暗黒錬金術師伝説7 暗黒!フィリスのアトリエ 作:dwwyakata@2024
試験当日。
ベストコンディションだ。目はばっちり冴えている。体も絶好調。
お姉ちゃんとレヴィさんが、しっかり食事から何まで管理してくれたのである。過保護な位だが、これくらいでまあいいのだろう。今回ばかりは、受け入れる事にする。でもそろそろ、過保護は何とかして欲しいのも本音だ。妹離れをしてほしいというのも、しっかり言わなければならないだろう。
お姉ちゃんは多分、ノルベルトさんが言っていた通り。
ノルベルトさんを反面教師にしたのだろう。
だからわたしにはだだ甘にしている。
なお、ツヴァイちゃんにも相当甘いが、ツヴァイちゃんはそもそも一人っ子だったようなので。
優しくされてもどうしていいか分からないようで。
むしろ、困惑している姿が目立っていた。
筆記用具など、必要なものについては事前に通達されている。
全てが揃っている事をチェックした後、庁舎に赴く。
パイモンさんが最初に来ていて。次にわたし。殆ど遅れず、イルメリアちゃんが来た。他の錬金術師達も、ぽつぽつと集まって来たようだった。
名前の読み上げが行われて。
わたしの番が来たので、はいと答える。
イルメリアちゃんとわたしには、注目が集まった。
他はみんな大人ばかり。
パイモンさんが最年長のようだが、三十代から四十代が中心の様子だ。
それは、そうなのかも知れない。
錬金術師として、業績を上げないと推薦状は貰えないのだ。
ここに来るまで、何年も掛けている錬金術師もいても不思議では無いだろう。
エーデルさんが来る。
ラスティンのトップが直接試験に関わると言うだけでも。
これがどれだけ重要な試験かは、よく分かった。
案内されて、庁舎の中を歩く。
「何年か前に、年齢一桁の子供が試験に受かったと聞いているが、今年は十代が二人も来ているのか」
「しかも聞いたか、推薦状を五枚、六枚と集めて来ているそうだ」
「そうなると下手をすると生半可な公認錬金術師より実力はありそうだな」
「何、試験に合格定員はない。 気にする事もなかろう」
合格定員とは何だろう。
イルメリアちゃんが、わたしの考えを察したか、耳打ちしてくれる。
「試験の中には、上位何名だけ合格、というものがあるのよ。 この試験は、結果が一定の得点に達すれば合格だから、理論上は全員合格もあり得るわ」
「そ、そうなんだ」
パイモンさんは落ち着き払っていて、周囲に興味も見せていない。
花崗岩のような風格である。
だが、アンチエイジングの錬金術を行うと言うことは。
多分、自分の時間が、成し遂げたいことを成し遂げるためには短すぎると判断しているのだろう。
天寿を全うするという生き方もある筈だが。
しかし、為す事を成せずに寿命が尽きてしまったら、無念だろうし。
アンチエイジングを行うのは、有りかも知れない。
程なく、長い廊下を抜けて、大きな部屋に出る。
これは、アトリエと同じだろうか。
明らかに構造がおかしい。
空間を弄っていると見て良さそうだった。
「それぞれ、指定の席に座ってください」
無言でそれぞれ席に着く。
カンニングを防ぐためか、それぞれの席は仕切りで防がれ。更に、監視をするためらしい目のようなものが上で見ていた。
ペーパーテストを最初に行う、と言うわけだ。
ペンについては試験側が用意してくれる。
インクもである。
開始、の声が掛かった。
かなり分厚い試験用紙だ。
まず一枚目については、三択の問題がずらっと並んでいる。三択か。この形式の試験については、空いている時間にイルメリアちゃんに聞いたとおりだ。だが、内容が色々と厳しい。
例えば、これらの素材の中で、薬効があるものはどれか。
金属に分類されるものは。
そういったものが出ているのだが。
かなり高度な錬金術に使う素材がバンバン出てくる。
つまり、ある程度の錬金術を実際にやっていないと分からないものばかりで。
中には、相当にマニアックな素材も記載されていた。
わたしは彼方此方歩き回って。
図鑑を見ながら採集していったし。
分かるには分かるが。
流石に全ての設問に完璧には対応出来ない。
