暗黒錬金術師伝説7 暗黒!フィリスのアトリエ 作:dwwyakata@2024
獣人族の戦士に連れられて、街の中に入ってみて分かったけれど。
どうやら水害の被害は、橋の損壊や、川の一部が氾濫しただけではすまなかったらしい。家の屋根なども、かなり破損が目立った。
ホムが何人か来ていて。
物資をどう運ぶかの相談をしている。
これは。
かなりの修羅場だ。
殺気だった獣人族の戦士が行き交っていて、突き飛ばされそうになる。
それをお姉ちゃんが庇ってくれた。
だけれど、わたしもそれを責める気にはならなかった。
エルトナは沈滞した世界だった。
だからこういうことはまずなかった。
だが此処は違う。
外の良い面もわたしは見た。
でも、外の悪い面もたくさん見てきた。
人がいれば、当然そこでも外の悪い面が出てくる。
エルトナにも人の悪い面はあったのだ。
だったら此処でも、あって当然だろう。
少し人が行き交う所を避けて、大人しくしている。
ヒト族の戦士が、大きな荷車に、石材を積んで複数人で運んでいた。石材は荷車に結え着けられて、相当重そうだ。実際運ぶのも、汗だくでやっている。
辺りは泥だらけ。
どれだけの凄惨な災害が此処を襲ったのか。
言われなくても分かるほどだ。
見ると、死んでいる魚がうち捨てられていて。
鳥がそれをかっさらっていく。
小さな魚だけれども。
かっさらっていった鳥は、わたしと同じくらい大きかった。それが街中に来ているのである。
どれだけ今がおかしな状況なのか、それだけでも分かるほどだ。
最初に声を掛けてきた獣人が、ぼやく。
「錬金術師さんよ、殺気立っていてすまねえな」
「いえ、その」
「あんた、見習いだろ。 だけど、錬金術師ってだけで、俺たち十人よりももっと働けるんだよ。 あの頼りない先生でさえ、俺たち百人より、もっと働けているかもな」
「そんな、わたしなんて」
本当に謙遜するわたしを連れて。
悔しそうに獣人族の戦士はいうのだった。
「事実なんだ。 悔しいが、錬金術師がいないと、どうにもならない。 この街に、公認錬金術師が来てくれた時、街の奴らがどれだけ喜んだことか。 そして本当に、みるみる発展していって、真っ茶色だったその辺まで緑になっていったんだ。 今もちょっとあたふたしているが、それもすぐに収まるさ」
「そんなに優秀な人なんですか?」
「いんや、何度も言うがとにかく頼りないな。 それでも、俺たちがどれだけいてもあの先生の方が街のためになってくれる。 そういうものなんだよ」
何だか、複雑な感情が籠もった声だ。
確かにソフィー先生の圧倒的な破壊力を見た後だと、頷くしかないのかもしれない。あの人ほどではないにしても、錬金術師はそれこそ神に通じる力を持つ存在達なのだろうから。
やがて、一番大きな家に通される。中に入ると、気むずかしそうなヒト族の老人と、ホムが二人待っていた。
「長老! 戦士ラルフ、旅の錬金術師フィリスどのをお連れしました!」
「うむ、下がってくれ」
「ははっ」
ラルフと呼ばれた戦士が下がる。
わたしとお姉ちゃんだけが残った。
結局ラルフさんと互いに名乗り合う事はなかった。
あの忙しい中だ。
仕方が無いだろう。
長老とホムは名乗ってくれた。これは、錬金術師の力が貴重で、これから細かい打ち合わせをしなければならないからだろう。なお、腰も低かった。それだけ今の状態が大変なのだと、わたしにはすぐ分かった。
「見ての通り、昨晩の水害で今このメッヘンの街は大変な事になっている。 旅の途中だと言う事はお見受けするが、出来れば力を貸していただきたい」
「頼むのです」
「お願いしますのです」
老人とホム達に、頭を下げられる。
わたしは思わず真っ赤になりそうになるが。
お姉ちゃんが、咳払いした。
「この子はまだ見習いです。 出来る事は限られますが、それでもよろしいのですか?」
「構いません。 うちにいるディオンどのという公認錬金術師も見習いですが、恐らくさっきのラルフに言われたのではありませんか? 錬金術師が一人いるだけで、我等など何人いてもできぬ仕事ができるのです」
