暗黒錬金術師伝説7 暗黒!フィリスのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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2、魔の山

峻険な山、というのとはまた違う。

 

峡谷のものより大きく、より凶暴な獣を、一匹ずつ釣りながら片付けていく。前よりも楽にはなっているが。それでも一匹ずつが強い。

 

お姉ちゃんが放った矢は、最近は地面スレスレを飛んだ場合は、地面を抉るくらいの風圧を発する。

 

この間人をさらおうとした匪賊を撃ったときには、敢えて火力を抑えたくらいである。

 

そんな凶悪な矢でも。

 

一撃で仕留めるには至らない。

 

今襲いかかってきた猪は、凄まじい勢いでジグザグに走りながら突貫してきて。その途中、お姉ちゃんの矢とカルドさんの銃撃を合計六発も浴びたにもかかわらず、その速度は落ちず。

 

レヴィさんがシールドで一撃を受け止めた時には。

 

地面に罅が入った。

 

直後、アングリフさんが首を叩き落としたが。

 

それでもしばらくは動いていて。

 

暴れ回ったあげくに、横倒しになった程である。

 

これは本当に生き物なのか。

 

一匹ずつがこんな有様である。

 

ぷにぷにに至っては、真っ黒い奴が出てくる。

 

噂によると、上位種らしく。

 

魔術も非常に効きづらいだけではなく。

 

とにかく体格が巨大で。

 

その上、地形に合わせて体色を変えることまで出来るようだった。

 

幸い、此方には接近を察知する手段が幾つもあるが。

 

それがない人は、ライゼンベルグから出る事さえ出来ないのではあるまいか。

 

アルファ商会も、此処を通るときは命がけになるのではあるまいか。

 

流石に此処は危険すぎる。

 

そう判断したのか。

 

オスカーさんも、人夫達を帰らせると。

 

一人で黙々と緑化作業を始めた。

 

ライゼンベルグまで緑化した道を通してしまえば。

 

かなり安全になる。

 

それは事実としてあるので。

 

此方も連携して動きたい。

 

例えば、戦闘力だけが錬金術師に求められる資質では無い。

 

あのディオンさんも、戦闘力という観点では、公認錬金術師の中でもかなり低い方だった筈だ。

 

だが、それでも公認錬金術師としてはしっかりやっていた。

 

公認錬金術師試験を受けたときのキルシェさんだって。

 

拡張肉体を準備していたかは分からない。

 

それを考えると。

 

錬金術師としての試験を受けるためのハードルが高すぎる現状は。

 

決して好ましくない筈だ。

 

さて、ノルベルトさんだが。

 

意外にも、近接戦闘をするタイプだ。

 

身につけている自前の錬金術師の道具で、能力を極限まで上げ。

 

此方にまで接近した獣に、主に蹴り技で戦う。

 

爆弾の類は殆ど使わず。

 

代わりに、自分の能力を極限まで跳ね上げる薬を幾つか準備しているようだった。

 

勿論副作用もある様子だが。

 

それでもいざという時には使うつもりだろう。

 

ただ、普段はやはりアルコールを持ち込んでいて。

 

隙あらば飲んでいるようだ。

 

移動中は飲んでいなかったのに、キャンプに入ってからはこれである。

 

流石に獣を駆除しているタイミングではお酒を入れてはいないが。

 

それ以外の時は、会議にも参加しないし。

 

場合によってはわざわざグラオ・タールまで戻り。

 

酒を仕入れているようである。

 

この様子だと、酒浸りになったのではなく。

 

単に元から酒が好きだったのかも知れない。

 

勿論、悲劇が切っ掛け、というのも理由としてはあるのだろうけれども。

 

イルメリアちゃんが手を振る。

 

爆弾を仕掛けた、というのだ。

 

下がって、坂の上の方にいる兎を釣る。

 

兎と言ってもその大きさは牛ほどもあり。

 

しかも普通の兎と大差ない素早さ。

 

人間など一撃で串刺しにするほどの角を備えている。

 

