暗黒錬金術師伝説7 暗黒!フィリスのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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3、勝利と代償

街から牛を数頭借りてきて、超巨大アードラの死骸をころに乗せ、キャンプまで運び込む。

 

物欲しそうにしていた獣は、全て追い払った。

 

アードラが食べていたグリフォンごと、解体を開始。

 

何もかもが巨大だが。

 

死んだ状態でパーツを分解していくと。

 

それはそれで、解体そのものは難しくなかった。

 

アングリフさんの言葉は正しかった。

 

オスカーさんが予想外のアシストをしてくれなかったら、手数が足りずに、多分死者を出していただろう。

 

わたしは魔力空っぽ。イルメリアちゃんもパイモンさんもそうだ。

 

レヴィさんはあの魔術の直撃で、身動きできないほど消耗している。

 

だがレヴィさんとパイモンさんが体を張って防いでくれなければ、わたしとイルメリアちゃんは木っ端みじんになっていただろう。

 

感謝の言葉も無い。

 

「解体は俺とドロッセルでやっておく。 お前達二人はもう休んでいろ。 じいさんもな」

 

「お願いします」

 

「すまんな。 もう少し若ければ、体力が残っていたんだが」

 

少しアングリフさんは機嫌が悪そうだったが。

 

多分戦いの興奮が残っているから、だろう。

 

戦闘時、人間は狂気に身を支配されるものだ。

 

アングリフさん程の戦士になると。

 

その狂気を上手に生かすのだろう。

 

先に休む。わたしは、色々悔しくて、恥ずかしかった。力が足りないことが、だ。

 

イルメリアちゃんは、剣を失ってしまった。あれはすぐに作れるようなものではないだろう。これから馬車に乗って、調合をしばらくしなければならないはずだ。イルメリアちゃんと話したいこともあったけれど。彼女は馬車にさっさと戻ってしまい。それ以上、何も喋れなかった。

 

何だかとても辛いことばかりイルメリアちゃんに起きている気がする。

 

アリスさんを死なせかけ。

 

今回は道具の無力さを思い知らされた。

 

わたしは、大丈夫だ。

 

ツヴァイちゃんの事を守らなければならないし。

 

なによりこんな世界を少しでも変えなければならないと、心に灯が点っているのだから。

 

でも、イルメリアちゃんは大丈夫だろうか。

 

アトリエに入ると。

 

鏡を見て、驚く。

 

返り血をこんなに浴びていたのか。

 

体を綺麗にして。

 

それから眠る。ただし眠りは浅かった。

 

だから眠っている間に、解体された超巨大アードラの死骸が、コンテナに何度も運び込まれているのが分かった。

 

岩山を丸ごと飲み込むほどのコンテナだ。

 

アードラの残骸なら。

 

如何に次元違いに大きくても、丸ごと飲み込むくらい訳は無いだろう。

 

しばし、徹底的に眠って。

 

ほぼ丸一日の後。

 

目が覚めた。

 

起きだしてから、最初に顔を洗って歯を磨き。

 

食事にする。

 

あまり味がしなかった。

 

あれほど激しい戦いの後だったのだ。そしてアングリフさんの見立ても正しかった。反省しなければならないだろう。

 

外に出る。

 

朝、ではなく夕方だ。

 

後方では、既に耕した全地域に草が植えられている。

 

あのアードラがいなくなった事で、安全度が格段に増したのだ。街の中から、人夫まで募って緑化作業をしている。

 

これは、少しずつ緑化の範囲を拡大していっても良いだろう。

 

いずれにしても、しばらくは防衛戦を継続だが。

 

皆も手傷は其処まで重くは無い。

 

わたしが支給した装備品がなかったら、一撃で死んでいただろうあのアードラの攻撃の凄まじさだったが。

 

倒してみれば。何とかはなった。

 

だが、まだまだ満足してはいけないことも分かった。

 

今後はもっと危険な相手と戦う事を想定していかなければならない。

 

装備品を強化するのが急務だ。

 

わたしも魔力は上がってきているし。

 

魔術の力も増している。

 

だけれど、それを錬金術でブーストしても、まだまだ全然届いていない。この世界の獣は強すぎるのだ。

 