「……リア姉、やるよ」
「分かったわ。 やってみなさい」
今は、推薦状どころじゃない。
やるしかないだろう。
まず、何ができるかを考える。
順番にやっていく必要がある。
「それでは、ちょっと空いている場所がありますか。 ちょっと広めの庭くらいでいいんです」
「はあ、それで何をするのです」
「見れば分かります」
老人に言われて、重役らしいホムが、庭に案内してくれる。
長老宅だけあって広いが、今は人が行き交っていた。
ホムが声を掛けて、場所を空けるようにと指示。
人々も、此方が錬金術師とみたのか、素直に従ってくれた。
どれだけ錬金術師の影響力が大きいのか。
一目で分かってしまう。
怖くさえあった。
「それで何を」
「アトリエを建てます」
「!?」
アトリエを展開。
文字通り、ぽんと現れたテントを見て、重役のホムは驚き。
そして中に入って、更に驚いた。
「こ、これは貴方が作ったものなのです!?」
「いえ、わたしの自慢の先生がくれたものです。 それで、何を作れば良いですか? お薬ですか?」
「薬、そうなのです。 もしも作れるのなら、幾らでも。 けが人がいて、既にディオン先生の薬は使い切ってしまっているのです」
「わかりました。 すぐに提供します」
売り物にならない、と分かっているものも含めて。
すぐに全てコンテナから出してくる。
最低限の、自衛用の薬だけを残して。
それ以外は全て渡してしまう。
効果については、実際に手を切って。
薬を塗って、見せた。
二度目だ。
前ほど怖くは無かった。
痛いのに代わりは無かったが。
それを見ると。
ホムの重役はもう一度驚き。
すぐに長老の所に戻っていった。
わたしはその間に。
レシピを引っ張り出す。
基本的なお薬の作り方については、幾つか教わっている。怪我を治す薬だけではなく、化膿止めもある。
残念ながら、わたしの技量では、千切れた腕をつなげたり。
或いは死んだばかりであれば息を吹き返すような薬は作れないけれど。
それでも、すぐに薬の生産体制に入る。
幸い水はある。
水害の後だけれども、水に関してはそもそもコンテナに蒸留水が大量に確保してあるし。
街にもある程度水があるようだ。
長老がすぐに重役と一緒に戻ってきた。テントの中に入って、長老は驚いて、はげ上がった頭からカツラがちょっとずれた。それは可哀想なので、見なかったことにする。
「これを全部譲っていただけるのか」
「その、そんなお薬でいいんですか。 わたしはまだ見習いで、腕の方も……」
「いや、本当に助かる! 言い値で買い取らせていただく!」
「足りない分もこれから作ります。 指示をお願いします」
長老が、すぐにホムの重役に頷き。
重役が、素早く計算。
流石は数字に強いホムだ。
お姉ちゃんが、指示された分量を見て、眉をひそめる。ただし、値段には納得しているようだ。
耳打ちされる。
「アルファ商会の適正価格の二割増しで買い取るつもりの様子よ。 そのまま受けなさい」
「駄目だよリア姉。 こんな困っている人達に、そんな事出来ない」
「こういう場合は……」
「駄目。 アルファ商会の適性値段でいいから」
嘆息するお姉ちゃん。
そして、その旨を伝えると、更に長老は驚いたようで。涙さえ拭っていた。
すぐに在庫を引き渡した。
お金は前金で半分渡してくれる。
ずっしりと言う程の金額だった。
こんなお金、見た事も無い。
エルトナに戻れば、何年も寝て暮らせるのではあるまいか。
すぐに調合を始める。
幸い素材はいくらでもあるし。
旅の途中、暇を見ては調合はして来たのだ。
どんどん良いものを作れるようになって来ている。
すぐに山師の薬二十セットを作成。
汗を拭いながら、次に取りかかる。
化膿止め。
熱冷まし。
消毒薬。
必要なものはいくらでもある。
ホムの重役が来て、進捗を見に来たので、外を見ると、もう真っ暗だった。お姉ちゃんにも手伝って貰って仕事をしていたのだけれど。いつの間にかそんな事になっていたのか。
そして、驚いたのは。
あのレヴィさんもいることだった。
前は何だか黒っぽくて何だか妙な美意識に包まれた格好をしていたのだけれど。
