暗黒錬金術師伝説7 暗黒!フィリスのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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4、月影の下で

空間が歪み。

 

姿を見せる数人の人影。

 

待っていたあたしは。腰掛けていた岩から立ち上がる。

 

「ソフィー様。 ただいま戻りました」

 

「戻りました!」

 

満面の笑みを浮かべているティアナ。

 

今回は、複数人による調査任務に出て貰った。

 

ティアナは基本的に、少人数、もしくは単独での隠密任務に向いている戦士だ。少数、特に一人で戦う方が戦果を上げられるし。何よりも、いわゆるコラテラルダメージを減らせる。単独の戦士としての実力は、既にこの年で深淵の者の幹部に認められる程である。

 

良くしたもので、深淵の者の戦士達の間でも、ティアナは首狩りの鬼神と呼ばれて怖れられているらしい。

 

相手が匪賊とは言え。

 

無邪気に殺戮を繰り返す様子は。

 

恐怖を買うに充分だ。

 

まして深淵の者の本部にあるティアナ用の部屋には。

 

串刺しにし、防腐処置をした「コレクション」が、ずらりと数百人分、いやそれ以上並んでいるのだから。そして壁には、説明を受けたがあたしでも良く理解出来ない模様がたくさん描かれているのである。部屋に入った者が体調を崩したという噂もあるが、まあ無理もないだろう。

 

今回の作戦指揮をしたのは、深淵の者に属する錬金術師の一人、ヒュペリオン。深淵の者に古くから所属する「先輩」ではあるのだが。あたしには敬語を使う。賢者の石を作り出したあたしを、賢者と呼ぶに相応しい錬金術師と認めているから、だそうだ。あたしもその敬意を無にしないように、ヒュペリオンには相応の敬意を払って対応している。敬語は使わなくて良いと言われているのでそうしているが、くだらない任務を頼んだりはしない。重要任務にだけ出て貰っている。実際それだけの実力がある錬金術師だ。

 

此処は、ドナの森の東。

 

昔、ある街が栄えた遺跡だ。

 

今回は、その遺跡の地下の実態調査をして貰った。

 

プラフタも来たので、状況の説明を受ける。

 

「やはり地下にはかなりの数のネームドがいます。 この遺跡は、封印してしまった方が良いでしょう」

 

「確かに一理あるね。 だけれども、それには惜しいんだよね」

 

「しかしながら、現在この遺跡に住み着いているネームドの実力は、下位のドラゴンに匹敵する者だけでも複数が確認されています。 此処で討伐されたという邪神の力が拡散した結果でしょう」

 

この街は。

 

およそ280年前。

 

邪神によって滅ぼされた。

 

近隣の街も脅かした邪神は、ラスティンが総力戦を挑み、多数の被害を出しながらもかろうじて討伐された。

 

本来はこれほどの邪神を滅ぼすまで戦力を消耗することは、ラスティンもまずしないのだが。

 

そもそもの問題として、ラスティンの中枢都市の一つ、フルスハイムがこの街の至近にある。今も存在するこの大都市フルスハイムを潰される事は、ラスティンにとっても死活問題だったのだ。

 

このためラスティンはライゼンベルグにいる者も含め当時一線級だった錬金術師を総動員。

 

更に深淵の者も援軍を密かに出し。

 

此処に現れた邪神、「虹神ウロボロス」を屠ったのである。多大な被害を出し、当時の一線級の錬金術師の過半を失いながら。

 

だが虹神の力は拡散し。

 

多数の獣をネームドに変え。

 

そいつらは各地に拡散。

 

その一部が、現在この地下に多数潜んでいる、というわけだ。

 

「地上に出てきそうなのは」

 

「今の時点では確認できません。 しかしながら、地下は文字通りの魔境。 通常の獣も、相当に凶暴化しておりまして」

 

「地図は?」

 

ヒュペリオンが魔術を展開。

 

プラフタと一緒に確認する。

 

思ったより狭いが。

 

故に戦いになると、崩落する可能性が高い、か。

 

ならばいっそのこと、此処はあたしが出るのも良いだろう。

 

「いいよ、みんなは此処まで。 あたしが間引いてくる」

 

「護衛につきます」

 

「んー、そうだね。 ティアナちゃん、来てくれる?」

 

「分かりました!」

 

人数が多いと守らなければならなくなる人員が増える。

 

この近くを、恐らく近々フィリスが通過する。

 

その時に、生半可な錬金術師が対抗できないようなネームドと正面衝突したら困る。

 

世界の可能性が摘まれることは。

 

避けなければならないのだ。

 

出るのはあたしとプラフタ、それにティアナだけでいい。

 

他の皆は深淵の者本部に戻らせる。

 

ティアナは嬉しそうだ。目をきらっきら輝かせている。

 

「人以外を斬るの久しぶりです! ソフィーさん、斬るときの手応えがあるとすっごく嬉しいです! 後、首は貰っても良いですか?」

 

「いいけど、串刺しにして並べるの?」

 

「はい!」

 

「うふふ、可愛い子だね」

 

満面の笑顔で即答か。まあそれもいいだろう。

 

この子は有能な戦士だ。そしていずれ世界を担う人材の一人になる。

 

狂っている、などと言うことはどうでも良い。

 

この世界は、実力者を集めなければ、打破できない。

 

錬金術師以外の実力者も多数必要だ。

 

世界は今まで。

 

人材の育成を怠りすぎた。

 

なおティアナには、何段階かに分けてリミッターを掛けられる剣を渡している。そのリミッターはあたしの意思で解除できる。今回は、最大限の二段階下まで解除。まあこれくらいで大丈夫だろう。

 

プラフタはあたしを最近、悲しそうな目で見るようになった。モニカのように。

 

だが、この世界を変えるためには、手段など選んでいられないのは、プラフタも知っている筈。

 

何を悲しむ事があるか。

 

「さて、害獣駆除に出向こうか」

 

立ち上がると。

 

あたしは、鏖殺という渾名がすっかり定着した、世界の変革者としての笑みを浮かべていた。

 

 

 

(続)




公認錬金術師から推薦状を貰ったフィリス。
確実に公認錬金術師へ近付いたことになります。

しかしその程度では及びもつかない問題が世界では起きていて。
今にも全てを飲み込もうとしているのでした。

現在本作は一章分の内容を二日に分けて投稿しています。このペースについて意見をお聞かせください。

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