暗黒錬金術師伝説7 暗黒!フィリスのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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2、森の道と滅びた都

動員された人夫が翌日には倍増。戦士も更に十人増えていた。追加人員である。

 

また、オレリーさんが動員を掛けたのだろう。自動で動く荷車も、更に増やされていた。

 

わたしもコレを作れれば良いのだけれど。

 

今は出来る範囲で、出来る事をするしかない。

 

汚染土が出た辺りから、かなり作業が遅滞している。汚染土はかなり深くまで浸透しているので、魔族の背丈の倍くらいまで地面を掘り返し。先にオレリーさんが作ったらしい硬化剤で固めた荒野のポイントまで運んでいく。それにつかう専用の荷車を用意し。また汚染土には直接触らないように、作業の後は消毒するようにとも、バッデンさんが指示を出していた。

 

これは、ドナを上げての作業だろう。

 

途中で来たエルさんに話を聞くと、相当なお金が動いているらしく。

 

ドナは好景気に沸いているという。噂を聞いて、ドナに移り住んできている人も多いそうだ。

 

ドナには人口万に達する都市ほどでは無いが、発展性があるために、人気もあり。

 

ただしやはりそういった場所にはよからぬ輩も目をつける。

 

戦士が総出でドナを空にするわけにはいかないし。

 

色々と難しい所だ。

 

作業後にオレリーさんは毎日ドナに絨毯で戻り、軽く現状の確認をしてから。作業前には現場に戻ってくる。

 

そして毎日哨戒任務。

 

相当な忙しさである。

 

今のわたしだったら、幾つかの道具による補助があっても、とても耐えきれないだろう。

 

硬化剤Aを一定量作ったので。

 

硬化剤Bを作り始める。

 

この硬化剤は、それぞれはただの液体なのだが。

 

混ぜ合わせることで硬化。

 

文字通りの壁になる。

 

利便性は非常に高く。

 

流石に硬度は錬金術で強化した城壁ほどではないが。

 

植物の根を完全に防ぐ程度の事は出来る。

 

これで、これから緑化する地面の底を。

 

「覆って」しまう。

 

汚染土の上にこの硬化剤を撒くことで、完全に植物の根を汚染土から遠ざけるのと同時に。

 

掘っている箇所の横側面も硬化剤を撒いて固定する事で。

 

植物の根が横に伸びて、結果汚染土に触れる事も阻止する。

 

その代わり幾つか気を付けることがあり。

 

まず植える植物の管理。

 

更には、水はけが極端に悪くなる事の対策である。

 

故に、底の隅に排水用の管を設け。

 

荒野に水が流れ出るようにする。

 

こうしないと、植物の根が水で根腐れしてしまう可能性があるからだ。

 

これらの説明を受けながら。

 

わたしは硬化剤を納入。

 

現場を視察すると。

 

四角く、かなりの速度で土を掘り進めつつ。

 

カルドさんが、ああでもないこうでもないと言いながら、崩す場所の調査と、資料の採取をしていた。

 

バッデンさんはあまりいい顔をしていなかったが。

 

それでも、ラスティンから正式に派遣されてきている人だ。

 

無碍にも出来ない。

 

如何に影響力が小さいからと言っても。

 

ライゼンベルグから公式に派遣されてきた人を、袖にするのは好ましくないと判断しているのだろう。

 

実際ある意味。

 

オレリーさんも、公認錬金術師で。

 

その公式派遣されている人、にあたるのだから。

 

硬化剤の効果を確認。

 

硬化剤Aは粘性が強く、土などにもぬったりと塗ることが出来る。

 

これに対して硬化剤Bは非常にさらっとしていて。

 

硬化剤Aを塗ったところに。

 

これをさっと塗ると。

 

あっという間にカチカチに固まる。

 

実際その様子をみたけれど。

 

ほんのちょっと時間をおくだけで。

 

わたしが蹴った程度では、それこそはじき返されるほどの堅さになった。ちょっとざらざらしているけれど。

 

それくらいはまあ仕方が無いだろう。

 

バッデンさんに聞くと、答えてはくれる。

 

「この硬化剤に毒性は無いんですか?」

 

「俺にもよく分かっていないんだが、長老曰くこの硬化剤は土の特性を生かして、擬似的に岩にしているものらしい。 故に、植物には影響が少ないそうだ」

 

「少ない、ですか」

 

