暗黒錬金術師伝説7 暗黒!フィリスのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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4、ようこそ深淵の者へ

アリスと一緒に、村の跡地に残ったイルメリアは。緑化された土地を利用しながら、村の復興を開始する。

 

様々な戦略資材があるし。

 

何より公認錬金術師としてのお墨付き。

 

街道は緑化が済んでいて、周囲のネームドも強力な獣も駆除完了済み。最悪の場合は、緑化された地帯に逃げ込めばドラゴンもやり過ごせる。

 

傭兵達はそれほど練度が高くないように見えたが。

 

それでも充分だろう。

 

傭兵達のリーダーとして、戦略級の傭兵を一人雇う。ソフィー=ノイエンミュラーに紹介してもらった腕利きだ。名はシャノンという。

 

非常に寡黙で、いつも鎧で身を包んでいるので素性は分からないが。

 

まだ若い女性らしい、と言う事だけは分かった。

 

そして、知っている。

 

深淵の者のメンバーだと。

 

フィリスの様子がおかしくなった直後。

 

イルメリアは、おかしな部屋に連れ込まれた。

 

其処にはソフィー=ノイエンミュラーがいた。

 

聞かされた。

 

全てを。

 

そして、言われたのだ。

 

家族のしがらみから解放されたかったら。深淵の者に加入して、自立しろと。

 

断る選択肢は無かった。

 

イルメリアは地盤を持っていない。フィリスやパイモンとは違う。公認錬金術師とはいえ、資金は無限にあるわけでも無い。持ち出してきた金や、ここぞの時に使えと渡された道具もあるが。

 

どうしても、プライドがある。

 

最初の装備は兎も角、道中で戦略事業に参加して、稼いだ金でここまで来た。

 

だが、その金も、正直この村の復興を賄いきれるか自信は無かった。

 

だが、深淵の者になるのなら。

 

資金援助をするという話をされた。

 

それは飼われる先が、家族になるか、深淵の者になるかの違いしかないようにも思ったが。

 

ソフィーは言ったのだ。

 

近いうちに実家から使者が来る。

 

政略結婚の話だ。

 

相手はボンクラ錬金術師。

 

だが、ボンクラながら、ライゼンベルグの権力の中枢に食い込んでいる一族。ラインウェバーの力を増すためには必要な政略結婚だ。必ず受けるようにと。

 

そうだ。

 

イルメリアの家族は、そういう連中だった。

 

分かりきっていたのに。

 

指摘されるまで、どうしても気づけなかった。

 

だが、深淵の者に入れば。

 

その話を潰してやるとも。

 

好きでもない男に抱かれて。後は政略結婚の義務として子供を産んで。錬金術を極めるどころか、権力闘争に明け暮れる人生を送る。

 

そんなのはまっぴらだ。

 

唇を噛む。

 

フィリスもパイモンも帰って行った。

 

あの様子だと、フィリスも何かソフィーに言われたのかも知れない。真っ青になったあの顔を思い出す。

 

イルメリアも、あんな風になっていた筈だ。

 

だが、もう止まることは出来ない。

 

作業を開始する。

 

まずは、キャンプを設営。

 

その後は、村の跡地を片付ける。

 

壊れた家を処理し。

 

崩れかけている城壁は一旦崩してしまう。全てを作り直すのだ。

 

拡張性を考えて、都市計画を一から練り直しつつ。更に周囲の緑化を進めて、畑も広めに作る。

 

まずは住民五百人を目標に。

 

戦略拠点としてのこの村を復活させるのだ。そして、イルメリアの地盤とする。最終的には、ライゼンベルグへの道の重要な宿場として、発展させる。そうすることで、初めてイルメリアは、家族に縛られない地盤に立つ事が出来る。

 

自動で動く荷車や。

 

更に空を飛ぶキットも、イルメリアはレシピを貰っている。自分でも農具を振るい、発破を使って解体作業を行い、てきぱきと村だった場所を更地に変えていく。

 

シャノンは姿を時々消して。

 

そして獣を仕留めて戻ってくる。

 

戦いの気配さえない。

 

つまり、それほどの一瞬で敵を倒している、と言う事だ。

 

このボンクラ傭兵ども全員を合わせても、シャノン一人に及ばないだろう。

 

そしてシャノンが監視役である事くらい、言われなくても分かる。

 

まずは城壁を作る。

 

フィリスが手伝ってくれれば、もっと簡単にいくのだろうが。

 

こればかりはそうも行かない。

 

グラビ結晶を利用した道具を使い、岩を持ち上げやすくする。足りない石材は、近くの山から切り出してくる。コンテナからも惜しみなく出す。

 

みるみる出来ていく村は小気味よいほどだ。

 

作業開始から一週間で城壁を復旧。

 

内部に建物を順番に作っていく。

 

井戸も復旧させ。

 

周囲の緑化作業は、ライゼンベルグまでの緑化を済ませて戻ってきたオスカーにも手伝って貰う。

 

考えて見れば、此奴が現れたタイミングもおかしすぎる。きっとオスカーも、深淵の者に所属する一人の筈だ。

 

途中からは人夫も加わった。

 

監視役のシャノンの他にもう一人。

 

パメラという一見穏やかそうな女が、ライゼンベルグで作業をして、手伝ってくれている。

 

奴が派遣してくれたのだろう。

 

もう、深淵の者からは逃れられない。

 

今は投資してくれているが。

 

今度は此方が向こうの要求に乗らなければならない時が必ず来る。

 

実際、何処にいても届いた家族の手紙は一切来なくなった。

 

それだけ深淵の者の力が凄まじい、と言う事だ。

 

作業が一段落したので、アトリエの外に出る。

 

空を見上げると、月が出ていた。

 

今頃フィリスも同じ月を見ているのだろうか。

 

目を擦る。

 

どうせなら、もっと仲良くなりたかった。

 

最後まで、素直になれなかった。

 

イルちゃんとでも、渾名で呼んで欲しかった。

 

でも、もう遅い。

 

後悔は、してもしきれなかった。

 

 

 

(続)




ついに本性を見せるソフィー。

フィリスは反発を覚えますが、しかしそれには道理もあることを理解します。
絶対に逆らえない相手に弄ばれていたことも理解しますが、しかし他に方法などありません。
ありったけの絶望と苦悩を抱えながら、公認錬金術師になったフィリスは凱旋することになります。
その凱旋すらもが、苦悩に満ちていても。

現在本作は一章分の内容を二日に分けて投稿しています。このペースについて意見をお聞かせください。

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