今は凄く動きやすい、粗末な服を着ている。
それでも、態度は同じだったが。
そういえば、前にあった時。
先の街に行っていると言っていた。そのまま水害に巻き込まれ、手伝っていたのだろう。
「お薬、追加分は此方です。 確認を」
「分かりましたのです。 ……品質も問題ないようですね。 アルファ商会で流通している価格通りに買い取らせていただくのです」
「はい、お願いします」
「それではレヴィどの。 フィリスどののお手伝いに回って欲しいのです」
高笑いしながら。
レヴィさんはよかろうと宣う。
格好が泥だらけなので。
お姉ちゃんが眉をひそめた。
重役のホムがすぐにその場を去ると。
早速お姉ちゃんが文句を言う。
「ちょっと、その泥だらけの格好は何とかしてくださるかしら」
「見ての通りでな、外は今暴風の後のごとく大変なのだ。 いや、実際に暴風雨の後だったな、ふはははは。 我が漆黒たる普段の荷物は宿に置いてきてある。 幸いこの街には、置き引きをするような低劣な人間はいないでな、それは安心して良いだろう」
「はあ、それは分かったのですが」
「それで何を手伝えば良い。 力仕事ならするぞ」
わたしは少し悩んだ後。
おなかがすいている事に気付いた。
お姉ちゃんと一緒に、料理をして欲しいと頼むと。
むしろレヴィさんは生き生きとした様子で頷いた。
化膿止めを作り始め。
そしてそれが終わって、蒸留水で釜を洗っている頃に、レヴィさんはある程度身支度を調えて。
料理を持って戻ってきた。
不満そうなお姉ちゃんと裏腹に。
料理はとても美味しそうだった。
「これ、お姉ちゃん、今こんなに凄いの食べてる場合じゃ……」
「作ったの、そっちの変な人よ」
「ふはははは、我が漆黒の装束と意思を褒められている、と思っておこう」
「ええと、はい」
よく分からないが。
とにかく食べて見ると。
とても美味しい。
話を聞くと、最初は料理の腕を振るって、被災地を助けていたらしいのだが。
こんな豪華な料理を作るよりも、力仕事を頼むと言われ。
しぶしぶ美しくない仕事をしていたのだとか。
不満を聞かされるが。
料理は文句なしの味だ。
お姉ちゃんのより美味しいかも知れない。
「ひょっとして貴方、本職かしら」
「俺は風のごとく彼方此方を流転してきた。 故に生きるために必要な事はあらかた身につけている。 それだけのことだ」
「……」
お姉ちゃんの視線が怖い。
レヴィさんは何処吹く風だが。
ただ、美味しかったし、元気も出た。
リストにある薬は、もうあらかた出来たので、多分次に取りかかれるだろう。この街の錬金術師と連携して、復興を急ぐことが出来る筈だ。
お姉ちゃんが、力仕事をレヴィさんと分担しながら、話をしている。
「疫病が流行ると厄介よ。 大丈夫そう?」
「心配いらぬ。 ひょろっとしていても、この街の錬金術師は有能だ。 疫病の特効薬は備えがあるそうだ」
「そう。 それならば良いのだけれど」
「だがそれも、街の復興が遅れればどうなるか分からぬ。 俺も野に住まう野獣が如き疫病の脅威は熟知しているつもりだ」
ぎすぎすはしているが。
会話は成立している様子だ。
ならばよし、とするべきだろう。
「リア姉、最後の分出来たよ」
「ならば、私……」
「いや、俺が届けてこよう。 それよりも、長老に直に話を聞いてくるべきではないのかな?」
「……リア姉、お届けはレヴィさんに頼もう」
嘆息するお姉ちゃん。
本当に嫌そうだ。
荷車を貸す。
すぐにレヴィさんは、お薬を運んでいった。
わたしはというと、長老の所に行く。
ほぼ丸一日が経過していた。
良く思い出すと寝ていない気がするが。
しかしながら、こればかりは仕方が無いだろう。夜通しでの仕事をしないと、とても追いつかない状況だったのだから。
長老も起きていたが。
かなり疲れているようだった。
カツラがずれかけているが。
それは指摘しないでおく。
「おおフィリスどの。 薬は予想以上の効き目で、助かりましたぞ。 流れの錬金術師だと、もっと酷い薬を出してくるものが多いのですが、少なくとも商業ラインに乗せられる薬である事は確認済みです。 助かりました」