今になって、エルトナが閉じこもっていたのがよく分かる。

 

こんな化け物達がいる世界から。

 

少しでも安全を守るため。

 

そのためには、太陽を捨てる覚悟が必要だったのだ。

 

唇を噛みしめる。

 

全てのネームドに死を。

 

それくらいしなければ。この世界は変わらない。

 

だけれど、人間が無分別に増えたら。

 

匪賊みたいなのも、当然それにともなって増えていくことになる。それも駆除しなければならないが。人間だったら手当たり次第に襲うネームドと。弱者を選んで襲い、強者にはこびへつらう匪賊とは、どちらがタチが悪いのか分からない。

 

どうすればいいのだろう。

 

何か解決案はないのだろうか。

 

まず、わたしは出来る事を増やす。これは確定だ。

 

錬金術師として一人前になる。

 

力がなければなにもできない。

 

少なくとも、このソフィー先生に貰ったアトリエを自分でも作れるくらいの技量は欲しい所だ。

 

その後は、具体的にどうする。どうすればいい。

 

悩みは死につながる。

 

それについては、ここしばらくの経験で嫌と言うほど思い知らされた。

 

緑化には時間が掛かる。

 

それもよく分かった。

 

まず、後方での緑化作業を成功させるまでは、この防衛線を維持し。緑化がある程度進展したら、防衛線を引き上げる。

 

まず目指すのは橋。

 

その次が北東の雪山だろうか。

 

この辺りの緑化を成功させない限り。そもそも安全に移動する事も出来ない。特に架橋なんて大作業など無理なのだから、一つずつこなして行くしか無い。

 

櫓は都度解体。

 

少しずつキャンプ地を前線に移し。

 

緑化作業をオスカーさんにやってもらう。

 

オスカーさんはこういう緑化作業を数限りなくこなしてきた上、植物の声が聞こえるらしいので。

 

とにかく手際は素晴らしく。

 

最初に植える植物も、種が出来てから全て収穫し。

 

その後本体を焼き払う、という形で。

 

植物にとってまったく損が無いように行動していた。

 

二度目の前線移動を終えた頃には。

 

畑の面積は三割から五割増し。

 

これから畑に出来る用地も倍以上に増加。

 

緑化している地点は既に低木が生い茂り始め。

 

どこから持ってきたのか。

 

オスカーさんは虫などを放し。

 

小鳥なども集まり始めていた。

 

ひょっとすると、オレリーさんより緑化に限っては手際が良いかも知れない。この人くらいの人材がいれば、一生涯の間にどれくらいの土地が緑化できるのか。想像もできないほどだ。

 

ともかく、背後は完全に任せてしまって良いだろう。

 

この街の戦士達は頼りにならなかったが。

 

しかし、後方で働く分には問題ないだろう。

 

そもそも街を守る戦力がいなければ話にならないのも事実なので。

 

戦力の消耗を抑える事が出来た、と。

 

前向きに考えたい。

 

連日、グリフォンを狩る。

 

そもそもグリフォンがこんな密度で荒野にいると言うのがおかしいと、アングリフさんが明言してくれた。

 

繁殖地でもないし。

 

そもそも定期的に駆除もしなければならないのだと。

 

それならば遠慮はいらない。

 

徹底的に。

 

近辺から、グリフォンの影もなくなるまで狩りつくすだけだ。

 

途中、鉱石を加工して、カルドさん用の弾丸や。

 

お姉ちゃん用の鏃を作る。

 

これについては、見聞院で貸してもらった資料にレシピが載っていた。

 

火薬については錬金術師の得意分野だ。

 

後は、レヴィさんの剣だが。

 

戦闘スタイルからいって、まだ新品は必要ないだろう。

 

勿論レヴィさんが欲しいと言ったら善処する必要があるが。

 

今の時点で、レヴィさんはあくまで壁役として行動してくれている。勿論攻撃に転じる場合もあるが、それも補助的な攻撃で。主力はドロッセルさんやアングリフさんだ。

 

日に日に。

 

狩るグリフォンの数が増える。

 

目に見えるほどたくさんいたグリフォンも。

 

明らかに数が減ってきていた。

 

