

 

でも、お姉ちゃんは丁寧に触りながら、これは駄目、これも駄目と、順番に駄目出しをしていった。

 

「どうして駄目なの?」

 

「枯れているようだけれど、まだ生きているからよ」

 

「そうなんだ」

 

「薪は完全に死んだ木を使うのが鉄則なの。 今回作る荷車にしても、それは同じ筈よ」

 

確かにそうだ。

 

やがて、一番外側にある少し大きめの木で、お姉ちゃんが止まる。

 

しばらく触ったり耳を当てたりしていたが。

 

頷いた。

 

これがいい、と言うのである。

 

後は、お姉ちゃんがナイフを振るう。

 

わたしが一抱えするくらいの太さがある木に、切れ目が走った。

 

更に跳躍したお姉ちゃんが、上の方でナイフを振るい。

 

そして軽く蹴りを叩き込む。

 

木が倒れ。

 

ずんと、地面で大きな音を立てた。

 

後は枝を全て剪定していく。

 

剪定した枝も無駄にはしない。

 

葉っぱに関しては、その辺りに残していく。

 

というか、地面を掘って埋めていった。細すぎる枝に関してもだ。

 

これらはやがて地面に帰り。

 

地面の栄養になる。

 

そういう話である。

 

「すごい、リア姉」

 

「魔術で身体能力とナイフの切れ味を上げているだけよ。 この程度の事が出来なければ、外で生きていくことは出来ないわ」

 

「う……」

 

「大丈夫、フィリスちゃんもすぐに出来るようになるからね」

 

頷く。

 

確かに生きていくためにも。

 

出来るようになら無ければならないのだ。

 

後は、木材を運ぶ。

 

一旦幾つかに切り分けた後。

 

お姉ちゃんと二人がかりでアトリエに運び込む。

 

わずかな緑を痛めるのを嫌がったのか。

 

何体かいる獣は。

 

此方に対して、仕掛けてくる事はなかったし。

 

大きな音を立てても、嫌がる事もなかった。

 

アトリエに木材を運び込み終えた後。

 

処置について聞く。

 

まず乾かす必要があるという。

 

この木は死んでいるので、乾いている可能性もあるけれど。

 

割ってみないと何とも言えないとか。

 

まず切り出した木材の一部を。

 

お姉ちゃんが真っ二つにする。

 

切り口だけではなく、全体を見て判断する必要があるからだ。

 

切り口を触り。

 

確認した所。

 

やはり少し乾燥させる必要があるようだった。

 

その後は。

 

板の作り方を教わる。

 

大きめの木をスライスするのが一般的らしいのだけれど。

 

それだとちょっとしか木材を作れない。

 

曲がっている木材を、魔術を使って伸ばして、最終的に平らにする方法があるそうだ。

 

魔術を使わなくても、同じ事が出来るらしいのだけれど。

 

時間と手間が掛かるという。

 

頷くと、わたしは魔力がしみこんだゼッテルを出してきて。

 

お姉ちゃんがいうままに魔法陣を描き、恐らくそのために用意されているアトリエの部屋に並べ、固定する。

 

お姉ちゃんと一緒に魔法陣を確認。

 

大丈夫、間違っていない。

 

そのまま板材を乗せて。

 

伸ばす。

 

板材を作っている間、木を切っていると虫が食っていることもある、百足が出てくる事もあると聞かされたけれど。

 

幸い、今回の木では。

 

そんな事もなかった。

 

魔術で加速すると。

 

最初は撓んでいた板材が。

 

見る間に平らになっていく。

 

重しを魔術で掛けつつ。

 

板材を乾燥させ、安定させているらしいのだけれど。魔術の理屈についていくのがやっとで、まだまだ分からない。

 

話によると、お姉ちゃんは矢にも魔術を乗せているらしく。

 

それで必中させているそうだ。

 

魔術が使える人間なんて珍しくも無いが。

 

お姉ちゃんは、体術も魔術も凄い。

 

そういう事である。

 

でも、それでも外では通じるとは言い難いのだろう。やっぱり厳しい世界である。

 

ある程度作業が進んだところで。

 

出来てきた木材に中和剤を塗り込み。

 

更に安定するように加工する。

 

木材に強い魔力をしみこませた後。

 

木材そのものに魔法陣を描き。

 

魔術を仕込んで、強度を上げる。これもお姉ちゃんにアドバイスを受けながら、丁寧にやっていった。

 

こうして、箱を作るまでに一日。

 

更に鉱石を加工する。

 

車軸を造り。

 

車輪と取っ手を造り。

 

組み合わせる。

 

全てが終わったときには。

 

更に二日が経過していた。

 

錬金術には、とても時間が掛かる。まだエルトナからそう離れてもいないのに、一週間以上が経過している。

 

基礎を今のうちに身につけなければならないとは言え。

 

先が思いやられる。

 

ライゼンベルグと言う、これから辿り着かなければならない場所にいくだけで、どれだけ掛かるか分からない。

 

しかもその間に。

 

最低でも三人の錬金術師に、認められなければならないのだ。

 

不安と興味が混ざる中。

 

わたしはお姉ちゃんと協力し。

 

箱をひっくり返して。

 

外側に、薄く加工したインゴットを貼り付け。魔術で固定する。本当はねじなどを使うといいらしいのだけれど。構造が複雑になればなるほど、こわれやすくなると言うので。いっそのこと、完全に固定してしまう事を選ぶ。

 

更に車軸を通すための構造を造り。

 

車軸を通して、車輪を取り付け。

 

回して、動くかを確認。

 

油を塗らないと駄目だとお姉ちゃんに言われたので。

 

言われたようにして見ると、確かにスムーズに動く。

 

だけれど、この場合、ある程度すると摩耗する。

 

何か手を考えなければならないだろう。いずれ分解して、更に高度な仕組みを取り入れなければならないかも知れない。

 

額の汗を拭いながら。

 

箱をひっくり返し。

 

取っ手を取り付ける。

 

これも固定してしまう。

 

溶接という、熱で固定する技術もあるらしいけれど。

 

魔術で一体化させるのも、あまり技術的には変わらないらしい。

 

この辺は流石に鉱山の出身者だ。わたしは如何に鉱山で暮らしていても、世間知らずであったのかを思い知らされてばかりだが。

 

内側にも板を張り。

 

予定通りウサギの毛皮を張って仕上げ。

 

毛皮の内側にゼッテルで強化の魔術を掛けて。ちょっとやそっとでは壊れないようにも仕上げた。

 

触ってみるとふかふかだ。

 

此処に油紙か何かを敷けば、しけったものが毛皮を傷めることもないだろうと言われたので、頷く。

 

痛んできたら、毛皮を取り替えてしまえばいい。

 

兎に角完成である。

 

早速動かしてみるが、これなら充分。

 

荷車そのものは重いけれど。

 

それでも荷物を背負って歩くよりも、遙かに楽である。車輪の滑りも良いし、とても使いやすい。

 

何より材料とノウハウは理解出来た。

 

次からは半分以下の時間で作る事が出来るだろう。

 

初めて。

 

本格的なものを作った気がする。

 

わたしは感動して。

 

言葉があまり出なかった。

 

お姉ちゃんは側で笑顔のまま佇んでいたが。

 

その表情は、どうしてか少し苦しそうだった。

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