「いずれにしても一度固めると永続で使えるそうだ」

 

そういえば。

 

硬化剤Aを作った後、釜を洗って、硬化剤Bを作る前に。

 

中間生成液の一つを先に釜に入れろと言われた。

 

そうすると、釜の底に膜が張られて。

 

文字通り、ぺりぺりと剥がれるのだ。

 

あれは極薄の岩、と言う事か。

 

ちょっと面白い。

 

「出来の方はどうですか」

 

「問題ない。 どんどん作ってきてくれ」

 

「分かりました」

 

不意に、レヴィさんが飛び出す。

 

そして、魔術でシールドを展開。

 

突撃してきた猪を、一瞬食い止める。

 

慣れたもので、戦士達が一瞬で集り。

 

猪を八つ裂きにしてしまう。

 

何処に隠れていたのか。

 

見ると、遺跡の方で手を振っていた。

 

どうやらカルドさんが廃屋を崩していたら、住んでいた猪が飛び出してきたらしい。なるほど、びっくりして出てきただけだったのだろう。本来はそんなに好戦的な個体だったわけではないのだろう。

 

ちょっと可哀想なことをしたかも知れない。

 

「ふむ、無益な殺生をしたかも知れぬ。 だが、けが人を出すわけにもいかぬ。 大地の恵みとして有り難くいただくとするぞ。 黒き風としてせめて美味しく調理してやるから許せ」

 

結局剣を抜く必要もなかったレヴィさんが、わいわいと猪を捌く作業に加わる。

 

わたしももう一人で捌くのは出来るようになったし。

 

今は硬化剤の方が優先度が先だ。

 

バッデンさんに一礼すると、アトリエに戻り。

 

調合を続けた。

 

その日はそれだけで終わったが。

 

翌日に比較的大きめのトラブルが起きる。

 

呼ばれたので、硬化剤Aを作り終えたタイミングで様子を見に行く。

 

城壁の一角を崩していたのだが。

 

どうやら、支柱になっている大きめの岩がでてきたらしいのだ。

 

錬金術で頑強に固められているらしく。

 

専門家の話を聞きたい、と言う事だった。

 

今は支柱を避けて掘り進む作業をしているが。

 

徐々に汚染土が出る量も増えてきている様子だ。

 

掘り出した土はもう汚染されているのもそうでないのもまとめて前に指定された一箇所に集めている。

 

オレリーさんとしても、その方が処理しやすいからだろう。

 

わたしは早速、鉱物の声を聞くが。

 

これはちょっと壊せないかも知れない。

 

むしろ、活用して欲しいと鉱物は言っている。

 

この街や城壁がもはや使い物にならない、死んだものであることは理解しているが。

 

自分はせっかく支柱として加工され。

 

ずっと自分なりに働いてきた。

 

崩されるのは嫌だ、というのである。

 

こんな風な主張をする鉱物は初めて見た。

 

そして、もう少し話を聞く。

 

支柱そのものは、かなりの深くまで突き刺さっているが。

 

引っこ抜くつもりなら、抵抗はしないそうだ。

 

ただし、使ってくれることを約束するなら、だそうだが。

 

それをバッデンさんに伝えると。

 

半信半疑の様子だ。具体的すぎるから、だろう。

 

だがドロッセルさんが来て、腕まくりする。

 

「私が見た範囲では、この子は嘘なんかつかないけど」

 

「いや、俺も疑う訳じゃあないがな。 其処まで詳細な意思が、この柱にあるのかとちょっとな……」

 

「わたしも、声が聞こえるのは当たり前の事だったので、そればかりは……。 でも、売られても割られても何とも思わない鉱物が多いのに、こういう主張をしてくる鉱物は滅多に見ません。 下手な事をすると、きっと良くない結果になると思います」

 

「分かった。 何とかしてみよう」

 

一度、先を掘り崩している力仕事担当の者達が集まり。

 

空を飛べる魔族が上から引っ張り。

 

ヒト族や獣人族が下から押し上げるようにして、支柱を抜きに掛かる。

 

わたしが、重心の位置を話すと。

 

其処を中心的に皆で攻める。

 

ぐんと、巨大な支柱が動いた。

 

「気を付けて!」

 

「えいおうおう! えいおうおう!」

 

かけ声を上げながら。

 

筋骨たくましい戦士達が、柱を引き抜いていく。とても力強い。

 

