暗黒錬金術師伝説7 暗黒!フィリスのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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3、孤立した街へ

三つ目の橋を架けるべく、偵察に出ていたアングリフさんが戻ってきた。そして、告げられる。

 

三つ目の橋はかなり厳しいと。

 

途中、グラオ・タールで補給を受けられるかと思ったのだが。

 

元々峡谷の間にある小さな空間に存在している街だ。

 

非常に閉鎖的で。

 

此方に対していきなり武器を向けてくるわ。

 

絶対に入れるわけには行かないの一点張りだわで。

 

話にならなかったそうである。

 

「彼処も公認錬金術師がいるはずなんだがな。 何しろ、周囲の匪賊共が大騒ぎをしている最中だ。 さぞや気を張っているんだろうよ」

 

皮肉混じりにアングリフさんがいう。

 

確かにそうなのだろう。

 

だがそれは、此方としてはあまり看過できない。

 

三つ目の橋を作るのに有用そうな岩山は見つけたが。流石にグラオ・タールに近すぎる。つまり街の許可を得ないと、作業に取りかかる事が出来ない。

 

一旦キャンプを二つ目の橋の先に移設。

 

それから、キルシェさんも含め、わたしとイルメリアちゃん、それにパイモンさんもあわせて、改めて会いに行くが。

 

そもそも驚かされたのは。

 

グラオ・タールという街が。あまりにも凄まじい構造をしていた事である。

 

イルメリアちゃんは知っているのか、驚かなかったが。

 

なんと峡谷を一旦底まで坂を下り。

 

底からまるで衝立のような坂を登って、入らなければならないのだ。

 

前は橋が架かっていたのだが。

 

ドラゴンにやはり落とされ。

 

その結果、こういう処置を執ったらしい。

 

門番は数人の屈強な戦士達で。

 

顔にも体にも多数の向かい傷があり、それを誇示していた。何しろ周囲が匪賊だらけなのだ。それくらいしないと、とてもではないがやっていけないのだろう。

 

当然、話をしたが、門前払いである。相手は此方が錬金術師であると分かっているだろうに、だ。これは余程の事態と見て良い。アングリフさんが匙を投げる訳だ。

 

「何度も言うが駄目だ」

 

「補給くらいは受けさせて貰えませんか」

 

「それは匪賊の常套句だ。 そちらの公認錬金術師の免許は本物のようだが、それでも悪いが今は通せない」

 

「何か条件を満たせば通して貰えますか」

 

押し問答を聞いたのか、門番の長らしい魔族が出てくる。

 

かなり年配の魔族で、全身が紫色である。青黒い体色の魔族が多いので、紫色はあまり見た事がない。

 

「公認錬金術師殿はどなたか」

 

「私」

 

「おお、キルシェ殿か。 お久しいですな」

 

「久しぶりナベリウス。 ノルベルトに会いたい」

 

ナベリウスと呼ばれた魔族の戦士は、首を横に振る。

 

キルシェさんがむくれるのが分かったが、駄目だともう一度言った。

 

「今、周囲は匪賊が非常に多く、危険な状態でしてな。 貴方方が緑化作業で道を作っているし、匪賊を撃退しているのも此方で確認はしているのですが、グラオ・タール自体がつい先ほどまで、この辺り最大の匪賊集団に攻めこまれる可能性が高かったのです」

 

「……そういえば」

 

東フルスハイムで聞いた。

 

周辺最大の匪賊が一夜で皆殺しにされて。

 

それで匪賊達が混乱していると。

 

「その匪賊達を倒したのは、グラオ・タールの公認錬金術師ではないんですか」

 

「む、そなたも錬金術師か」

 

「はい」

 

一応名乗り、挨拶をする。頷いたナベリウスさんは、少し考え込んだ。

 

一応錬金術師ばかりだし、匪賊の手先と言う事は無い、と判断したのだろう。ましてやキルシェさんを知っていると言うことは。その実力も知っている筈だからだ。

 

「うちの街の錬金術師どのは、実力はあるのだがやる気が無くてな。 ほれ、街の方は自給が出来る程度にはしてあるし、緑で覆ってドラゴンに襲われないようにもしてくれてはいる。 だが匪賊に対して攻勢に出るようなことは好んでいなくてな。 わざわざこんな小さな橋で街を封じ込んで、匪賊との諍いを避けていた程だ」

 

「匪賊と共存なんて無理でしょう」

 