四苦八苦しながら問題に向き合っていき。一つずつ解いていく。インクは側に置いてある不思議なペンで消す事が出来るので、間違えて回答しても焦ることは無かった。
次のページに。
今度は変質についてだ。
錬金術の秘奥。
存在の変質。
錬金術とは、ものの声を聞き、変質させることによって行う技術だ。この変質について、かなり突っ込んだ質問の問題が幾つも出てくる。
難しいが。
しかしながら、嫌と言うほどやってきた内容だ。
わたしは一回ではなかなか覚えられない。
だから何度も何度も調合をして。
それで感覚として身につけていった。
その感覚を。
文字に起こすのは、相応に大変だが。
それでもやらなければならない。
まず文章をしっかり読み込んで、どんな調合をしようとしているのか頭の中に思い浮かべ。
そして順番に処理していく。
たっぷり時間を取られた。
この変質については、相当なページ数が取られていた。
丸一ページを使った問題もあった。
それもそうだろう。
錬金術の本質に関わる部分なのだ。
多分イルメリアちゃんに聞いた「配点」も高いに違いない。
すらすら解ける問題もあったが。
苦手で、どうしても曖昧になってしまうものもあった。だが、頭を切り換える。できない事はできない。
イルメリアちゃんだって、金属加工はわたしの方が上だと言っていた。
生まれた時から錬金術漬けだったイルメリアちゃんでさえそうだ。
だったらわたしは、始めて一年も経っていない素人。
やれることをぶつけていくしかない。
冷や汗を掻きながら、ペンを走らせ。
そして八割ほど進んだところで。
戦闘に関する試験問題が出てきた。
こういう状況で、どう判断するか。
どう行動するか。
そういった問題だ。
かなり意地が悪い。
純粋に戦略や戦術を聞いてくるとは思わなかった。これは、ひょっとして、今年から追加された問題ではあるまいか。
というのも、ライゼンベルグ西の様子からして。ライゼンベルグの錬金術師達が、戦闘に長けていない事は良く分かる。
もしも人材を発掘するつもりなら。
こうして戦闘に関する最低の知識を欲するのではないのだろうか。
此処はとても簡単だ。
修羅場は散々くぐったし。
獣に墜ちた人間だって殺した。
手は血に染まっている。
この問題は手が真っ赤であればあるほど簡単だと言えるだろう。
そして、事実さっきまでとは裏腹に、すらすら解くことが出来た。頭の中で状況をイメージすれば、どう動けば良いかすぐに分かる。
最後まで行った。
後は、前から順番に再チェックしていく。
ケアレスミスが無いかを徹底的に洗い。
曖昧な問題については脇にどけておいて。
確実な問題は確実に解いていく事にする。
筆記問題はどれも、分かってさえいれば明確な答えが出るものばかりだったので。採点はそれほど難しくはないだろう。
逆に言うと。
曖昧な書き方をして、誤魔化す事も出来ないはずだ。
ベルが鳴る。
まずは、筆記試験終了。
だが、筆記試験だけで終わるとはわたしも思っていない。
実技がこれからある筈だ。
一度、試験の部屋から出る。
わたしとイルメリアちゃん、パイモンさんは平気だったが。
残りの五人は青ざめていた。
「去年までとまるで問題が違うぞ」
「なんで戦闘に関する問題があんなに多いんだ。 戦闘など、傭兵にやらせておけばよいではないか」
「そのような考えだから、ライゼンベルグ西にドラゴンが住み着き、追い払う事さえ出来なかったのではないのかな」
パイモンさんが、慌てている錬金術師達に釘を刺す。
悔しそうに俯く錬金術師達。
どうやら、この人達は。
試験に受かることは無さそうだ。
一旦休憩時間に入る。
昼食が支給される。不正がないようにと、庁舎の方で用意してくれたようだ。
三人で食事にする。
話を聞くと、やはり皆解けた問題については、かなり偏りがあるようだった。
わたしは鉱物関係については殆ど苦戦しなかったけれど。
イルメリアちゃんもパイモンさんも、口を揃えて彼処は難しかった、と言った。
一方わたしが苦戦したところをイルメリアちゃんが簡単に解いていたり。
パイモンさんは満遍なく問題を解いていたりと。
傾向はそれぞれかなり違うようだった。
食事はお姉ちゃんやレヴィさんが作るものほど美味しくは無かったが。