足場も悪いのに凄い。

 

やがて、凄まじい音と共に、柱が震えながら、その全容を現す。

 

底の部分は少し太くなっていて。

 

それが故に、引き抜くのには本来もっと力が必要だったのだろうが。

 

柱の方も、引き抜かれてくれたのだ。

 

どっと、土が噴き上がるようにして。

 

柱が飛び出す。

 

魔族の戦士達が、全力で支えながら、獣人族の戦士達とヒト族の戦士達が場所を変え。遺跡の中に柱を降ろす。

 

ずしんと、地響きがした。

 

柱があった地点は、もの凄い大穴が空いていて。

 

奥の方にはおぞましいほど黒い汚染土が見えていた。

 

一体どれだけの廃棄物がこの辺りに投棄されていたのだろう。

 

柱自体も、汚れている筈だ。

 

「ころを用意しろ!」

 

「廃棄土の所に運んでいくぞ! 処置は長老に任せる! 護衛に戦士が四人つけ!」

 

バッデンさんが指示を出し。

 

すぐにころが用意され。

 

柱が乗せられると。

 

転がされ、持って行かれた。

 

手際が流石に優れている。

 

そして柱を引っこ抜いた所には、過剰に出た汚染土を放り込んで埋めてしまう。そして、また粛々と作業には……戻らない。

 

力仕事をした人達は、皆汚染を落とす消毒をしてから、次の作業に入るし。

 

今のでスケジュールそのものに遅れが生じた。

 

バッデンさんが、何人かの戦士と話し合いをして。

 

今日は何処まで掘り進めるか、地図上で決めているようだ。

 

それと同時に。

 

何があるか分からないので停止していた硬化剤の塗布作業についても、再開している。

 

まああれだけ大きなものが引っこ抜かれたのだ。

 

それが妥当だろう。

 

一段落したところで、バッデンさんが声を掛けてくる。

 

「フィリスどの、助かった。 次も問題が起きたときは頼むぞ」

 

「はい。 いつでも」

 

「驚いたな……」

 

カルドさんが、此方を見ていた。

 

今の様子、尋常では無いとすぐに分かったのだろう。

 

わたしも、自分でもあんな大きな支柱が出てきた事には驚いている。

 

そして、あの支柱の望み通りにしてあげられたことも。

 

良かったと想う反面。

 

わたしの持つ力が。

 

想像以上に大きい事を。

 

再確認させられていた。

 

アトリエに戻ろうとするが、カルドさんに呼ばれる。

 

遺跡の一部の石畳が、珍しい仕様なのだという。だが、劣化が酷く、下手に触ると崩れてしまうそうだ。

 

今日のカルドさんの護衛には、レヴィさん他数名がついている。

 

石畳なんかどうでもいいだろと何人か顔に書いていたが。

 

しかし古い時代に何が起きたのかを知るには大事な資料なのだろう。

 

わたしは頷くと、石畳に聞いてみる。

 

そうすると、難しい答えが返ってきた。

 

「残念ですけれど、この石畳はそのまま動かそうとすると、崩れます。 絶対に」

 

「やはりそうか」

 

「ですので、一旦周囲の石畳をどけて、この石畳の下に板か何かを通して、それで持ち上げてください」

 

「少し手間だがやむを得ぬな」

 

面倒くさいからやりたくない。

 

戦士達がそう顔に書いているが、カルドさんは自分でせっせと作業を始める。

 

そして目的の石畳の周囲を掘り返し始めた。

 

線が細い人ではあるけれど。

 

それでも、泥にまみれることは嫌がらないらしい。

 

その辺りは、筋が通っていると思うし。

 

わたしも嫌いでは無かった。

 

今度こそ、アトリエに戻り。

 

硬化剤をひたすらに造り続ける。

 

現時点で必要な要求量の二割もまだ作れていない。

 

今後、大量に硬化剤が必要になることを考えると。

 

あまりもたついてもいられない。

 

更に、同じような状況が来た場合。

 

今の経験は必ず役に立つ。

 

今後わたしは、戦略級のお仕事をしていくのだ。

 

それが錬金術師なのだ。

 

それについては、メッヘンでも思い知らされたし。

 

このドナの関連作業でも毎日思い知らされている。

 

ならば、戦略的に動くというのはどういうことなのか。

 