「……その通りだ。 だがな、うちの錬金術師殿は、争いそのものが嫌いでな。 故にこの辺りの最大の匪賊が皆殺しにされ、死体が他の匪賊のアジトの前に晒されたと聞いた時でさえ、嘆いていたよ」

 

まて。今のは何だ。

 

匪賊が皆殺しにされたのはいい。その話は聞いた。だが死体が他の匪賊のアジトの前に晒されたというのは初耳だ。

 

側にいるお姉ちゃんも愕然としている。

 

詳しく、と続けると。

 

ナベリウスさんが頷いた。やはりナベリウスさんも異常事態として認識しているのだ。

 

「街に無理矢理押し入ろうとした匪賊を捕らえて吐かせたんだが、「鏖殺」が出た、と怯えきっていてな。 どういうことかと聞いたら、そんな事態になっているらしく、そんな事が出来るのは「鏖殺」しかいないという結論を匪賊共が出したらしい」

 

「その名前は知っていますが、死体を匪賊のアジトの前に晒すって、一体どうやって……」

 

「わからん。 匪賊共の話によると、鏖殺が現れるともはや抵抗すら許されず、逃げる事さえ出来ず、殺されるのを待つばかりという事だ。 この辺りに匪賊がこんなに集まったのも、周辺地域の匪賊が鏖殺に片っ端から潰されたのが理由らしくてな。 そこでドラゴンが橋を落としただろう? 其処に鏖殺が現れたとしか思えない出来事が起きたとかいうことで、もう大混乱でな……」

 

「ちょっと、考えさせてください」

 

頭が混乱して、よく働かない。

 

そもそも、この辺りで最大規模というと、最低でも数十人はいたはずだ。それを一瞬で皆殺しにするというのまでは分かる。

 

例えばソフィーさんくらいの錬金術師なら簡単にできるだろう。あの人が作った装備で身を固めた手練れでも出来るかもしれない。

 

でも、その殺した死体を、匪賊のアジトの前に晒すというのはどうやればできる。

 

そもそも匪賊のアジトを全て把握し。

 

しかも死体を、アジトの前に。見張りもいる筈なのに、どうやって晒す。

 

何だかとんでも無い事が起きている事が気がする。

 

それだけではない。何か、想像もできないことに巻き込まれているのではないのか。

 

咳払いしたのは、パイモンさんだ。

 

「それではこうしましょうかな。 まず、我々としては、ライゼンベルグへのインフラの復旧を目指しておりましてな。 そのためにはドラゴンに壊されない橋が必須、ということです」

 

「うむ、それは理解出来る。 悔しいが、我が町には手助け出来るほどの戦力がいないが」

 

「それはやむを得ませんな。 状況から考えれば仕方が無い。 それでは折衷案としてこうしましょう。 峡谷を埋めるために、あの岩山とあの岩山を、丸ごと崩して資源化しようと考えています。 それを許していただけませんかな」

 

「岩山を丸ごと!?」

 

ナベリウスさんに、側の戦士が耳打ち。

 

驚いたようにわたしを見るナベリウスさん。

 

わたしが、岩山を崩していたのを、此処の戦士も見ていたようだ。

 

「ふむ……。 では此方も錬金術師殿と相談してくる。 それでは済まないが、翌日また来て欲しい」

 

「頼みますぞ」

 

「ああ、善処する」

 

一旦、街の入り口から離れる。

 

お姉ちゃんは何だか汚物でも見るように、街を見ていた。

 

虫の居所が悪い、という表情で。

 

何だか分からないけれど、機嫌が悪いというのだけは分かる。

 

わたしにはだだ甘に優しいお姉ちゃんだけれど。他の人にはかなり厳しいし、人間らしい所も見せる。

 

こういう所も、わたしには向けないお姉ちゃんらしい所だ。

 

「気に入らないわね。 こういうときこそ共同して戦うべきでしょうに」

 

「リア姉、エルトナだって……」

 

「分かっているわよ。 でも此方の戦力だって、向こうから見れば分かるでしょうにね」

 

「……」

 

苦笑いしてしまう。

 

確かにそうだが。

 

しかし、わたしにはこの街の人達の気持ちも分かるのだ。だから、これ以上強く出ることは出来なかった。

 

キャンプに戻った後は、ひたすら周囲の獣を片付ける。

 

やはり相当数の大型の獣がひっきりなしに姿を見せる。

 

徹底的に片付けつつも、匪賊の奇襲を警戒。最初の橋の守りは、使者を派遣して、フルスハイム東に来ているフルスハイムの戦士達に頼む。

 

いずれにしても、匪賊は一人残らず片付けてしまわなければならない。

 