もはやあれは兎と呼んで良いのか分からないが。

 

この辺りの獣は、あれくらい大きいのが当たり前だ。

 

そもそも荒野の獣は、放置しておくと際限なく巨大化、強力化する傾向があるらしく。

 

獣同士での食い合いもするが、人間に対しての敵意を向ける事の方が多いそうである。

 

そもそも荒野から幾らでも湧いてくる事もあって。

 

肉食獣も、敢えて大型の草食獣に手を出さない、というのもあるのだろう。

 

結果として、肉食獣も草食獣も、大きく強大に育ち。

 

人間を見ると総力で殺しに掛かってくる。

 

もはや、エルトナにいた頃に読んでいた本に書いてあった可愛いうさぎさんなんて。幻想の彼方に吹き飛んでしまっていた。

 

いざという時のために、わたしも呪文詠唱を開始。

 

最悪の場合、鉱物で押し潰すためだ。

 

お姉ちゃんがそれを見ると頷き。

 

兎に射掛けた。

 

前はバン、と空気を蹴散らす射撃音だったが。

 

今はもうドン、とおなかに響くような音がする。

 

実戦投入したタリスマンで、更に身体能力が倍増しになったから、というのと。お姉ちゃん自身が、連日絶え間ない戦闘で、嫌でも戦闘能力を鍛え上げられているから、というのもあるだろう。

 

矢は吸い込まれるように兎に直撃。

 

首の辺りにあたったのに。

 

兎は凄まじい絶叫を上げると踏みとどまり。

 

突貫してきた。

 

3,2,1。

 

数え終わると。

 

爆弾を起爆。

 

モロに巻き込まれた兎は、中空に放り出され。

 

更に、其処にカルドさんが射撃。

 

跳躍したアリスさんが斬撃を浴びせて。

 

落ちてくる地点で待っていたドロッセルさんが、渾身の斧での一撃をフルスイングで叩き込んでいた。

 

吹っ飛ばされた兎は、流石にもはや生きていなかった。

 

吊して捌く。

 

今度はパイモンさんが腰を上げる。

 

手にしているのは、今まで雷を発生していた道具を、更に大がかりにし、連結したものだ。

 

今までのは雨雲の石と呼んでいたらしいが。

 

今度のは雷神の石と呼んでいるそうである。

 

原理としては、魔術により雷撃を相手に降らせる、という点では変わっていないのだが。

 

それを連結して極限まで強化し。

 

錬金術によって更に数倍まで強化したという。

 

ドラゴン対策に作り上げた道具で。

 

戦闘において実際に使えるか、試験しているのだ。

 

同じようにして、今度は巨大な蛇を仕留める。

 

雷神の一撃のごとき極太の閃光が轟いたと思うと、辺りの空気が消し飛ぶような音がして、流石の巨大蛇も沈黙していた。

 

次に狙うのは、中空を舞っているアードラ。

 

ただし、この間戦ったネームドアードラの半分ほどもある。

 

ネームドアードラはグリフォンを掴んでおやつにするほども大きかったが。

 

流石にあれほどでは無いにしても。

 

もはやどうやって空中に浮いているのか、よく分からない次元の生物だ。あんなのが、この辺りにはウヨウヨいる。

 

しかも、ここ数日でかなりの数を仕留めているし。

 

ネームドが動き出すのも時間の問題だろう。

 

それも、ノルベルトさん曰く、峡谷の奴よりも数段上の実力の奴が、だ。

 

呼吸を整えると。

 

皆の準備が整ったのを確認。

 

仕掛ける。

 

今度はわたしだ。

 

爆弾。

 

それもレヘルンを複数束ね、爆発と同時に巨大なつららが周囲に殺戮をまき散らすように改良した、シュタルレヘルン。

 

これはこの間。

 

巨大なミミズのネームドが使った、凶悪無比な氷の術を参考にした。

 

あのネームドの氷術は、キルシェさんの攻撃をはじき返すほどの火力を発揮したが。流石にあれを再現出来ないとしても、近い威力を出せれば良い。

 