常に考え続けなければならなかった。

 

 

 

二日が過ぎた頃。

 

雨が降り始めた。

 

小雨だが、作業をしている人達は、神経質に動いた。

 

汚染土に混じった水が、排水管に入り込まないようにと、土嚢を積み始めたのである。この土嚢は、先に用意していたもので。

 

オレリーさんが作った頑強なものであり。

 

防水の魔術も掛かっているようだった。

 

今まで硬化剤で固めた部分には、既に三本の排水管が通されているのだが。

 

その全てに、土嚢がガードとして積まれ。

 

更に排水管そのものも。

 

蓋をされた。

 

排水管は、上にバルブが伸びていて。

 

緑化作業後も、バルブを開け閉めして、排水をコントロール出来る仕様にするらしい。壊れた場合は、掘り出せるようにユニット化もしているようだ。

 

この辺り、本当に手慣れている。

 

十年でドナを計画的に大発展させた錬金術師オレリーさんだ。

 

似たような都市開発計画は散々やってきたのだろう。

 

雨は幸い本降りにはならなかったが。

 

土砂災害を避けて、一度掘り崩す作業そのものは中止する。

 

その代わり、全員が合羽を被り。

 

この雨の中での、獣やネームドの襲撃に備えた。

 

人夫はキャンプに戻って貰い。

 

雨が終わるのを待つ。

 

アトリエに来たバッデンさんが、スケジュールを調整。また少し遅れてしまうが、慌てている様子は無い。

 

「スケジュールについては大丈夫なんですか?」

 

「問題ない。 長老はこの辺り抜かりが無くてな。 基本的に雨が降ったりトラブルが起きたりすることを想定してスケジュールを組んでいる。 慌てて埋め合わせをしようとして、事故を起こす方が、スケジュールを却って遅らせるとも知っているから、そろそろ釘を刺しに来る筈だ」

 

「へえー」

 

そう言っていると。

 

本当にオレリーさんが来る。

 

地図を拡げて、スケジュールを書いた黒板とチョークを見て。

 

鼻を鳴らす。

 

「バッデン、その様子だと、もう話していたようだね」

 

「はい。 それと、例の柱ですが」

 

「ああ、あれならば汚染を除去した後、近々作ろうと思っていた休憩所の基礎にするよ」

 

「そうでしたか」

 

ドナと、東にある街の間には、かなりの距離がある。

 

東にある街は、例のフルスハイムと隣接した巨大湖の縁にある小さな集落の一つで。人口は二百五十人ほど。

 

現時点では、此処に安全に行く方法は無く。

 

本来だったら、わたしの仕事は、この街への直通路をつなげるためのものだった、らしい。

 

だが事情が変わった以上仕方が無い。

 

ただ、長期計画に従い。

 

丁度中間地点に、休憩所を造ると言うことは変わっていない。

 

その休憩所は、ドナから森の外に出る途中にあったものとは規模が違うものにする予定らしく。

 

其処に、基礎としてあの柱を使うそうだ。

 

ならば柱も満足するだろう。

 

良かった。

 

胸をなで下ろしていると。

 

オレリーさんは変な子だねと言って、アトリエを出ていった。

 

代わりに入ってくるのは、ウィッテさんである。

 

ぐるぐる眼鏡の彼女は、今日は白衣をかなり手酷く汚していた。

 

きちんと身繕いすれば綺麗になりそうな素養はあるのに。この人は、身を飾るという概念がないのだろうか。

 

わたしもあんまりないけれど。

 

「あー、フィリスさん、いいですか?」

 

「はい、何ですか」

 

「雨が降っている間にちょっと話しておきますね。 最初の方に手がけていた辺りの森は、もう良い感じで仕上がっています。 後は手を入れなくても大丈夫です」

 

「本当ですか!」

 

それは嬉しい。

 

だが、雨だ。

 

見に行くのも何だろう。

 

後で、見る機会はいくらでもある。

 

それに今いる位置からは、最初に緑化した地点は、少しばかり遠すぎる。

 

「それ以降の作業場所も、現時点では問題は発生していません。 このまま上手く行けば、東の街への直通路がいずれ出来ます。 ドナの人にも、東の街の人にも、幸せな出来事です」

 

「すてきですね!」

 

「……私、その東の街の孤児なんですよ」

 

さらりと。

 

とんでも無い事をウィッテさんがいう。

 

