暗黒錬金術師伝説7 暗黒!フィリスのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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4、血塗られし絵

あたしの足下には、血まみれになって潰れた邪神が、痙攣していた。

 

双神エムエル。

 

この浮遊大地に住み着いていた邪神だ。

 

二人の女体が背中合わせにくっついたような姿をしていて。凄まじい魔力を誇る中位邪神の中でも上位に入る強豪。

 

だが、今のあたしの敵ではない。

 

まして今回は、フィリスちゃんの見張りに残したシャノンちゃん以外の手近な戦力全員を連れて来ている。

 

最初こそ抵抗したエムエルだが。

 

すぐに戦いは一方的なものとなった。

 

拡張肉体は防御にだけしか利用する場面が無く。

 

それもあたしを守るのでは無く。

 

一緒に来たプラフタや戦士達を守るためだけに必要となった。

 

とどめも、あたしの拳。頭をかち割ることで、戦いは終わった。

 

実のところ、此奴は以前殺したのだが。

 

この狭い土地に密集した魔力を吸収してか、短時間で復活したらしい。しかも、この浮遊大地から離れた荒野にある魔力まで吸い上げていたらしい。

 

だが、仕組みは理解した。

 

手を振って血を落とすと。

 

リュックから取り出す。

 

それは、不思議な絵画と呼ばれる錬金術の道具。見た目は額縁に納まった美しい絵だ。

 

美しい花畑が書かれているそれは。

 

「人為的に作り出した異世界」への扉。

 

そしてこの異世界へは、特定条件を満たさない限り、出入りできない。

 

例え邪神でも。

 

ある程度以上の実力が無ければ不可能だ。

 

そしてこの異世界のルールは、この世界とは異なる。

 

更に言えば、邪神は特性として、森からも草原からも魔力を吸い上げることが出来ない。

 

この中は緑に満ちた異世界。

 

邪神にとっては、力を回復出来ない死地に等しい。

 

更に此奴の魔力を解析したあたしは。

 

この絵に細工を施していた。

 

エムエルの死体が、絵に吸い込まれていく。

 

そしてエムエルを短時間で復活させたコアも。

 

これでいい。

 

残ったのは、エムエルの残骸。

 

此奴は下位の邪神程度の力しか発揮できないだろう。勿論、遠隔地の魔力を吸い上げることも不可能だ。

 

此奴については、フィリスちゃんのエサにでもする。

 

いずれドラゴンを倒し。

 

そして邪神に挑むのは。

 

フィリスちゃんには必須だ。

 

まだフィリスちゃんはドラゴンには勝てない程度の実力しか無いが。

 

それも、そろそろ一段落上がって貰わないと困る。

 

もう少し苦しんで貰うとするか。

 

「敵殲滅完了。 撤退するよ」

 

「了解っ!」

 

深淵の者の、対邪神部隊が引き揚げて行く。あたしもそれに伴って引き揚げて行くが、最後まで残っていたティアナちゃんがぶちぶち言う。

 

「首、切りおとしたかったなあ」

 

「ティアナちゃん。 この邪神はその内再生するの。 今とは比較にならないほど弱いけれどね。 その時、フィリスちゃんと一緒に戦わせてあげるよ」

 

「えっ! ほ、本当……っ!」

 

興奮のあまり、ティアナが顔を真っ赤にしている。

 

カタカタ震えているのは、喜びからだ。

 

邪神の首。

 

この子のコレクションにも無い代物だ。

 

もっとも、邪神は首を刎ねてしまうと、コアと直結していない限りその内霧散してしまう。

 

だが、ティアナちゃんは、あくまでも首を切りおとしたいのだろう。

 

首をコレクションに出来なくても。

 

邪神の首を刎ねるという行為に、最高の感動と興奮を覚えるタイプだ。

 

それを見てプラフタは眉をひそめているが。

 

今は少しでも有能な人材が欲しいのだ。

 

別にあたしに反抗的だろうが、狂信していようが、どうでもいい。

 

有能であればそれでいいのである。

 

きゃっきゃっと喜びながら戻っていくティアナちゃんを見送る。

 

プラフタは嘆息した。

 

「業が深いですよ。 あまりにも」

 

「業が深くなればこの世界を打開できるなら、いくらでも業を深くするよ」

 

「……そうですか」

 

「うん」

 

プラフタを促し、戻る。

 

フルスハイム周辺については現状で大丈夫だ。湖底のドラゴンについても、常時監視システムを組んでいる。

 

今フィリスちゃんは、例の橋に到着したとシャノンちゃんから報告を受けている。予想以上に早い。

 

今回は、いける可能性が高い。

 

駄目ならばまた修正を加えながらやり直すだけ。

 

いずれにしても、現時点では好調。

 

それで充分だ。

 

既にあたしは人間と呼べる存在では無い。

 

だが錬金術を極めればいずれそうなる。

 

フィリスちゃんも。

 

ふっと笑うと。

 

あたしは最後に引き上げる。

 

後ろには、血に染まった偽りの楽園と。

 

消滅した邪神の残骸の残り香である魔力が残されていた。

 

 

 

(続)




ライゼンベルグまで行くために、まずは錬金術師の助けがいる。
そう考えたフィリスは、雪の中にある街フロッケへと寄り道をする事になります。
歴戦の戦士アングリフとベテランの錬金術師パイモンの力も加わってはいますが。
荒野を行くのは、文字通りそれでも命がけになります。
それでも。
フィリスは前に進むのです。

現在本作は一章分の内容を二日に分けて投稿しています。このペースについて意見をお聞かせください。

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