そうしなければ、グラオ・タールの街の人達だって安心できないだろうし。

 

何より、今後此処を通る錬金術師達も襲われる可能性がある。それも極めて高い確率だ。

 

匪賊は一度全滅させても、またいずれ出現するのだろうけれども。

 

それでも、今いる匪賊は全て消しておくべきだ。

 

当面は、匪賊を警戒しつつ。

 

獣を狩る。

 

この方針に、代わりは無かった。

 

翌日。

 

グラオ・タールの入り口に出向くと、やはりナベリウスさんが出迎えてきた。どうやら結論は出たらしい。

 

岩山を崩す事は許可する。

 

その代わり、此方から補給は出来ないし、戦力の支援も出来ない。と言う話だった。

 

お姉ちゃんが眉を跳ね上げるが。わたしが抑えて、と言う。

 

キルシェさんはもっとむくれた。

 

「理由聞かせて」

 

「これが最大限の譲歩なのです。 そもそも岩山を崩すというのが彼奴を刺激する可能性もあって……」

 

「彼奴?」

 

「この近くには、異常な風を起こしてそれを盾に引きこもっているドラゴンがいましてな」

 

そういえば、あの異常な風は。橋を造る時にそんな異常気象は見たが。

 

ドラゴンが絡んでいるのか。

 

確かに、ドラゴン。それも、自然現象を自在にすると言うことは、恐らくは中級、いや上級かも知れない。それを刺激するのは、あまり好ましい事では無いだろう。

 

「補給も支援も出来ない、というのは」

 

「此方も資源がかつかつなのです。 周辺の小集落から逃げ込んできた人々を抱え込んでいる事もあって、この狭い街での自給が精一杯でしてな」

 

「改善出来るかも知れないし、見たい」

 

「いや、ちょっと待ってください」

 

キルシェさんが、自分で中を見たいと言い出すが。わたしが止めた。

 

この様子では、キルシェさんが乗り込んだら、更に話がややこしくなるだけだ。ノルベルトさんと言ったか。その人も公認錬金術師であって、しかもこの街のだ。そうなると、よその街の公認錬金術師に、方針を口出しされるのは面白くも無いだろう。

 

それに好戦的では無い性格だと聞いている。

 

匪賊相手に怖れているとは思えないが。匪賊を駆除するのは嫌がっている様子だ。

 

この世界、匪賊に対しては何処の街でも見敵必殺が基本である事は、わたしでさえ知っている事なのに。それを嫌がると言う事は、相当な変わり者なのだろう。

 

話しあって、上手く行くとも思えない。

 

ましてや、変わり者というなら、キルシェさんも同じ。変わり者どうしでは、更にこじれる可能性が高いのだ。

 

「キルシェさん、とにかく岩山は崩せるし、それでどうにかしましょう。 後、緑化をこの辺まで拡げて、匪賊も駆除できれば、ノルベルトさんの態度も軟化するかも知れませんし」

 

「緑化をこの辺まで拡げられる!?」

 

「恐らくは。 ただ少し時間は掛かると思います」

 

「……分かった。 もしも緑化が実際に進行して、匪賊の駆除も確認できれば、此方も善処しよう」

 

かなり時間的なロスが大きくなるが。

 

事情が事情だ。仕方が無い。

 

此処からは、更に慎重にやっていくしか無い。

 

一旦キャンプに戻り、今後の方策を練る。そもそも、グラオ・タールに出向くだけでも、数度の戦闘を往復それぞれでこなさなければならなかった。どの戦いも、決して楽では無かった。

 

まず、キャンプに来ていたオスカーさんに、キャンプ周辺の緑化を頼む。

 

後方の緑化を済ませている地帯は、人夫に任せるとしても。

 

最前線は無理だ。

 

これらは、わたし達が直接手伝わなければならないだろう。

 

まずキャンプの安全を確保。

 

同時に獣の駆除。

 

仕掛けてくるネームドもできる限り撃破する。

 

だが、分かっていても。

 

出来るとは限らない。

 

ネームドの戦闘力は高い。フルスハイム東にいた巨大アードラと同等か、それ以上のものが、既に数体確認されている。

 

これらを全て駆除するとなると。

 

消耗が激しくなるのは、容易に想像できる。

 

そのため、キャンプの安全性を確保するためにも、緑化が必要なのだ。これから、キャンプ周囲を緑化するまでが。最大の危機だろう。

 

皆を見回すが。

 

疲労が色濃い。

 

わたしも相当疲れているはずだ。

 

