暗黒錬金術師伝説7 暗黒!フィリスのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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4、闇宵

ライゼンベルグの中心地。

 

庁舎。

 

人口十万を抱えるラスティンの首都。ライゼンベルグも、一応街という一単位を取っている。

 

実態としては一つの国なのだが。

 

ラスティンが連邦国という形態を取っている以上。

 

連邦の一勢力という扱いでならねばならず。

 

故に此処は王宮では無く庁舎なのだ。

 

其処を訪れたのは。

 

陰気なフードを被った影。そして数名の護衛。

 

出迎えたのは、ライゼンベルグのトップ。一応、ラスティンでは最高地位にいる錬金術師。

 

街長を兼ねている、公認錬金術師の頂点。

 

エーデルであった。

 

まだ二十代半ばだが、俊英として名高い。ただし、フードの影からしてみれば、お笑いぐさであったが。

 

此奴は典型的な研究特化型の錬金術師で、しかもどちらかと言えば政治家寄りだ。

 

年老いて既に役にも立たない研究をすることばかりに血道を上げている錬金術師達の利害調整を行い。

 

そして街そのものをどう回すかを考える。

 

その結果、街の西の状態を改善出来ず。

 

老錬金術師達の反対も受けてドラゴン討伐にも踏み切れず。

 

東側の安全経路を通れば良いという意見に押されて結局軍備の増強や傭兵の雇い入れも出来ず。

 

結果として、峡谷のインフラ壊滅や。

 

街の西側の魔境化を防ぐ事も出来なかった。

 

「シャドウロード、お久しぶりです」

 

「ああ、久しぶりだね。 元気にしていたかい」

 

「ええ」

 

快活な答えだが。

 

シャドウロードには見え透いていた。

 

若すぎるこの街の長。

 

血で血を洗う権力闘争をねじ伏せてきた、豪腕で知られているアダレットの王女と此奴は根本的に立場が違う。

 

傀儡なのだ。

 

この街はそもそもとして、何度も浄化作戦を実施したが。

 

それでもまだ膿が抜けない。

 

深淵の者としても、安定しているなら良いだろうと、半ば放置しているほどの腐敗した態勢が続いており。故に周辺のインフラの壊滅も招いた。

 

そしてエーデルは、その状況に不満を抱いていない。

 

抱いたところで、実権を握っている老人共をどうにも出来ないだろうが。

 

なお、シャドウロードは此処最近、姿を此処に見せ。

 

エーデルの相談役をするようになっている。

 

これは。深淵の者の方針が変わったから。

 

以前より表に出て。

 

世界を変えるための準備をするため。

 

あの特異点、「鏖殺」ソフィー=ノイエンミュラーと連携し。

 

この世界をどん詰まりの状態から切り替えるため。

 

本来は天寿を全うしようとしていたシャドウロードだが。

 

アンチエイジングを受けたのも。

 

ソフィーが賢者の石を使って創造神とのアクセスを成功させ、その結果深淵の者幹部達と一緒に世界の深淵を覗き込んだ結果。天寿なんか全うするのがアホらしくなったからである。

 

そしてその膨大な知識を生かして。

 

ラスティンの腐敗態勢を取り除くため、今はここに来ている。

 

そのためには、まずは此奴を何とかしなければならないのである。

 

応接間に通されたシャドウロードは、茶菓子を出され。

 

そして脳天気な話を始めるエーデルに早速うんざりした。

 

此奴は、今ライゼンベルグの周辺の環境が激変したことや。

 

フルスハイムが半ば機能停止していたことを。

 

何とも思っていない。

 

そんな事だから老人共に舐められるのだ。

 

シャドウロードも「老人」ではあるが。

 

自分のエゴを保全するために、権力を利用するような。いわゆる政治屋と一緒にされるつもりはない。

 

この世界をダイナミックに変えるため。

 

自分に出来る事をしてきた自負もある。

 

そしてその成果が、世界の謎の一端を解き明かした誇りも持っている。

 

だからこそ。

 

この腐った街を変えると決めたのであれば。変えなければならないのだ。

 

「それよりも、だ」

 

エーデルのどうでもいい話を打ち切ると。

 

姿勢を正す。

 

フードの奥の影は、若々しく活力に満ちていた頃の顔になっているが。若いからといって、美人でも何でも無いとシャドウロードは考えている。自分の顔を嫌っているシャドウロードには、今もこうやってフードで人相を隠すのが性にあっていた。

 

「これから、公認錬金術師試験を受けに来る二人に注目しろ」

 

「例のドラゴンを倒した錬金術師ですね」

 

「そうだ。 ドラゴンを倒せる錬金術師は多く無い。 もう一人老人の錬金術師もいるが、そちらは此方の方で対応する。 若い二人は、今後の世界を変える人材だ。 可能な限りの支援をしろ。 試験に受かったら、な」

 

「世界を変えるほどの錬金術師……」

 

ぴんとこないか。

 

間近で超ド級の錬金術師であるルアード。それに錬金術師としての力は失ったが、豊富な知識を持ち顧問として最高レベルの存在であるプラフタ。

 

何より、特異点ソフィー=ノイエンミュラーを見ている身としては。その凄まじい破壊力がよく分かるのだが。

 

いずれにしても、実力者が失望して離れ。

 

政治的駆け引きを主体にする老錬金術師達が蔓延り。

 

そして危機意識にも手腕にも欠けるエーデルが支配しているこの街は。早めに改革を進めなければならない。

 

数年後、ソフィーが人材を揃えたとき。

 

一気呵成に世界を変えるためにも。

 

それがどうしても必要なのだ。

 

幾つかアドバイスをする。

 

エーデルは頭自体は悪くない。この年で公認錬金術師になっている時点で、頭が悪い筈も無い。

 

ただ、この「完璧な防御」を誇る要塞から出ることも無く。

 

外の恐怖も知らないという時点で、どうしても限界がある。

 

また脳天気な話を始めるエーデルに嘆息すると、シャドウロードは。

 

この後ここに来る深淵の者の幹部、パメラ=イービスとどう話し合うかについて、考え始めていた。

 

 

 

(続)




最弱の部類に入るとは言え、ついに最強の獣であるドラゴンを仕留めたフィリス。

ついにライゼンベルグに。そして公認錬金術師になるための試験が始まります。

現在本作は一章分の内容を二日に分けて投稿しています。このペースについて意見をお聞かせください。

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