暗黒錬金術師伝説7 暗黒!フィリスのアトリエ 作:dwwyakata@2024
寄ってきた霊を、素手でオレリーが握りつぶす。
きゅっという、悲鳴とも何とも言えない音を立てて、霊が消えた。
既に誰も喋らない状況。
いつどこからネームドが現れるか分からないからだ。
だがそもそも、オレリー自身が、強力な錬金術の装備で全身を固めている。
七十を超えた身で、現役の戦士以上に動けるのはそれが故で。
自動回復、防御、身体能力強化、それに敵察知、ありとあらゆる魔術が人間の限界を遙かに超えて同時発動しており。
現時点で既に数日この遺跡を彷徨いているにもかかわらず。
一度も奇襲を受けていない。
一度などは、壁に擬態していた獣を、拳一撃で貫き。
そのまま焼き払った程である。
オレリーは元々杖を使う戦闘スタイルではなく。
徒手空拳で戦い。
拳に魔術を込めて敵を焼き尽くすのを得意としていたのだ。
この程度は朝飯前である。
周囲の戦士達に、ハンドサインで更に進むように指示。
先頭をベリアルが行く。
ベリアル達にも、オレリーから、錬金術による強力な装備を渡している。現時点で、苦労するネームドには遭遇していない。普通の獣などそれこそ鎧柚一触である。
崩れた家。
潰れた壁。
崩壊したインフラ。
オレリーは周囲を見ながら、いずれこれを全て更地にし。
使える資源は回収して。
或いは街を再建しよう、と考えていた。
この街は、既に死んだが。
その死体は、まだまだ此処に、使える資源として残っている。
虹神ウロボロスの怨念とも言えるネームドを悉く駆除した後は。
街を再建すれば、フルスハイムとドナの間にある、中間地点として良い集落になる筈だ。
ただしドラゴンの襲撃を警戒しなければならない。
相応の戦力が整うまでは、自殺行為だろう。
オレリーも噂には聞いているが。
どうも世界の人間の数は、此処ずっと、増減していないらしい。
この500年ほどで、小規模集落に点々としていた人間が。
大規模な街などでまとまって暮らす傾向が増えてきたようだが。
それでもドラゴンによって街が襲撃され、多数の犠牲者を出す事が珍しくもない。
ドラゴンはドナにも何度か来た。
他の獣と違って、ドナには積極的に襲いかかってきた。
だから殺したが。
勝てるドラゴンだった。それだけだ。
もしも勝てないような。
それこそ、上級のドラゴンが来たら。
ドナでもどうにもならないだろう。
そういうときのためにも。
比較的安心して進める街道が必要になってくる。
そして、それが故に嫌な予感がするのだ。
フルスハイムの水運が潰されたのは、本当に偶然なのだろうか。
ドラゴンは知能を持たないというのが定説だが。
フルスハイムの繁栄は、右肩上がりに続いていた。
ドラゴンの襲撃も何回か退けていたが。
もしも、人間をまとめて駆除する意図があるのだったら。
水運の要となっているフルスハイムの強みをまず潰し。
そして、水運の中心都市となっているフルスハイムに、今までに無い戦力で襲いかかるのではあるまいか。
ぞくりときて。
その思考を放棄する。
上級のドラゴンはオレリーも遭遇した事がないが。
実力は中位の神に匹敵すると聞いている。
フルスハイムの公認錬金術師レンは、一応それなりの実力はあるが、まだまだそれなりでしかない。
今後そんな事態が来た場合。
とても対応出来ないだろう。
あの鏖殺、ソフィーが対処するとは言っていたが。
彼奴は考えている事がよく分からない。
何やら深淵に触れてしまったようなのだが。
その結果ああなったのだとすると。
オレリーは悩んでいる。
後継者がいない。
年齢も、そろそろヒト族の限界に近い。
このままオレリーが倒れれば。
ドナは終わる。
かといって、人間を止めた場合。
あのソフィーのように。
深淵を直接のぞき込み。
完全に壊れてしまうのでは無いのだろうか。
老境に入っても、怖いものは怖い。
鏖殺の名に恥じない実力を目にし。
それこそ上位の邪神とさえ渡り合える圧倒的な錬金術を目の前にした今は。
自分もそうなることに、抵抗がある。
ああなってまで、世界を守るべきなのか。
それとも。
ふと気付く。
誰かいる。
ヒト族の男性だ。
年齢は若者、というには年を取りすぎているし。
壮年と言うにはまだ若いか。
警戒する皆を手で制し、前に出る。
此処に匪賊が住んでいる事は知っていたが。
此奴はそうではあるまい。
「誰だい。 こんな危険な所で」
「! 私は学者だ。 この遺跡を調べている」
「へえ、学者ね」
見ると、銃を腰にぶら下げている。
なるほど、自衛能力は持っているつもりか。
見た感じ、修羅場はくぐった事があるようだが。
実力に関しては察し、だろう。
少なくとも、此処を単独でうろつける実力はない。最近来たと見て間違いないだろう。それも護衛も連れていない。
命知らずにも程がある。
「今、此処ではネームドの駆除をしている。 安全な場所まで連れて行ってやるから、さっさと離れな」
「この貴重な遺跡を破壊するのを見過ごすわけにはいかない。 まだ内部には貴重な遺産がたくさん眠っている」
「それを調べに来たってわけかい? 護衛も雇わずバカなことを」
「何を言う。 この遺跡は……」
すっと、指先を突きつける。
それだけで、学者は口をつぐんだ。
「今、あんたの後ろにネームドがいる。 狙っていたあんたを私に取られると思って姿を見せたという訳だ。 もう少し私に会うのが遅れていたら、死ぬ所だったよ」
「ネームドと聞いて平然としていると言う事は、錬金術師か」
「ああ。 少し待っていな。 片付ける」
「いや、僕も戦う。 この遺跡を荒らす輩は許すわけにはいかない」
勇敢なことだ。
だが実力が足りない。
奥から姿を見せたのは、想像を絶するほど巨大な蛇。勿論ネームドである。
オレリーは全身の力を解放すると。
皆に指示を出しつつ。
一気に躍りかかってきた大蛇に向け、自らも襲いかかった。
(続)
少しずつフィリスの護衛をしてくれる人が集いつつあります。
フィリスは高次元空間に干渉して作ったテントによって拠点ごと移動出来るので、護衛人数が増えても問題にならないのは原作と同じです。
過酷な旅に対して、世界一おっかない人が唯一くれた最高のプレゼントであるとも言えます。
現在本作は一章分の内容を二日に分けて投稿しています。このペースについて意見をお聞かせください。
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このままでいい
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一日で一章がいい
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更に分割して欲しい