暗黒錬金術師伝説7 暗黒!フィリスのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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4、ギフトと責任

街道が完成。

 

わたしは、改めて手伝ってくれたドナの人達にお礼を言う。ドナの人達も、わたしに感謝してくれた。

 

皆と握手して、軽くお祝いをして貰う。

 

とっておきだというウサギ肉を出して貰って。

 

本当に美味しいのでびっくりした。

 

仕事に参加した人夫達にもごちそうが振る舞われる。

 

お酒も出ているようだった。

 

ただ、全員が酔いつぶれてしまうと、ネームドなどに襲撃されたときが大変だ。戦闘力がない人夫達は、アトリエの中で宴に参加して貰う。また、下戸の戦士達は、酒を入れずに警戒を続けていた。

 

オレリーさんもお酒は飲まない。

 

わたしもだ。

 

お姉ちゃんも、何か思うところがあるのか。

 

グナーデリングで強化された肉体を試すように。

 

何度か試射をしていた。

 

矢を撃ち込むときの音がもの凄く。

 

確かに腕力が三倍になっているのが実感できる。

 

前にウサギを倒したときには何発も撃ち込んでいたが。

 

今なら一矢で仕留められるかも知れない。

 

オレリーさんに、適当な所で呼ばれる。

 

「フィリス、公認錬金術師試験を受けるには、三枚の推薦状が必要だと言う事は知っているね」

 

「はい。 聞いています」

 

「それならば、フルスハイムに行って、手伝ってくるといいだろう。 彼処にも少し頼りないが、公認錬金術師がいる。 人口一万の都市に公認錬金術師一人だけというのは、好ましい状況では無いんだがね」

 

そういえば、そんな話を聞いた。

 

確かレンという名前の筈だ。

 

「今回の私の推薦状で、他の錬金術師は多少筆を走らせやすくなるはずだ。 これでも迷惑なことに名前が知られているからね」

 

「ディオンさんにもそう言われました」

 

「ディオン? ……ああ、メッヘンのモヤシか。 あのモヤシ、余計なところばかりに知恵が回る」

 

「あー、ははは。 でも、ディオンさんは良い人でしたよ」

 

鼻を鳴らすと。

 

咳払いするオレリーさん。

 

少し真面目な話をされる。

 

そう思ったわたしは、背筋を伸ばした。

 

「錬金術ってのはね、深淵の学問なんだよ。 深淵には確かな意思があって、いつも此方を覗いている。 錬金術を極めれば極めるほど深淵に近づくし、精神はどんどん深淵に近くなっていく」

 

「そう、なんですか……」

 

「錬金術は諸刃の刃なのさ。 そもそも錬金術の力は、邪神の力に酷似しているし、一部ではそのまんま同じだ。 これは私の仮説だが、錬金術の力は、この世界の神の力の一部を行使しているものだろうね」

 

神、か。

 

創造神を崇める教会というのがあるらしいと聞いてはいるのだけれど。

 

まだ見ていないので何とも言えない。

 

「錬金術を極めれば極めるほど化け物に近くなる。 これだけは覚えておくんだよ。 もしもこれ以上は人間と言えないと思ったら、引き帰……」

 

不意にノイズが走る。

 

その後、何故か数秒。

 

オレリーさんの声が聞こえなかった。

 

「分かったね」

 

「はい」

 

何故だろう。

 

オレリーさんが一番大事なことを言ったと思う部分の記憶が。

 

綺麗に抜け落ちていた。

 

 

 

あたしは岩山の上から、フィリスにあげたアトリエを見下ろしていた。

 

ラスティンで十指に入る錬金術師でも。

 

既に時空間を自由にし。

 

概念も自在に操作できるようになったあたしの行動は阻害できない。

 

今、フィリスに。

 

余計な事を吹き込まれると困るのだ。

 

錬金術師は深淵の存在。

 

それでかまわない。

 

そしてこの世界は詰んでしまっている。

 

この世界を打破するためには。

 

まだまだ人材が必要なのだ。

 

深淵の者でも人材捜索は続けている。素質がありそうな人間に目をつけて、学問や武術を仕込む行動も始めている。

 

だが、あたしの担当は。

 

あくまで世界の詰みを解消できる人材の育成。

 

無為に人間を増やすのでもなく。

 

世界を食い荒らすのでもなく。

 

四種族が共存して生き。

 

そして互いを尊重できるようになるまで、人間が発展できるようになる世界の構築。

 

そのためには、あたしと同格の錬金術師が後最低でも四人はいる。

 

創造神の力で、才能の上限を引き上げるに相応しい人材は。

 

まだ見つかっていない。

 

フィリスは有力候補の一人。

 

今は貪欲に、力を伸ばして貰わないと困るのだ。

 

「ソフィーさん」

 

「何?」

 

側に立っているのは、鎧で全身を覆っている護衛。ティアナのバディをしている、アダレットの現役騎士の一人。

 

それも幹部候補だ。

 

「これからしばらくフィリスさんの監視は私がやる、ということでよろしいですか」

 

「んー、そうだね。 まだティアナちゃんやシャノンちゃんが直接護衛するのは早いかな」

 

「分かりました。 でも影から相手を監視するのって、とても恥ずかしいです……」

 

「その人見知り、早めに直さないと駄目だよ」

 

笑顔のまま、あたしはシャノンを促して、その場を去る。

 

さて、フルスハイムにおいたをしているドラゴンが動けない程度に痛めつけてくるか。

 

どうやら水運を封じた後、フルスハイムに津波を叩き付けようと目論んでいるらしいことが魔力の流れで分かった。

 

勿論やらせるわけには行かない。

 

当面竜巻を維持するのが精一杯、くらいまで痛めつけておくのがいいだろう。

 

あたしは薄く笑うと。

 

既に、水棲のドラゴンの中でも、最高位に位置する巨魁の前に出ていた。

 

此処は古くに作られた神殿か。周囲に空気がある。

 

そして蛇のように体が長く、彼方此方に魚の要素を持つドラゴンは、その神像があったらしい場所に偉そうに鎮座していた。

 

だが、滑稽なだけだ。

 

突如現れた外敵に流石のドラゴンも驚く中。あたしは杖を向ける。

 

さあ。

 

狩りの時間だ。死なない程度に痛めつけてやろう。

 

 

 

(続)




過酷なインフラ整備をどうにか達成して、先に進むフィリス。

しかしその背後では、巨大な影が暗躍を続けているのでした。

現在本作は一章分の内容を二日に分けて投稿しています。このペースについて意見をお聞かせください。

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