暗黒錬金術師伝説7 暗黒!フィリスのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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1、故郷のよどみ

ツヴァイちゃんをお父さんとお母さんに紹介できたのは、結局エルトナに戻ったその日の真夜中だった。

 

ツヴァイちゃんを寝かせてから、事情を話す。

 

お父さんは無言を貫き。

 

お母さんは目元を拭った。

 

お姉ちゃんを引き取った時も、こうだったのだろうか。

 

いずれにしても、わたしの妹としてツヴァイちゃんを扱う事。

 

それには同意してくれた。

 

これでツヴァイちゃんはミストルートという姓を得る事になったけれど。本人は、それを快く同意してくれた。

 

そこで、丁度良い機会なので。

 

フィリスさんと呼ぶのを辞めて、お姉ちゃんと呼んで欲しいと告げる。

 

ツヴァイちゃんは少し悩んだ後。

 

努力するのです、と答えてくれた。

 

とりあえず、最初に家に戻ってからしたのがそれで。

 

そして演説で告げたように、この家の住民が健康である事。何よりも、引っ越しを優先すべきは権力者では無く、日光が必要な人である事も改めて告げる。

 

お父さんは。

 

それを聞くと、しばし黙った上で。

 

こういった。

 

「逞しくなったけれど、目も濁ったね、フィリス」

 

「……匪賊と戦ったの」

 

「そう、か」

 

「効率化のために、奴らのアジトを暴くために、頭を覗いたの。 拷問なんて非効率的なことしていられなかったから。 見たよ。 最底辺まで人間が墜ちるとどうなるか。 だから、殺したよ」

 

無言でお母さんは話を聞いていた。

 

わたしは、もうそれについては触れなかった。

 

お姉ちゃんが作ってくれた料理を食べてその日は休み。

 

翌朝からはばりばり働いた。

 

現時点で、一緒にいる雇用者はアングリフさんとドロッセルさん、カルドさんとレヴィさん。この四人は、現在ソフィー先生が派遣してくれた人員とまったく劣らない戦闘力を持っている。

 

そのため、四人には周囲を警戒して貰い、厄介そうな獣は悉く片付けて貰う。

 

その間にわたしは調合を進めて、お薬と爆弾、戦闘用の道具、装備を作れるだけ作っていく。

 

エルトナのこの地下街を爆破するための高威力発破も作る。

 

これを鉱物の声が聞こえる地点に仕掛け。

 

全部同時に起爆することで。

 

この街を、エルトナ湖ごと完全に埋める。

 

自衛が可能になるまで街を発展させるまでの猶予期間はあまり長くない。更に言えば、恐らく上級ドラゴンとも、今後は戦わなければならない。パイモンさんは、わたし以上に忙しいはず。

 

上手く行けばイルメリアちゃんとアリスさんに力を借りられるかもしれないけれど。

 

それを前提にして戦力を整えるのは良くないだろう。

 

あの様子では、ソフィー先生はわたしに更なる力を得ることを期待しているように思えてならない。

 

水の中に問題なく行くための道具も考えなければならなかった。

 

家はかなりの急ピッチで建設が進んでおり。

 

不健康な人や、妊婦や老人、乳幼児を抱えている家庭から順番に出て貰う。

 

これに対して不機嫌そうにする街の重役もいるが。

 

アルファ商会の方からも、わたしがいなくなったら先行投資分を全て引き上げると言う話が重役達になされたらしく。

 

以降は文句を言うことも無かった。

 

何というか、わたしという存在が帰還する前から。

 

この街では、隠されていた膿が一気に噴出していたのだろう。

 

わたしが出立をもう少し遅らせていたら。

 

それを目の当たりにしていたのかも知れない。

 

もっと気持ちがいい人達だと思っていた。

 

だけれど、わたしはソフィー先生に見せられて知ってしまった。

 

人間は誰でも匪賊になり得る。

 

それだったら、この街だって。

 

わたしだって究極的には同じ筈だ。

 

ならば誰にも特別扱いは不要。誰にも平等に。何より厳しく接しなければならないだろう。

 

今でも何処かで心の底に反発はある。

 

だけれども、どうしようもない滅びを回避するために私情は敵だと知ってしまった今は。そして、人間だけでどうしようも無い滅びを回避するのは不可能だとも知ってしまった今は。