「はい。 他にやる事はありますか」
「力仕事は男衆がやります。 後はそうですな。 もしも良ければ、岩が一つ、水害の時に街の外壁に激突して、そのままなのです。 それを壊せますか」
「見に行きます」
ラルフというあの獣人族の戦士が来て、案内してくれる。
一緒に歩きながら。
ラルフさんは褒めてくれた。
「どうして、全然ひよっこじゃねえじゃねえか。 うちの公認錬金術師ほどじゃないが、きちんとアルファ商会が持ってくる薬と同じくらいは効いたぞ。 本当に助かった」
「はい、ありがとうございます。 先生が、凄い人だったので……」
「そうか。 やっぱり凄い師匠だと違うよな……」
前より、態度が明らかに柔らかくなっている。
修羅場も一段落したようで。
休みに入っている人も見え始めていた。
だが、水はけが良くない。
まだ彼方此方に、不衛生な水たまりが散見された。早めに処置しないと、本当に良くない事が起きるかも知れない。
だが、まずは依頼されたことをする。
街の外側には、全てを覆っているわけではないが、何カ所かに城壁があり。
その一つ。
街の東側にある城壁に、川から流れてきたらしい大岩が突っ込んでいた。
城壁を崩してはいないが、貫通して、顔を街の中に出している。
駆け寄ると、わたしは鉱物の声を聞く。
なるほど。
そういうことか。
「ラルフさん、ちょっと難しいです。 岩を壊すのは簡単ですけれど、城壁も崩れます」
「ああ、それはもう仕方がねえ。 この城壁は直す予定だ。 いつになったら直せるかは分からんが、な」
「そうですか、それなら」
どこから崩せば安全か。
鉱石に聞きながら、私はつるはしを出す。
そして、振るった。
まず最初に、城壁の一角を。
内側から外側に崩す。
脆くなっている城壁は、数度つるはしを振るうだけで崩れ、外側に音を立てて倒れていった。
巻き込まれたら命がない。
鉱物の声を聞けて、本当に良かったと思う。
驚いた様子のラルフさんに、野次馬を遠ざけるように頼み。
更に二箇所。
城壁を崩す。
鉱物が教えてくれるのもあるけれど。
この大岩が突っ込んだことで。
構造そのものが駄目になっていて。
ちょっと力を加えるだけで、壊れる状態になってしまっているのだ。だからわたしの細腕でも崩せる。
三箇所で城壁を崩したことで。
崩落した石材の中に。
でんと大きな岩が鎮座している状況になった。
周囲には人混みが出来ているが。
わたしは少し岩の周りを回りながら、お姉ちゃんと話す。
「この上に上がりたいんだけれど、いい?」
「大丈夫?」
「えっと、ぱっくり割れると思うから、そのすぐ後に助けてくれる?」
「発破は?」
首を横に振る。
この岩を無理に壊すと。
多分まだ無事な城壁まで駄目になる。
岩の下に発破を仕掛けてドカンという手が一番手っ取り早いのは事実なのだけれども。
それはそれ。
最終手段だ。
岩の上に押し上げて貰って。
つるはしを振るう。
手応えあり。
一度、二度。そして十度を超えた頃。
岩が左右に、綺麗に割れた。
お姉ちゃんが跳躍し。
わたしを抱えて着地。
降ろしてくれた。
おおと、声が上がり。
拍手が起きる。
ちょっと嬉しいけれど。まだまだだ。
更に作業を進める。真っ二つに割った大岩を、複数に分割していく。鉱石の声が聞こえるから、どこをどうつつけば割れるか、分かるのだ。
順番に岩を崩していくが。
二度目以降は、もうお姉ちゃんの手助けはいらなかった。
やがて、完全に無害なレベルまで粉々にしたときは。
また夜が来ていた。
流石にへとへとだ。
もう足腰が立たないので。
すぐにアトリエに戻る。
レヴィさんがお料理を作ってくれていたけれど。
疲れ切っているからか。
あまり味がしなかった。
一晩眠ってから、長老の所に顔を出す。
まだ疲れが取れないが。
街の復旧は急いだ方が良い。
お姉ちゃんが言っていた。
疫病というのがあると。
街があまりに不衛生だったり、或いは旅人によって持ち込まれたりして、流行り出す恐怖の病気。
もしも運が悪いと。
街が全滅することもあると言う。
また、不衛生な状態だと。