それでも一定の味は確保されていたし。
甘いデザートもついていた。
これは、きっと疲れた頭を回復させるためのものだろう。
有り難くいただくことにする。
食事を終えると、別の部屋に案内される。
其処に試験の結果が張り出されていた。
とはいっても、まだ筆記だけだが。
筆記の時点では、パイモンさんが一位。この辺りは、流石に歴戦中の歴戦、というところだろう。僅差でイルメリアちゃん。その次がわたし。
他の人達はかなり遅れている。
だが、この試験は一定の点数を上げれば突破ということだし。
まだまだ挽回の好機はあるだろう。
続けて、案内される部屋は。
各自違った。
アトリエだ。
庁舎の中にアトリエがあるのか。
声がアトリエの中に響いてくる。
「此処にある用意した材料で、出来るだけ品質が良い爆弾を作ってください。 どのような爆弾を作るかは自由です。 制限時間はその砂時計が落ちきるまで。 複数作った場合は、一番良い爆弾で判断します。 また、魔術を利用した攻撃兵器でも爆弾として判断します。 要するに相手を殺傷破壊する道具を作れば問題ありません。 爆弾を作れなければ、その時点でこの試験は0点となります」
頷く。
妥当な試験だと思う。
荒野を渡って来て、必要だと思ったのは、戦闘のための道具だ。
そして街を守るためにも。
戦闘のための道具は絶対に必要になる。
わたしも当然、たくさん爆弾を作ってきたし。ブリッツコアについては相当に自信だってある。
材料を確認。
品質はそこそこ。
時間と相談しても、ブリッツコアを作れるだろう。
一番最近作った、一番強い爆弾。
それを作るのが当たり前だ。
すぐに水晶を加工し始める。
釜を蒸留水で洗い。
徹底的に条件を整えてから。
ブリッツコアを仕上げていく。
大丈夫。
此奴はみんなと力を合わせたとは言え、ドラゴンさえも仕留めたのだ。あの鉄壁の鱗を吹っ飛ばし。
そして内部を黒焦げにした。
公認錬金術師二人が倒せなかった怪物を撃ち倒した自慢の道具。
絶対にいける。
汗を拭いながら。
感じる。
今までの積み重ね。
そして戦いの数々。
その結果から導き出された最適化。
全てがわたしの力になっている。全てがわたしの力を引き出してくれる。ギフテッドがあるのだ。当然活用する。水晶達はわたしに教えてくれる。もっとこうすると、威力が上がるよ。
だからわたしもそれに答える。
時間はあっという間に過ぎていく。
加工の途中で、何度か失敗しそうになるが。
ブリッツコアは失敗した分も含めて、何個も作っているのだ。
どこをどうすればまずいかは一発で分かる。
勿論此処にあるのは最高の材料ではないが。
それでも充分すぎる程だ。
中和剤を造り。
変質させる。
見る間にブリッツコアが仕上がっていく。
反応を見ながら中和剤からブリッツコアを取りだし。
魔法陣を微調整。
凄まじい魔力がブリッツコアに籠もっていく。これを引き出し、雷撃に切り替えて行くのだ。
仕組みは隅々まで把握している。
時間は。
まだある。
空いている場所を使って、試運転。
無駄に有り余っているわたしの魔力を使って、雷撃を複数連続で発動。火力は室内と言う事でかなり抑えるが、それでも視界が真っ白になるほどの雷撃が迸る。このアトリエはかなり広く作ってあるし、多分作った人も分かっているのだろう。カカシも設置されていたので、丁度良かった。
カカシが消し炭も残さず吹き飛ぶ。
頷くと、鉱物が教えてくれるとおりに、更に細かく微調整。
ほどなく、鉱物が教えてくれた。
可能な限り完璧に出来たね、と。
わたしは、目元を拭う。
ギフテッドである事を、最大限生かすことが出来た。
今度は、わたしが鉱物達に答える番だ。
砂が落ちきる。
鈴が鳴らされた。
「はい、完成品を持って出てきてください。 審査に移ります」
ぞろぞろと、皆アトリエから出てくる。
良くしたもので、パイモンさんは雷神の石・完成型。
イルメリアちゃんは魔剣・完成型だ。
だが、イルメリアちゃんのは、更に強化が加えられている様子だ。どうやら相手にぶつかった後、高熱を発して焼き切る仕様にした様子だ。鉱物が教えてくれる。
「イルメリアちゃん、手を加えて大丈夫?」
「ええ、威力は実験済みよ」