ドナにて、非合法奴隷として連れられていたところを、奴隷商を禁止しているオレリーさんに助けられたらしい。

 

東の街は、それほど困窮している、と言う事で。

 

子供を売り飛ばす親がいる、と言う事だ。

 

売られた子供は奴隷になるか。

 

酷い場合は匪賊の食糧にされてしまう。

 

妾奴隷にされる事もあるらしい。

 

最近は、そういった奴隷商売はどんどん減っているらしいのだが。

 

少なくとも、絶滅はしていない。

 

そういう事だ。

 

「だから、東の街のことは、ちょっと複雑なんですよね。 両親は伝手を使って調べたんですけど、父親の方は何だかくだらない喧嘩で死んだとか、母親の方は行方も知れないとかで。 私も器量が良くないからだとかで、下手すると匪賊に売られる可能性もあったらしいです。 間一髪で長老が助けてくれたんですよ」

 

重い話だ。

 

だが、聞かなければならないと、わたしは思った。

 

咳払いすると。

 

ウィッテさんは、ぼっさぼさの頭を掻いた。

 

「ええと、そんなわけで、緑化作業についてはちょっと色々複雑だったんですけれど、私は結局土いじりが好きです。 錬金術の才能があればもっと良かったんですけれど、それは仕方が無いですし。 今回のお仕事はまだ途中ですけれど、フィリスさんには感謝しています。 公認錬金術師になった頃に、またドナに来てください。 歓迎しますよ」

 

「分かりました。 必ず、伺います」

 

何だろう。

 

これから忙しくなるから、だろうか。

 

ウィッテさんの目は、分厚いぐるぐる眼鏡に隠されていて見えなかった。

 

でも、一歩間違えば、この人は子供の頃に匪賊に切り刻まれて、食べられてしまったのだ。

 

何だか、ウィッテさんが、長老をしたい。

 

必死に勉強をして、一線級で仕事をしている理由が分かった気がする。

 

そしてわたしも。

 

あんな風に、頑張らなければならない。

 

多分、ウィッテさんは錬金術師になれるのなら、なりたかったはずだ。

 

でも、その才能は無かった。

 

だから、自分に出来る範囲で、一線級の仕事をしている。

 

そのために。他の全てを捨てたのではあるまいか。

 

わたしは、恵まれている。

 

ちょっと愛が重いけれど、優しいし側で支えてくれるお姉ちゃん。

 

レヴィさんも、ドロッセルさんも、良い人だ。

 

時々レヴィさんはわたしを子供扱いしてかちんと来る事もあるけれど。

 

そんなのは大した問題でもない。

 

わたしは恵まれていることを自覚して。

 

頑張らなければならない。

 

ひょっとしてだが。

 

ウィッテさんは、いつもへらへらとしていながらも。

 

実はわたしの事が嫌いだったのではあるまいか。

 

でも、わたしの作業を見て、考えを改めてくれた。

 

故に、あんな事を話してくれた。

 

そんな理由だったのではあるまいか。

 

あくまで想像だが。

 

否定する理由も無い。

 

わたしは、ぼんやりしていた頭を引き締め直す。

 

今のうちに、調合を進めておこう。

 

どうせ実作業はしばらく出来ない。

 

それならば。

 

必要な硬化剤を可能な限り今のうちに作って置いて。

 

作業を前倒しでも出来るようにする。

 

時間が余るようなら。

 

今まで手を着けられなかった作業に、着手するのもいい。

 

自分の能力を上げる装備類については。

 

まだ構想段階で。

 

出来ていないものもたくさんあるのだ。

 

わたしは黙々と調合に取りかかる。

 

そして気がついたときには。

 

夜半を回りかけていた。

 

お姉ちゃんはご飯を用意してくれていた。

 

無言の心遣いが嬉しい。

 

ちょっと冷たくなってしまっているけれど。

 

愛情の籠もったお姉ちゃんのご飯を。わたしは有り難くいただくことにした。




当たり前のように使われている「自動走行式」の荷車ですが。

これは前作、暗黒!ソフィーのアトリエでソフィーが開発したものです。

とにかくこの作品世界は人間の絶対数が少なく、世界そのものがとても狭い事もあって、とっくに生きている人間には流通が済んでいるのです。

現在本作は一章分の内容を二日に分けて投稿しています。このペースについて意見をお聞かせください。

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