如何に回復を促進する道具を身につけているとは言っても、限度がある。

 

自動で動く荷車にしても。

 

誰かが側についていなければならないのだ。

 

ましてやまだまだ匪賊は潜んでいるはず。

 

キャンプの背後にある橋を通って逃げようとする輩は、まだまだ出てくるだろう。「鏖殺」への怯え方は尋常では無いし。何より奴らは人間を喰うことが習性として身についてしまっている。

 

良く血の味を覚えた獣は最優先で殺さなければならないと言うが。

 

それは人間が獣になった匪賊も同じと言う事だ。

 

方針を話すが。

 

反対する者はいなかった。

 

ただ、疲弊が少し濃い様子の、フロッケから来てくれている戦士達は、顔を見合わせていた。

 

此処まできつくなるとは思っていなかったのだろう。

 

わたしは、頭を下げる。

 

「今、此処でインフラを回復しておけば、ライゼンベルグとの交流がより容易になりますし、何より多くの人や物資が行き来します。 フロッケの将来性を考えれば、更に人口も増える可能性が高いです。 人口が増えれば当然生産力も地の力も上がります。 苦しいと思いますが、協力をお願いします」

 

「頭を上げてくれ。 フィリスどの、あんたが一番働いているし、言うとおりだと言う事は良く分かっている。 ……ただ、皆の疲弊が酷すぎることは理解してくれ」

 

「はい」

 

薬も食糧も爆弾も。

 

出し惜しみはしていられないか。

 

一旦今日は解散とする。

 

まだキャンプ周辺は緑化どころか、土を耕すのさえ完遂できていない。

 

本当の勝負は。

 

此処からだ。

 

 

 

予定は遅れるが、仕方が無い。これほどの状況悪化があるのなら、方針を変えざるを得ない。

 

まずキャンプの周辺の徹底的な緑化から始める。

 

攻撃よりも先に防御を固める。

 

そういう方針へと移行し。

 

防御が固まったら、其処から攻めに打って出る。そうやって行くしか無い。

 

案の定、匪賊が既に影をちらつかせていた。

 

二つ目の橋を架けて以降、余裕を見て、橋を架けた地点での掃討作戦を実施。二グループ、二十人ほどを掃討したが。

 

グラオ・タール周辺にはまだ最低でも四つの匪賊の集団が存在していて。

 

合計人数は百人を超えているようだった。

 

百匹と言うべきか。

 

掃討作戦はアングリフさんがやってきた。

 

わたし達には、緑化作業に集中して欲しい、というのが理由なのだろうが。

 

この辺りでも有名なアングリフさんが出てきている、という事を匪賊に見せつける事で、戦意を削ぐ意味もあるのだろう。

 

緑化も遅々として進まない。

 

当たり前の話で、獣の攻撃頻度が今までの比では無い。

 

グリフォンだけではなく、同格の体格を持った熊や蛇。アードラも魔術を使う上位種が、どんどん仕掛けてくる。

 

その度に緑化を中断して応戦せざるをえず。

 

更に言うと、アードラの数があからさまに増えているので、迂闊に空飛ぶ荷車から爆撃、とやれなかった。

 

あれはあくまで、空を抑えているから出来る事で。

 

上空での戦闘を得意としているアードラが多数いる状況では、いい的にしかならないのである。

 

負傷者は即座にキャンプに下げ。

 

疲弊しているのを分かっている上で、薬で怪我を治したらすぐ前線に戻って貰う。

 

岩山を崩すどころじゃあない。

 

だが、そもそも此処まで成長した獣は、そう多くは無いはず。

 

荒野から自然に湧いてくる獣は、それほど大きな個体ではない。

 

それも事実としてあるのだから。

 

少しずつマシになる。

 

そう言い聞かせて、わたしは鉱物の声を聞きながら。農具を振るうオスカーさんを、ひたすら支援した。

 

苗を植え始めると。

 

獣はそれを見て、一旦動きを止める。

 

荒野を耕しているだけならともかく。

 

あからさまな緑が見え始めると、彼らは動きを鈍らせる。

 

完全に襲ってこなくなる、とまでは行かなくなるが。

 

少なくとも、緑化が行われていることを理解すると。明らかに凶暴性は減退する。ネームドが仕掛けてくる前に、此処までの状況にしたかったのだが。幸い、それは達成出来たと言える。

 

オスカーさんの説明を受ける。

 

「あまり良いやり方じゃあ無いんだが、フルスハイム東の、既に出来上がった森から土を借りてきた。 本来なら成長が早い草を植えて、其処から種を収穫した後燃やして土に栄養を与えるんだが……今回は非常事態だ。 いきなり低木から植えていく」