 

できるだけ非情にならなければならない。

 

お姉ちゃんには、街の見回りと、工事の様子を確認して貰う。

 

わたしから笑顔が無くなったと、お姉ちゃんが嘆いていたけれど。

 

それでも、わたしの言う事に間違いは無いとも認めてくれてはいる様子で。

 

仕事をサボタージュするような事も無かった。

 

ツヴァイちゃんも一緒に行って貰い。

 

現状の進展と。

 

足りない物資などについて、逐一データを取って貰った。

 

ツヴァイちゃんはわたしをお姉ちゃんと呼んでくれるようになったので。それは嬉しいけれど。

 

どうしてだろう。

 

素直に笑顔が浮かべられないようになっていて。寂しく笑うことしか出来なくなってしまっていた。

 

老魔族のグリゴリさんには、最初に家を提供した。ずっとエルトナのために尽くしてくれて、呆けてきてからもまだ働いてくれている功労者だ。

 

外に出られたことと。新しい家に驚いた様子だったが。

 

わたしの事は、グリゴリさんも分かっているようだった。

 

勿論、夜主体に動いて貰う事になるのだが。

 

地下では昼も夜も無かった。今後は、きちんと昼と夜がある状況で生活出来ることになる。

 

翌日には、妊婦がいる貧しい一家を。

 

体を壊した老人を。

 

順番に新しい家に配置していく。

 

同時にわたしが作ったお薬も渡して、劇的に効果が出るのを見て安心した。薬の腕もきちんと上がっている。

 

重役達は面白く無さそうにしていたが。

 

外の世界の恐ろしい獣を片っ端から狩ってくるアングリフさん達の実力に閉口し。

 

更にわたしが作った錬金術の道具の精度に黙らされ。

 

一週間もすると、文句は言わなくなった。

 

老人も病人も皆見違えるように健康になり。

 

グリゴリさんのボケもかなり回復してきた。突然暴れる事もなくなり、静かに余生を送れそうだと、わたしに礼まで言いに来た。

 

わたしがやるべきは調合だけでは無い。

 

ソフィー先生が派遣してくれた人達と一緒に、土いじりもする。

 

土に栄養を与えて畑も作って拡げ。

 

畑に出来る場所を拡大し。

 

森も街を守るようにして拡げる。

 

更に、アルファ商会が雇ったらしい人も、どんどん働きに来た。つまり、わたしがアルファ商会に売っているお薬や爆弾の品質が認められたという事である。

 

安全地帯を増やしながら。

 

いずれ崩してしまう山についても決める。

 

今後は危険な坑道掘りでは無く、露天掘りにするのを前提に長期計画を組む。

 

緑化も見境無くやるのではない。

 

いずれ山を崩す作業を行う時に邪魔にならないように、一部は計画的に荒野のままにしておく。

 

それについて何度か質問されたが。

 

山を丸ごと消し去るつもりだと説明すると。

 

閉口した相手は、それ以上何も言わなかった。

 

事実、山岳地帯の袋小路にあるエルトナは、籠城には適している反面、何かあった場合逃げ場所が無い。

 

近くに人間に害を為さないとは言え邪神がいる以上。

 

わたしが今後常駐できない事を考えると。

 

守りは過剰なくらいに固め。

 

なおかつ有事に対応出来る状況を構築する必要が絶対条件となる。

 

色々な手段を試しながら。

 

わたしは順番に、出来る事をやっていく。

 

持病を持っていた人を回復させ。

 

ライゼンベルグから持ち帰った書籍を読んで知識を増やす。

 

義手や義足の作り方も覚えた。

 

拡張肉体の応用、或いは一種だ。

 

もっとも、戦闘用の拡張肉体よりも遙かに簡単。

 

強度も人間の体程度で良いし、浮いたり攻撃機能が無くてもかまわないのだから、それは楽だ。

 

魂と直結することで。

 

意思通りに動くようにすれば良い。

 

それでも、わたしはあまり要領が良くない。何度も作らないと、上手に出来るようにはならない。

 

だからまず実証を行い。

 

そして、完成品を作った。

 

エルトナは鉱山の街だ。

 

今まで事故で手足を失った人は何人もいる。

 

その人達に義手義足を提供する。勿論お金は取らない。薬に関してはお金を取るけれど、それはごくごくお安く。もし払えない場合は、利息無しでいずれ払ってくれれば良いと事前に通達している。