絶滅の恐れなんてない。

 

世界は荒野が当たり前。

 

荒野からは獣が際限なく湧いてくる。

 

恐らくだが。

 

凶暴性こそ薄れてはいるが、森からだって獣は湧いて出る筈だ。

 

どういう理由かはしらないが。

 

この世はそうして出来ている。

 

ならば。この場にいる危険な獣は。

 

狩りつくしてしまうべきだ。

 

獣は人間に制御だって出来ない。

 

馬や牛などの家畜化できた例もあるにはあるが。それは例外中の例外。ヤギなどでさえ、荒野にいる個体は人間を襲う。

 

だから、狩らなければならないのだ。

 

ネームドとの死闘から五日。

 

とうとう壊れた橋が肉眼で見えてきた。

 

橋の周囲は凄まじい焼け焦げ跡が残っていて。

 

何が起きたのかは何となく分かった。

 

橋が落ちたのを目撃した人はいないが。

 

橋が落ちるというか破壊される音。

 

そして叫び声は聞いているという。

 

ドラゴンのものだった、ということだ。

 

「まず、どうするつもりだ」

 

「石材はあります。 後は技術者がいればいいんですが……」

 

「それよりも、まずは橋までの安全圏確保よ」

 

アングリフさんに聞かれたので答えると。イルメリアちゃんが厳しい事を言う。確かにその通り。まだ橋までの安全圏は確保できていない。

 

後方では、緑化地点を街を守る範囲まで拡げたと判断したからか。

 

一旦緑化の拡大を中止し。今度は街道を作るための限定的な緑化に切り替え始めていた。オレリーさんがわたしに指示したあれだ。

 

また、それを進めるのと同時に。

 

緑化した地点の最辺縁に城壁を作り始め。

 

更には、その城壁に、畑の用地も囲い込み始めていた。

 

この辺りの物資は、手をかざして見てみると、アルファ商会が提供しているようだ。フルスハイムからお金が出ているのか、それとも低利でお金を貸し付けているのかは分からないが。

 

戦略事業にアルファ商会が出てくるのは、エルトナでわたしも見ている。

 

ともかく、手を貸して欲しいと言われるまでは。

 

此方で動く必要はないだろう。

 

グリフォンの個体差はもう本当に天地。

 

弱いのはすぐに仕留められるが。

 

強いのになると、遠距離から様々な魔術をぶっ放してくる。自己強化をする個体もいるし。中には周囲を石にするブレスを吐くものまでいる。

 

毎回毎回の戦闘が命がけだが。

 

それでも、命がけだと言う事がわかっているから。

 

油断せず、情け容赦ない攻撃を浴びせて各個撃破する。

 

そして、ネームドを仕留めてから十日ほどしたころには。

 

視界から。

 

綺麗にグリフォンは消え去っていた。

 

橋へ到達したのもそのタイミングである。

 

そして、実際に現場を見て。

 

わたしは呻かざるを得なかった。

 

地面が溶けた跡がある。

 

焼け焦げた、なんてのは、まだ良い方だったのだ。

 

恐らくブレスの直撃を受けた結果だろう。

 

大地が溶岩化したのだ。

 

こんなものを喰らってしまったら。

 

確かに橋なんてひとたまりもない。

 

心底ぞっとする。

 

イルメリアちゃんも、青ざめているようだった。

 

パイモンさんも、あまり顔色が良くない。嫌なものを思い出した、という表情だ。

 

「アングリフさん、ドラゴンってみんなこんななんですか」

 

「……橋をピンポイントで狙うなんて話は聞いたことが無いが、ドラゴンのブレスはこういうものだぜ。 魔族の中でもトップクラスの実力者を魔王って呼ぶんだが、その魔王の魔術でも手も足もでねえ。 錬金術師がいないと倒せないんだよ」

 

言葉も無い。

 

鉱物の声も聞こえない。

 

聞こえるが、それはこの溶けた地面の遙か下からだ。

 

「とりあえず、周辺にドラゴンがいないかを確認する必要があるな。 幾らドラゴンでも森に手は出さないが、その代わり人口建築物は容赦なく破壊する。 また橋を架けても、ドラゴンがいたら、壊しに来る可能性が高い」