そう思って、レヘルンに工夫を重ね、作り出したのである。

 

振り回すのも、全身を利用して、回転しながらやる。

 

岩で練習し。

 

今ではある程度至近距離までなら、飛ばせるようになった。

 

攻撃範囲内まで飛ばせればそれでいい。

 

回転し。

 

そして、アードラが此方を見た瞬間、投擲。

 

アードラがそれを見て、空中で不自然に向きを変え。

 

詠唱を開始。

 

風の魔術で押し返すつもりか。

 

だが、この爆弾は。

 

お前の風の術よりも強力だ。

 

そう信じつつ。

 

起爆ワードを唱える。

 

炸裂。

 

同時にアードラが風の魔術を起動。

 

爆風が、シュタルレヘルンを押し返しに掛かるが。

 

同時に炸裂したシュタルレヘルンのつららが、多数アードラを同時に貫いていた。地面にも、極太のつららが、無数に突き刺さっている上、周囲が見る間に凍っていく。

 

魔法陣での相互増幅の火力はわたしでも理解していたつもりだったが。

 

これは、想像以上かも知れない。

 

ドラゴンとやりあうには、最低でもこれくらいの火力は必要、と考えて、唇を引き結ぶ。そして魔力で無理矢理凍り付く羽を内側からはじき飛ばしたアードラは、凄まじい怒りの雄叫びを上げて、此方に突進してきた。

 

来る途中にお姉ちゃんが速射した矢で矢襖になるが。

 

それでも速度は落ちない。

 

だが、上から落ちてきたアングリフさんが。

 

翼の片方を叩ききったのには、対応出来なかった。

 

地面に落ちたところを、皆で袋だたきにして仕留める。

 

後は同じように解体。

 

肉は皆で焼いて食べ。

 

使えそうな部位は皆で分けてコンテナに入れた。

 

一戦一戦が厳しい。

 

連携が上手く行っているからいいが。

 

一度連携が崩れたら、もうどうにもならないと思う。

 

至近まで接近されたら。

 

立て直せるか分からない。

 

どうして、こんな状態になるまで放置してしまったのか。ライゼンベルグの錬金術師達は戦闘向けでは無いと聞いているけれど。それにも限度があるはずだ。爆弾を使うなり、傭兵を雇うなり。その傭兵に強い装備を作って渡すなり。幾らでもやり方はあった筈なのだ。

 

幾ら研究が主体の錬金術師でも。

 

傭兵用の装備品くらいは作れるだろう。

 

それも、今のわたしよりずっと強力に、である。

 

夕方が来たので、今日の見張りのローテーションを決める。そして、火を熾した後。交代で休んだ。

 

順番が来たので、お姉ちゃんと一緒に見張りをする。

 

その時、お姉ちゃんが、あまり知りたくなかった事を言った。

 

「ツヴァイちゃんが、複製の錬金術を使えるかも知れないって、練習をしているのを見たわ」

 

「リア姉、まって。 それって……」

 

「ええ。 かなり体への負担が大きいそうよ」

 

複製の錬金術。

 

ホムの一部が使えるらしい、同じものを作り出す特殊な技術。

 

話によると、ホムは完全なものではなくても、似たような技術は誰もが使う事が出来るそうだ。つまるところ、この技術は、ホムが子供を作り出すためのものを、応用しているのである。

 

裕福なホムが子だくさんになりやすいのもそれが理由で。

 

男性のホムと女性のホムが能力を使って、子供を複製するように作り出すため、他の人間種族と違って妊娠から出産というプロセスを経ず。負担もその分小さいらしい。

 

ただし、それでも負担は大きい。

 

複製の錬金術を使えるホムはあまり多くなく。

 

使えるとしても一度一度で相当な消耗をする上。

 

高度なものを複製するほど激しく消耗するという。

 

「戦って貰う方はどうなっているの?」

 

「今、カルドさんが銃撃の手ほどきをしているけれど、向いていないみたい。 そうなると、身体能力を利用して、至近で一撃必殺しかないかも……」

 