助かる人が助からない事も良く起きるそうだ。
それならば、可能な限り急いで。
復旧を一段落させなければならない。
長老の所に出ると。
街に入った時に見かけた、若い男性の錬金術師らしい人がいた。この人が、ディオンさんだろうか。
「おお、ディオンどの。 此方がフィリスどのだ」
「はじめまして。 僕の手ではとてもではないが力が足りなかった所を、色々助かったよ」
「いえ、此方こそ、その。 役に立てなくて」
謙遜されたので、こっちも謙遜してしまう。
実は、お姉ちゃんは、わたしが寝ている間に様子を見に行き。
この人の薬が、それこそ千切れた手足をつなげるレベルのものだと確認してきていたようだ。
要するに、この人は。
今のわたしなんかよりずっと腕の立つ錬金術師、ということである。
軽く話をする。
今は推薦状どころではない。
まず必要なのは、この街を落ち着かせることだ。
「復旧に必要な事なら何でもします。 わたしに出来る範囲の事なら、ですけれど」
「本当に済まない。 本当なら、公認錬金術師の僕がするべき事なのに」
「いえ、わたしも公認錬金術師になるには、経験を積まなければならないので」
「ふむ……」
長老とディオンさんが話し合う。
そして、結論を出したようだった。
「うちの戦士を何人か出すので、近場で街を伺っている獣の群れを駆除してきてくれないだろうか」
「獣の駆除、ですか」
「すまない、まだ街の後片付けで精一杯なんだ。 僕は荒事が殆ど出来なくて、公認錬金術師になるのにも三回も試験を落ちた落ちこぼれでね」
寂しそうにディオンさんが言う。
何でも、ライゼンベルグにいくのも、傭兵を雇って護衛して貰い、必死の思いだったそうである。
ライゼンベルグに到着してからは離れず。
其処でずっと暮らしながら、試験を受けては落ち、を繰り返し。
やっと試験に合格して、この街に落ち着いたのだとか。
戦闘はまったく駄目、というのは何となく分かる。
鉱山の筋肉もりもりの男衆どころか。
比較対象がホムに思える程だ。
でも、この人はわたし以上の薬を作るし。
ラルフさんいわく、自分達百人分以上の働きをするとか。
錬金術師とは。
そういう存在なのだろう。
わたしも荒事にはまったく自信は無いが。
お姉ちゃんもいる。
レヴィさんも手伝ってくれれば。
何とかなるかも知れない。
「分かりました。 やってみます」
「お願いするよ。 本当に心苦しいが」
「いえ、こんなの……」
一人であのぷにぷにと戦った時の恐怖に比べれば、何でもない。
外に出ると、レヴィさんと、ラルフさん。
後何人かの戦士が来ていた。
お姉ちゃんが、手を叩いて、これから獣の討伐に出る事を告げる。
わたしを見て不安そうにする戦士もいたが。
ラルフさんが、わたしを剛力無双で、城壁に食い込んでいた岩をつるはし一つで壊したと説明すると。
流石錬金術師だと、みんな納得してくれた。
なんでだかよく分からないが。
納得してくれたのなら、後はスムーズに進めるだけだ。
まず状況を見るべきだろう。
レヴィさんが、不意にいつもとは違う口調で言う。
「事前に偵察したが、相手は十体以上の肉食獣だ。 まともに戦うと死人が出るぞ」
「……発破を使います」
「誘き寄せて一網打尽にするんだな」
「はい」
囮はお姉ちゃんがやるという。
お姉ちゃんは何種類かの魔術を使えて、その中には身体強化の魔術もある。
わたしはアトリエに戻ると。
現在持っている、岩を破壊するための。
つまり戦術用ではなく。
戦略用の発破を、五本。
取り出してきた。
現在本作は一章分の内容を二日に分けて投稿しています。このペースについて意見をお聞かせください。
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このままでいい
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一日で一章がいい
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更に分割して欲しい