暗黒錬金術師伝説7 暗黒!フィリスのアトリエ   作:dwwyakata@2024

35 / 150
4、緑化開始

二日ほど休憩を入れて。

 

またオレリーさんの所に呼び出された。

 

試験は不合格、とされるかと思ったのだけれど。

 

むしろオレリーさんは、継続を口にした。

 

驚くわたしに。

 

オレリーさんは言う。

 

「特級の例外的な人間は除くとして。 この世界に住んでいる化け物は、基本的に人間の手には負えない相手だよ」

 

そんな事をオレリーさんがいう。

 

錬金術師としてもトップクラスの筈のこの人が、である。

 

ドラゴンや邪神を倒しているだろうに。

 

だが、それを見越してか。

 

オレリーさんは更に追加でわたしに言った。

 

「私が倒した邪神は最下級のエレメンタルと呼ばれる個体でね。 名前を持っているような邪神を倒せるのは化け物しかいないね。 公認錬金術師が束になっても基本は勝てる相手じゃない。 ドラゴンも、せいぜい中級程度までしか相手にするのは無理だ」

 

「ラスティンで十指に入るというオレリーさんがですか!?」

 

「そうだよ。 私では手に負えないような相手を、片手間で倒すような化け物もいるにはいるがね、そいつはもう人間と呼んで良いかよく分からないね」

 

何だろう。

 

一瞬、今の言葉に。

 

ソフィー先生の事が浮かんだ。

 

でも、ソフィー先生の本当の実力を、わたしは知らない。

 

オレリーさんより上なのだろうか。

 

もしも、ソフィー先生が、その「化け物」だったら。

 

何か、とても嫌な予感がする。

 

「いずれにしても撤退の判断は正しかった。 緑化については継続して実施しな」

 

「分かりました。 すぐに取りかかります」

 

「ああ」

 

わたしはほっと胸をなで下ろしながら、オレリーさんのアトリエを後にする。

 

何だろう。

 

とても嫌な予感がする。

 

ソフィー先生はわたしにチャンスをくれた。

 

でも、もしもそれが。

 

何かの意図があっての事だとしたら。

 

そういえば、お姉ちゃんの態度も何だかおかしかった気がする。

 

何か、とても嫌な予感が。

 

消えてくれなかった。

 

 

 

あたしは手をかざして様子を確認し。

 

フィリスちゃんがドナを出てから。オレリーの所に出向く。

 

オレリーはあたしを見ると、露骨に嫌そうな顔をした。

 

「あんたの仕業だろう、鏖殺」

 

「ふふ、どうしてそう思います?」

 

「タイミングが悪すぎるね。 そもそもあの遺跡の内部にいるネームドは、滅多な事では出てこない。 しかも手負いの個体が、わざわざあのタイミングで、どうしてフィリスのいるキャンプを襲撃する?」

 

その通りだ。だが、これは事故だ。

 

しかし、事故を利用したのも事実だ。

 

「少し前に、あの遺跡の実態調査をしたんですよ。 そうしたら、想像以上の数のネームドが潜んでいましてね」

 

「それで?」

 

「全て処理しました」

 

「……そうかい。 流石の化け物ぶりだよ」

 

ただ、一匹逃れた者がいた。

 

だからそれを利用した。

 

フィリスちゃんの成長を最大速度まで引き上げるために。

 

この世界には時間がない。

 

未来もない。

 

そう猶予はないことは、あたし自身が一番良く知っている。

 

人材を見つけたら育てなければならない。

 

どんな手段を使ってでも、だ。

 

「まさか、フルスハイムの竜巻もあんたの仕業じゃないだろうね」

 

「あれは機嫌が悪い上級ドラゴンの仕業ですよ。 いずれ処理に行きますが、今の時点では街に被害が出ないようにあたしが抑えています。 それで充分では?」

 

「反吐が出る」

 

「ふふ、そうですか」

 

ひらひらと手を振ってから、アトリエを出る。

 

敢えて教えておいたのは。

 

この世界に未来がないことを実感させるため。

 

あたしが此処まで動かないといけないほど。

 

事態が切迫していることを知らしめるためだ。

 

アトリエの外で待っていたプラフタと合流。そのタイミングで伝令が来る。

 

伝令は、一見するとひげ面のおっさんだが。

 

それは擬態の結果だ。

 

中身はそもそも人間でさえない。

 

「伝令。 アトミナ様とメクレット様より、ソフィー様に」

 

「聞かせて」

 

指を鳴らして防音の魔術を展開。

 

錬金術の道具の助けで、指を鳴らすだけで、どれだけ優れた魔術師でも展開に詠唱が必要な魔術を発動出来るようにしている。

 

「イルメリアと接触。 以降監視を実施する、とのことです」

 

「了解。 此方は予定通りとの返答をお願いね」

 

「御意」

 

伝令がかき消える。

 

あたしはプラフタを促すと、自身のアトリエに戻る。

 

しばらくは様子見だ。

 

状況が変わったら、その時はまた出る。

 

フィリスちゃんの監視はティアナに任せてある。後はしばらく、シミュレーションに力を入れるべきだろう。

 

あたしはそう判断していた。

 

 

 

(続)




ライゼンブルグでもトップクラスの公認錬金術師オレリーさん。
彼女の厳しい要求にフィリスは苦労しますが、それでも必死に食いついていきます。
そして、この世界で「道を作る事の困難さ」が浮き彫りになっていきます。

現在本作は一章分の内容を二日に分けて投稿しています。このペースについて意見をお聞かせください。

  • このままでいい
  • 一日で一章がいい
  • 更に分割して欲しい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。