「出来ればそれは避けたいわね。 あの子が敵の攻撃貰って、耐えきれるとは思えないわ」

 

「リア姉、弓は?」

 

首を横に振るお姉ちゃん。

 

弓は元々、いわゆるロングボウなどの引く弓と、弩弓などのセットする弓に大別されるのだが。

 

いずれにしても、銃撃の才能がないのなら。

 

まず当てることは出来ないという。

 

お姉ちゃんの場合、実際には「当ててから放っている」という段階らしく。

 

ある程度技術が上がると、矢を放つ場合は、そういう境地に達するそうだ。

 

よく分からないのだが、もう放つときには、相手に当たっているイメージが出来ているらしく。

 

矢の飛ぶ速度や方向、相手の動きなどを全て読みきった上で放っているそうである。

 

銃撃も大体同じだとか。

 

そういえばカルドさんも百発百中させているが。

 

相手の動きが分かっているとしか思えない。

 

「一撃必殺にしても、離脱を容易にできる道具を作れる? 接近だけでも危険なのに、ただでさえ一撃必殺の武器となると、反動が心配だわ」

 

「幾つか、相手に致命打を与えられる武器を考えていたんだけれど……」

 

この間、見聞院に行った時、調べた資料の中には武器の一覧もあった。

 

拳を介して、強烈な魔力を叩き込んだり。

 

杭を打ち込んだりする武器が紹介されていたが。

 

これらはいずれもが、使う者が優れた体格を持っている事が前提となっているものである。

 

或いは、今以上に身体能力を上げられるのならともかく。

 

現時点で使うのは自殺行為だ。

 

かといって、体がまだ出来上がっていないツヴァイちゃんが複製の錬金術をやるのは、あまり好ましい事とは思えない。

 

かといって、ツヴァイちゃんはわたしと離れたくないと、明確に意思を口にしている。

 

せめて、もう少し時間とアイデアがあれば。

 

肩を叩かれる。

 

交代の時間だ。

 

アングリフさんとレヴィさんと交代。

 

寝ることにする。

 

ツヴァイちゃんは眠っていたが。

 

やはりうなされていた。

 

当たり前だ。

 

あんな形で家族を失ったのだ。

 

今、会話や意思疎通が出来ているだけでも奇跡的なくらいなのである。

 

心を痛めるが。

 

今は、わたしも眠って休まなければならない。

 

まだまだ、殆ど前進できていないのだ。ライゼンベルグは遙か先なのである。このまま此処で足踏みしている訳にはいかないのだ。

 

眠り、朝になって起きる。

 

朝食を手早く済ませると。

 

キャンプの外に。

 

少しずつ、緑が確実に増え始めていて。オスカーさんは、早朝から周囲の土を耕していた。

 

道にする予定の場所には、硬化剤は既に先に撒いてある。

 

なお、時々グラオ・タール辺りまで、後追いで錬金術師が来ている様子なのだけれど。

 

ライゼンベルグ西の山の惨状を見て。

 

そのまま引き返してしまうようだ。

 

一人で良いから残ってくれれば。全然違うのに。

 

起きだしてきたノルベルトさんは。

 

酒臭い息を吐いて、お姉ちゃんが露骨に眉をひそめた。

 

「おはようさん。 今日も狩るのかい?」

 

「はい。 まずはあの峠まで、安全にいけるようにしないと。 それには緑化作業を進展させないといけないですし……」

 

「あの峠を越えると例の村が見えるし、そろそろネームドが仕掛けてくる筈だ。 精々気を付けるんだな」

 

「はい」

 

こう見えて、ノルベルトさんは戦闘ではかなり働いてくれている。

 

交代で前衛をやっているのだが。

 

ノルベルトさんの蹴り技は強烈で、文字通り雷霆のごとくである。

 

人間より遙かに大きな獣にも通じているし、一度は蹴りで岩を砕いているのを見た。

 