 

資材はいくらでもあるのだ。

 

それに、アルファ商会に完成品を売ることで、別に街の人達からお金を取り立てなくても大丈夫なくらい儲かる。

 

最初は街の発展資金が出るか不安だったのだが。

 

現時点では、その不安も払拭できていた。

 

最初の一月は瞬く間に過ぎ。

 

わたしは確実に錬金術の腕を上げながら。

 

外に出て獣も片付ける作業に加わった。

 

戦闘の腕を鈍らせる訳にはいかないからだ。

 

少しずつ、少人数で今まで戦えそうに無かった相手とも戦っていく。そうすることで、相対的に戦闘の状況を厳しくし、わたし自身の腕を鈍らせないようにする。勿論総力戦想定の戦闘も何度も行う。

 

今後、またドラゴンと戦わなければならないのだ。

 

力を落とすようでは意味がない。

 

メッヘンの近くまで足を運び、近場にいるネームドはあらかた始末してしまう。

 

空飛ぶ荷車のおかげで行動範囲が拡がったこともあって。二三日遠征をすれば、近郊のネームドの縄張りには簡単に到達できるし。

 

何よりも、川の周囲にあるような少ない緑地や。

 

希に見かける林などにも足を運び、素材を必要量確保することも出来た。

 

勿論、人間に害をなし得る獣は悉く見かけ次第片付ける。

 

殆どは荷車からの爆撃で事足りてしまうし。

 

それでも無理な場合は、総力戦で仕留めるだけだ。

 

そして更に二週間が経過した頃には。

 

エルトナの鉱山内で暮らしていた人達の内。日光が必要な人は、あらかた外に住居を用意することが出来ていた。

 

わたしは、まだエルトナの鉱山内にアトリエを構え。

 

そして基本的に作業も其処でやる。

 

それを苦々しく見ている人達もいる。

 

前も、時々闇を感じていたエルトナだが。

 

やはり藪をつついて蛇を出したのだろう。

 

今、その闇は。

 

もはや姿を隠さず、噴出を続けていた。

 

 

 

ドロッセルさんに言われて、外に出る。

 

メッヘンからの使者が来た、と言う事だった。長老宛ではなく、わたし相手に、だそうである。

 

長老が話を聞いたらさぞや不愉快そうにするだろう。

 

昔は好々爺という印象だったのだが。

 

今では、家の配分についてわたしが話をしてから、非常に不機嫌そうな顔をしていることが多くなった。

 

わたしの事を内心で金づるとしか思っていなかったのか。

 

それとも、子供が余計な知恵を付けてと思っているのか。

 

どちらにしても、もはやわたしには、どうでも良いことだったが。

 

会いに行くと。

 

ウコバクさんだった。

 

メッヘンでの治水作業で何度も一緒に作業をした魔族だ。まだ若いウコバクさんは、わたしを見ると喜んだ。

 

「フィリスどの。 公認錬金術師になられたそうだな。 何よりだ」

 

「ありがとうございます。 ディオンさんは壮健ですか?」

 

「相変わらず少し頼りないが、壮健だ」

 

見違えたと、城壁に守られ、森が出来はじめているエルトナを見て、ウコバクさんは目を細める。

 

わたしがいない間も、ソフィー先生の派遣してくれた人達や、アルファ商会の支援で作業は進んでいたのだが。

 

それでも、わたしが来てから、一気に作業は進展し始めている。

 

公認錬金術師が常駐するというのはそういう事だ。

 

ただ、二人も公認錬金術師がいて、どうにもならなかった村のように。

 

公認錬金術師がいてもどうにもならない事は確かにある。

 

だから、わたしも自分を過信しない。

 

「それで、如何なる用事ですか」

 

「書状だ。 見てくれるか」

 

「はい」

 

蜜蝋で封をされている。フィリス殿へと記載がある事から、長老達街の重役は相手にしていない書状だ。

 

ディオンさんは少し配慮が足りないかも知れないが。

 

別にわたしはそれで良い。

 

正直な話、闇を暴いてみたら、此処までとは思っていなかった。もっといい人達だと思っていた。

 

慎ましい生活をしていたら隠れていた闇が。

 

陽の光の下に出られると知った瞬間、こんな形で現れるとは思っていなかった。

 