 

「私が見張るわ」

 

「それでは、僕も」

 

お姉ちゃんとカルドさんが見張りに出てくれる。

 

後は橋の復旧か。

 

縁まで出てみると、下は峡谷で。

 

底が見えないほど深い。

 

やるとしたら、まず土台を確保し。

 

アーチ状に石材をくみ上げていく必要があるだろう。

 

その後硬化剤を入れ、固める。

 

魔族の支援が欲しい。

 

空を飛べるメンバーが、現時点でこの中にはいない。

 

更に、峡谷の下の方をお姉ちゃんに覗いて貰ったが。

 

案の定、崖にはアードラが巣くっているようだ。

 

自衛能力も必要になるだろう。

 

いっそのこと。

 

この崖に橋を通すのでは無く。

 

この崖に土台を渡して土を作り。

 

緑化してしまう、という手もある。

 

その結果、非常に頑強かつ、ドラゴンに破壊されることもない橋を造ることが出来るだろうけれど。

 

それには相当な時間。

 

更には人手も必要だ。

 

此処にいるメンバーだけでできる事では無い。

 

最低でも、フルスハイム東の人達を総動員して、連れてくるくらいの事はしなければならないだろう。

 

だが、あの戦士達でさえ、一線級に達していない人達が。

 

そんな事に乗ってくれるだろうか。

 

今もオスカーさんが緑化作業を手際よく進めてくれているが。

 

その後は。

 

考え込んでいると。

 

レヴィさんが話しかけてくる。

 

「どうしたフィリスよ。 漆黒の風に吹かれて気分が高揚したか」

 

「いえ、風にふかれて気持ちよくは……人手が足りなくてどうしようかなって」

 

「まずはどのような橋にするつもりだ」

 

「橋を普通に造っても壊されてしまうと思います。 それならば、橋はあくまで頑強な土台として作って、その上に土をかぶせて、橋を緑化街道の一端としてしまえば」

 

話を聞いていた皆が愕然とする。

 

イルメリアちゃんさえ驚いて、固まっていた。

 

「そうすれば、ドラゴンにも壊されないと思います」

 

アングリフさんさえ唖然としている。

 

話してみると、自分が如何に無茶を考えたのかが分かるが。

 

だが、橋を落とすドラゴンが現れた以上。

 

彼らの習性を逆用して。

 

落とされない橋を造る必要があるのは事実ではあるまいか。

 

森にはドラゴンさえ手を掛けない。

 

それは事実として存在する。

 

そのルールがあるのなら。

 

逆用するまでだ。

 

お姉ちゃんとカルドさんは見張りを続けてくれている。オスカーさんは、獣が減った街道を、せっせと緑化してくれている。

 

三人には頼れない。

 

この痛々しく溶け焦げた地面を見る限り。

 

何とか橋を造らなければならないと思うし。

 

ドラゴンも出来れば遠ざけたい。

 

だけれども、それが簡単にできないのも事実なのだ。

 

考え込むわたしの服の袖を。

 

ふいにツヴァイちゃんが掴んだ。

 

「石材……充分に、あります」

 

「うん……そうだね」

 

そう、石材については気にしなくてもいい。

 

いっそのこと、周囲の岩山を崩してしまってもいいくらいだ。とはいっても、この峡谷の深さ。

 

岩山を崩して、その岩を全部放り込んでも、埋める事なんて出来はしないだろうけれど。

 

吊り橋なんて作っても、そんなものはドラゴンが来たらすぐに焼き払われてしまう以上。

 

簡単には壊れないものを作らなければならないのである。

 

「人員だったら宛てがあるわよ」

 

イルメリアちゃんが呆れたように言う。

 

ただし、条件付きだが、とも。

 

イルメリアちゃんが指したのは、雪山の方である。

 

彼方には、孤立はしているが。

 

そこそこの規模の街があるという。

 

雪山の中に作られた街だ。

 

もしも協力を取り付けられたのなら。

 

ひょっとしたら、橋を復旧する人員を回してくれるかも知れない、とイルメリアちゃんは言うのだった。

 

「あの雪山に登るのかよ、おい」

 