この山に転がっている岩は、強力な鉱石を含んでいて、生半可な堅さではないのに、である。

 

だから、怠けてはいないが。

 

それでもお姉ちゃんは、どうしてか気に入らない様子だ。

 

皆が揃った所で、今日も獣を狩る。

 

やはり相当に縄張りがそれぞれ狭いようで。

 

昨日狩った辺りにも、既に同じくらいの大きさの獣が彷徨いていた。

 

焦るな。

 

確実に進め。

 

自分に言い聞かせながら、一匹ずつ狩っていく。

 

そして、夕方近くまで狩りを続け。

 

後一匹、という所だった。

 

鉱物が警告してくる。

 

わたしが、叫ぶのと同時に。

 

それが仕掛けて来た。

 

「来ます!」

 

カルドさんの使う長身銃が、数百同時に火を噴いたような音。

 

とっさに前に出たイルメリアちゃんが、展開したのは淡い光の傘のようなもの。ドラゴンのブレス対策の道具だろう。

 

それが、押し込まれる。

 

そう、それほどの数。

 

超高速で飛来した無数の石つぶてのような何かが、異常な火力だったのだ。

 

イルメリアちゃんが呻いて膝を突く。

 

姿を見せたそれは。

 

無数の根を蠢かせて此方に歩き来る、巨大な植物のような何か。

 

いや、あれは植物なのか。

 

オスカーさんが呼びかけるが。

 

動きを止める様子は無い。

 

見た目はなんというか、巨大な紅い鮮やかで華やかな花のようなのだが。その左右には多数の枝が展開しており。

 

その先端部分に、穴だらけの実のようなものがある。

 

今の連続射撃は。

 

その実から放ってきた様子だ。つまりあの実は、凄まじい制圧火力を持つ連射砲台、と言う事だ。

 

獣がさっと逃げ出すのが見えた。

 

ネームドだ。

 

実の数は六つ。

 

しかも、今は一つしか使っていない。つまり、後最低でも五連射、アレが出来ると言う事だ。

 

即時に、第二射。

 

イルメリアちゃんが防ぎに掛かるが、一気に押し込まれる。イルメリアちゃんが吐血する中。パイモンさんが雷神の石を起動。極太の雷撃が、直上から植物のネームドを直撃する。

 

だが、なんとネームドは花の部分に展開したシールドで、それを防ぎ抜いて見せ、三つ目の実を前に繰り出し、射撃開始。

 

アングリフさんとアリスさんが飛び出す。

 

極限まで強化した身体能力を駆使し、弾を高速で避けながら接近するが、四つ目を即座に投入してくるネームド。

 

制圧射撃を受けた二人が、距離を取りながら、遮蔽物を使ってかろうじて猛射を回避するが。

 

なんと、最初の実がまた膨らみ始める。

 

要するに、六つある実から、際限なく射撃が出来ると言う事か。

 

フラムを束ねて作った、オリフラムを投擲。

 

だが、奴は実からの射撃で、それを中空でつるべ打ちにする。

 

攻守共に凶悪すぎる。

 

固定砲台だというのに、何という難攻不落ぶり。

 

足下を確認。

 

駄目だ、根を地面から完全に引きだしている。わたしが鉱物に呼びかけて押し潰しても、致命打にはならない。

 

お姉ちゃんとカルドさんが連続して射撃をしているが、奴は花を器用に動かして、全てを弾く。

 

そればかりか、実を次々に前に出し、射撃を絶やさない。

 

イルメリアちゃんのシールドは、恐らく魔力を消耗するのだろう。イルメリアちゃんの服が、吐血で染まっていく。

 

レヴィさんが前に出て、シールドの魔術を展開。

 

だが、イルメリアちゃん以上に消耗が早い。

 

やるなら。

 

総攻撃しかない。

 

アングリフさんが叫ぶのと同時に、全員が仕掛ける。

 

同時に、意図を悟ったか、ネームドも六つの実を全部同時展開。全てから制圧射撃を放ってくる。

 

見る間にイルメリアちゃんとレヴィさんのシールドが消耗していく中。

 