だから、わたしも。そんな人達に相応しい対応を取るだけだ。

 

書状を確認。

 

どうやら、メッヘンでは、エルトナの鉱物資源に興味を持っているらしい。

 

緑化作業を延長し、安全なルートでの交易を行いたい。

 

そういう内容だった。

 

メッヘンは暴れ川も落ち着いて、街の発展に力を入れだした所らしい。彼処は元々豊富な水資源を利用して、緑化を広域で進めていて、果樹園まで存在している。エルトナとしては、交易相手として非常に好ましい。

 

そしてそもそも、安全ルートの交易だったら、現時点でも難しくは無い。

 

メッヘンまでは、護衛がいたとは言え、駆け出しのわたしがたどり着けた程度なのである。

 

更に今回、近場のネームドは皆殺しにしてきた。

 

もう一つ、飛行キットを使って、荷車での輸送が可能になる。現時点で派遣されている戦士達を護衛につければ、後は操縦をする人を一人確保すれば大丈夫。

 

ただ、アトリエで輸送すれば、それこそ岩山ごと運べるのだが。

 

荷車で輸送する場合、かなり大型の。

 

そう、キルシェさんが作ったような、家を運べるようなサイズの飛行キットが必要になるだろう。

 

それは悩みどころだ。

 

オスカーさんがいれば、もう丸投げ出来るところなのだろうが。

 

流石にあの人は、まだライゼンベルグ近辺でせっせと作業をしている所だろうし。何よりイルメリアちゃんが村を復興している最中。其方を手伝って欲しい。

 

すぐに長老達を集める。

 

これに関しては、即座に返事をするのは流石に悪手だ。

 

武力を此方が有していると言っても、組織的なサボタージュをされると面倒な事になるし。

 

何よりキルシェさんの所で見たような、足を引っ張る行為をされると更に面倒だからだ。

 

わたしはいつの間にか。

 

心が冷え切っていて。

 

どんどんリアリストに寄っていることに気づき始めたが。

 

それでも行動そのものは止めない。

 

すぐに呼び出した長老達は、不機嫌そうだったが。

 

わたしが話をすると、案の定反発した。

 

「メッヘンとの交易路の確立? それは、この街を発展させるのに、どれくらい役立つのかな」

 

皮肉混じりに重役の一人がそう言う。

 

わたしは、アングリフさんとお姉ちゃんに立ち会って貰ったが。

 

二人には後ろに立っていて貰うだけだ。

 

「メッヘンから南に行くと、ドナというかなり大きな街に出ます。 森林資源が豊富な街で、取り仕切っている公認錬金術師も凄腕中の凄腕です。 これだけではなく、メッヘンは北部にも街道が延びていて、他の都市と街道を通じてエルトナを流通の一端にする事が出来ます」

 

「机上の空論だ」

 

「わたしは道を切り開くことで、ライゼンベルグまで到達しました。 緑化作業は嫌と言うほど経験しています。 実際に緑化を進めて安全地帯を増やしているのを見ていなかったんですか?」

 

「……っ」

 

重役が黙り込む。

 

そもそもわたしが錬金術師として本格的に活動し始めてから、彼らは見ている筈だ。錬金術の破壊力を。

 

薬はアルファ商会から高く買わなくてもいい。

 

義手や義足なんて、今までのオモチャとは格が違う。意思に沿って本物同然に動く。

 

病気だって治るし。

 

不健康だった人達も、安全な状態で日の下に出られるようになった。

 

更に、この街の発展を聞いて、新しく労働者が来てくれている。この人達の幾らかは、上手くすればエルトナに残ってくれる。

 

新しい血を入れることだって可能になるだろう。

 

更に、この重役達には見せている。

 

飛行キットや、自動で動く荷車が如何に有用か。

 

わたし達が、今まで選ばれた戦士しか対応出来なかった獣を、如何に容易く仕留めているかも。

 

それを見ていながら。

 

感情的に反発する彼らの事には、正直冷たい怒りを感じる。

 

「今までエルトナは、各地の街をつなぐインフラから隔絶していました。 故にたまに来る商人からは搾取され、選ばれた戦士しか外に出られず、鉱山の中で滅びを待つだけでした。 今後は流通に絡み発展する事で、新しい血を入れ、滅びを回避することが出来ます」