「雪山の方でも、外貨の確保をしたいはずよ。 近辺のインフラ破綻は見過ごせない筈だわ」

 

「確か雪山の方を降ると、ライゼンベルグにいけると聞いているけれど」

 

わたしの方を、アングリフさんとイルメリアちゃんが、苦虫を噛み潰したような顔で見る。

 

聞かされる。

 

ライゼンベルグに雪山経由で行くには、ドラゴンが生息し、更に多数のキメラビーストと上級アードラが住んでいる場所を強行突破する必要があるという。

 

アングリフさんはこの護衛を請け負ったことがあるらしいが。

 

ドラゴンが眠っている間に、傭兵団が総出でキメラビーストを蹴散らし。

 

馬車を守りながら、犠牲覚悟の上で分厚い雪が積もっている山道を突破し。

 

更に追撃を駆けてくる凶獣達を退けつつ。

 

山を降りきらなければならないという。

 

「更に問題なのは、山を下った所で安全でも何でもないって事でな」

 

アングリフさんは更に知りたくないことを教えてくれる。

 

何でもライゼンブルグ周辺は殆どインフラが壊滅しており。

 

分厚い城壁で守られた人口十万都市、ライゼンベルグの外に一歩でも出れば、生半可な戦士では手も足も出ない凶暴な猛獣と、ネームド多数が徘徊し。

 

休憩できるような場所もない中。

 

必死の強行軍で、突破する必要があるのだとか。

 

イルメリアちゃんはある程度知っていたようで。

 

それを聞いても驚かなかったが。

 

わたしは蒼白になりっぱなしだった。

 

そんなところを通って。

 

錬金術師達は、ライゼンベルグで試験を受けていたのか。

 

それはもう、傭兵を雇って、半分以上死ぬのを覚悟の上で、行くしか無いのではあるまいか。

 

というかライゼンベルグは何をしているのか。

 

優秀な錬金術師を多数抱え、人口十万ともなれば相応の規模の防衛部隊だって抱えている筈。

 

ムチャクチャな難関を突破できる人材にしか。

 

試験を受ける資格は無い、とでもいうのだろうか。

 

アングリフさんが、橋を顎でしゃくる。

 

「そっちを通れたときは、まだ匪賊の相手が主体だったから、どうにかなったんだがな」

 

「私も、其方を通るつもりだったわ。 でも、この様子だと……」

 

ひょっとしたら。

 

あの逃げていった錬金術師達も。それを知っていたのかも知れない。

 

なるほど、合点がいった。

 

これではもはや、どうにも選択肢が無い。

 

決めた。

 

イルメリアちゃんの提案に乗る。

 

「アングリフさん、山の街の方に行きます。 案内の方はお願い出来ますか」

 

「別にかまわないが、あの山は色々厄介だぞ。 途中には街道なんて呼べるものは無いし、多数の霊が徘徊していやがる。 リッチの総本山とまで言われていてな、元が元だけに、錬金術師を逆恨みしている奴も珍しくない」

 

「それでもドラゴンとキメラビーストの大軍を相手にして、補給無しでライゼンベルグまで突破するよりはマシです。 それに、そんな孤立した街を支えている錬金術師なら、きっと何か名案もあるはず」

 

不意に、お姉ちゃんが笛を吹いて警告してきた。

 

皆、さっと岩陰に隠れる。

 

ドラゴンだ。

 

上空を旋回している。どうやら、橋が落ちているか確認しに来たらしい。許せない。

 

だけれども、ドラゴンは森を見ても、其方には反応を示さない。

 

やがて、ドラゴンはその巨体を悠々と空に泳がせ。

 

飛び去っていった。

 

現物を見るのは初めてだが。

 

分かる。

 

あんなの、普通の人間では、どれだけ束になっても勝てる訳が無い。

 

大きすぎる。

 

感じる魔力が強すぎる。

 

幸い知能は存在しないらしいけれど。

 

そんなのは問題にもならないほど強すぎる。

 

呼吸を整えると、一度キャンプにまで戻る。

 

雪山の入り口辺りまで、緑化が進展するまでもう少し。

 

あとちょっとで。

 

準備は整う。

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