暗黒錬金術師伝説7 暗黒!フィリスのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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エピローグ、破壊の錬金術師

辺りには、人間だったものが散らばっていた。

 

アダレット辺境。

 

武門の国と呼ばれるアダレットは、錬金術師の頭数が少なく、どうしても人間の支配が及ばない地域が多い。

 

そんな場所には強大な獣やドラゴンだけでは無く。

 

匪賊も多数住み着く。

 

此処は、以前のグラオ・タール周辺ほどでは無いけれど。100人以上の匪賊が集まっていた砦。

 

今、わたしが破壊する対象となっている場所だ。

 

匪賊はあらかた殺した。

 

頭から上は無事に残すように。

 

攻撃作戦を指揮したわたしは、作戦に参加した深淵の者の戦士達と、ティアナちゃんに指示。

 

ティアナちゃんは嬉々として。

 

深淵の者の戦士達は、そうしないと心を保てないというように淡々と作戦を実施し。

 

まずは見張りから消し。

 

続いてティアナちゃんが首領を一瞬で仕留め。

 

後は混乱しているところを一網打尽にすれば良かった。

 

まだ生きている、匪賊に捕らえられた人達が数名奥の牢屋から救い出されたが。皆、目は虚ろだった。

 

それはそうだろう。

 

目の前で大事な人や、家族や、或いはそうではないにしても他の人達を食い殺されたのだろうから。

 

大量に出てくる人骨。

 

中にはついさっき食べたばかりのものも出てくる。

 

調理した人肉やら内臓やらも大量に見つかった。保存食として、燻製に加工されていた。

 

人間が獣に墜ちた存在、匪賊。

 

故に此奴らは人間では無い。

 

生き残りが一人、わたしの後ろから襲いかかってきたが。

 

わたしは時を止める。

 

そして、わたしにナイフを突き刺そうとしていたそれの頭を、一瞬でもぎ取っていた。

 

時間停止を解除。

 

何が起きたか分からないうちに、匪賊は死んだ。

 

もう少し苦しめて殺してやれば良かったか。

 

いや、それでは匪賊と同じだ。首を放り投げる。他の匪賊どもの首が集められている場所と同じ所に。

 

「終わったよー」

 

「一人取りこぼし」

 

「ああ、フィリスちゃんがどうにかすると思って、残しといた。 一人くらい殺したいでしょ?」

 

「いや別に」

 

そうなのーと、ティアナちゃんは不思議そうに小首をかしげる。ティアナちゃんには不思議かも知れない。でもわたしは破壊をすることを目的としているが、殺しを楽しむつもりは無い。

 

まず助けた人達に、眠りの魔術を掛け。記憶を確認。

 

何処の誰かを確認した後、故郷に帰すべく手続きを始める。どうやら奴隷商(勿論違法だ)が匪賊に売った人もいるようで。その奴隷商はこれから消す。深淵の者でこの手の輩は片っ端から処理しているのだが。処理しても処理しても湧く。需要がある、という事である。

 

勿論どれだけ巧妙にやろうが関係など無い。

 

関係者の記憶を片っ端から覗いていくのだから。

 

拷問だの尋問だの非効率なことなどしない。嘘を吐いても分からないからである。魔術で隠蔽しようとしても、錬金術で増幅したわたしの力は、今ではドラゴンの鱗さえ砕くのだ。人間の魔術なんて、それこそ紙のように貫通する。

 

必要な情報を取り出すと、身寄りが無い人は此方で引き取り、仕事を世話するように手配。

 

更に身寄りがある人は、帰れるように手配する。

 

そしてトラウマが酷い人はそれも除去。

 

こんな環境に置かれたのだ。壊れてしまう人だって出る。ツヴァイちゃんの時は、本当に普通に生活出来るようになるまで酷い苦労をしたが。今は、こうしてそんな苦労はさせずとも済むようになっている。

 

ティアナちゃんはそのまま、奴隷商を消しに行く。

 

この手の輩は、生きていれば生きているだけ害を為す。一秒でも早く消す方が良いからである。

 

わたしは残った戦士達の前で、匪賊の頭から記憶を一つずつ引っ張り出し、順番にデータを取る。

 

他の匪賊の顔があった場合照合。

 

また、匪賊と商売をしている様な輩がいたら、それも消す対象として記録する。

 

全てが終わった後。

 

匪賊の死体は全て処理。

 

文字通りの灰燼とした。

 

これは、獣が人肉の味を覚えることを防ぐためである。

 

一方、匪賊の犠牲者の骨は近くの街の無縁墓地に、丁重に葬る。

 

この街はわたしが少し前から戦略事業を行っていて、匪賊を消す作業に入ったのもそれが理由だった。

 

ソフィー先生だって、世界の全てには手が届かないのだ。

 

わたしには、なおさら手が届く範囲が狭い。

 

街に入ると、わたしは演説台を用意。手を叩いて、人々を集める。

 