「いつの間に……」
「ドラゴン戦では、私は壁役だったから。 その後に、相手に致命打を与えるための道具を、色々考えていたのよ」
少し暗い笑みを浮かべるイルメリアちゃん。
他の錬金術師達は、オーソドックスなフラムやレヘルンなどを作っていた。一人、かなり複雑そうな爆弾を作っていたが。あれは初めて見る。多分、オリジナルの強力な爆弾だろう。
それぞれの完成品をテーブルに置き。
使用方法を記載。
その後、離れて見ている。
現れたのは、あのフードの人だ。
確かに錬金術の道具は、魔術師でも使えるが。あの人は、試験官だったのか。
部屋の奥から、巨大なぷにぷにが出てくる。
どうやら戦闘力をオミットした個体らしい。
巨大なだけで、敵意もなく。
触手もなかった。
「あら、可愛いわ」
「殺気がないものね」
「小型化改良すれば、ペットに出来るかもしれないわね」
「ペットかー」
苦笑い。
流石にその発想はない。
というか、ペットというもの自体を、わたしはエルトナの外で初めて見たのだ。つまり、ペットを飼う余裕さえ、エルトナの民には無かったのである。
フードの魔術師が、一つずつ試していく。
ブリッツコアを発動したとき。わたしが使用した時の何倍も強烈な雷撃がぷにぷにを襲い凄まじい爆音と共に木っ端みじんに消し飛ばした。
どうやら此処とぷにぷにのいる空間は錬金術で壁のような処置がされているらしく。
爆風が来る事もなく。
破片も飛んでこなかった。
「火力は凄まじいが、放熱にまだ課題がある。 オーバーヒートが掛かると破損する可能性もある」
講評をわざと聞こえるように言いながら、採点が行われる。
続けてパイモンさんの雷神の石。
此方も、わたしのに負けない雷撃が、新しく連れてこられたぷにぷにに叩き付けられる。
複数出るわたしのと違って、一撃だが。
その火力は、わたしが見たものよりも更に上がっているようだった。
「威力は先のブリッツコアに落ちるが、安定性が抜群だな。 ただし魔力の消耗はより激しい。 手練れの魔術師でないと、使いこなす事は不可能だ」
これも、鋭い指摘。
そして、間違っていない指摘である。
イルメリアちゃんの魔剣。
これも、回転しつつぷにぷにに襲いかかり。
一瞬で残骸も残さず焼き切ってしまった。
手元に戻ってきて、大人しくなる魔剣を見てから、ローブの人は採点する。
「良く出来た道具だが、大物を相手にするには少し火力が足りないな。 かといって使い捨てにするには高価すぎる。 剣そのものを大きくするか、副次効果で色々な魔術をたたき込めるようにすると良いだろう」
これも正しい指摘だと思う。
イルメリアちゃんは唇を引き結んだまま頷いていた。
次は複雑そうな爆弾。
ぷにぷにに叩き付けられると、一瞬置いて多重爆発した。
火力は申し分ない。
錬金術師は満足げだったが。
フードの魔術師は、鼻を鳴らす。
「手間と構造の割りに火力が足りない。 ごてごて色々つけている余裕があったら、火力を洗練するといいだろう」
一刀両断である。
だけれど、わたしは今の爆弾、悪くないと思った。
覚えておく。
いずれ何かに使えるかも知れない。
更に他の人達のフラムやらも使われた。
だが、どれもこれも酷評されて。あまり良い評価は出なかった。
まあ、傍目から見ても、大型の獣や、ましてやネームドには通じそうにもない。かろうじて、あのびっくり爆弾が効きそうなくらい、だろうか。
少し待たされて。
試験結果が張り出される。
今度はわたしが最高得点。次がパイモンさん。そしてイルメリアちゃんは、最下位だった。
さっきの得点とあわせると、イルメリアちゃんが最下位だが、まだまだ僅差。わたしとパイモンさんは横並びになった。
他の五人は、ペーパーテストの結果もあわせてどっこいどっこいの良いとはとても言えなさそうな結果になっている。
まだ試験は続くはずだが。
五人はどうも顔色も良くない。
休憩時間が設けられ。
食事も出た。
この後、もう一つ試験があるらしい。
それで結果が出るそうだが。
これならば、余程の失敗をしない限りは大丈夫だろう。
そういう楽観的な予想もしてしまった。
だが、それでは駄目だ。
そもそも此処はスタートラインに過ぎない。