 

「しかし、街の側には邪神もいる」

 

「そんなものはもし暴れるようならわたしが殺します」

 

青ざめて黙り込む重役達。

 

長老も真っ青になっていた。

 

わたしが殺すという言葉を使ったことが、それだけ衝撃的だったのか。

 

出来るだけわたしは冷静に話しているつもりだが。

 

怒りを感じ取ったのだろうか。

 

「既にわたしは皆の協力を得たとは言えドラゴンを倒しています。 このまま成長を止めるつもりもありません。 いずれ必ず邪神も退けられる力を手に入れます。 少しでもこの街の未来をよくしたいと思うのなら、個々の些細な感情やプライドは捨ててください」

 

「あー。 俺からも言わせて貰うがな。 此奴は少なくとも、首都まで行って、その途中で様々な戦略事業に参加しているんだぜ。 少なくともあんた達の誰よりも修羅場をくぐっているし、知識も豊富だ。 素直に言う事は聞いた方が良いと、俺は思うがな」

 

「……」

 

アングリフさんが言うと。

 

長老達は、流石に反発する気ももう起きないようだった。

 

後は、どうすれば良いか、具体的な指示を出す。

 

まず長老から、正式に書状を書いて貰う。

 

メッヘンとの交流確立。

 

それに有事の共同態勢の確立。

 

この二つで、現時点では良いだろう。

 

交渉そのものはわたしでやる。

 

むしろメッヘンではわたしは戦略事業を通じて信頼を勝ち取っているので、非常に動きやすいはずだ。

 

此方の街の重役は、わたしに行動のグリーンライトを渡すだけで良い。

 

その話をすると。

 

また重い沈黙の後。

 

長老は分かった、と言った。

 

頷くと、席を立つ。

 

不満が蓄積しているのが分かるが、後は実績でねじ伏せれば良い。それにメッヘンへの街道確保は、必ずエルトナのためになる。そして山を一つ二つ崩した後は、其方に街道を延ばして、他の街へもインフラを接続したい。

 

そうすることで、エルトナは。

 

閉じた袋小路のどん詰まりでは無く。

 

人が行き交う場所へと変貌する。

 

この辺りは戦略的な事業だが。

 

わたしはライゼンベルグに行くまでに、戦略的事業については散々見て携わってきたのだ。少なくとも、この街の大人の誰よりも。

 

早速、街を守っている一番外側の城壁に出向く。

 

ソフィー先生が派遣してくれた戦士達が数人守りを固めていたが。外に出て、測量を開始。

 

栄養剤は余っているし、鉱物の声も聞こえる。

 

まずは硬化剤を撒いて。街道にする場所を確定させ。

 

次は土を耕して空気を入れ。

 

栄養剤を順番に入れ。

 

草から低木へと変えて行きつつ。森で街道を守るようにする。

 

一旦森が出来れば、其処から資源を回収することも出来るようにもなる。

 

問題は匪賊が流入することだが。

 

それについては気にしなくても良いだろう。

 

何しろ、あの「鏖殺」。実際に現在匪賊殺しを実行しているティアナちゃんが来るのだから。

 

周囲を皆に警戒して貰う。

 

強めの獣はあらかた片付けた後だ。危険は少ないと思うが、万が一の事もある。

 

調査を進めているわたしの側には、お姉ちゃんが付き添っていた。

 

「フィリスちゃん、少し強引すぎない?」

 

「お姉ちゃん、わたし分かった事があるんだ」

 

「どういうこと?」

 

「この世界は、力尽くで変えなければ何も変わらないって事だよ」

 

お姉ちゃんが口をつぐむ。

 

だが、お姉ちゃんだって分かっている筈だ。

 

ドラゴンが話し合いに応じたか。

 

落ちた橋が話し合いで直ってくれたか。

 

装甲船が話し合いで作れたか。

 

いずれもが、力を必要とした。錬金術と言う圧倒的な破壊の力を。創造の力でもあるが、それは破壊の力と表裏一体なのだ。

 

「わたしはいずれ全てを破壊するものになる」

 

あの未来。

 

絶対に、あんなものは破壊しなければならない。

 

人間が資源を食い尽くし、あげく互いに食い合い絶滅する滅びの未来。

 

それを回避するためには。

 

手段など、選んではいられないのだ。

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