わたしが周辺の獣をあらかた駆除し、乏しかった水を近くから工事で引いてきて、情けなかった城壁を強化しドラゴンのブレスにも耐え抜くようにした実績を目の前で見ている人々は、皆すぐに集まって来た。

 

神を見る目だ。

 

神は神でも、わたしは破壊神だが。

 

匪賊を全て駆除したこと。

 

殺された人達の亡骸は持ち帰ったことを告げると、人々は泣いて喜んだが。わたしは冷たい目のまま告げる。

 

「フィリティオータ。 この映像を見なさい」

 

一瞬にして喧噪が止む。

 

街の重役の一人フィリティオータが、強ばっている中。わたしは匪賊の記憶から抽出した映像を具現化した。

 

街の情報を売り。

 

代わりに、匪賊が犠牲者から身ぐるみ剥いだ金を受け取っている。

 

此奴は匪賊と通じ。

 

貧しい人々を匪賊に売り飛ばして、自身は私腹を肥やしていたのだ。

 

見る間に暴徒と化す周囲の人達を、わたしは一喝で黙らせる。今のわたしなら、魔力を放つことで、人間を気絶させることくらい簡単だ。一喝に魔力を乗せれば、暴徒を黙らせるくらい簡単である。

 

連れてきた屈強な戦士達が、腰が抜けているフィリティオータを取り押さえ、縛り上げる。

 

そして、町外れに穴を掘り、悲鳴を上げて喚き散らしているフィリティオータをその前に座らせた。猿ぐつわを噛まされ、後ろ手に縛り上げられたフィリティオータはもがくが、深淵の者の戦士の力に勝てる筈も無い。わたしはアダレットの法を読み上げながら、告げる。

 

「処刑」

 

手慣れた手つきで、戦士が処刑用の斧でフィリティオータの首を叩き落とし。

 

そして体も続いて穴に蹴落とした。

 

熱狂は冷めた。むしろ恐怖がそれに取って代わる。

 

だが、これは必要な破壊だった。

 

此奴にも言い分はあっただろう。此奴が定期的に匪賊に生け贄を捧げなければ、街は匪賊に無差別攻撃を受けていた。

 

だが此奴は、その言い訳を盾に、弱者から生け贄に捧げていた。

 

許されることでは無い。

 

「まだこの街の中には膿が溜まっています。 全てをこれから出します」

 

さっと青ざめる重役の何人か。

 

匪賊から引っ張り出した記憶の中には、フィリティオータのような即座に処刑に値する情報だけでは無い。

 

この街の暗部に関するものが幾つもあった。

 

例えば近隣にばらまいている麻薬。

 

強い常習性を持ち、吸えばいずれ廃人になる邪悪な薬だ。

 

これを密かに栽培し、匪賊に売っていた重役がいる。

 

そうすることで街を守っていたのだと言い訳をしたいかも知れないが。

 

その麻薬が流通することで、どれだけの人が不幸になったか。

 

自分が生きるためなら他人を好きなだけ無差別に不幸にして良い。

 

そんな考えをもつ存在を生かしておく訳にはいかない。

 

更に言えば。

 

人間がそんな風に考えるから、いずれこの世界はどん詰まりの末に滅びるのだ。

 

わたしは、そんな「平均的な人間の思考」を徹底的に破壊する。

 

名前を読み上げた重役が、また順番に捕らえられる。

 

人々はもはや、破壊神を見る目でわたしを見ていた。

 

それでいい。

 

わたしは破壊の末に創造をもたらすもの。

 

この街は一度死ななければならない。エルトナと同じように。

 

そして死の先に、やっと新しい光が差す。

 

何人かは法に沿ってそのままフィリティオータに続いて処刑。そのほかは法に沿って、アダレット王都に護送。其処で法の裁きを受けさせる。なお、賄賂の類は通用しない。アダレット中枢の法曹は深淵の者が抑えている。

 

イルちゃんが来たので、引き継ぎをして、後は任せる。

 

頷くと、イルちゃんは後の始末を始めてくれた。

 

わたしは次の街へ出向くことにする。

 

ソフィー先生が始める最後の策が開始されるまで。

 

まだ少しある。

 

その少しの間だけでも。

 

わたしは破壊しなければならないものを。徹底的に破壊し尽くさなければならない。

 

 

 

      (暗黒錬金術師伝説7、暗黒!フィリスのアトリエ・完)




かくして二人の人間が世界から消えました。

二十万回以上の試行錯誤の末の結果です。

これで少しだけ世界は詰みから遠のきましたが。

まだ足りません。

更なる生け贄を求めて。世界の詰みを打開するための戦いは続くのです……

ちなみにですが。次の生け贄は、いうまでもなく「双子」です。

惨劇は暗黒!リディー&スールのアトリエに続きます。

現在本作は一章分の内容を二日に分けて投稿しています。このペースについて意見をお聞かせください。

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