まずドロッセルさんが放り投げた大斧が、うなりを上げて敵に迫る。敵がシールドで防ぎ抜く。

 

アリスさんとアングリフさんも出るが、実の制圧射撃が凄まじく、接近できない。

 

更に今のと同時に、わたしがシュタルレヘルンを、パイモンさんが雷神の石を起動したが。ドロッセルさんのあの大斧による物理攻撃と、わたしの冷撃、更にパイモンさんの雷撃の、三種類の別の攻撃を、花はシールドで防ぎ抜いて見せた。

 

後ろに今の瞬間。

 

ノルベルトさんが回り込み、蹴りを叩き込むが。

 

それも見越していたと言わんばかりに、植物のネームドは、なんと根で壁を作って、蹴りを防ぐ。

 

実が至近距離からノルベルトさんに突きつけられ、膨らむ。

 

まずい。

 

だが、その時。

 

イルメリアちゃんが、さっとレヴィさんの背後に隠れ、印を切った。

 

イルメリアちゃんの剣二代目が、うなりを上げて、回転しながらネームドに襲いかかる。そして、実に突き刺さる。

 

実が、剣ごと爆ぜる。

 

二本の剣は、粉々になりながらも、その使命を全うした。

 

後実は四つ。

 

怒り狂うような叫びを上げながら、植物のネームドが、全ての実を同時に膨らませる。

 

しかし、今ので攻略法は見えた。

 

アングリフさんが、落ちていたドロッセルさんの大斧を投げつけ、それが実に突き刺さる。大斧は分厚く頑丈である事もあってか、実と一緒に砕ける事もなかった。更に、突貫したアリスさんが、実を切り落とし、残像を作って消える。実が爆裂。ネームドの体に傷をつける。

 

そして、ノルベルトさんが実を蹴り挙げ、中空に吹き飛ばし。

 

更にアングリフさんが、大剣でもう一つの実を斬り飛ばした。

 

だが、流石にネームド。

 

根を振るって、周囲全域を凄まじい勢いで鞭打ち、辺りからわたし達を遠ざけると。

 

その花に、光を集中させてくる。

 

あの、鉄壁を。

 

攻撃に転化するつもりか。

 

雷撃をパイモンさんが放つが、ネームドはあの雷撃の直撃を受けながらも、チャージを止めない。

 

まずい。あれが発射されたら、キャンプが丸ごと吹っ飛ぶ。

 

しかも、根が動き続けていて、近づけない。

 

お姉ちゃんとカルドさんが連射を続けているが。

 

体に次々突き刺さる大威力の射撃でも、ネームドはなお止まらない。

 

わたしもシュタルレヘルンを放つが。

 

なんとネームドは根で受け止め、氷爆弾の直撃を、体の一部を吹き飛ばしながらも受けきった。

 

チャージが。

 

終わる。

 

イルメリアちゃんも、レヴィさんも、消耗が限界だ。

 

万事休すか。

 

だが、まだだ。

 

一瞬だけでも、気を反らせればいい。

 

わたしは地面に手を突くと。

 

詠唱を終え。

 

地面から、鉱物を一気に噴出させる。

 

ネームドが、わずかに態勢を崩す。

 

そして、花を此方に向け直そうとして。

 

一閃が走った。

 

アングリフさんが、無理矢理今の隙を突いて、大剣でネームドの幹を切り倒したのだ。

 

崩れながらも、まだ此方に射線を向けている植物。

 

だが、同じく根を無理矢理突破したドロッセルさんが、幹を両手で掴むと。両足で上空にネームドの上半分を、花ごと蹴り跳ばした。

 

其処へ。お姉ちゃんが。

 

渾身の一矢を叩き込む。

 

それが、とどめになった。

 

閃光が爆裂し。

 

周囲を薙ぎ払う。

 

数秒、何も見えず。

 

そして、辺りを蹂躙した音が収まったときには。

 

既に、下半分だけ残ったネームドは。

 

動きを止めていた。

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