この試験を突破して。
エルトナに戻って。
鉱山に閉じこもって暮らす生活をしている人達を、陽の光が浴びられる場所に出してあげる。
そして外敵からも守れるように、準備を整える。
ソフィー先生にいつまでもおんぶに抱っこではいけない。
このままでは、そうなってしまう。
気を引き締める。
そして、夕食が出たことから。
この試験は、真夜中まで掛かる事を察した。
分かってはいたが、相当体力的にも厳しい試験だ。パイモンさんは平気な顔をしているが、これは体力が無い人には厳しいだろう。なお、錬金術の装備品はつけてきても良い事になっているので、それは助かる。
わたしとしても、最近はこれらがあって当たり前、の状況が続いていたし。
あればあらゆる意味で便利だからだ。
休憩が終わった所で。
また別の錬金術師が来る。
神経質そうな、男性の錬金術師だった。ヒュペリオンと名乗ったが、イルメリアちゃんが小首をかしげている事から考えて、有名な人ではなさそうだ。
「此方に。 最後の試験を行います」
連れて行かれるのは、長い廊下の先。
この庁舎、本当に広い。
内部の空間も、やはりわたしがソフィー先生に貰ったアトリエ同様、相当に弄くっている。
これだけの事が出来るなら。
総力を挙げれば、あのドラゴンだって倒せたはずなのに。
ノルベルトさんの話を聞く限り、あいつは十年以上も放置され。それで多くの犠牲者が出た。
グラオ・タール周辺が匪賊の聖地と化す事だって、これだけの技術を適切に使っていたらなかっただろう。
それを考えると、苦虫を噛み潰すような不快感しか無い。
それでも今は。
分かり易い力の持ち主としての、公認錬金術師にならなければならない。
矛盾だらけの社会であっても。
わたしは其処を少しでも変えなければならないし。
変えるためには力がいるからだ。
歩きながらふと思う。
そういえば、わたしは。
なんだかんだ言いながら、悉く力で解決してきた気がする。
言葉は獣たちには通じなかった。
ツヴァイちゃんだって、わたしがエルトナにいる小娘のままだったら、養う事なんて出来なかっただろう。お金を持ち、戦略的な影響力を持つ錬金術師で、周囲には支えてくれる人間がいたから。その人達だって、お金がなかったら、わたしの側にいてくれはしなかった。お姉ちゃんは話は別だろうが、わたしとお姉ちゃんだけでエルトナから此処までたどり着けるわけも無かった。
力、か。
やはり、力はもっともっと必要だ。
ソフィー先生に相談しておきたい。
今になって思うと、ソフィー先生はとても恐ろしい。
でも、その恐ろしいまでの力があるからこそ。あの人は、一瞬であらゆる全てを変える事が出来るのだ。
自分の力で。
わたしもそうならなければならない。
害なす最悪の獣である匪賊共はこの世から駆逐し。
災害を引き起こす川は整備し。
邪魔な岩山は丸ごと崩し。
橋が無いならいっそ埋めてしまう。
そして立ちふさがるドラゴンは撃ち倒す。
そうすることで、わたしは。
ここまで来た。
更に、この先に行くには。
もっともっと多くのものを、力で解決していかなければならない。錬金術は力そのものなのだ。
わたし自身は決して強くは無いと思う。
火力は出せても、体が強いわけではないから、誰かに護衛を受けなければひとたまりも無く倒されてしまう。
錬金術の装備で極限まで身体能力は上がっているから、匪賊の二人や三人程度に負けたりはしないが。
それでも、まだはっきり思う。
この程度では。
力は足りないと。
案内された先には、広い何も無い部屋があった。天井も高い。不自然に奥行きも広い。そこで、神経質な錬金術師は向き直る。
「それでは最終試験。 実戦検定です」
どよめきが上がる。
わたしは、むしろ望むところだと思った。
現在本作は一章分の内容を二日に分けて投稿しています。このペースについて意見をお聞かせください。
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このままでいい
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一日で一章がいい
-
更に分割して欲しい