 

「かなり無理が出ませんか?」

 

「出る。 おいらも今までかなり危ない場所の緑化はしたことがあるし、このやり方もやった事があるが、他人には勧められないな。 兎に角、無理矢理森を育てるようなものだから、後の手入れが大変なんだよ」

 

「すみません。 お願いします」

 

オスカーさんは、苦虫を噛み潰したような表情だった。

 

だが、皆の疲弊がそれ以上だという事も分かっているのだろう。

 

匪賊狩りを進めているアングリフさんも、相当に疲弊している様子からしても。これ以上の無理が利かないことは、オスカーさんも分かっている筈だ。

 

フルスハイム東からは、橋を守る人員を出してくれているだけでもマシと考えるしかない。

 

案の定というか、低木の成長は、栄養剤を入れてもかなり遅いようだった。

 

だが、キャンプ周辺の緑化が進むと同時に、獣による攻撃も目に見えて鈍化。

 

疲弊していた戦士達は、一息つくことが出来たのも事実だ。

 

数日間を掛けて、オスカーさんの作業を支援しながら、匪賊に備え、そして疲弊している皆に順番で休んで貰う。わたしも勿論休む。

 

交代で休憩しながら、その間に爆弾と薬を補充。

 

更に、身につける装備品を幾つか考える。

 

今までに、四つの強化装備を造り。

 

それを磨き抜いてきたが。

 

更に強化するとなると。

 

今度は恐らく、キルシェさんが使っている拡張肉体、が必要になるだろうか。

 

キルシェさんに話を聞いて。

 

拡張肉体の理論を教えて貰う。

 

イルメリアちゃんとパイモンさんも、講義には立ち会ったが。

 

分かったのは、あまりにも難しい、と言う事だった。

 

多分錬金術の知識ではわたしよりずっと優れているイルメリアちゃんが、泡を食っている様子なのだ。

 

パイモンさんは、魔術関連の部分は理解出来ているようだが。それ以上は分からない様子だった。

 

逆にキルシェさんは、どうしてこれで分からないのか分からない、という様子である。

 

今は、まだ早いか。

 

理論はメモさせて貰ったが。

 

まだ難しすぎる。

 

残念ながら、一度は諦めるしか無いだろう。

 

出来そうな所から、攻めていくしか無い。

 

まず、余った鉱石を使って、剣を打つ。

 

レヴィさんが使っている剣が、かなり金属疲労が激しくなってきているのが、聞こえていたので。

 

わたしが打ち直す。

 

鉱物の扱いは、既に相当になれた。

 

フルスハイムでの経験で、プラティーンと同等の硬度を持つ合金も作れるようになっている。

 

これを用いて、レヴィさん用の剣を作る。

 

黒いのが好きらしいので、刀身が黒くなるように調整。この辺りは、まあ魔術でどうにでもなる。

 

数日を掛けてインゴットを打ち。

 

仕上げた。

 

ただ、レヴィさんにわたして、実際に振るって貰って、それで調整しなければならない。

 

案の定、鉱物の声、レヴィさんの感想、いずれもまだ改良点がある、だった。

 

特に鉱物が教えてくれるが、重心が少しずれているというのが大きい。

 

剣を少し打ち直し、調整するのに更に一日。

 

レヴィさんは満足してくれたが、今度はちょっと強度に問題が出た。

 

少し考え込んでから、剣そのものに魔法陣を刻み込む。強度に直接影響が出る刀身では無く、柄にだ。

 

これで、強度の問題はカバーできた。

 

レヴィさんも満足そうなので、良しとする。

 

そして、数日集中して物資を補給、整備していたからか。

 

外に出たとき。

 

キャンプの外が、緑の防壁で覆われているのに気付いて、驚かされ。そして、ある程度満足できた。

 

後は、岩山を崩し。

 

ネームドを撃退し。

 

そして橋を架ける。

 

これを順番にやっていけば良い。

 

それと匪賊の掃討作戦だが。こればっかりは、相手が知能が高い事もあって、簡単にはいかないだろう。

 

此方の戦力を見て、身を伏せている筈で。

 

とにかく一匹でも釣り出さないといけない。

 

一匹でも捕獲できれば、頭の中身を覗いて、巣を暴ける。

 

そうなれば、もう此方のものなのだが。

 

岩山を崩す作業を開始する。

 

あと少しだ。

 

言い聞かせながら。

 

わたしはつるはしを振るった。

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